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リースside
しおりを挟む美しく華奢で可愛いマオを大勢の前に出すのはすげぇ嫌だった。
だがいつまでも貴族から隠しておくわけにはいかねぇ。
この国に住み、この国に守られながら生きていくには避けられないことだ。
せめて、マオに手を出そうとする奴、邪な目で見るやつからマオを守ることしか俺にはできない。
本当はピッタリとくっついていたいが、俺は貴族じゃない。
マオも貴族ではない。貴族以上に尊い存在だ。
舞踏会でマオの横に並んで立つことができないのが悔しい。
今回は夫としてではなく護衛に徹することになる。
貴族達は俺たちが夫夫であることを知っている。
だが、そんなことお構いなしにマオに婚姻の話を仕掛けてくる。
既婚者は自分の子供をマオに勧めている。
だが、肝心のマオにはそのことが全く伝わっていない。
婚約者がまだ決まっていないと言われると
「そうなんですかぁ。素敵な人に出会えるといいですね」
と返している。
それを聞いた貴族達はみんな肩を落としている。
マオがこういったことに疎くてよかった。
最初は丁寧に貴族達の挨拶に答えていたマオだが、半分をすぎると明らかに疲れた表情になった。
皆同じような挨拶をするんだ。疲れて当たり前だ。
マオの体力を考えて一度休憩を入れるべきだと思うが、護衛の俺が挨拶の間をとってそんなことを言えねぇ。
陛下がマオの体調に気付いて声をかけてくれることを願うが最後まで休憩は入れられることなく長い挨拶の行列が終わった。
すぐに飲み物でも与えてやらねぇと。
近くにいた給仕担当のやつに指示を出し、マオに声をかけようと思い近寄るとマオがフラッと体を傾けその場に蹲ってしまった。
俺の立場とか考えてる余裕はねぇ。
すぐにマオに駆け寄り体を支えてやると、もともと白い肌が青白くなり意識朦朧としている。
急いで抱き上げ、治癒師を呼ぶように指示を出し部屋へ引き上げた。
陛下が突然倒れたマオを心配して隣をオロオロしながらついてくる。
お前が休憩もさせずに無理をさせたんだろ!と怒りが湧いてくる。
いや、これは俺にも責任がある。
陛下は普段マオと一緒にいねぇからどれくらいまでならマオが疲れないかを知らねぇんだ。
俺が最初に陛下に助言しておくべきだった。
俺の失態だ。
舞踏会は中止になるか、それともマオ不在で続けられるのかそんなこと知ったこっちゃねぇ。
早くマオを楽にさせてやらねぇと。
堅苦しい衣装を脱がせ楽な服に着替えさせる。
それだけで顔色が少し戻ったように見える。
それからすぐに治癒師がやってきた。
治癒師が診察を始める。
「・・・」
「マオはどうなんだ?」
「・・・リース殿」
「なんだ!どうしたんだ!」
「落ち着いて聞いてください」
「・・・わかった」
「マオ様は・・・懐妊されておいでです」
「・・・?」
「ご懐妊です」
「・・・かい・・にん?」
「はい。おねでとうございます!」
「マオが・・・子供を?マオの中に?俺の子供が??」
一瞬言われたことが理解できなかった。かいにん、カイニン、懐妊??
意味を理解した途端、俺の中に今まで感じたことのない感情が生まれた。
マオの中に俺の子供がいるのか。
俺とマオの子供が。
嬉しい嬉しい嬉しい。
マオ・・・ありがとう。
愛している。
今だに目覚めないマオの手をとり俺は大人になって初めて涙を流した。
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