上 下
54 / 62

初めての城下町

しおりを挟む

初めての城下町は本当に楽しい。
今まで見たことないような食べ物や商品が売ってあってどれも興味を惹かれてしまう。

ついつい走り出しそうになってリースさんに注意されちゃった。


お城にいるエルマさん、ダンさん、ついでにじいじにもお土産を買おうと思っているからまずはそれを探さなきゃね。
色々お店を回っていると雑貨屋さんらしきお店を見つけた。
そのお店は外観も店内も可愛くて、男ばかりの世界でもこういうお店ってあるんだなぁと感心してしまった。

そのお店で綺麗な刺繍がされたハンカチを見つけたからそれをお土産に買った。
ちゃんと自分で働いて得たお金で買ったよ。
リースさんが買おうとしてくれたんだけどそれじゃあリースさんからの贈り物になっちゃう。
僕は普段お世話になっている感謝の気持ちを伝えたいから自分で買うことが大切なんだ。

「マオの初めての贈り物が俺にじゃねぇなんて。あいつら大事にしなかったら痛い目に合わせてやる」
リースさんをなんとか説得した時、なんだかブツブツ言ってたけど独り言みたいだから気にしないことにした。


その後もお店を見てまわりお昼ご飯は屋台で色々買ってから噴水のある広場で食べた。
串に刺さったお肉はとても大きくて、それに硬かったからあまり食べれなくてリースさんがほとんど食べてくれた。

そして昼休憩の後、僕はとっても素晴らしいものを見つけたんだ。
まるで本物のような蝶が飴で作られていて棒に刺さってた。
元の世界でもそういうのがあるのは知ってたけど、一つ一つ手作りで熟練された技術をもった職人さんしか作れないってことを知ってるからこの世界にもあるなんて思わなかったんだ。

飴が欲しいなんて言ったら子供っぽいって思われるかな。
でも、もっと近くで見てみたいな。どうしよう。

僕がじーっと見つめているのに気づいたリースさんが苦笑しながら買ってくれた。
笑われちゃった。やっぱり子供っぽかったよね。
でも、買ってもらえたことが嬉しくてそんなことどうでも良くなった。

飴をペロペロ舐めながら歩いていると足元をよく見ていなかったせいで躓いてしまった。
転ける前にリースさんが受け止めてくれたけど、すっと縦抱きにされちゃった。
自分で歩きますって言ったんだけど、危ないからだめって言われて恥かしかったけど甘えることにした。

抱っこされた状態で飴をペロペロしてると、すれ違う人たちが生暖かい視線で見てくる。
僕たちは夫夫なのに、もしかしたら親子って思われてるのかな・・・。
そう考えてると、口が尖り拗ねたような顔になってたらしい。リースさんに唇をキュって摘まれちゃった。

悔しいからもうちょっと大人っぽく見えるように振る舞おうと、気合を入れていると遠くの方に前屈みになりながら僕たちを見つめている人と目が合った。

あの人確か僕を守ってくれる騎士さんたちの中にいたような・・・。
でも今日は騎士団の服装じゃないから休日に買い物来てるのかも。

休みの日に職場の人と出会うのってちょっと気まずいよね。
気づかなかったフリしよう。それにしてもお腹でも痛いのかな。
でもお腹は押さえてないし。大丈夫かな。まぁ騎士さんだから僕みたいに弱っちくないだろうし大丈夫だよね。
(マオは周りに一般人に扮した騎士たちがいることに気づいていません)





そんな楽しい時間は突如として終わった。
近くでひったくりがあったみたいで犯人がこっちに走って来ている。
「わぁ、リースさん犯人がこっちに走ってきます!!」

「大丈夫だ」

リースさんはすぐに道の端に寄り、犯人とぶつからないように守ってくれた。
でも犯人はどうするんだろう。

「リースさん!犯人を捕まえてください。僕はここで待ってますから!」
被害者のことを思うとこのまま逃すわけにはいかない。
そう思って声をかけると

「すぐに捕まるから大丈夫だ」

そう言われてどういうことだろうと、犯人を見ているとさっき僕が見た騎士さんがあっという間に捕まえちゃった。
すごーい!!さすが騎士さんだ。

あれ?でもその騎士さんの周りにいる人たちもなんだか見覚えがあるような・・・。
そっか、騎士さんたちはみんなで遊びに来てるんだね!
でもせっかくの休日なのに、こんなことになっちゃって可哀想だな。
これじゃ仕事してるのと変わらないよね。

後日、今日の代わりにちゃんと休日が貰えるといいね。




そんなことを考えている僕は気づいてなかった。
被っていたはずのフードが脱げて、僕の顔が色んな人たちに見られていることを。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BL「いっぱい抱かれたい青年が抱かれる方法を考えたら」(ツイノベBL風味)

浅葱
BL
男という性しか存在しない世界「ナンシージエ」 青年は感じやすい身体を持て余していた。でも最初に付き合ったカレシも、その後にできたカレシも、一度は抱いてくれるもののその後はあまり抱いてくれなかった。 もうこうなったら”天使”になって、絶対に抱かれないといけない身体になった方がいいかも? と思ってしまい…… 元カレ四人×青年。 天使になってしまった青年を元カレたちは受け入れるのか? らぶらぶハッピーエンドです。 「抱かれたい青年は抱いてもらう方法を考えた」の別バージョンです。

転生したら従者になった話

涼音
BL
異世界に転生してしまった主人公は、20の誕生日に交通事故で死んだ。 死んだ筈が目を開けたら赤ん坊だった 20で事故に遭い死んだ事を鮮明に記憶に残しながら その世界は、小説とかによくある魔法や剣の世界【イルヴィアーナ】 主人公の家系は代々王族に仕えている。 ユーラス・シュリアンとして生まれた主人公は王子の従者としてまともに働けるのか 総攻めのハーレムモノになってしまう可能性も無きにしも非ず side ユアン →なし side シアン →* 「第三王子の従者になります」の改定版です。 こちらで今度から更新していきますのでよろしくお願いします がっつり内容が変わるかもしれませんが、そこは御許しください 【報告】タグに主人公攻め入れていたんですが、何か書いてる内に雲行きが怪しくなって来たので外しました。攻めか受けはもう少し後から考えます。

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

兄弟がイケメンな件について。

どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。 「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。 イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。

前後からの激しめ前立腺責め!

ミクリ21 (新)
BL
前立腺責め。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
ご感想をいただけたらめちゃくちゃ喜びます! ※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

処理中です...