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モブside

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俺は王立騎士団に所属する、騎士。
その騎士の中でも特別である、マオ様専属騎士。
騎士団に所属する騎士は全員で200名。
それぞれ部隊が組まれており、俺たちマオ様見守り隊・・・間違えたマオ様専属騎士団は、精鋭の20名だ。
俺が最後に選ばれた20人目であることは黙っておこう。
誰がギリギリだって??選ばれた順番は関係ないんだよ!!

そんな俺たちはマオ様の部屋の前で24時間警護したり、お出かけの際は付き添ったりする。
今のところマオ様は街に行かれたことがないからそんな大々的な警護はしたことないが。

ハリス団長とエイベル副団長が羨ましい。
だって、マオ様の部屋の中で警護できるんだぞ?

それに比べて俺たちは、部屋の外で耳を済ませながらマオ様の声を聞くことしかできないんだ。


俺たちはマオ様専属騎士団が組まれた後、マオ様の公表の場で初めてお姿を拝見した。
拝見するまでは、「とても可愛らしい方」と噂でしか聞いたことがなく、ちょっと疑っていたが一眼見た時、そんな自分を殴りたくなった。
いや実際に自分の頬を殴ってしまったんだが・・・その時は他の同僚も何人か同じ現象に陥っていた。
お前たちの気持ちはよくわかるぞ。

マオ様はキラキラ輝いておられた。実は体から光を放たれているのかもしれない。
まさに神だと思った。
それほど美しく可愛らしい。
まだ幼さが残る表情も庇護欲が掻き立てられる。

この方のためなら命をかけて守りぬくと全ての騎士が心に誓ったはずだ。
自分がこの隊に入れたことがとても誇りに思た。
実家の父母に自慢したい!!

そんなマオ様の部屋の前で夜間警護をしていた時、朝方眠そうに目を擦りながら部屋から出てこられ、なんと俺たちにも「おはようございます」と挨拶をしてくださったのだ。

普通は護衛なんぞ視界に入っても石ころと同じ。
つまり無視する存在だが、尊いマオ様はとてもお優しい方なのだ。
先に部屋前の警護に当たったことがある同僚が
「マオ様に挨拶していただけた!!それも俺の目をしっかり見て!!!」
と言っていた時はこいつ頭イカれたんじゃないかと思った。そんなことがあるわけないと。

だが嘘ではなかったのだ。マオ様はいつもそうされているようだ。
朝起きると用事もないのにわざわざ部屋から出てこられて我々に「夜間の警護ありがとうございました」
と仰るらしい。

俺は思わず泣いてしまった。
さらにマオ様は突然泣きだした俺を心配してくださった。

時間にして3秒。
何故なら、部屋の中からリース殿が出てこられてマオ様を抱き上げ中に入ってしまわれたからだ。
一瞬「何をするんだ」と思ったり思わなかったり・・・。

そして、その数日後マオ様とリース殿が結婚されたと聞いてマオ様専属騎士たちは膝から崩れおち1時間立てなかった。
いつまでもメソメソしている我らにはそのあとハリス団長による厳しい訓練が待っていた・・・



そーんなそーんなマオ様が今我ら騎士団の詰所にいらっしゃる!!
体調を崩されていると聞いていたがお元気そうで安心した。
先ほどマオ様のために用意されたお部屋で一人ずつ挨拶をさせていただいた。
俺が挨拶した時、マオ様はにっこりと笑ってくださった。
まさか、俺を覚えておいでなのか?
俺は今天に召されても悔いはない。

他の団員たちも笑いかけてもらえたとか言っていたが、俺の時が一番笑ってらした。間違いない!!


そして、旦那様であるリース殿の仕事が終わるまでこの詰所にいらっしゃるそうだ。
もしかしたら、訓練の様子を見にこられるかもしれない。
これはいつも以上に気合を入れなければ!!


団員たちは集合の20分前から訓練場に集合し、マオ様が来られるのを今か今かと待っていた。
詰所から出てくるリース殿の姿が見えたが、マオ様の姿がない。

見学には来られなかったか・・・と肩を落としていると、リース殿の後ろからひょっこりと顔を出されたのだ。
その瞬間、下がっていた肩は上がり背筋を伸ばし、できるだけ自分を格好良く見せようと全員が張り切り出した。

俺だって負けてはいられない。
他の団員に比べたら薄い胸筋をこれでもかと前に突き出し、アピールした。
そのせいで変な姿勢になってるなんて知りもせず・・・


マオ様は訓練場の端にあるベンチに腰掛けられ、後ろにはハリス団長が立っている。
羨ましいぜ!!


そうして始まったいつもの訓練だが全員が張り切りすぎていつもの半分の時間でメニューをこなした。
マオ様はそんな俺たちをみて、「すごーい」と拍手してくださっている。
訓練中なのでニヤけるわけにはいかず、唇を強くかみ眉間にシワを寄せてなんとか耐える。
ふと隣の団員を見ると同じ顔をしていた・・・


次は剣の打ち込みの訓練だ。二人ひと組になって撃ち合いをした後、リース殿に手合わせしていただく。
今までは大勢動いてる中の一人だったが、手合わせの時はマオ様の視界にしっかり入るはずだ!
つまりアピールタイム到来である。

が・・・ことごとくリース殿に打ち負かされる。
いつものことなんだが。


そうしてヘロヘロになり今日の訓練が終了した。

終了の合図とともにマオ様がリース殿に駆け寄って行かれ抱きついている。
今日何度目かの羨ましいという呟き・・・。


マオ様はリース殿が持っていた剣に興味がおありのようで持たせて欲しいと懇願している。
持つだけで振ってはいけないとリース殿と約束され、いざ持ち上げようと・・・されて・・・いるのだが。

一向に持ち上がらない。どうしたのかと思いよく見てみると、腕がプルプル震えていらっしゃる。
持ち上げないのではなく、持ち上がらないのだ。

マオ様は悔しそうにされていたがそのお姿がまた可愛らしい。



最後はリース殿に抱っこされて帰って行かれたが、我々にこっそりと手を振ってくださった。
もちろん全力で振り返しました。肩が外れるんじゃないかと言うほどに。



後日、前回と同じ時間でメニューをこなせと言われた時は全員の顔が引き攣っていたのだった。













新作「ひとりでこっそり暮らしていた僕はクマ獣人と幸せになります」をアップしました。
読んでくださると嬉しいです。
感想もお待ちしています。



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