41 / 62
マオが傷つけられた
しおりを挟むリースside
どうしてこうなった。
どうしてこんなにマオが泣かなくちゃいけねぇんだ。
俺はマオを守ると誓ったはずなのに。
俺の腕の中で泣きじゃくった末に気を失うように眠ったマオを抱き締めながらマオの側を離れたことを後悔する。
今日はマオの初仕事の日。
俺も騎士団での指導が始まる。
朝緊張したマオと朝食を食べ、ダンを補佐とすることを説明しそれぞれの職場へと向かった。
騎士団での剣術を指導している間もマオのことは心配だったが、俺は自分に与えられた仕事をこなそうと頑張った。
さすが騎士団。普段からよく鍛えられている。
しかし実戦の経験が少ないのか、臨機応変な対応ができていない。
不意打ちなどを仕掛けながら指導していく。
そして昼になり、一旦城の部屋に戻った。
昼食を準備してもらいマオを待っていると、満足げな表情をしたマオが帰ってきた。
どうやら初仕事はうまくいったようだな。
マオは俺が部屋にいることに驚いていたが、会えて嬉しいと言ってくれた。
会いたいと思っていたのが自分だけじゃなくて良かった。
わずか3時間だがやはり離れていると落ち着かない。常に俺の目の届くところにいねぇと不安だ。
そんな思いを抱えながらも渋々午後の仕事を再開するため再び騎士団の訓練場へと向かった。
午前と同じように指導しているとマオ付きの護衛が此方に走ってきた。
なんだ?何かあったのか??
嫌な予感がする。
「リース殿。ご報告があります。先程、ウィリアム王子がマオ様の部屋を訪ねて来られて、相談事があるとのことで2人きりにしてほしいと言われたのです。もちろんずっと部屋の外で待機しておりましたが暫く経っても出てこられず、扉をノックしても反応がないのです。我々が王子の命令に背いて部屋に入ることはできず、困っております」
「なんだと?あのクソおう…殿下はマオに求婚したことがあるんだぞ!そんなヤツと2人きりにしちゃ危ねぇじゃねぇか!!」
マオの身に何か起こっているかもしれない。
想像するだけで腸が煮えくり返りそうだ。
マオに指1本でも触れてみろ、地獄を見せてやる。
全速力で部屋まで戻ると、エルマとハリスが扉の前で右往左往している。
入りたいけど入れない。そんな状況だ。
俺はそんな状況なんか無視して部屋に入った。
テーブルにお茶や菓子が置かれているがマオの姿がない。
そのとき、わずかにマオの声が聞こえた。
寝室からか!?
慌てて寝室の扉を開けると、そこには…
服を脱がされ、泣きじゃくりながら上から押さえつけられているマオの姿が…。
俺の怒りは頂点に達し、相手が王族だとかそんなこと考える余裕もなく思いきり殴り飛ばした。
クソ王子は壁に頭をぶつけ気を失った。
俺は真っ先にマオに駆け寄り震える身体を抱き締めた。
マオは必死に何かを言おうとしているが、嗚咽でまともに喋れていない。
俺はすぐに助けてやれなかったことを詫びながら背中を擦る。
泣きじゃくるマオを抱き締めてどれほど経っただろう。だんだんと泣き声が小さくなりマオは気を失うように寝てしまった。
その間にクソ王子は護衛に運ばれていき、治癒師が呼ばれた。
マオには俺の上着を被せ寝台に寝かせた。
治癒師の診断結果は、両手首をきつく押さえられたことによる鬱血痕と、薬物の使用の疑いがあるとのことだった。
治癒師が王子が持参した焼き菓子を調べると、痺れ薬と媚薬が混入されていたことがわかった。
自分より遥かに体格のよい男に押さえつけられ、尚且つ痺れている身体ではろくに抵抗も出来なかっただろう。
大声をだしたくても出せなかったはずだ。
マオが感じたであろう恐怖を考えると、怒りと後悔が押し寄せ、俺は爪がめり込み血が流れるのも構わず拳を強く握った。
薬の後悔が切れるまでは目を覚まさない方がいいだろうと、マオには鎮静剤が打たれた。
今日はもう目を覚まさないだろう。
俺は仕事を抜けてきたが到底戻ることはできない。
マオが目を覚ますまでずっと側にいる。
クソ王子のことは後で陛下に相談しよう。
マオを傷つけてただでは済ませない。
地獄を見せてやる。
それより心配なのはマオが目を覚ましたときだ。
おそらくパニックになるだろう。
自分を責めなければいいが。
もう決して離れたりしない。
53
お気に入りに追加
2,497
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる