38 / 62
初仕事
しおりを挟む僕、エルマさん、ダンさん、そして護衛のハリスさんと王都の教会に向かう。
教会はお城の隣にあるって聞いたからすぐにつくと思ってたんだけど、お城の敷地自体がすごーく広いから、馬車で行くんだって。
30分くらい馬車に乗ってようやく着いた教会には患者がたくさん来ていた。
僕はフードを被り、教会の裏口からこっそり中に入った。お披露目されて僕の顔が知られてるから騒動が起きないようにだって。
別に普通に正面から入っても何も起こらないと思うんだけど、それをダンさんに言ったらマオ君は甘すぎですって怒られちゃった。
なんで??
教会に入ると、神父さん?みたいなお爺ちゃんが出てきた。
ここの責任者らしい。
「お初にお目にかかります黒の君。私はここの責任者をしております、ジョアンと申します。」
人の良さそうな笑みを浮かべながら挨拶をしてくれたので、僕も今日からお世話になりますと頭を下げた。
するとすっごいビックリされて、私などに頭を下げられないでくださいって言われた。
なんで?年上の人にはちゃんと挨拶するのがマナーだよね?
よくわからないけど、僕の仕事は単純で、聖属性の治癒魔法を使ってひたすら患者を治していくこと。
ここで働いている人たちは大きく2つの組織に別れていて、教会で祈りを捧げたり、魔力玉を生成し受け渡したりする所謂、神父さん。
それと治療を専門にしている治癒師さん。
ちなみにジョアンさんは、その2つの組織を統括してるらしい。
今回僕がお世話になるのは治癒師の皆さんだ。
治癒師の皆さんは光属性では治療に限界があるので、点滴や縫合、包帯を巻いたりと医療的技術を持っている。
もちろん僕にはそんな技術は無いので、手っ取り早く魔法でちゃっちゃと治してしまおうと言うわけ!
「黒の君に治していただく患者は私が選定いたします。軽い怪我の者はここの治癒師でも治療可能ですからね。」
ジョアンさんに一通りの説明を受けて、いよいよ僕の仕事開始だ!
僕だけの診察室が用意されて、そこに来る患者を待つ。
さすがにフードを被ったままでは怪しすぎるので、素顔を晒している。
そわそわしながら待っているとドアがノックされて、患者が担架で運ばれてきた。
腹部に深く刃物が刺さり、かなり出血していて意識が朦朧としている。
「この者は冒険者です。魔獣と闘っている際に投げたナイフが弾き返され腹部に刺さってしまった様です。かなり出血しており危険な状況です。黒の君お願いできますか?」
ジョアンさんに怪我の状況を教えてもらい、多量の血に動揺してしまったけど、一刻を争う状況なため悠長なことを言ってられない。
「すぐに治療を開始します!」
意識を集中させて、手の平に魔力を集める。
どうかこの人を助けてください。
心の中で祈りながら、魔力を傷口に当てながらゆっくりナイフを引き抜く。
そして、完全にナイフが抜けたとき出血はとまり傷口もキレイに治っていた。
青白かった患者の顔にも血色が戻っている。
「よし!これで大丈夫です。あとは患者の意識が完全に戻るのを待ちましょう」
初めての患者を無事に治せて安堵していると、ジョアンさんが身体を震わせて泣いている。
「え??ジョアンさんどうしたんですか!?」
「すっすばらしい。陛下よりお話は聞いておりましたがこれ程とは…」
見てみればジョアンさんだけでなく、エルマさんとハリスさんも口を開けて驚いている。
ダンさんは僕の治癒魔法を知ってるからニッコリ笑ってるけど。
「しかし、このような高度な魔法をお使いになっては魔力の消耗は激しいのではないですか?今日はもうお休みになられたほうが…」
ジョアンさんが心配してくれてるけど、魔力が無限の僕には魔力切れという心配はないから大丈夫だ。
でも正直にその事を話すわけにはいかずどうしようかと思っていると、
「マオ様は魔力が多く、使い方も大変お上手なのですよ」
っとダンさんが助けてくれた。
ダンさんにマオ様と呼ばれるのは慣れないけど、人前では仕方ない。
「さすが黒の君でございますね」
ジョアンさんが褒めてくれるけど正直に言えばただ魔力を流しただけなので、そんなに褒められると困ってしまう。
そんなやり取りをしているうちに意識を取り戻した患者は自分の身体に傷ひとつないことに驚いていたが、ジョアンさんが事の経緯を説明すると、僕に何度も頭を下げてお礼を言ってくれた。
元気になって帰っていく患者を見送り、その日は他に3人治して僕の初出勤は終了した。
84
お気に入りに追加
2,498
あなたにおすすめの小説
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる