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安心する温もり

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なんだか暖かい。それにこの匂い、嗅いだことある落ち着く匂いだ。
僕はどうしたんだっけ?確かトイレに行って、そこで…そこで……そこ…で…
「うわあぁぁぁ!!!」

僕はトイレでの出来事を思いだし飛び起きた。いや、飛び起きようとした。身体を何かにガッチリとホールドされていて、起き上がれない。

「マオ!起きたか!?よかった。心配したんだぜ」

ホールドの正体はリースさんの胸と両腕だった。
どうやら僕は執務室と扉続きになっている仮眠室に寝ているみたい。リースさんと一緒にね。

「あの、ぼく、トイレで、そのっ…」

トイレで起きたことを何とか説明しようとするけど、その時の恐怖がぶり返し、ガクガクと身体が震えてしまう。

「大丈夫だマオ。もうあいつはいねぇし、マオの前に現れることは二度とねぇから。それより、すまなかった。俺がもっと早くに異変に気づいていれば、マオをあんな目に合わせなかったのによ。」

リースさんは僕を抱き締めたまま、苦しそうに謝った。そして、あの後のことを教えてくれた。
僕はトイレで気を失い、この仮眠室に運ばれた。シャツは破かれていたため、ダンさんが近くの店で僕が着れるシャツを買ってきてくれたらしい。
リースさんが僕の服を着替えさせているときに、肩に掴まれたようなアザと、首筋に噛み跡があることと、左の乳首が赤く腫れ上がっているのを発見したらしい。

肩のアザと首筋の噛み跡は、ダンさんが魔法で治癒してくれたらしく、跡形もなくキレイに治っている。
乳首は他の男に見られるのをリースさんが我慢ならなかったらしく、魔法は使わなかったらしい。
でも、痛み止めと炎症止めの効果がある軟膏をリースさんが乳首に塗ってくれたらしいから、痛みはあまりない。

「勝手に魔法を使ってしまったが、意識がない方が苦しまずに済むと思ってな」

「そうなんですね。治してくださりありがとうございます。あの…、男の人はどうなったんですか?」

起きてから、あの男の人はどうなったのか気になってたから、思いきって聞いてみたんだ。そしたら、リースさんの顔が般若のような顔つきに変わり

「あいつの冒険者としての資格は剥奪した。一旦剥奪されるとこの国では再登録はできねぇし、そんなやつを雇うところもねぇ。あいつは国を出ていくしか道はねぇよ。だから、安心しろ。あいつに会うことは二度とねぇからな」

それを聞いて僕は安心した。まだこの街にいるなら、どこかで再会しちゃうかもしれないという恐怖があったんだ。

ほっとした僕を見て、リースさんが真剣な表情になった。どうしたんだろうと思っていると

「二度とマオを危険な目には逢わせねぇ。マオが襲われているのを見た瞬間、俺は目の前が真っ赤に染まったんだ。マオに触れているあの腕を切り落としてやろうとさえ思った。
だが、震えて苦しそうなマオ見てあいつのことよりもまずはマオを安心させてやらねぇといけないって思ったんだ。だが今後マオに手出ししようとする奴には手加減しねぇ。俺がマオを守り抜くと誓う。だから、マオも俺から決して離れるな。もし離れようとしたら、俺はマオを閉じ込めてでもそれを阻止する」

リースさんの気持ちや、決意を聞いて正直、なんで僕なんかのためにそこまでしてくれるのか分からなかった。まだ出会って1日なのに。でも、僕のことを大切に想ってくれているのは伝わり、じんわりと心が暖かくなった。
閉じ込めるとか、ちょっと物騒な言葉も聞こえたけど、大袈裟に言ってるだけだよね。
第一、僕はまだこの世界について何も知らないし、リースさんの助けがないと生きていけない。そんな状況でリースさんから離れられるわけないのに。

でも、いつかはリースさんから離れて自立しなきゃね。
そんなことを考えていると胸の辺りがズキッと痛んだ。なんだろうこの気持ち。








それから、もうしばらく身体を休めて僕はリースさんに抱っこされて、おうちに帰宅した。

「あいつに触れられたところを早くキレイにしたほうがいい」
と言われ、帰宅後すぐにお風呂に入った。湯がかかった瞬間、乳首がヒリヒリしたけど、我慢して洗った。

お風呂から出ると、昨日と同じようにリースさんのシャツが置いてあった。それと僕用のボクサーパンツのような下着。これはきっと今日の朝、リースさんが街で買ってきてくれた物だろう。でも、パジャマは売ってなかったのかなぁ。
まぁ、シャツを貸して貰えるだけ有り難いよね。


リビングに戻るとリースさんは夕食の準備をしていた。
「リースさん!下着ありがとうございます。それと、このシャツまた借りちゃっていいんですか?」

「あぁ、むしろそれを着ててくれたほうが俺は嬉しいからな。嫌じゃなければ、寝るときはこれからずっと俺のシャツを着てくれ」

リースさんのシャツを僕が着てたら何かいいことあるのかなぁ?不思議に思ったけど、有り難くお借りしよう。

「わかりました。お言葉に甘えてシャツお借りしますね。あと、僕も何か手伝います。足の怪我も治りましたし」

「手伝ってくれるのか?だが今日は色々あって疲れてるんじゃないのか?無理はしなくていいんだからな?」

「大丈夫です。それに何かしてたほうが、あの時のことを思い出さなくてすみますし」

「……そうか。わかった。じゃあこっちの野菜を切ってくれるか?」

「わかりました!任せてください」

キッチン台のまな板で野菜を切ろうとして、僕は気がついた。
見えない。そう見えないの。キッチンの位置が高すぎて背の低い僕には手元が見えないの。

ショックを受けていると、後ろからリースさんの笑い声が聞こえる。
「くくくっ、マオは何でこんなに可愛いんだろうな。キッチンは高すぎるし、その包丁も大きすぎるだろ?料理は俺に任せて、テーブルの上を拭いてくれるか?」

「……わかりました。お役に立てずすいません。」

「俺はマオがいないと楽しくねぇからな。マオの存在自体が、俺の役に立ってるぜ」

僕の頭をポンポンしながらリースさんはそう言ってくれた。むぅ精進します。

僕の今日の初仕事!テーブルふきふきを終えて、料理が出来上がるのを待つ。ちなみに布巾を塗らそうとシンクに手を伸ばすも蛇口に届かず、リースさんが塗らして絞ってくれた。

明日からは頑張るもん!!







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