美少年は異世界でヤンデレに囲われます

ダンside

私の名前はダン。ヴェルディの冒険者ギルドでギルマス補佐をしています。

ギルマスはもともとはS級冒険者だったのですが、前ギルドマスターが退職するときに、ギルマスになって欲しいと頼み込まれ渋々引き受けられたのです。
ギルマスになっていなければ今もS級冒険者としてあちこちで大活躍していたことでしょう。

元々身体を動かすことが性に合っていたギルマスにとって、執務室で大量の書類作業をするのはストレスが溜まることでしょう。
最近は街の西側で魔獣が確認されたこともあり、特に忙しかったのです。
なので、私はギルマスに気分転換に草原でも散歩してきてはどうかと提案しました。
ギルマスも、身体を動かしたかったようで、すぐに出掛けられた。

それから私は書類仕事をしながらギルマスの帰りを待っていたのですが、夕方を過ぎても帰ってこられませんでした。まぁ、ギルマスは元S級冒険者ですから魔獣や賊に簡単にやられるようなお人ではありません。なにか急用が出来て、そのまま帰宅されたのでしょう。明日の朝、ギルマスに聞いてみましょう。


そして、翌朝、いつもの時間になってもギルマスが出勤して来られません。やはり昨日何かあったのでしょうか。私は心配になりギルマスの家に向かいました。

玄関のドアをノックしても返事はなく、しばらく玄関前で佇んでいましたが家からは人の気配がありません。失礼かとは思いましたが、玄関横にある窓からそっと中を覗いてみました。

すると、中からも同じように私を見ている少年がいるではありませんか！
しかも、今まで1度もみたことのない黒目黒髪、さらにこの世のものとは思えないほど整った顔。
私は驚きすぎて数秒間フリーズしてしまいました。
今思えば、そのときの私の態度が彼を怯えさせてしまったと反省しております。

少年も、私を見てビックリした様子ですぐに窓枠から姿を消してしまいました。
いったいどうしましょう。ギルマスに同居人がいるなんて話聞いたこともありませんし、不法侵入にもみえません。ここは、ギルマスが帰ってくるまで待つのが先決でしょう。
そう考えを巡らせているうちに、ギルマスが帰ってこられました。

「ん？ダンじゃねぇか。どうしたんだ？」

「ギルマス！どうしたではありませんよ。昨日散歩から帰ってこられず、今朝もギルドに出勤されなくて心配で様子を見に来たのですよ」

「あぁ、そういえばちゃんと連絡していなかったな。すまんすまん。まぁ詳しいことは中で話すから入ってくれ」

「わかりました。ところでギルマス、中にいる少年は「マオ、どうしたんだ！？」」

ギルマスが玄関を開けて家の中に入ると、先ほど見た少年がソファーの下で頭を抱えて蹲っているではありませんか。
ギルマスはすぐに少年に駆け寄り抱き上げて背中を擦っています。

「あっあの、知らない人が入ってきたと思って、僕怖くて…」

あぁ、私が怖がらせてしまったのですね、これは申し訳ないことをしました。

その後、ギルマスが少年に私のことを紹介してくださり、私の不審者疑惑は晴れました。

少年は怯えていた私に対して丁寧に自己紹介をしてくれました。少年の名前はマオ君。近くで見ると、かなり小柄なのがわかります。

すぐにギルマスにマオ君のことを問いただしたい気持ちでしたが、本人を前にそんなことは言えずギルマスが時間を作ってくれるのを待つことにしました。
どうやらギルマスは街にマオ君の服を買いに行かれていたようで、手には大きな紙袋を抱えていました。確かにギルマスの家に子供用の服があるとは思えませんしね。

マオ君が落ち着いてから、買ってきた服を着るように促し、仕事の話をするからと、私とギルマスは2階の部屋に移動しました。

さぁ、ギルマス！マオ君のことをちゃんと聞かせてもらいますよ！









一話に収まりきれず、次回もダン視点です。