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11、猫の手ならあるのですが
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この時、私は黒一色の尼僧服を纏っておりました。
ベールを外していた姿は、『庭園を見に来たお嬢さん』ではなく、『下働きの女』に見えてもおかしくなかったのでしょう。
私を宮殿近くに引っ張ってきた女の人――ハンナさんに、私は自分の事情を説明しました。
怯えや驚きで声がうまく出ず、『頼まれた書類を届けに来た』ということしか伝わりませんでしたが・・・・・・。
そんな私の申し開きを聞いたハンナさんは――
「何だい、あんたは今日からの新人かい!? じゃあ、これを付けておきな!」
と、私に白いエプロンとブローチを渡してくれました。
ブローチには国の象徴である鷲が彫られていて・・・・・・これは、王宮に勤める庶民が付ける物だそうです。
これを付けていると、宮殿にも入ることができるそうですが・・・・・・そんな大事なものを、素性の知らない女に渡しても大丈夫でしょうか?
「どいつもこいつも、すーぐ男ひっかけてやめやがって!」
私は、ハンナさんの言葉を聞きながら、干されているシーツを取り込んでいました。
「王様が若い女に入れ込んだせいで、この国は駄目になっちまった」
宮殿から少し離れているとはいえ、同じ敷地内・・・・・・このようなことを大声で言っていて、大丈夫なのでしょうか?
「あの王妃様は、贅沢と男侍らすことしかできない愚かな女だよ・・・・・・使用人達の質も、すっかり下がっちゃってさぁ」
ハンナさんは、王宮で長きに渡って洗濯番を務めてきたそうです。
でも、近年の王宮騎士は、見た目を第一に採用されることが多く、洗濯係の女中達も騎士達に夢中になって仕事を放棄することが多いと嘆いておられました。
そんな事情もあって、誰でもいいから新しい女中を募集していたようです。
「おや、もう終わったのかい? 人手があると助かるねぇ」
かなりの量のシーツでしたが、ハンナさんと二人で取り込み、仕分けることができました。
やはり、洗濯番として経験を積まれてきた方・・・・・・口の何倍も手が早いです。
このような方が屋敷の使用人にいてくれたら、心強いのでしょうね。
「じゃあ、これを運んでくれ」
「は、はい・・・・・・?」
私は宮殿を歩いたことが無いのですが・・・・・・『歩いて覚えてこい』と、背中を叩かれてしまいました。
・・・・・・どうして、私は、このようなことになったのでしょう?
ただ旦那様に書類を届けに来ただけなのに、何故か洗濯女中となって宮殿を歩いています。
シーツの籠を抱えて、ハンナさんが書いてくれた地図を見ながら目的地を探します。
泊まり込みで務める使用人達の宿舎と、警備の騎士隊の詰所・・・・・・そんなに複雑な経路では無いようで、安心しました。
宮殿の内部は、外壁に負けずぴかぴかと輝いていて。
精巧な細工が施された壁や柱に、高級そうな調度品・・・・・・貴族の邸宅よりも、遙かに豪華な内装に圧倒されそうです。
そんな宮殿内を歩いている方々も、眩しく見えてしまいます。
貴族や騎士、正装した御令嬢・・・・・・私と同じようなエプロンを身に着けた使用人も、皆が凛々しい佇まいで・・・・・・。
そんな中で、ただ一人、潜り込んだ私は、自分がとてもみっともなく思えて・・・・・・洗濯籠で顔を隠しながら歩くことしかできませんでした。
幸いなことに、隅を歩く女中など、誰も気に留めることはありません。
「あ、あの、シーツを届けに・・・・・・」
「そこに置いて」
目的地に着いた時、どう声を掛けたものか緊張しましたが、向こうにとってはいつものことだったのでしょう。
示された場所にシーツの束を置き、私は足早に去りました。
「ああ、終わった・・・・・・」
予定通りにシーツを運ぶことができて、些か私の気分も明るくなっていました。
空になった籠は、私の心も体も軽くしてくれて――
「まあ」
少し弾んだ足取りでハンナさんの元へ帰ろうとしていた私は、見覚えのある後ろ姿を見つけて足を止めました。
ふわふわした金茶色の髪と、黒い騎士服――あれは、私の旦那様ではないでしょうか・・・・・・?
見つからないように、私は、咄嗟に柱の陰に隠れました。
旦那様は、封筒を小脇に抱えながら廊下を歩いておられて・・・・・・あれは、私が託した書類でしょうか?
無事に届いたようで安心いたしました。
今日の旦那様の後ろ姿は、以前のような危うさは無く、しっかりとした足取りで。
以前見た時には、お疲れが溜まっていたのでしょうか・・・・・・?
そのように、旦那様の後ろ姿をまじまじと見ていると、前方から飛び込んでくる影がありました。
「あ、危ない!」
私は思わず声を上げてしまいましたが、旦那様は後ろを振り向くことなく、その影を片手で受け止めました。
まったく揺らぐことのない後ろ姿・・・・・・さすが強い騎士様です。
旦那様に倒れてきた影は、ふんわりとしたドレスを着た、若いお嬢さんのようでした。
「大丈夫か?」
「あ、あの、気分が悪くなってしまって・・・・・・」
旦那様の問いに、女性は上擦った声で答えています。
遠目から分かる程に上気した頬に、荒い息・・・・・・大層お加減が悪いのでしょう。
「どこか、休憩できる場所に・・・・・・」
女性の頼みに、旦那様は、困ったように周囲を見渡します。
私達がいる廊下では、幾人かの人々が行き交っているのですが、皆様お忙しいのか、そそくさと立ち去って行きます。
旦那様一人で、女性の介抱は難しいのでしょう。
ああ、私が手助けせねば・・・・・・と思っても、足が竦んで動くことができません。
私は、何て不甲斐ない妻なんでしょうか・・・・・・。
「にゃぁ」
そんな私の目の前で、白い塊が動きました。
天啓のように、空から降るその塊は――旦那様の肩へと降り立ちました。
白くて小柄な猫・・・・・・私の知り合いの『ほうき星』です。
高い所から飛び降りるのが好きな猫で、幼い頃からその姿をよく見かけておりました。
今も、宮殿の柱に上って遊んでいたのでしょう。
「ああ、また猫か」
そんな『ほうき星』が肩に乗ろうとも、旦那様は平然としておられます。
対して、旦那様に掴まっていた女性の方は――
「ひぃやぁぁぁぁっ!」
とてつもなく大きな悲鳴を上げて、走って行かれてしまいました・・・・・・。
ドレスの裾を翻して疾走する姿を、皆様が目を丸くして見ています。
ああ・・・・・・猫が驚かせてしまって、申し訳ありません・・・・・・。
でも、走る元気が出たようで安心しました。
「お前、すごいな」
旦那様の方は、『ほうき星』の喉を撫でておられます。
固く結ばれた口元を開いて笑う姿――
ちらりと見えた横顔に、胸がきゅっとなって、私は柱の陰で蹲りました。
旦那様・・・・・・猫にも、あんなお優しいなんて・・・・・・。
私は、愚かにも、あの方なら私の体質も受け入れてくれるかもしれないと、浅ましい希望を抱いてしまったのです。
でも、こんな、醜い女が、お飾り妻以上の立場を望んではいけないのです・・・・・・。
柱の陰で思い悩む姿は、大層怪しく見えたのでしょう。
「君、何を・・・・・・」
「ひ、ご、ごめんなさぁい!」
知らない人に声を掛けられて、私はその場から逃げ出しました。
「おや、随分迷ったんだねぇ!」
帰って来た私を見て、ハンナさんは大きく口を開けて笑っていました。
申し訳ありません・・・・・・旦那様と猫を見ていました・・・・・・。
「まあ、あんたはよく働いてくれそうだし。明日からも頼むよ!」
「は、はい・・・・・・え?」
ベールを外していた姿は、『庭園を見に来たお嬢さん』ではなく、『下働きの女』に見えてもおかしくなかったのでしょう。
私を宮殿近くに引っ張ってきた女の人――ハンナさんに、私は自分の事情を説明しました。
怯えや驚きで声がうまく出ず、『頼まれた書類を届けに来た』ということしか伝わりませんでしたが・・・・・・。
そんな私の申し開きを聞いたハンナさんは――
「何だい、あんたは今日からの新人かい!? じゃあ、これを付けておきな!」
と、私に白いエプロンとブローチを渡してくれました。
ブローチには国の象徴である鷲が彫られていて・・・・・・これは、王宮に勤める庶民が付ける物だそうです。
これを付けていると、宮殿にも入ることができるそうですが・・・・・・そんな大事なものを、素性の知らない女に渡しても大丈夫でしょうか?
「どいつもこいつも、すーぐ男ひっかけてやめやがって!」
私は、ハンナさんの言葉を聞きながら、干されているシーツを取り込んでいました。
「王様が若い女に入れ込んだせいで、この国は駄目になっちまった」
宮殿から少し離れているとはいえ、同じ敷地内・・・・・・このようなことを大声で言っていて、大丈夫なのでしょうか?
「あの王妃様は、贅沢と男侍らすことしかできない愚かな女だよ・・・・・・使用人達の質も、すっかり下がっちゃってさぁ」
ハンナさんは、王宮で長きに渡って洗濯番を務めてきたそうです。
でも、近年の王宮騎士は、見た目を第一に採用されることが多く、洗濯係の女中達も騎士達に夢中になって仕事を放棄することが多いと嘆いておられました。
そんな事情もあって、誰でもいいから新しい女中を募集していたようです。
「おや、もう終わったのかい? 人手があると助かるねぇ」
かなりの量のシーツでしたが、ハンナさんと二人で取り込み、仕分けることができました。
やはり、洗濯番として経験を積まれてきた方・・・・・・口の何倍も手が早いです。
このような方が屋敷の使用人にいてくれたら、心強いのでしょうね。
「じゃあ、これを運んでくれ」
「は、はい・・・・・・?」
私は宮殿を歩いたことが無いのですが・・・・・・『歩いて覚えてこい』と、背中を叩かれてしまいました。
・・・・・・どうして、私は、このようなことになったのでしょう?
ただ旦那様に書類を届けに来ただけなのに、何故か洗濯女中となって宮殿を歩いています。
シーツの籠を抱えて、ハンナさんが書いてくれた地図を見ながら目的地を探します。
泊まり込みで務める使用人達の宿舎と、警備の騎士隊の詰所・・・・・・そんなに複雑な経路では無いようで、安心しました。
宮殿の内部は、外壁に負けずぴかぴかと輝いていて。
精巧な細工が施された壁や柱に、高級そうな調度品・・・・・・貴族の邸宅よりも、遙かに豪華な内装に圧倒されそうです。
そんな宮殿内を歩いている方々も、眩しく見えてしまいます。
貴族や騎士、正装した御令嬢・・・・・・私と同じようなエプロンを身に着けた使用人も、皆が凛々しい佇まいで・・・・・・。
そんな中で、ただ一人、潜り込んだ私は、自分がとてもみっともなく思えて・・・・・・洗濯籠で顔を隠しながら歩くことしかできませんでした。
幸いなことに、隅を歩く女中など、誰も気に留めることはありません。
「あ、あの、シーツを届けに・・・・・・」
「そこに置いて」
目的地に着いた時、どう声を掛けたものか緊張しましたが、向こうにとってはいつものことだったのでしょう。
示された場所にシーツの束を置き、私は足早に去りました。
「ああ、終わった・・・・・・」
予定通りにシーツを運ぶことができて、些か私の気分も明るくなっていました。
空になった籠は、私の心も体も軽くしてくれて――
「まあ」
少し弾んだ足取りでハンナさんの元へ帰ろうとしていた私は、見覚えのある後ろ姿を見つけて足を止めました。
ふわふわした金茶色の髪と、黒い騎士服――あれは、私の旦那様ではないでしょうか・・・・・・?
見つからないように、私は、咄嗟に柱の陰に隠れました。
旦那様は、封筒を小脇に抱えながら廊下を歩いておられて・・・・・・あれは、私が託した書類でしょうか?
無事に届いたようで安心いたしました。
今日の旦那様の後ろ姿は、以前のような危うさは無く、しっかりとした足取りで。
以前見た時には、お疲れが溜まっていたのでしょうか・・・・・・?
そのように、旦那様の後ろ姿をまじまじと見ていると、前方から飛び込んでくる影がありました。
「あ、危ない!」
私は思わず声を上げてしまいましたが、旦那様は後ろを振り向くことなく、その影を片手で受け止めました。
まったく揺らぐことのない後ろ姿・・・・・・さすが強い騎士様です。
旦那様に倒れてきた影は、ふんわりとしたドレスを着た、若いお嬢さんのようでした。
「大丈夫か?」
「あ、あの、気分が悪くなってしまって・・・・・・」
旦那様の問いに、女性は上擦った声で答えています。
遠目から分かる程に上気した頬に、荒い息・・・・・・大層お加減が悪いのでしょう。
「どこか、休憩できる場所に・・・・・・」
女性の頼みに、旦那様は、困ったように周囲を見渡します。
私達がいる廊下では、幾人かの人々が行き交っているのですが、皆様お忙しいのか、そそくさと立ち去って行きます。
旦那様一人で、女性の介抱は難しいのでしょう。
ああ、私が手助けせねば・・・・・・と思っても、足が竦んで動くことができません。
私は、何て不甲斐ない妻なんでしょうか・・・・・・。
「にゃぁ」
そんな私の目の前で、白い塊が動きました。
天啓のように、空から降るその塊は――旦那様の肩へと降り立ちました。
白くて小柄な猫・・・・・・私の知り合いの『ほうき星』です。
高い所から飛び降りるのが好きな猫で、幼い頃からその姿をよく見かけておりました。
今も、宮殿の柱に上って遊んでいたのでしょう。
「ああ、また猫か」
そんな『ほうき星』が肩に乗ろうとも、旦那様は平然としておられます。
対して、旦那様に掴まっていた女性の方は――
「ひぃやぁぁぁぁっ!」
とてつもなく大きな悲鳴を上げて、走って行かれてしまいました・・・・・・。
ドレスの裾を翻して疾走する姿を、皆様が目を丸くして見ています。
ああ・・・・・・猫が驚かせてしまって、申し訳ありません・・・・・・。
でも、走る元気が出たようで安心しました。
「お前、すごいな」
旦那様の方は、『ほうき星』の喉を撫でておられます。
固く結ばれた口元を開いて笑う姿――
ちらりと見えた横顔に、胸がきゅっとなって、私は柱の陰で蹲りました。
旦那様・・・・・・猫にも、あんなお優しいなんて・・・・・・。
私は、愚かにも、あの方なら私の体質も受け入れてくれるかもしれないと、浅ましい希望を抱いてしまったのです。
でも、こんな、醜い女が、お飾り妻以上の立場を望んではいけないのです・・・・・・。
柱の陰で思い悩む姿は、大層怪しく見えたのでしょう。
「君、何を・・・・・・」
「ひ、ご、ごめんなさぁい!」
知らない人に声を掛けられて、私はその場から逃げ出しました。
「おや、随分迷ったんだねぇ!」
帰って来た私を見て、ハンナさんは大きく口を開けて笑っていました。
申し訳ありません・・・・・・旦那様と猫を見ていました・・・・・・。
「まあ、あんたはよく働いてくれそうだし。明日からも頼むよ!」
「は、はい・・・・・・え?」
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※ 8/4 誤字修正しました。
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