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風が行く
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風が行く
薄く光に曇る薄い空を抜けて
翼を持たない私を連れていく
帰っていく燕の眼を借りて
静かな陽光を背に負って
離れていく大地を抱きしめるように
私はふたつの腕を伸ばす
そして風が止んだときには
私は追憶の中に在る
ささめくことのない叢の前で
言葉なく立ち尽くしている
それは黄金に垂れる稲の穂波
それは昼を溶かす茜の夕陽
それは水たまりを跳ねて帰る私
悍ましいほど鮮やかに
息をしない彼の日の影は
私を愛した郷里のそれだ
もう誰もいない死んだ町だ
匂わない花を嗅いで
味のない空を噛んで
触れないドアを開けて
風のない静かな幻は
しかしそれだけが私を慰めるのだ
心のままに泣き、笑い、怒り、許していた
幼い日々のあちら側で
涙が伝う
頬を滑り、顎のあたりで勢いをつけて
そうして大地に命を返す瞬間――
風が行く
落日の夢の空を切り裂くように
風が行く
薄く光に曇る薄い空を抜けて
翼を持たない私を連れていく
帰っていく燕の眼を借りて
静かな陽光を背に負って
離れていく大地を抱きしめるように
私はふたつの腕を伸ばす
そして風が止んだときには
私は追憶の中に在る
ささめくことのない叢の前で
言葉なく立ち尽くしている
それは黄金に垂れる稲の穂波
それは昼を溶かす茜の夕陽
それは水たまりを跳ねて帰る私
悍ましいほど鮮やかに
息をしない彼の日の影は
私を愛した郷里のそれだ
もう誰もいない死んだ町だ
匂わない花を嗅いで
味のない空を噛んで
触れないドアを開けて
風のない静かな幻は
しかしそれだけが私を慰めるのだ
心のままに泣き、笑い、怒り、許していた
幼い日々のあちら側で
涙が伝う
頬を滑り、顎のあたりで勢いをつけて
そうして大地に命を返す瞬間――
風が行く
落日の夢の空を切り裂くように
風が行く
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