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しおりを挟む王都のような主要な都市ほど大きくはなく、かといって閑散とした村ほどのどかでもない。
そんなほどほどに大きく賑やかな街――オグウェスの露店が並んだ通りの一角で、リンは人混みを抜けてからほっと人心地ついた。
オグウェスに来て数ヶ月。ここの通りを歩いている人数よりも人口の少ない小さな村で生まれたリンからすれば、まだまだ人の多さには慣れない。
(王様の住む王都はもっと人が多いって聞くものね……)
ああ、想像しただけで目眩がしてきそう。
寄りかかっていた壁から身を起こすと、ふとすぐそばの窓ガラスが目についた。
マントを羽織り、フードをすっぽりと被った自分の姿に、リンは「よし」と確認するように静かに頷く。
あまり厳重に隠しすぎてもかえって怪しく思われるので、かすかに顔立ちが確認できる程度がよい。
フードからわずかに流れた茶髪と、十代も後半にさしかかってシュッとした顎のライン。角度によって見え隠れする温かみのある橙の瞳は、溌剌さを思わせるようにパッチリと瞬いた。
それとなく目にかかる前髪を払い、リンは買い物を終えて重くなったバスケットを抱え直した。
(随分遠くに来たけど、あの村の人がここまで来ないとも限らないだろうし……)
万が一この街にいるとバレて騒がれては、また住める土地を探して幼い弟とともに長距離を歩かなくてはならない。
(フィンはまだそんな体力もないし、しばらくはここで静かに暮らしたいわね)
そのためには少しでも素性を隠しておくのが一番だ。保険はかけられるだけかけておくのがいい。
気を取り直したリンは、内心でよしと意気込みつつ背筋を伸ばして歩き出した。
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