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魔族領②
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会議室でしばらく待っていると、
先ほどの牛の様な見た目の男性とその他に、左から順番に羊の角が生えた男性と、ヘラジカの様な角を持つ女性。顔に鱗の生えた男性。合計4人の魔族が部屋に入って来る。
魔王曰く、北から南までの地区を管轄している軍の部隊長との事。
西の部隊長はシーズンの対応中で不在にしているらしい。
狭くは無い会議室だったけれど、初めて見る私の存在に部隊長たちは訝しげだ。
あ、圧がすごい。
流石部隊長と言うべきか、威圧感がある。
その点に置いてはこの魔王、悪人顔ではあるがそこまでの威厳は感じないというかなんというか・・・・。
言っては悪いけれど小物感が否めないのよね。
私の考えを他所に、全員が集まったことを確認した魔王は口を開いた。
「忙しい所集まってもらってすまない。思いがけない収穫があってな
人間領の聖女が魔物大量発生事件の調査に協力してくれるらしい。そうだろう?」
にたりと悪人顔をこちらに向けながら魔王が言う。
(助けたお礼とか言って無理やりだったじゃない!)
恨みがましく視線を返すが、私自身、勝手に魔物大量発生の冤罪を掛けられた事には気が済まないでいた。
それに、現在の人間領が心配でもある。
4人の魔族は「聖女が?」「まさか、人間か?」などと小声で囁き顔を見合わせていた。
私が初めてこれだけの人数の魔族に出会ったのと同じように、彼らも初めて人間を目にしたのだ、その反応も仕方がないのかもしれない。
とは言え、物珍しそうな顔でまじまじと見つめられると居心地が悪い。
「えっと、人間領から来ました。聖女のリリアナです。・・・調査に協力するのは、今回の事件の主犯として冤罪を掛けられたからであって、それ以上でも以下でもありません」
ツンと顔を上げて言い切ると、魔王は楽し気にくつくつと笑った。
こいつ、人の気も知らないで!
その様子を見ていた牛の様な角を持つ男性がゴホンと咳払い1つした後、話始める
「一先ず、自己紹介をいたしましょう。私はセバスチャン。参謀です。皆さんから収集した情報を解析・分析して皆さんに共有するのが私の仕事です。何かあればまず私に報告を。
そして、左から北の部隊長ネージュさん、東の部隊長ロザンナさん、南の部隊長ダレンさんです
人間の方を見るのは皆さんこれが初めてでして・・・失礼を働いてしまうかもしれませんが、どうかご容赦を」
じろじろと私を見ていた事への謝罪なのか、セバスチャンは深々と頭を下げた。
羊っぽいのがネージュさん、ヘラジカがロザンナさん、鱗の生えたのがダレンさんというらしい。
3人とも「よろしく」の短い言葉だけでどうにも仲良くなれそうな雰囲気ではない。気を使ったセバスチャンが、「皆さん人見知りなんです」と困ったように言った。
「それで・・・魔物大量発生についてなのですが、皆さんから受け取った調査報告書によると、やはり人間領で魔物が発生しているとしか思えませんね」
山の様に積まれた調査報告書を手にセバスチャンは言った。
私としては人間領で魔物が発生しているだなんて俄かには信じられないが、あの大量の報告書を見るに本当の事なのかもしれない。
「となると、直接人間領に入って調べるしかないな」
セバスチャンの報告を聞いたダレンが重々しい雰囲気で呟く。
他の面々も何やら難しそうな顔をしていた。
事件の原因が人間領にあるのであれば真相を調べるには人間領に入るしかない。
しかし、人間領に入る事には何か問題があるらしく、セバスチャンは自らの角と耳を見ながら困ったように言った。
「我々はこの見た目ですから、魔族とすぐにバレてしまいますしね・・・」
ああ、なるほど。
人間領で調査するには彼らはあまりにも魔族としての特徴が強い。
人間に紛れて調査するのは不可能だろう。
その点で言えば、この隣にいる魔王は特に大した特徴が無いなあ。と思った。
角や獣の耳があるわけでもなく、ただ顔の良い男だ。先ほど感じた小物感もその為だろう。
魔族っぽくないのである。
「かと言って、俺が行くには人間の知識が無さすぎる。・・・そこで聖女様の出番という訳だ」
「わ、私ですか!!?」
確かに、人間だから怪しまれる事も無いし、人間領の一般常識も熟知している。
魔王の言葉に他の4人が「おお!」っと期待に満ちた視線を私に送って来る。
いや、あの。そんなに期待されても私、大したこと出来ないですよと言いたい。
聖女としての力も微々たるものと化して来ているし、追放されたし。
「私、追放されてるんですけれど」
キラキラとした視線から逃れるべく、徐々に後退していると、がしっと魔王に肩を握られる。
「何、魔法で容姿を多少いじれば問題ないだろう」
外堀を埋められた・・・。
もはや、私が人間領の調査をすることは確定事項らしい。
ガクッと肩を落とす私とは違い、嬉々とした様子で魔王は他の4人に言った。
「と、いう訳でしばらくこの聖女様と人間領に今回の事件の調査に行こうと思う。お前たちは引き続き、境界の魔物の討伐に専念してくれ」
「かしこまりました。こちら、通信魔道具となります。何か進歩があり次第、ご報告お待ちしております」
魔族領には通信魔道具なんて便利なものがあるらしい。腕時計の様な小型の装置を魔王に渡す セバスチャンの牛耳が嬉しそうに揺れている。
八方ふさがりの中、私と言う解決法が生まれて嬉しいのだろう。
私は全然うれしくないけれど。
「それから、魔王様、リリアナ様もお気をつけて。今回の事件、人為的なものの可能性もありますから」
かくして、私と魔王は人間領に調査に向かう事となった。
先ほどの牛の様な見た目の男性とその他に、左から順番に羊の角が生えた男性と、ヘラジカの様な角を持つ女性。顔に鱗の生えた男性。合計4人の魔族が部屋に入って来る。
魔王曰く、北から南までの地区を管轄している軍の部隊長との事。
西の部隊長はシーズンの対応中で不在にしているらしい。
狭くは無い会議室だったけれど、初めて見る私の存在に部隊長たちは訝しげだ。
あ、圧がすごい。
流石部隊長と言うべきか、威圧感がある。
その点に置いてはこの魔王、悪人顔ではあるがそこまでの威厳は感じないというかなんというか・・・・。
言っては悪いけれど小物感が否めないのよね。
私の考えを他所に、全員が集まったことを確認した魔王は口を開いた。
「忙しい所集まってもらってすまない。思いがけない収穫があってな
人間領の聖女が魔物大量発生事件の調査に協力してくれるらしい。そうだろう?」
にたりと悪人顔をこちらに向けながら魔王が言う。
(助けたお礼とか言って無理やりだったじゃない!)
恨みがましく視線を返すが、私自身、勝手に魔物大量発生の冤罪を掛けられた事には気が済まないでいた。
それに、現在の人間領が心配でもある。
4人の魔族は「聖女が?」「まさか、人間か?」などと小声で囁き顔を見合わせていた。
私が初めてこれだけの人数の魔族に出会ったのと同じように、彼らも初めて人間を目にしたのだ、その反応も仕方がないのかもしれない。
とは言え、物珍しそうな顔でまじまじと見つめられると居心地が悪い。
「えっと、人間領から来ました。聖女のリリアナです。・・・調査に協力するのは、今回の事件の主犯として冤罪を掛けられたからであって、それ以上でも以下でもありません」
ツンと顔を上げて言い切ると、魔王は楽し気にくつくつと笑った。
こいつ、人の気も知らないで!
その様子を見ていた牛の様な角を持つ男性がゴホンと咳払い1つした後、話始める
「一先ず、自己紹介をいたしましょう。私はセバスチャン。参謀です。皆さんから収集した情報を解析・分析して皆さんに共有するのが私の仕事です。何かあればまず私に報告を。
そして、左から北の部隊長ネージュさん、東の部隊長ロザンナさん、南の部隊長ダレンさんです
人間の方を見るのは皆さんこれが初めてでして・・・失礼を働いてしまうかもしれませんが、どうかご容赦を」
じろじろと私を見ていた事への謝罪なのか、セバスチャンは深々と頭を下げた。
羊っぽいのがネージュさん、ヘラジカがロザンナさん、鱗の生えたのがダレンさんというらしい。
3人とも「よろしく」の短い言葉だけでどうにも仲良くなれそうな雰囲気ではない。気を使ったセバスチャンが、「皆さん人見知りなんです」と困ったように言った。
「それで・・・魔物大量発生についてなのですが、皆さんから受け取った調査報告書によると、やはり人間領で魔物が発生しているとしか思えませんね」
山の様に積まれた調査報告書を手にセバスチャンは言った。
私としては人間領で魔物が発生しているだなんて俄かには信じられないが、あの大量の報告書を見るに本当の事なのかもしれない。
「となると、直接人間領に入って調べるしかないな」
セバスチャンの報告を聞いたダレンが重々しい雰囲気で呟く。
他の面々も何やら難しそうな顔をしていた。
事件の原因が人間領にあるのであれば真相を調べるには人間領に入るしかない。
しかし、人間領に入る事には何か問題があるらしく、セバスチャンは自らの角と耳を見ながら困ったように言った。
「我々はこの見た目ですから、魔族とすぐにバレてしまいますしね・・・」
ああ、なるほど。
人間領で調査するには彼らはあまりにも魔族としての特徴が強い。
人間に紛れて調査するのは不可能だろう。
その点で言えば、この隣にいる魔王は特に大した特徴が無いなあ。と思った。
角や獣の耳があるわけでもなく、ただ顔の良い男だ。先ほど感じた小物感もその為だろう。
魔族っぽくないのである。
「かと言って、俺が行くには人間の知識が無さすぎる。・・・そこで聖女様の出番という訳だ」
「わ、私ですか!!?」
確かに、人間だから怪しまれる事も無いし、人間領の一般常識も熟知している。
魔王の言葉に他の4人が「おお!」っと期待に満ちた視線を私に送って来る。
いや、あの。そんなに期待されても私、大したこと出来ないですよと言いたい。
聖女としての力も微々たるものと化して来ているし、追放されたし。
「私、追放されてるんですけれど」
キラキラとした視線から逃れるべく、徐々に後退していると、がしっと魔王に肩を握られる。
「何、魔法で容姿を多少いじれば問題ないだろう」
外堀を埋められた・・・。
もはや、私が人間領の調査をすることは確定事項らしい。
ガクッと肩を落とす私とは違い、嬉々とした様子で魔王は他の4人に言った。
「と、いう訳でしばらくこの聖女様と人間領に今回の事件の調査に行こうと思う。お前たちは引き続き、境界の魔物の討伐に専念してくれ」
「かしこまりました。こちら、通信魔道具となります。何か進歩があり次第、ご報告お待ちしております」
魔族領には通信魔道具なんて便利なものがあるらしい。腕時計の様な小型の装置を魔王に渡す セバスチャンの牛耳が嬉しそうに揺れている。
八方ふさがりの中、私と言う解決法が生まれて嬉しいのだろう。
私は全然うれしくないけれど。
「それから、魔王様、リリアナ様もお気をつけて。今回の事件、人為的なものの可能性もありますから」
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