上 下
3 / 4

魔物討伐

しおりを挟む
あれから数日後、私はむっとした顔で魔物に向かって攻撃魔法を放ちまくっていた。
先日のオカマコンテストの結果が未だ気に食わない訳では・・・無くも無い。

しかも、宿舎の殆どを吹き飛ばした結果、刑期が2年伸びた。
合計5年である。
淑女の私にとっての5年は長すぎる!
これじゃあ結婚も出来そうに無いじゃない!と憤っていることに間違いは無い。
けれど、私の怒りの矛先はそれだけでは無かった。

このオカマ三人は体だけじゃなくて頭も脳筋だったのである!
魔物には3つの種類があり、物理、魔法両方有効な魔物と、物理もしくは魔法のどれかが効きにくい魔物とがいる。

この国の人間は誰でも練習をすればそれなりに魔法を使う事が出来、魔法を学ぶ際、まずは教会でステータスを割り振る。
ステータスの割り振りによって、将来の職業が決まると言っても過言ではない。

物理的な攻撃力や防御力をを上げる身体強化。火・水・土・風からなる4大元素の魔法の威力を上げる魔力強化があり、将来就きたい職業によってステータスをバランスよく割り振っていく。
魔物討伐部隊で言うのであれば、様々な魔物と交戦する事を考慮して、前衛に立つ身体強化メインにステータスを振ったタンク、魔法・身体強化両方に優れた中衛剣士、後衛で魔法攻撃をする魔法使い。最低でも3種類のジョブが必要になって来る。

だと言うのにこの三人のオカマは揃いも揃って身体強化にステータスを全振りしていたのである!

初めてこの0部隊での魔物討伐依頼が入った際、どういうポジションで戦えばいいのか三人に尋ねたことがある。
自慢ではないが、学園での魔法実践の授業はトップの成績を残していた。前衛・中衛・後衛のどれでもやりきる自身がある。魔力量が多いので特に得意なのは後衛なのだけれど。
それは今は置いておくとして、

「そういえば、皆さんはいつもどのように魔物を討伐しているのか教えて貰っても良くって?」

と聞いた時、三人ともキョトンとした顔をしていたのが今も目に焼き付いている。
そしてそのキョトンとした顔のままアイリスは「作戦?そんなもの無いわよ」と言った。

「殴れば敵は死ぬ。以上よ」とジェシカはファイティングポーズを取る。

「いや!作戦くらい立てなさいよ!と言うか、まず何に置いても作戦でしょう!!?」

オカマ三人のあまりの脳筋っぷりに卒倒しそうになる。
何とか作戦を練ろうと提案するも、三人は気が乗らないと言った様子だった。

「でもねえ。私達、身体強化にステータス全振りしてるから」
「殴る以外に戦い方、無いのよねぇ」
「ねぇ」

「この脳筋どm・・・ゴホンゴホン」

いけない、私としたことが、思わずはしたない言葉使いになるところだったわ。
剣か盾の一つでも持てないのかと聞いてみたが、握力が強すぎて持ち手を握りつぶしてしまうとか。
と、まあ、こんな状態で作戦の一つも立てられそうにない。

物理攻撃が殆ど聞かないスライム状の魔物と戦う時今までどうしていたのかと尋ねた時、アイリスは悪ぶれた様子も無く、「元の形状が保てなくなるまで殴ってたわ」と言う。
スライムも物理攻撃が「効きにくい」だけで効かないわけでは無いらしい。
そうは言っても、そんな効率の悪い戦い方で良く今まで魔物討伐部隊を名乗れていたわね!と言いたくなったが、このオカマ達事、だい0部隊は月ごとに集計される部隊ごとの魔物討伐数のランキングは常に上位だと言うのだから世も末だ。

何とか私一人で作戦を立てようにも、何せオカマ三人全員前衛なのである。
必然的に私は中衛と後衛を兼業して魔法攻撃をする事となる。その為忙しい事この上ない。

「もうこうなったらヤケよ!!」

結局大した作戦も無く魔物討伐へ向かう事になった所で、冒頭の魔法を乱射している私に戻る訳なのだけれど。
群れを成してやって来る魔物に向かって一心不乱に魔法を放つ私に対して、前衛三人は私より圧倒的に少ない魔物を相手にしながらきゃきゃとはしゃいでいた。

「すごーい!!スライムが一瞬で木っ端みじんよ!」
「イザベラ、あんた結構やるわね」

ジェシカとアイリスが感嘆の声を漏らす。

「当然でしょ!フォーリー公爵家の女王様の名は伊達じゃないんだから!!」

だから貴方たちももうちょっと頑張ってよ!
と思いながら魔法を打ちまくる。
休むことなく攻撃魔法を打ち続けているものだから、流石の私でも徐々に魔力切れを起こし始めていた。
正直ちょっとキツイなと思っていると打ち損じた魔法攻撃が効きにくい魔物達が近づいてくる。

「!!」
「フン!!」

危ない!そう思った瞬間アイリスの巨体が私と魔物の間に滑り込み、魔物に拳を叩きこむ。
天高く吹き飛ばされた魔物は強かに体を打ち付けそして動かなくなった。

「イザベラに魔物は近づけさせないわよ」

危なかったわねと言いながらアイリスは私を見てバチンとウィンクを残して最前線へと戻っていく。
これがアイリスでなければ名シーンであっただろう。
それを見ていたモニカ達が魔物を殴り飛ばす手を止めてヒューヒュー!とヤジを飛ばし始める。

「格好いいわアイリス!」とモニカ、ジェシカが「あんたが男だったら惚れてたわ!!」と叫んでいる。
「ヤジを飛ばしてる暇があるなら働きなさいよ!」と私は二人に向かって叫ぶ。

叫んだついでに、中衛がいないんだから出来るだけ前衛で魔物を食い止めて貰わないと困るわ。と言う思いと今日一日で溜まった鬱憤を込めてモニカ達に軽く攻撃魔法を飛ばす。
流石私と言うべきか、攻撃魔法は当たるか当たらないかギリギリの所で着弾した。
二人は野太い声で「キャッ」と叫ぶと「酷いわ!イザベラ」「傷害罪で訴えてやるからね!」と叫んでいる。

「ちゃんと働かないからよ」

ツンと顎を上げながら返すと、二人はぐぬぬと拳を握りしめ、「今から勝負よ!沢山魔物を倒した方が勝ち。勝った方のいう事を何でも1つ聞くの」とモニカが叫ぶ。
いいじゃない。その勝負乗ってあげるわ。

「「乗った!!」」

と私とジェシカが叫ぶ。

「じゃあ、あたしは審査員をするわ」

とアイリスに審査員として倒した魔物の数を数えてもらう事になり、魔物討伐大会が開かれる事となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の娘、チョロインじゃん!

ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ? 乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……? 男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?  アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね? ざまぁされること必至じゃね? でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん! 「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」 余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた! え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ! 【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?

東京の人

くるみあるく
恋愛
BLなのかもしれませんし、そうでないかもしれません。 沖縄からたまたま東京に来ていた警官・矢上明信(やがみ・あきのぶ)は、悲鳴を聞きつけある女性を助けました、が、彼女は言いました。「私、男です」 あっけにとられる矢上に彼女いや彼は自分も沖縄の人間だと告げ、勤め先であるミックスバーの名刺を渡して立ち去りました。彼女いや彼は金城明生(きんじょう・あきお)という名前なのですが読み方を変えて‘あけみ’と名乗っています。同じ明の字を持つ同郷の矢上を、‘あけみさん’は「ノブさん」と親しく呼びました。 矢上はやがて上京の度に、彼女いや彼こと‘あけみさん’やミックスバーの面々と親しく交流するようになります。矢上自身はやくに妻と死に別れ、孤独を紛らわせる場を探していたのでした。 ところが矢上の中学生の息子が母親の遺品で化粧を始めるようになります。息子は小さな頃から女の子のものを欲しがることが多かったのです。今はなんとか保健室登校をしていますが、「高校へ行きたくない、制服を着たくない」と泣き叫びます。悩んだ矢上は‘あけみさん’に相談すると、彼女いや彼は自分の高校の女子服を譲ってもいいと申し出ます。 そして二人は制服の受け渡しのためデートをすることに。‘あけみさん’が男であることをわかっているのに胸の高鳴りをおぼえる自分に矢上は戸惑いを隠せなくて……。

蛮族の王子様 ~指先王子、女族長に婿入りする~

南野海風
恋愛
 聖国フロンサードの第四王子レインティエ・クスノ・フロンサード。十七歳。  とある理由から国に居づらくなった彼は、西に広がる霊海の森の先に住む|白蛇《エ・ラジャ》族の女族長に婿入りすることを決意する。  一方、森を隔てた向こうの|白蛇《エ・ラジャ》族。  女族長アーレ・エ・ラジャは、一年前に「我が夫にするための最高の男」を所望したことを思い出し、婿を迎えに行くべく動き出す。    こうして、本来なら出会うことのない、生まれも育ちもまったく違う一組の男女が出会う。 

わたし、性別偽ってオカマバーで働いてます

茶歩
恋愛
 何をするにも不器用な私、仙崎佳代(せんざきかよ)。 田舎を出て都会の大学を卒業した私は、田舎に帰って来いと言う両親の猛反対を押し切って、都会で就職しました。 自立していつか両親に認めてもらおうとしていた矢先、熱烈な後輩いびり&パワハラ&セクハラを受け、挙句果てに仕事でのミスを押し付けられ、心が折れてすぐに仕事を辞めてしまいました。 次の就職先もなかなか見つからず、実家に帰るわけにも行かず、途方に暮れていた私に手を伸ばしてくれたのは‥オカマバーのママだったのです‥。 はてさて、とりあえずの稼ぎどころとして、私も開き直りオカマとして生活していたのですが、困ったことに昔好きだった人がお店に来てしまったのです。 ‥そんな私の恋物語、どうぞご覧ください‥‥。

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

ダンジョン攻略の果てに!

アリズムン
ファンタジー
無限の魔力量を持つ召喚魔法士の少年──無月夜空。 時には気ままにダンジョン攻略を目指し、時には様々な人たちと出会い友好を深め、時にはめんどくさいトラブルに巻き込まれる……。 ──無月と相棒である使い魔、クリシ・フロラシオン・ヴィーテ・バハムートを筆頭に、11体の最強使い魔とダンジョン攻略の果てを目指す物語!! 面白い!続きが気になる!と思った方は、ぜひお気に入り登録などしていただければ、モチベーションに繋がりますので、よろしくお願いします。 カクヨム様にも投稿してます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

2度目も、きみと恋をする

たつみ
恋愛
伯爵令嬢のバーバラは幼い頃に子息の婚約者として引き取られ、公爵家で暮らしている。 十歳から未来予知のような夢を見始めるが、どうにも現実とそぐわない。 夢の中で彼女は別の男性と恋に落ち、婚約を解消していたからだ。 婚約者が大好きな彼女は、そんなことは絶対にあり得ないと思っている。 だが、婚姻の式4ヶ月前、夢で見ていた男性が現れてしまう。 彼女の恋の行き着く先は、婚約者かそれとも。     ◇◇◇◇◇ 設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 それを踏まえて、お読み頂ければと思います、なにとぞ。

処理中です...