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プロローグ
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「イザベラ・フォーリー公爵令嬢!君を伯爵令嬢暗殺未遂の罪で断罪する!!」
パーティー会場の中央で皇太子アレックスは高らかにそう宣言した。
アレックスの隣には件の伯爵令嬢、シンシャ・リーナスが怯えたようにアレックスにしな垂れかかっている。
そこは本来ならば婚約者である私、イザベラがいる筈の場所だ。
婚約者のいる殿方の胸に頬を寄せるだなんて、はしたないにも程がある。
普段の私なら手に持った扇子でシンシャの頬を張っていただろうに、柄にもなく今日は固まっていた。
私は思い出してしまった。
自身の前世が日本人だという事を。
前世の私は平凡な日本人だった。
毎日必死に働いて日銭を稼ぎ、趣味の読書に明け暮れるのが唯一の楽しみだった。
転生ものによくある、社畜だった・・・という訳でもなく、それなりに人生を謳歌していたと思う。結婚したいなと思う恋人だっていた。
なのに、ある雨の日に運悪く雷に打たれて死んでしまったのだ。
なんて不幸な・・・と思い返したところで「聞いているのか、イザベラ」と私を咎めるアレックスの声に、それどころでは無かったなと我に返った。
伯爵令嬢シンシャを暗殺しようとしたか。その答えは否である。けれども私に弁解する気はこれっぽっちも無い。
暗殺を疑われるくらいにはシンシャの事を苛めに苛め抜いた自信が私にはある。
けれども、これに関しては婚約者であるアレックスにも問題があったと言いたいところではある。
私という婚約者が居ながらアレックスは明らかにシンシャに敬慕していた。
パーティーのエスコートと最初のダンス以外はずっとシンシャを侍らせていたし、親し気な、恋文とも取れる文通をかなりの頻度で送りあっていたのも知っている。
シンシャもシンシャで断ればよいのに、まあ、困ってしまうわ。と口では婚約者がいる皇太子に言い寄られて迷惑していると言いながら、その顔には隠し切れない笑みが浮かんでいた。
その厚顔無恥な態度が私の気に障った。
記憶が戻った今では信じがたい事だが、イザベラはアレックスを深く愛していた。
9歳の社交デビューの際、アレックスを紹介された時、その太陽の様に輝く金髪金目にイザベラは一目で恋に落ちた。
父親に頼み込み、アレックスの婚約者に慣れた時は歓びのあまりベットの上を跳ね回ってメイドに叱られたのを覚えている。
しかし、前世の記憶が戻った今思う事は、アレックスって結構クズ男なのでは?という感情だけだった。
百年の恋も冷めてしまった今、アレックスに対してもシンシャに対しても呆れしか無い。
断罪?むしろこちらから破談にして差し上げるわ。と言った気持ちで「それが何か?」とアレックスの前で言ってのけた。
断罪と言っても所詮追放程度だろう。そう言えるだけの力が私にはあった。
イザベラは皇太子であるアレックスを凌ぐほどの魔力量を持つ魔法使いで、それが理由でアレックスとの婚約を許されていた。
ポッと出の伯爵令嬢とは格も質も違うのである。
仮に追放されたとしても社交界で手に入れた諸外国とのコネもあるし、イザベラほどの魔法使いはどの国でも引く手数多だ。
新しい国でやり直して、アレックスとは違う一途なイケメンでも見つけてやればいい。
私には圧倒的な余裕があった。
しかし、アレックスの一言でその余裕は儚く崩れることになった。
「イザベラには罰として、魔物討伐第0部隊の3年の兵役を命じる」
「ぜ0部隊!?」
0部隊とは何なのか。
誰もが知る、その部隊は厄介者のオカマ3人組で構成されたオカマ部隊なのである。
どうして0部隊と呼ばれているかと彼らに問えば、嬉々とした声でオカマのOよ!!と答えるだろう。
彼らの何が問題なのかと言うと、彼らは超が付くほどの恋愛脳で、配属された兵士が身の危険を感じて何度逃げ出したか分からない。
そんな0部隊に配属なんて!
「衛兵、隷属の腕輪を」
アレックスの言葉で衛兵が箱を持ってくる。中には銀色の腕輪が入っている。
この腕輪は刑期を終えるまで決して外れず、強制的に罪を償わせる魔法がかかった、本来であれば重罪人にしか使用されない腕輪だ。
何という念の入れ方だろう。
「そんな!隷属の腕輪だなんて!」
「イザベラの事だ。兵役を逃れるために亡命だってするだろうからな」
抵抗も空しく右腕にカシャリと腕輪が掛けられる。
「連れていけ」
かくて私は0部隊へ三年間身を投じる事となった。
パーティー会場の中央で皇太子アレックスは高らかにそう宣言した。
アレックスの隣には件の伯爵令嬢、シンシャ・リーナスが怯えたようにアレックスにしな垂れかかっている。
そこは本来ならば婚約者である私、イザベラがいる筈の場所だ。
婚約者のいる殿方の胸に頬を寄せるだなんて、はしたないにも程がある。
普段の私なら手に持った扇子でシンシャの頬を張っていただろうに、柄にもなく今日は固まっていた。
私は思い出してしまった。
自身の前世が日本人だという事を。
前世の私は平凡な日本人だった。
毎日必死に働いて日銭を稼ぎ、趣味の読書に明け暮れるのが唯一の楽しみだった。
転生ものによくある、社畜だった・・・という訳でもなく、それなりに人生を謳歌していたと思う。結婚したいなと思う恋人だっていた。
なのに、ある雨の日に運悪く雷に打たれて死んでしまったのだ。
なんて不幸な・・・と思い返したところで「聞いているのか、イザベラ」と私を咎めるアレックスの声に、それどころでは無かったなと我に返った。
伯爵令嬢シンシャを暗殺しようとしたか。その答えは否である。けれども私に弁解する気はこれっぽっちも無い。
暗殺を疑われるくらいにはシンシャの事を苛めに苛め抜いた自信が私にはある。
けれども、これに関しては婚約者であるアレックスにも問題があったと言いたいところではある。
私という婚約者が居ながらアレックスは明らかにシンシャに敬慕していた。
パーティーのエスコートと最初のダンス以外はずっとシンシャを侍らせていたし、親し気な、恋文とも取れる文通をかなりの頻度で送りあっていたのも知っている。
シンシャもシンシャで断ればよいのに、まあ、困ってしまうわ。と口では婚約者がいる皇太子に言い寄られて迷惑していると言いながら、その顔には隠し切れない笑みが浮かんでいた。
その厚顔無恥な態度が私の気に障った。
記憶が戻った今では信じがたい事だが、イザベラはアレックスを深く愛していた。
9歳の社交デビューの際、アレックスを紹介された時、その太陽の様に輝く金髪金目にイザベラは一目で恋に落ちた。
父親に頼み込み、アレックスの婚約者に慣れた時は歓びのあまりベットの上を跳ね回ってメイドに叱られたのを覚えている。
しかし、前世の記憶が戻った今思う事は、アレックスって結構クズ男なのでは?という感情だけだった。
百年の恋も冷めてしまった今、アレックスに対してもシンシャに対しても呆れしか無い。
断罪?むしろこちらから破談にして差し上げるわ。と言った気持ちで「それが何か?」とアレックスの前で言ってのけた。
断罪と言っても所詮追放程度だろう。そう言えるだけの力が私にはあった。
イザベラは皇太子であるアレックスを凌ぐほどの魔力量を持つ魔法使いで、それが理由でアレックスとの婚約を許されていた。
ポッと出の伯爵令嬢とは格も質も違うのである。
仮に追放されたとしても社交界で手に入れた諸外国とのコネもあるし、イザベラほどの魔法使いはどの国でも引く手数多だ。
新しい国でやり直して、アレックスとは違う一途なイケメンでも見つけてやればいい。
私には圧倒的な余裕があった。
しかし、アレックスの一言でその余裕は儚く崩れることになった。
「イザベラには罰として、魔物討伐第0部隊の3年の兵役を命じる」
「ぜ0部隊!?」
0部隊とは何なのか。
誰もが知る、その部隊は厄介者のオカマ3人組で構成されたオカマ部隊なのである。
どうして0部隊と呼ばれているかと彼らに問えば、嬉々とした声でオカマのOよ!!と答えるだろう。
彼らの何が問題なのかと言うと、彼らは超が付くほどの恋愛脳で、配属された兵士が身の危険を感じて何度逃げ出したか分からない。
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何という念の入れ方だろう。
「そんな!隷属の腕輪だなんて!」
「イザベラの事だ。兵役を逃れるために亡命だってするだろうからな」
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