呪いから始まる恋

めぐみ

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「私も…その覚悟で参りました。私が…彼らを火に放ったのです、詫びる言葉も見つかりません」

脳裏を子供達の姿がよぎって、目の奥が熱くなる。そんな時に王様の手が私の肩に乗せられた。

「顔を上げろ」

彼の指示通り顔を上げると彼は私の目線に合わせるようにかがみ込み、先ほどの冷淡な顔つきとは一変して両目から涙をこぼしていた。

「監視映像で貴様に罪がないことは分かっている…己の火傷を顧みず火に手を突っ込み、子供達を助けようとしたこともな」

「ですが…っ」

「子供たちを失ったばかりの男が…どうして弟と…その大事な女を手にかけられようか。貴様たちの罪は不問だ」

子供の話をした途端、先ほどの威厳はどこへ行ったのかと思うほどの弱々しい態度に言葉を詰まらせた。

「その代わり…愛する我が子のことを忘れることは許さん。永遠に…貴様らの魂に刻み込め」

「勿論です…忘れたりなどしません」

私は下唇を噛んで、助けられなかった無力感を噛み締めながらそう答えた。彼らと過ごしたあの日は私の心から消えることはないしそんなことする気はない。意地でも忘れたりするもんかと真っ直ぐ王様を見つめた。

「…確かに、私の知ってる人間とは違うようだ」

王様はそう言い残して私に背を向け、部屋を後にするのだった。無意識のうちに体が緊張していたのかその瞬間床にへたり込んでしまう。

「そういえばロックスさん…王様の弟だって…どういうことですか?」

「本当にすまなかった、いろいろと…驚かせてしまったな」

「…ロックスさんばっかり私のこと知ってるのに。私はロックスさんのこと全然知らなかったんですね」

私の様子を心配したロックスさんが私の目線に合わせてかがみ込むと、そんな彼をジロリと睨んだ。軽いノリの睨みとかではない。恋人なのに隠し事ばかりされて不安なのだ。こんなに大事なことをどうして今の今まで言ってくれなかったのだろう。私の言葉にロックスさんの体がピクリと強張るのが分かる。

「私…ロックスさんの彼女として頼りないですか?」

「そんなことない!全部俺が悪いんだ…本気で君を愛しているから、本当のことを伝えたら…俺のもとから去ってしまうんじゃないかと不安だったんだ」

珍しく慌てたような口調に加えしゅんと落ち込んだ姿に何も言えなくなる。体格のいい彼がいつもの半分くらいの大きさに感じた。

「今まで王族だと明かして辛い思いをしたことがあったんですか?」

「あぁ…でもそれは君に真実を伝えなかった言い訳にならない。俺が真実を隠してたことで…結局は君を傷つけてしまったしな」

「あぁもうそんなに落ち込まないでください。怒ってるのに怒る気失せちゃうじゃないですか」

ロックスさんを抱きしめるとポンポンとその背中を撫でた。王族という立場で常人には理解できない苦労があったのだろう。何も伝えてくれなかったのはロックスさんが悪いが頭ごなしに責めてしまった私も悪い。

「君は…本当に優しいな。このまま別れる、なんて言われても俺は文句さえ言えないのに。こんな俺を許してくれるなんて」

「まだ許してませんよ。だから…ロックスさんのこと…全部教えてください」

そう言うとロックスさんの手が私の背中に回ってゆっくりと抱き上げられる。そのまま室内につながるドアの向こうへと連れて行かれる。

「ひ、ひろ…」

そこは洗面所で、私の家の洗面所の3,4倍はありそうだ。さらに洗面台や床は大理石で、髪の毛の一本も落ちていない清潔感を保っていた。

「あ、あんな質素な家に入れてすみません」

あまりの自宅との差に恥ずかしくなる。うちだって一人暮らし用の家ではないのでそれなりの広いつもりではあったがこんなものを見せられては出てきた言葉は謝罪だった。ロックスさんは私を床に下ろして口元を緩めた。

「…そんなこと気にすることじゃない。俺は君の家のような落ち着く広さが性に合ってるしな。とりあえず風呂に浸かってゆっくり話さないか?」

ロックスさんのジャケットを脱いでネクタイを緩める動作にドキッとしてしまう。ゆっくり話さないかとは言うが正直ロックスさんの前で裸になるのは恥ずかしくて落ち着ける気がしない。しかしロックスさんはもくもくと脱いでいってワイシャツの中の薄手のシャツを脱ぐと上半身裸になった。逞しい肉体を直視できなくて咄嗟に背を向けて意を決して自分の服にも手をかける。
背後から聞こえるベルトを外す音がやけに耳に響いてそれを打ち消すようにワンピースを脱ぐ。そして下着だけの姿になると背後からロックスさんの影が近付いてぷつんとブラジャーのホックが外された。

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