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しおりを挟む放心状態のゲイルを家に連れ戻した瞬間、彼はやっと口を開いた。
「なんで戻ってきた」
そう言うゲイルの顔は見たこともないくらい歪んでいて、怒りを必死に抑えているようだった。
「俺はお前の幸せのためなら死んだって構わない、なのに…なんで、戻ってくるんだ。お前が戻ってくる理由なんて…俺の命を助けるためでしかないだろ」
その歪みは決壊していき、ボタボタと涙をこぼして床を濡らした。
「お前が本当の幸せを歩めないまま…っ、俺が生き延びてもしょうがねぇんだよ…俺を惨めな男にするなッ!」
そうやって、彼は私のこと…いっぱい悩んで考えてくれて。
涙を零す彼の頬を指で拭って彼に笑いかける。
「ここに戻ってきたのは…私にとってゲイルが1番大事だから、だよ。彼にも、大事な人ができたって…急いで謝って戻ってきたの」
ゲイルは自分の命が危ういと分かっていながら…私を逃して私の幸せを1番に考えてくれた。前の彼氏とゲイルとの間で揺れていた心はその言葉で気持ちを決定づけて…そしてあなたを好きになった。
「は…、え…?あの、恋人よりも…?」
ゲイルは私を信じられないと言う目で見つめた。そんな彼に信じてもらうよう手を握る。
「今は、ゲイルが私の恋人でしょ?」
「だって…っ、お前手紙読んだとき動揺しただろうッ!それがお前の本心じゃないのか?」
「確かに…動揺したよ、だって…彼がこんな風に駆け落ち覚悟で手紙を出してくれたのに…私はもうゲイルのこと好きになってしまったから…どうすればいいのか、戸惑って…」
そう言いかけた途中、ゲイルの腕が私を強く抱きしめて呼吸もままならない。
「ほ、んとに…俺を選んでくれるんだな」
「ん、私は…もう、ゲイルのものだよ」
鼻を啜る声がして背中を撫でると絞り出すような声で彼は言った。
「やっと…手に入れた。俺の愛しいヴァレリア」
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