失恋の特効薬

めぐみ

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失恋の特効薬

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「だって…ひくっ、ノア、は…ッ…わ、たし…っ、じゃなくて…ッ、アメリさんが好きなんでしょ?」

「は…?」

10年経った今でも彼女に囚われる姿、この村では珍しい黒髪、そしてずっとトラウマになっていたと言いながら…今日は笑顔で話し合っていた。
一度疑いの種が生まれるとそれは止まらなくてようやく治まったしゃっくりも相まって彼を傷つける言葉まで出てきてしまう。

「昔の彼女によく似た私がノアのこと好きになれば彼女が自分に戻ってきた気がするもんね。前の彼女では証明できなかったハーヴィルより自分の方がいいっていう証明にもな───」

そう言いかけたところでノアの拳が私の顔スレスレを過ぎってベッドの衝撃音と共にめり込んだ。そうして私を見下ろす瞳は鋭く光っており、見たことのない表情に怯んでしまう。

「俺の…この気持ちが別の女の代わりにしてるだって…?」

「あ、…」

今更ながらなんてことを言ってしまったのだと血の気が引くのを感じた。こんなに暴力的なまでに怒った彼は見たことがない。

「こんなにお前が好きで…いろいろと堪えた部分もあったっていうのに、ひでぇこと言うんだな?」

その怒気を含んだ声とは裏腹に私の頬を撫でる手が優しくてそれが逆に恐ろしかった。逃げるまもなくノアの体がのしかかって体を動かすことなんてできない。

「別にな、俺をバカにされようが、ハーヴィルの方がいいとか言われんのはいいんだよ。だけど…俺の…お前への気持ちを疑われんのは我慢ならねぇ…ッ」

ノアの手が私の手に重なってギュッと重ねられる。先ほど同様男を感じる力強さにいつもの優しい手つきは見る影もない。いつもどれだけ手加減されているかを思い知らされた。

「だって…ノアが寝言でアメリさんの名前呼んだりする…っ、から…っ、それに、あの…っ、ひと、黒髪…っ」

ノアの気迫に圧倒された私はまた涙が出てしまうが見つめ返して理由を話した。ノアの目が大きく見開かれて掴む腕の力が緩んでくる。

「名前…?俺が…、アイツの名前を?」

「うなされてた夜…」

「…………はぁ、アレか」

ノアは私の拙い言葉を汲んで、深くため息をついた。何か思い当たることがあるのか「アレか」という発言が気になる。

「そりゃ俺が悪いな…気持ちを疑われてもしょうがない」

「じゃあやっぱり…」

そう言いかけたところでノアの手が私の背中を起き上がらせて自分の膝の上に向かい合うように座らせた。

「いや…彼女にもう気持ちはない。それだけは嘘じゃないってはっきり言える。だが、とはいえナタリアに誤解を与えちまったのも事実だ。それは本当にすまない」

ノアが頭を下げて謝罪するものだから私は慌てて止めに入った。

「いや、私も言いすぎたし…限度があった」

「…まぁ確かにナタリアをアメリの代わりにするなんてお前の中の俺はひでぇ男だな?」

「の、ノアだって私に対して自分をハーヴィルの代わりにしろって言ったくせに」

「まぁ、それは…」

「今日だって病院に迎えに行こうとしたらアメリさんと仲良く話してるし…なんで?ノアのこと10年も縛り付けてたトラウマの原因なんでしょ?なんで笑って話せるの!?」

謝るつもりだったのについ熱が入って彼を追及してしまう。矢継ぎ早に問い詰める自分が良くないことも分かりながらも止めることができない。

「悔しい…私ならノアのこと傷付けたりしないのに…ノアはずっとあの人に囚われてるんだと思うと…っ、んむ」

ノアは私の俯いた顔を自分に向き合わせると唇を重ねた。無意味だと思っても胸を叩いてノアを押し除けようとする。無論力でノアに敵うはずもなく、そのまま舌を絡め取られた。相変わらずノアのキスは悔しいくらい気持ちよくて何も考えられなくなりそうになる。散々口内を舐められた挙句やっと唇が離れてぐったりとノアの胸に倒れ込んだ。

「病院…来てくれてたのか。俺のことで怒ってくれて…妬いてくれて…俺が思ってる以上にナタリアは俺のこと好きでいてくれたんだな」

こちらは怒ってるというのにノアの嬉しそうな声色に調子が狂う。上機嫌で私の頭を撫でて私が暴れても子猫でも相手にするように額や頬にキスを落とすのだ。

「ノアの意地悪…っ、浮気者ーっ!黒髪の元カノが忘れられないから私にちょっかいかけたくせに!」

「全くもって違うが何言っても可愛いだけだから黙ってたほうが身のためだぞ?」

「…っ!」

私の中で入ったままのノアが膨らんで膣奥へと押し込まれる。そうして私のお尻を掴んで持ち上げるとゆさゆさと私の体を上下に動かして抜き差しする。

「髪の色はほんとにたまたまだ。別にアメリと重ねるとか…そういうつもりは最初から全くない。」

「アッ…んゃ…ッ、うごか、ないで…っ、んぅううううううっ…だめ、なるの…ッ」

「病院の件は…気付いてやれなくてごめんな。アメリと再会するまでは…確かに俺はずっと彼女のことをトラウマになって囚われてた。だけど実際に会ったら…拍子抜けするくらい何も感じなくて…普通の友人として話すことができたんだ。何でかわかるか?」

ノアの問いかけに首を傾げるとノアを顔が近付いて軽い、本当に触れるだけのキスが落とされる。
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