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失恋の特効薬
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「ハーヴィル、待たせたなってどうしたんだナタリアに頭なんて下げて。」
そんな中ノアが寝室から戻ってきてハーヴィルに呼びかけた。いつも早朝過ぎて見ていなかったが動きやすいツナギを着たノアに見惚れてしまう。長身で手足が長いからツナギがよく映えている。
「従兄弟として兄貴を頼むって言ってたとこだよ」
「なんだそりゃ、俺ァ、ハーヴィルに心配されるほど恋愛に不慣れじゃねぇよ」
「…どうだかねぇ」
ハーヴィルはアイスティーを飲み干してソファから腰を上げた。そうして床に下ろしていた狩り道具を担ぐと足早に部屋から出ていった。二人きりになったリビングでノアがゆっくりと私に近付いて額にキスを落とした。
「ハーヴィルからなんか言われたのか?」
「えっ、いや…なんで?」
「眉間に深いシワ刻んじまってよ、難しい顔してる」
ノアの指が眉間に触れてそこでやっと自分の表情に気付く。ノアの昔の彼女が戻ってくる、それを思うと胸が不安でいっぱいになって俯いた。
「まだ…好きなのか?」
ノアの優しくも悲しげな声に勢いよく顔を上げてぶんぶんと首を振った。どうやらノアはまだ私がハーヴィルに未練があると思っているらしい。ノアの表情は硬く、不安げに強張っていた。
「今はノアだけだよ。ハーヴィルには、その…最近ノアが働き詰めだって聞いて…ノアが頑張ってるのは嬉しいんだけど、無理しちゃやだよ」
なんとか誤魔化してそれらしいことを言う。ノアにまだ彼女のことを聞く勇気はなかった。そこで少しでも狼狽えたり未練があるような素振りを見せられたら耐えられる気がしない。まぁ彼が働き過ぎて心配なのは本当だから誤魔化しというわけでもないが。
「わかったよ、明日は1日休みとる。ナタリアも仕事休みだったよな…一緒にゆっくり過ごそう。約束通り今日も早く帰ってくるから」
ノアの表情が緩んで優しく私の頬を撫でると今度は唇を重ねて微笑んだ。
ノアなら大丈夫だ。彼は誠実で、こんなに愛してくれて、彼を疑うようなこと自体が罪のように思える。
「ハーヴィルのこと、これ以上待たせちゃいけないね。いってらっしゃい」
「あー…こりゃ名残惜しいな。一旦萎えたけどエロいことは中途半端だったし…」
「いいから早く行きなさいってば!」
いい雰囲気だと思っていたのに一言でぶち壊してしまうノアの額を指で弾いて無理矢理行かせる。そうするとノアはようやく渋々といった感じで外へと出ていった。
ハーヴィルの元セフレで、ノアの元彼女…一体どんな人なんだろう。ノアが好きになるくらいだから魅力的な女の人ではあるんだろう、もともと気立てのいい女性と評判だったみたいだし…
気にしてもしょうがないことを気にして気を揉んでしまう。ハーヴィルが飲んだコップを片付けながらふと目に入った鏡で改めて自分を見る。
昔から可愛くなくて好きではない、この村では珍しい長い黒髪。ノアは美人だとは言ってくれるが私より可愛い、美人な子など沢山いる。唯一やれたことと言えばたまたまノアのトラウマを癒せたことくらいで根本的な解決まで至っていない。
半ばプロポーズに近いことをされてから不安要素が次から次へと生まれてくる現状に頭を抱えた。普通ならプロポーズされたら幸せの絶頂にいるはずなのに。最初は彼の早急な決定に答えを出せずにいたことに悩んでいたが今はそれよりも大事な問題を抱えていた。
「次から次へと…ノアは仕事で忙しくて全然話せないし…」
そうして気持ちが沈んでいったが自分も今日は仕事だったことを思い出して気力の湧かない体を無理矢理動かすのだった。
仕事を終えて家の前に着くと部屋の電気はまだ暗いままでまだノアは帰宅していないのだと思ったが、何やらドアに殴り書きされたメモが貼られている。悪戯かと思ってそれを剥がして見ると『ノアが怪我したから診療所で治療してる ハーヴィル』と書かれてあった。そのメモ書きに全身の血が引くのを感じる。今までは縫っていても私に黙っていたくらいだから今回の傷は相当深いのだろう。ノアの緊急性を表すような煩雑な文字にも気持ちが焦って診療所まですぐに駆け出した。
ようやく診療所に着くとノアの元まで一直線に走り出したい気持ちを抑えて受付に事情を話し、ノアのいる部屋を聞く。早足に教えてもらった部屋へと向かいドアを開けると目の前にはちょうど部屋から出るタイミングだったのか長い黒髪の美人な女性が立っていた。看護婦の制服を着ているあたり、ノアの担当なのだろう。自分以外の女の人で黒髪の女の人を見るのは珍しくてついまじまじと観てしまう。自分の黒髪に関しては綺麗だなんて一度も思ったことないどころかコンプレックスだったがその女性の黒髪は滑らかで黒い艶が妖艶で美しくて見惚れてしまう。
そんな中ノアが寝室から戻ってきてハーヴィルに呼びかけた。いつも早朝過ぎて見ていなかったが動きやすいツナギを着たノアに見惚れてしまう。長身で手足が長いからツナギがよく映えている。
「従兄弟として兄貴を頼むって言ってたとこだよ」
「なんだそりゃ、俺ァ、ハーヴィルに心配されるほど恋愛に不慣れじゃねぇよ」
「…どうだかねぇ」
ハーヴィルはアイスティーを飲み干してソファから腰を上げた。そうして床に下ろしていた狩り道具を担ぐと足早に部屋から出ていった。二人きりになったリビングでノアがゆっくりと私に近付いて額にキスを落とした。
「ハーヴィルからなんか言われたのか?」
「えっ、いや…なんで?」
「眉間に深いシワ刻んじまってよ、難しい顔してる」
ノアの指が眉間に触れてそこでやっと自分の表情に気付く。ノアの昔の彼女が戻ってくる、それを思うと胸が不安でいっぱいになって俯いた。
「まだ…好きなのか?」
ノアの優しくも悲しげな声に勢いよく顔を上げてぶんぶんと首を振った。どうやらノアはまだ私がハーヴィルに未練があると思っているらしい。ノアの表情は硬く、不安げに強張っていた。
「今はノアだけだよ。ハーヴィルには、その…最近ノアが働き詰めだって聞いて…ノアが頑張ってるのは嬉しいんだけど、無理しちゃやだよ」
なんとか誤魔化してそれらしいことを言う。ノアにまだ彼女のことを聞く勇気はなかった。そこで少しでも狼狽えたり未練があるような素振りを見せられたら耐えられる気がしない。まぁ彼が働き過ぎて心配なのは本当だから誤魔化しというわけでもないが。
「わかったよ、明日は1日休みとる。ナタリアも仕事休みだったよな…一緒にゆっくり過ごそう。約束通り今日も早く帰ってくるから」
ノアの表情が緩んで優しく私の頬を撫でると今度は唇を重ねて微笑んだ。
ノアなら大丈夫だ。彼は誠実で、こんなに愛してくれて、彼を疑うようなこと自体が罪のように思える。
「ハーヴィルのこと、これ以上待たせちゃいけないね。いってらっしゃい」
「あー…こりゃ名残惜しいな。一旦萎えたけどエロいことは中途半端だったし…」
「いいから早く行きなさいってば!」
いい雰囲気だと思っていたのに一言でぶち壊してしまうノアの額を指で弾いて無理矢理行かせる。そうするとノアはようやく渋々といった感じで外へと出ていった。
ハーヴィルの元セフレで、ノアの元彼女…一体どんな人なんだろう。ノアが好きになるくらいだから魅力的な女の人ではあるんだろう、もともと気立てのいい女性と評判だったみたいだし…
気にしてもしょうがないことを気にして気を揉んでしまう。ハーヴィルが飲んだコップを片付けながらふと目に入った鏡で改めて自分を見る。
昔から可愛くなくて好きではない、この村では珍しい長い黒髪。ノアは美人だとは言ってくれるが私より可愛い、美人な子など沢山いる。唯一やれたことと言えばたまたまノアのトラウマを癒せたことくらいで根本的な解決まで至っていない。
半ばプロポーズに近いことをされてから不安要素が次から次へと生まれてくる現状に頭を抱えた。普通ならプロポーズされたら幸せの絶頂にいるはずなのに。最初は彼の早急な決定に答えを出せずにいたことに悩んでいたが今はそれよりも大事な問題を抱えていた。
「次から次へと…ノアは仕事で忙しくて全然話せないし…」
そうして気持ちが沈んでいったが自分も今日は仕事だったことを思い出して気力の湧かない体を無理矢理動かすのだった。
仕事を終えて家の前に着くと部屋の電気はまだ暗いままでまだノアは帰宅していないのだと思ったが、何やらドアに殴り書きされたメモが貼られている。悪戯かと思ってそれを剥がして見ると『ノアが怪我したから診療所で治療してる ハーヴィル』と書かれてあった。そのメモ書きに全身の血が引くのを感じる。今までは縫っていても私に黙っていたくらいだから今回の傷は相当深いのだろう。ノアの緊急性を表すような煩雑な文字にも気持ちが焦って診療所まですぐに駆け出した。
ようやく診療所に着くとノアの元まで一直線に走り出したい気持ちを抑えて受付に事情を話し、ノアのいる部屋を聞く。早足に教えてもらった部屋へと向かいドアを開けると目の前にはちょうど部屋から出るタイミングだったのか長い黒髪の美人な女性が立っていた。看護婦の制服を着ているあたり、ノアの担当なのだろう。自分以外の女の人で黒髪の女の人を見るのは珍しくてついまじまじと観てしまう。自分の黒髪に関しては綺麗だなんて一度も思ったことないどころかコンプレックスだったがその女性の黒髪は滑らかで黒い艶が妖艶で美しくて見惚れてしまう。
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