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失恋の特効薬
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しおりを挟む翌朝─────
ノアの朝勃ちが後ろから押し当てられて昨夜散々焦らしておいて…と恨めがましい目で綺麗な寝顔を睨みつける。いつもは剃っている無精髭が生えてはいるが眉間の皺が消えた寝顔は若く見える。しばらく寝顔に見惚れていたが、視線に気付いたのかノアは「ン…」と息を漏らした。
「ア、メリ…」
その寝言のような言葉に体が固まった。だれか、女の人の名前。私じゃない誰か。一ヶ月前セックスしながら彼が誰かの名前を呼んでいた夢を思い出す。それはただの夢だったが今は現実だ。
次の瞬間ノアの体がこわばって、悪夢でも見ていたのかのように勢いよく体を起こした。
「は、…っ、あ…ふ、はぁっ、ゆめ、か…?」
ノアは荒い呼吸を整えながら額の汗を拭った。じとっとノアを見つめているとノアはビクッと体を震わせてようやく私に気付く。
「悪い、起こしたか?」
「いや…、起きてたけど。」
先ほど彼が呼んだ名前のことは出さず、そっと腕を伸ばした。
「怖い夢でも見たの?」
「…ナタリア、いや…大丈夫だ」
大丈夫だと言いながらノアは私の体に腕を伸ばして抱きしめる。額だけではなく体も汗ばんでいて香水と汗が混じった匂いが鼻を掠めた。
「大丈夫じゃなさそう」
「ちょっと嫌な記憶を夢で見ちまっただけだ。心配してくれてありがとな」
頬を緩めて優しくそう言うノアは私の頭を撫で、額にキスを落とす。いつもだったら素直に受け入れるのになんだかぼんやりとした言葉にそれ以上踏み込ませてくれないような空気を感じてしまう。
「ナタリア…」
そのまま唇を寄せてくるノアの体を反射的に押し返してしまう。呼んでいた女の人のことが気になってモヤモヤしてしょうがない。しかし、そこでやってしまったとハッとした私は慌ててノアの方を見ると露骨に傷付いた顔をしている。
「そ、その…っ、ごめん、ノア…っ、今日も朝からお仕事の準備って言ってたでしょ?」
我ながら苦しい言い訳だと思う。しかしこの重苦しい空気を打破するためにもこんなことしか思い付かなかった。
「久々に一緒にシャワー浴びよう。私も、昨日ので汗かいちゃった。」
「そうだな…」
なんとか誤魔化してベッドから出て先に脱衣所へと駆けていく。一人の時間ができてようやく先程の状況の整理がつけられる。アメリという女性の名前、それにあれだけ汗だくになって嫌な夢だという彼の姿…もしかしてアメリという彼女がノアのトラウマの女性だったりするのだろうか。私と交際を始めても…消えないくらい深く刻み込まれたノアの昔の彼女。
「なんだ、まだ服脱いでなかったのか…もしかして待たせちまったか?」
そうして考え込んでいるとノアが脱衣所にやってきてまだ脱衣所にいた私の姿に目を丸くした。
「そんなに時間経ってた?」
「10分くらいは経ってるけど…悪かったな。一緒にシャワー浴びるっつって遅くなって。先に浴びてるかと思った」
「10分?!ノアは何してたの?」
「あー…まぁいつもの男の事情の処理ってモンだ。昨日あんなに可愛い姿見ちまったからオカズには困んなかったけどよ」
よく見るとノアの頬は若干赤らんでいて男性特有の色気を孕んでいた。…というかオカズとか聞き捨てならないことを言っていたようだがそこは聞き流す。トレーナーを脱いで洗濯機に放り込むとすかさずノアがベビードールを脱がせてくる。
「ど、どうしたの…そんな勢いよく脱がせたりして」
「いや、そのカッコエロ過ぎっから目に毒なんだよ。裸の方がまだ健全っていうか…ホラ早くパンツも脱げ」
「あっ、ちょっとあんまり乱暴にすると破れちゃうから…っ、結構いい値段するんだからね」
あっという間に全裸に剥かれた私は浴室に放り込まれて手早くズボンと下着を脱いだノアも入ってくる。そうしてシャワーのコックを捻ったと思ったら冷水が降り注いであまりの冷たさに悲鳴に近い声をあげてしまう。
「つ、冷たいっ!ノア…っ、温度上げてってば!」
「ちょっと頭冷やさせて…お前も、ココ、熱くなってんだろ?パンツ脱がせた時糸引いてた」
ノアが子宮のあたりをすり…と撫でて体が嫌でも強張ってしまう。一緒にシャワー浴びるなんて提案してしなければよかったと今更ながら後悔する。
「の、ノア…そのっ」
「ンな物欲しそうな顔すんなよ、熱冷ましたいっつーのに…」
ノアの整った顔が近づいて顎を持ち上げられたと思ったら唇が重なる。言ってることとやってることがチグハグなことに気がついているのだろうか。しかしこうなれば私はもう餌に釣られた魚だ。だってノアのキスはどうしようもないくらい気持ちいいのだから。
「んっ、ふ、ぁ…っ♡ん、んぁ…っ」
唾液が絡まって浴びている冷水よりそちらの熱のほうに意識がいく。大きな体が、腕が私の体を引き寄せて密着する感触に興奮しない方が無理だった。
「ん、ぁ…っ、ノア…っ」
やっと唇が離れたところでノアの膝がすりすりと私の秘部を撫でた。彼の膝が愛液で濡れるのを感じて発火するように体が熱くなる。ノアの顔が間近に迫って私の反応を楽しむように口元を緩ませた。
「昨日のじゃ…やっぱり物足りなかったよな?」
「足りない…っ、けど…」
「おーい!兄さん!!まだ寝てんのかぁっ!?6時の待ち合わせいなかったから来ちまったぞ!」
その瞬間、玄関の方から扉を叩く音とハーヴィルの呼び声が響いた。ノアはその声にビクッと体を震わせると、「やべっ!」と慌てて浴室を飛び出して腰にタオルを巻いて玄関へと駆けて行った。
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