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失恋の特効薬
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しおりを挟む「あー…その、俺たち、付き合ってるってことで良いんだよな」
「な、何今更…っ」
放心状態だった私はノアのその言葉で意識が覚醒する。しかしよく考えると中途半端に好意を向けていたのは私ではっきりと恋人関係になったとは言い難かった。私は唾を飲み込んで意を決してノアに向き合う。
「そ、その…私が今好きなのは、ノアだから…っ、お付き合い…したい、です…」
「………はー、嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい……」
しばしの沈黙の後ノアは腕を伸ばして私を抱き寄せてホッとしたような声でそう言った。私もそんなノアの気持ちが嬉しくて、無意識に涙が滲んでくる。
「式はいつがいいんだ?」
「式…?」
「式っつったら結婚式しかねぇだろ。俺としちゃ早急に済ませたいんだが」
「けっ、結婚!?」
先ほど正式に交際を開始したばかりだというのに唐突な提案に耳を疑って体を離し、まじまじとノアを見つめた。しかしノアは至って真面目な顔と声色で冗談を言っているようには見えない。
「なんだ、俺が無責任にお前の胎に出したと思ってんのか?」
ノアの指が私の下腹部をなぞって、自然と体がびくついてしまう。
「世間一般には俺ァ、オジサンに含まれるわけだ。タネが無くなっちまったらナタリアも困るだろ?それに、ハーヴィルが万が一にも離婚なんてことになっちまったら気が気じゃ居られねぇ。早いうちに地盤は固めておかねぇと」
私の反応を楽しむようにノアの舌が私の首筋を撫でた。明け透けな物言いに呆れながらも彼の与える感触に感じてしまう自分が恨めしい。
「もう、よそ見なんてしないってば…」
「20年もアイツのこと好きだった一途なお前が俺のこと好きになってくれたなんて今でも信じられねぇんだよ。しょうがねぇだろ?」
「じゃあノアは私が好きでもない人にナカに出すの許すと思うの?」
1度目の中出しは確かに事故だったけど、今日のセックスは事故で済ませるつもりはない。ノアだから受け入れたのだ。だから彼が言った言葉をそのまま返すとノアは鳩が豆鉄砲でも喰らったような顔をしてから唐突に吹き出した。
「…ははっ、確かにそう返されちまえば何も言えねぇ。ほんと、いい女になっちまったな」
「そりゃもう、ノアのこと幸せにしたい気持ちでいっぱいですから」
「そりゃ楽しみだ、コンプレックス抱えまくって拗らせた40手前の男はなかなかにハードだと思うぞ…現に今お前に依存しまくってる」
「全部受け止めるよ、だから私も…ノアに頼らせてね?」
私の言葉にノアはクスリと笑って唇を重ねる。それが返事のように思えて、私も応えるように彼の背に腕を伸ばすのだった。
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