失恋の特効薬

めぐみ

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失恋の特効薬

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「んで…一緒に風呂入るか?勿論そのあとはどうなるか分かった上での誘いだけど」

「…入る」

このあと待っていることを思うと夕食がどんどん減っていくたびに心音が速くなる。

「失恋したばっかりなのに傷心どころか他の男の人とのえっちを楽しみにしちゃう私ってどうなんだろう」

「ぶはっ…楽しみってお前、まぁ傷心をズルズル引きずるよりいいだろ。性欲は人間の三大欲求だし…セックスの気持ちよさを知った直後なんだからそんなこともあるさ。俺だって初体験の後はサルみたいに…ってまぁ俺のことはいいか」

飲んでいたお酒を吹き出して笑いながらも、ノアは私のことを肯定してくれる。それどころか嬉しそうな声色で話すものだから、自分の言ったこと思い返して恥ずかしくなった。

「それか…失恋したからこそじゃねぇの。失恋した相手と俺が似てるから、好きな人とセックスしてる気分になるだろ?」

「ハーヴィルとノアは違うって言ってるじゃん。えっちのときはノアの顔なんてあんまり見えないし…声も匂いもノアなんだからハーヴィルに抱かれてるなんて思わないよ」

「へぇ……じゃあ"俺"に抱かれて、またしたいって思ってくれてるワケだ」

「……っ!」

ノアは意地の悪い笑みを浮かべてこちらの顔を覗き込んでくる。図星をつかれて顔が熱くなって思わずソファから立ち上がった。ノアは私が揶揄われたと怒ったことに気付いているのかいないのか、全く反省した様子はなく楽しげに私の反応を見ていた。やられっぱなしみたいで気に食わず、冷静を装い椅子に座り直し、強気になって言い返してやる。

「そ、そういうノアも…っ、他の女の人とヤればいいのに今日私が来るまで溜まってたって言うじゃん。一夜限りの遊び人が処女の小娘に夢中になっちゃったんじゃないの?」

「そりゃ俺も予想外だったわ、だって体の相性抜群なんだもんな。それに…普段のお前の事よく知ってるからこそ、ベッドの中でのギャップっていうの…?そういうのにグッときたっというか─」

「ァアアアアアアもういい!」

困らせてやろうと思って言った言葉に逆に自分が困らせられる羽目になる。顔どころか耳まで熱い。こんな初心な反応をして、私ばかりがノアに心を乱されているようで悔しい。

「まぁとりあえず飯食えよ、せっかく作ったのに冷めちまう」

人生経験の差なのかノアには口では一生敵わない気さえする。諦めて深くため息をついて彼の言葉に従い、スープをすすった。そうしているうちにお皿は空になって、この美味しさが恨めしい。最後の一口をちびちび食べているとお皿を取り上げられて台所へと片付けられる。

「片しとくから先に風呂行ってろよ、俺もすぐ行くから」

彼の言葉に渋々従い浴室へと向かって先に歯磨きを済ませる。今日は下着や寝巻きは持ってきていたのでそれを脱衣所の棚に置いて、着ていたシャツのボタンを外しているところコンコンとノックの音が鳴り響いた。

「ん?なんだお前着替え持ってきてたのか」

思いの外早く片付けを終えたノアが脱衣所に入ってきて棚に置かれた私の下着に目をやった。

「結構際どいやつ着てるんだな」

自然な流れで人の下着を勝手に摘んで眺める男の腹部を思い切り殴る。いくら幼馴染とはいえ気遣いとかデリカシーとかそういうものは失わないでほしい。

「ごほっ、ごほごほっ!もっと恥ずかしいとこ見合ってる仲なのに殴るこたァねぇだろ!」

「いや怒りたいのはこっちなんですけど!勝手に人の下着触るなどすけべ馬鹿!信じられない、他の女の子にもこんなことしてたの?!よくそんなんで遊び人やってたよね!」

「悪い悪い、子どもから知ってるお前の成長を感じちまってつい揶揄っちまう」

その謝罪はあまりにも軽くて空っぽだ。しかもそのまま人のスカートのチャックを下げるものだからもう怒る気力も無くなってしまう。

「お、今履いてるのもすげぇ色っぽいじゃねぇか。こんなの履いて仕事してんのか?」

レースがあしらわれたサイドが紐で結ばれた赤い下着を見て感想を述べるノアの頭を叩いておく。そもそも人に見せるための下着とかでは無いのだから仕事中に履いてようが関係のない話だ。

「私のことはいいから早くノアも脱ぎなよ!お風呂入るんでしょ」

「これはこれで俺のお楽しみタイムなんだが…それもそうだな、じゃあ俺も準備するかね」

意外と素直に私の話を聞き入れたノアは着ていたワイシャツのボタンを外していく。首元から胸にかけて上から下に順に外されていくボタンは徐々にその鍛えられた肉体を露わにする。厚い胸板とその下の腹筋…悔しいがその逞しさにチラチラと視線を向けてしまう。

「さっきから視線を感じるんだけど…そんな男のカラダが珍しいか?」

「えっ、いや…っ、そのぉ…」

散々人のことをすけべ呼ばわりしていた癖に自分も盗み見をしてしまってると思うと吃ってしまう。ノアは脱いだシャツを洗濯カゴに入れると私の手を掴んで自分の体に触れさせた。

「まぁ異性の体に興味あんのはしょうがねぇよな。こういうこと知りたてのお前なら尚更。俺ばっかり触ってもフェアじゃねぇしな、好きにしていいぜ?」

「わ、ぁ…す、すご…こんな硬いの?」

何かが詰まってるかのように硬くてしっかりと割れた腹筋は自分の体には無いもので好き放題手を動かしてしまう。指で押しても押し返される硬さを持っていてつい夢中で触った。
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