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しおりを挟む「やっと手に入れた、まったく…よく自分でも周りから煩く言われながら35まで独身でいられたもんだ」
ミサがすっかり油断した顔で眠る横でその髪を撫でながら額にキスをした。ミサには俺が独身だったのは女好きだったからでしょなんて言われたが…それは半分正解で半分ハズレだ。
御伽話を夢見る少女よろしく、彼女と巡り会えるのを待っていた。というのも俺は10年前あの村から帰ってきて少し経った頃呪術師に彼女のことを占って貰っていたからだ。
「元気だよ、彼女は。傷も良くなっているようだ…でも、本当に聞きたいのはそんなことかい?」
全てを見抜くような目でそう言われて正直に答えることしかできなかった。まったく呪術師という存在には敵わない。
「俺はまた…彼女に会えるか?」
「そうだね…10年、辛抱強く待ちなさい。お前から会いにいってはいけないよ」
そう言われ、周囲にいくら結婚しろと言われても断り続けた。女が好きだからまだ身を固める気はない、何て言って。そんな俺を見かねた親父は呪術師を頼って予言を授かる羽目になる。1日に3度来訪者が来る日があるから、その3人目と結婚しろとのことだった。そうしないと村は大いなる厄災にみまわれるなんて言われて─
呪術師のことを聞くしかないのか…辛抱強く待った結果がこれなのか。そう思うと俺は半ばヤケ気味にどうせそんな女は現れないだろうと、本当に現れるようならその女と結婚し身を固めると言い切ってやった。
そしてその日はやってきた。1日に1人人が訪れるだけでも珍しいのに2人目の来訪者がやってきて「運命の日」なのだと悟った。3人目が現れる直前まで女を食い漁って、夜も23時を回ろうとしていたころ、家にノックが響いた。
全てをあきらめて、最低な対応をしたというのに、その3人目の来訪者は待ち焦がれた彼女だった。最初は気付かないほど大人っぽくなって、だけどところどころに17歳の頃の面影がある。彼女なのだと改めて実感すると全身が歓喜で震えた。その後記憶もない彼女には散々嫌われて、7日というタイムリミットまで与えれたが構わない。
また恋をしよう
「ん、ハーヴィル…起きてたんですか?」
眠そうな声をしながら目を擦る彼女が愛おしくてその瞼にキスをした。
「ミサが幸せそうな顔して寝てたから、つい…、な」
「ハーヴィルと…約束したときの夢を見ていて」
「…そうか」
その約束がこの10年の思いを繋ぎとめていた。そして、それは成就した。
「ハーヴィルは…ずっと覚えていてくれたんですね。もしかして…本当はずっと待っててくれたんですか?」
冗談交じりで笑いながら「なーんて…」というミサの唇をただ触れるだけのキスで塞いだ。
「…そうだよ。村長の一人息子が35まで独身なんてどれだけ大変だったと思ってるんだ」
本当に予想外の言葉だったのかミサは鳩が豆鉄砲でも食らったかのような顔をして俺を呆然と見つめていた。その顔を笑ってやって遠い記憶より少し成熟したその体を抱きしめた。
「責任もって、俺を幸せにしろよ?」
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