スターチスの思い出

めぐみ

文字の大きさ
上 下
26 / 28

25

しおりを挟む




「やっと手に入れた、まったく…よく自分でも周りから煩く言われながら35まで独身でいられたもんだ」

ミサがすっかり油断した顔で眠る横でその髪を撫でながら額にキスをした。ミサには俺が独身だったのは女好きだったからでしょなんて言われたが…それは半分正解で半分ハズレだ。
御伽話を夢見る少女よろしく、彼女と巡り会えるのを待っていた。というのも俺は10年前あの村から帰ってきて少し経った頃呪術師に彼女のことを占って貰っていたからだ。

「元気だよ、彼女は。傷も良くなっているようだ…でも、本当に聞きたいのはそんなことかい?」

全てを見抜くような目でそう言われて正直に答えることしかできなかった。まったく呪術師という存在には敵わない。

「俺はまた…彼女に会えるか?」

「そうだね…10年、辛抱強く待ちなさい。お前から会いにいってはいけないよ」

そう言われ、周囲にいくら結婚しろと言われても断り続けた。女が好きだからまだ身を固める気はない、何て言って。そんな俺を見かねた親父は呪術師を頼って予言を授かる羽目になる。1日に3度来訪者が来る日があるから、その3人目と結婚しろとのことだった。そうしないと村は大いなる厄災にみまわれるなんて言われて─
呪術師のことを聞くしかないのか…辛抱強く待った結果がこれなのか。そう思うと俺は半ばヤケ気味にどうせそんな女は現れないだろうと、本当に現れるようならその女と結婚し身を固めると言い切ってやった。

そしてその日はやってきた。1日に1人人が訪れるだけでも珍しいのに2人目の来訪者がやってきて「運命の日」なのだと悟った。3人目が現れる直前まで女を食い漁って、夜も23時を回ろうとしていたころ、家にノックが響いた。

全てをあきらめて、最低な対応をしたというのに、その3人目の来訪者は待ち焦がれた彼女だった。最初は気付かないほど大人っぽくなって、だけどところどころに17歳の頃の面影がある。彼女なのだと改めて実感すると全身が歓喜で震えた。その後記憶もない彼女には散々嫌われて、7日というタイムリミットまで与えれたが構わない。




また恋をしよう






「ん、ハーヴィル…起きてたんですか?」

眠そうな声をしながら目を擦る彼女が愛おしくてその瞼にキスをした。

「ミサが幸せそうな顔して寝てたから、つい…、な」

「ハーヴィルと…約束したときの夢を見ていて」

「…そうか」

その約束がこの10年の思いを繋ぎとめていた。そして、それは成就した。

「ハーヴィルは…ずっと覚えていてくれたんですね。もしかして…本当はずっと待っててくれたんですか?」

冗談交じりで笑いながら「なーんて…」というミサの唇をただ触れるだけのキスで塞いだ。

「…そうだよ。村長の一人息子が35まで独身なんてどれだけ大変だったと思ってるんだ」

本当に予想外の言葉だったのかミサは鳩が豆鉄砲でも食らったかのような顔をして俺を呆然と見つめていた。その顔を笑ってやって遠い記憶より少し成熟したその体を抱きしめた。

「責任もって、俺を幸せにしろよ?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ミユはお兄ちゃん専用のオナホール

屑星とあ
恋愛
高校2年生のミユは、母親が再婚した父親の息子で、義理の兄であるアツシに恋心を抱いている。 ある日、眠れないと言ったミユに睡眠薬をくれたアツシ。だが、その夜…。

今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている

ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。 夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。 そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。 主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

【R-18】となりのお兄ちゃん

熊野
恋愛
となりの家のお兄ちゃんは…【R18】

さして仲良くない職場の先輩と飲み会の後に毎回セックスして繰り返し記憶をなくしている百合

風見 源一郎
恋愛
真雪が目を覚ますと、セックスをした後だった。隣には、すごくエッチな体をした女の人がいた。前日には会社の飲み会があったことだけを覚えている。 酔った勢いで、さして仲良くもない会社の先輩を相手に処女を散らしてしまった真雪は、しかし、見知らぬはずの部屋に、見知ったものばかりが置かれていることに気がついたのだった。

中でトントンってして、ビューってしても、赤ちゃんはできません!

いちのにか
恋愛
はいもちろん嘘です。「ってことは、チューしちゃったら赤ちゃんできちゃうよねっ?」っていう、……つまりとても頭悪いお話です。 含み有りの嘘つき従者に溺愛される、騙され貴族令嬢モノになります。 ♡多用、言葉責め有り、効果音付きの濃いめです。従者君、軽薄です。 ★ハッピーエイプリルフール★ 他サイトのエイプリルフール企画に投稿した作品です。期間終了したため、こちらに掲載します。 以下のキーワードをご確認の上、ご自愛ください。 ◆近況ボードの同作品の投稿報告記事に蛇補足を追加しました。作品設定の記載(短め)のみですが、もしよろしければ٩( ᐛ )و

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

処理中です...