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しおりを挟むある記憶が蘇る。
真夜中の村に響き渡る人々の悲鳴、妹と隠れたクローゼットの隙間から、生きたまま嬲り殺される両親を見て、そして─
「見ぃつけた─」
ニヤリと笑う品のない男達が私達に手を伸ばし…
「ミサっ!!!!起きろっ!!!!」
バキッという大きな音と私を揺する振動で目を覚ました。そして私を起こしたのは見たこともないほど必死な顔つきのハーヴィルだった。私が目を開いたのを確認するとふぅと息をつく。今は洞窟から目を覚ました日の夜─少しづつ頭の中が整理できるようになってきた。
「酷いうなされ方をしてた、大丈夫か?」
ハーヴィルはベッドに縛り付けられていたはずだ。ベッドサイドのランプを点け、ベッドを見ると手錠をかけていた柵は悲惨なほどに折れて、それが先ほどの大きな音だったのだと思い知らさせる。手錠のかかったままの腕を無理矢理引っ張って柵を壊したのだろう。ハーヴィルの手首は手錠の痕が痛々しいほどくっきり残ってところどころ擦り切れている。
「ハーヴィルっ、なんでこんな…っ」
慌てて手錠を外して骨が折れていないか確認しようとするとハーヴィルは力強く私を抱きしめた。そしてポンポンと親が子にするように私の頭を撫でる。
「よしよし、怖かったな…もう俺がいる、心配しなくていいから」
心配しているのは私のほうだというのにあまりにも優しい声色に安心して抱きつくと彼も激しい心音を奏でていてどれほど彼が焦っていたのかをしらしめている。
「ほら、大丈夫…大丈夫…」
震えていた体が少しずつ落ち着いてくる。
「あ、りが…とう…」
「怖かったら俺の腕の中で好きに泣けばいい。お前を傷つけるものは全部取っ払ってやる。」
「うん、ありがとう…ハーヴィル…それより、腕…大丈夫なの?」
「大したことねぇよ、落ち着いたならまだ2時だし…寝るか?それともまだこうしてるか?」
ハーヴィルの腕の中は落ち着くが彼を起こしてしまった手前いつまでもこうしてもらっているわけにもいかない私は彼から離れて「寝る…」と答えた。
「起こしちゃって、ごめんなさい」
「あやまんなって、怖いことあったら叩き起こしてもいいからよ」
「ありがとう」
そう答えるとハーヴィルは満足げに笑って、クシャリと頭を撫でた。熱くなった顔を誤魔化すように布団にもぐりこむとハーヴィルから「いいのか?」と言ってくる。何のことかと首を傾げる。
「いや、だから…その、手錠してないだろう?」
自分で言うのもおかしな話だという自覚があるのだろう、ハーヴィルは言いづらそうにそう言った。赤くなった手首と折れたベッドを見て到底手錠をかけるなんて言えない。
「もう…いいです」
「それは、俺が無理矢理したりしないって信用されてんのか?それとも…手を出してもいいってサインか?」
「なっ…」
すりすりと頬を大きな手で撫でられながら言われるものだからむず痒くなる。しまいには優しく「ん?どうなんだ?」なんて問いかけられれば陥落してしまいそうになる。
「あ、なたのこと…信用してるってこと…です…」
「そっか…んじゃ、記念に腕枕でもしてあげましょうかね」
「わ、あ…っ」
軽々と抱き上げられて頭とシーツの間にハーヴィルの腕が挟み込まれる。しまいには反対の腕で抱き寄せられてしまい、全身でハーヴィルの感触を感じてしまう。
「やわらけぇ…」
「は、ゔぃるっ…」
石鹸と男らしい香りが混じった匂いに頭がクラクラする。そのまま脚も絡まってきてすりすりと擦り付けられてしまっては過敏に反応してしまう。
悔しいけど彼を男性として意識してしまっている。一生誰とも添い遂げること無く、1人でいる覚悟で村を出たというのに。彼に触れられるところが気持ち良くてもっと触ってほしいと思ってしまう。
「あと3日だ、それまで覚悟しておけよ…我慢した分たっぷりお前のナカに注いでやるから」
「あ…もう、やめてよそういうの…」
「前みたいに過敏に拒否することはないんだな」
顔を熱くして俯くことしかできない私にハーヴィルは額にキスをする。
「3日後には喚いても待ってやらない。必ずお前を俺の女にする。」
そう言って電気が消されホッとする。いま、人には見せられないほど真っ赤な顔になっているから。
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