スターチスの思い出

めぐみ

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「そりゃ村人からすれば素敵な若様なんだろうけど、第一コンタクトがアレな男をどう好きになれって言うのよ」

まぁ見た目は確かにいいし、勉強熱心なところは見直したけど…それにしたって父親を困らせるレベルの女好きは他の要素を掛け合わせても彼の総合評価をマイナスにしてしまう。

でもだからこそ彼は1週間も我慢出来るとは思えない。きっとすぐに音を上げて晴れて私もこの村とオサラバ、という形に落ち着くだろう。することもないし、寝室でしばらく本を読んでいると外が随分と騒がしくなってきた。窓から様子を伺うとどうやら狩りに行っていた人達が帰ってきたようだ。
その中で先頭を歩いているハーヴィルがずんずんと早足でこちらに向かってくる。自分の家なので当たり前なのだがそれに慌てた私はつい本を隠すように枕の下に入れた。

「おいミサ、少しきてくれねぇか?」

帰ってくるなり私の居場所を当ててこちらに来ると泥だらけの格好のハーヴィルが私の腕を引いた。されるがままの私はそのまま外に連れ出される。そして家の前に置いてあったものに驚愕することになるのだ。
そこには子象ほどの大きさの魔猪が横たわっていた。平均的な魔猪のサイズといったら豚と同じくらいだ。それよりも二回りほど大きな、凶暴な性質を持つ魔物を目の前にしては息がないのが分かっているとはいえつい体が強張ってしまう。

「これをお前に捧げる、どうか受け取ってくれ」

そんな私を置いてけぼりにして、ハーヴィルは皆の前で跪いて私の掌にキスをした。大衆の前でこんなことをされたことない私は反射的に手を離す。

「あ、あの…っ」

よく見れば彼の体は傷だらけで簡単に仕留めた訳ではないと分かる。土で隠れて分かりにくいが服には赤黒いシミまでできている。そうと分かるとこのシチュエーションに照れている場合ではない。慌てて彼の腕を引いて家の中へと入っていった。

「ミサ…?おい、どうした突然」

「シャワー浴びて…っ、泥落としてください、怪我してるじゃないですか!」

「あ、あぁ…」

上着の裾をめくると青痣や腫れ、切り傷があちこちにあった。幸い深い傷はなさそうだが清潔にしないと感染症を引き起こしてしまう可能性もある。

「シャワー浴び終わったら手当てしますから…」

「なら、シャワーも一緒に浴びないか?」

突然浴びせられた爆弾に反論する間も無くまたもや引っ張られ、服を着たまま広い浴室に連れてこられる。そしてあろうことかそのままシャワーのコックを回したのだ。

「ヒ、あっ!つめたっ…」

当然のように水がかかって全身ずぶ濡れになる。体のラインがハッキリと出てしまって咄嗟に体を隠した。

「これで逃げらんないな」

「わ、わかった!分かったからこっち見ないで!」

少しずつ壁に追い込むように近付かれ、押し除けるようにぐいぐいと胸板を押すがびくともしない。

「どかないなら今すぐ村から出ていくから!」

そう言うと流石にハーヴィルの体は怯んで私から離れていった。その隙に脱衣所へと出て、服を脱ぐと脱衣所にあるタオルを体に巻いた。改めてシャワールームに戻るとハーヴィルも全て脱いでいて目のやりどころに困ってしまう。彼はタオルも巻いていないものだから下半身までバッチリ見てしまったのである。

「そんな初心な反応されたら…俺昂っちゃうんだけど。」

「馬鹿、なこと…言わないで…ほら、泥落としますよ。背中側洗いますから前は自分でやってください」

石鹸を泡立てて彼の背中へと回り込む。あちこち傷だらけで彫刻のような美しさはないが、野性的な荒々しい男らしさのある背中で触れるたびに鼓動が早くなっていく。

「猪の牙にでもやられたんですか?切り傷が酷い…」

「あぁ、こんなもん見せて悪いな」

「いえ、別に…大丈夫です…」

見慣れているし、という言葉はつぐんでなるべく傷に触れないように洗うが、滴る血が泡を薄い朱色へ変えていく。

「早く洗って止血しないと…」

「これくらい慣れてるから大丈夫だって、それより湯船に浸かりてぇ」

手早く泥を落として泡を洗い流すと、ハーヴィルは私を抱えて少し離れたところにある浴槽へと歩いていく。

「ハーヴィル、重いからっ、やめて…っ」

「昨日散々好き放題されたんだから少しくらいやり返してもいいだろ?」

広い浴室に比例して浴槽もちょっとした温泉施設のような大きさだ。だと言うのにハーヴィルは手を離すことなく抱きかかえたまま湯船に浸かった。

「はぁーっ、狩りの後の風呂は気持ちいいなぁ」

「ハーヴィル…当たってる」

胡座をかくハーヴィルの上に載せるように座らされている私の淫部に屹立したペニスが当たっている。布越しだというのにクッキリと存在を主張するペニスにドキドキしてしまう。

「そりゃあ…抜かないって約束したからな、しょうがないだろう」

「それは…そう、ですけど」

「なんだ?これで突かれたくなったか?あと6日我慢すりゃ好きなだけ出し入れしてやるよ」

後ろから首筋を舐められて「ひぅっ!」と声を上げてしまう。クックッと喉を鳴らしながら笑うハーヴィルが憎たらしい。

「可愛い声出すんだな、もっと鳴かせたくなる」

「あっ、ん…っゃ…っ」

ちゅうっと吸いつかれて抵抗しようとするも手に力が入らない。耳を疑うほど甘ったるい声で囁かれてそれだけで意識がぼんやりとしていってしまう。

「抱いて欲しかったら約束、撤回してもいいぞ。今すぐにでも抱く」

ハーヴィルの息が肌をかすめて熱に浮かされる。後ろを振り向くと射止めるような眼が目の前に映った。目鼻立ちのしっかりとした男らしくも色気の含んだ顔が少しずつ近付いて、私の頬にそっと手を添えた。

「は、ゔぃる…」

「なんだ?俺の花嫁…」

そして反対の手がタオルの隙間から入ってきたところで正気に戻って近づいてくる顔面に頭突きをかました。

「って~!この雰囲気で頭突きをかます奴がいるか?!」

「約束を撤回するなんて言ってないですから!」

ハーヴィルは鼻を押さえながら涙目で私を睨むが、私は正面に向き直って触れようものなら肘をお見舞いしてやろうと前後に腕を動かした。

「あぁっ!もうっ…悪かったよ、ただ触れないのは辛いから抱き締めさせてくれ」

私の返事を聞く前に後ろから抱き寄せられて背中に胸板の感触を味合わさせられる。太くて逞しい筋肉質な腕は私の腹部に回り込んだ。

「必ず俺の妻にしてみせる。覚悟しとけよ」

「う、それはいい、ですから…それに…ハーヴィルは私のこと好きにならないと思いますし、結婚しても後悔しますよ」

「そりゃどういう意味だ」

「それは…」

私が口ごもるとハーヴィルはクシャクシャと私の頭を撫でた。

「無理に一人で抱え込むなよ。今は話しにくいかもしれないが…夫婦になったら必ず話してもらうからな?」

今まで散々いろいろと無理矢理してきたっていうのに突然優しくされたら調子が狂う。さっきの甘ったるい愛撫も愛されていると錯覚してしまいそうだった。彼が触れるところから鼓動がバレてしまっているのではないかとハラハラしてしまう。

「分かりました」

「じゃあ、おれは先にあがってるから、お前は後からこいよ」

ハーヴィルは湯船から出て、濡れた髪をタオルで拭いている。水がつたう姿があまりに色っぽくてつい視線を逸らしてしまう。

「私もすぐ上がるので…薬箱出して待っててください。」

「ん、待ってる」

ハーヴィルは湯船の淵に腰掛けて、何事かと思って見上げると唇の横に軽く口づけをされた。咄嗟に湯船の反対側に逃げるがろくに反撃できず、口をパクパクと開閉させるだけだ。

「あんまり待たせると我慢できずに食っちまいたくなるから、早く来いよ」

「か、体洗ったらいくんで早く…っ、出てってください!」

キスの一つで狼狽えてしまうなんて一生の不覚だが自分でも驚くほど生娘のような対応しか出来ない。ハーヴィルはニンマリと口端をあげて笑いながら浴室を後にした。なんだかやけに口の横を熱が帯びた感じがしたが慌てて首を振って体を洗って私も浴室を出た。

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