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番外編9
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「分からせてやったつもりだったんだけどな…」
「別に浮気って決まったワケじゃないでしょうよ」
夜は10時を回った頃、2人並んでどこかへと向かう姉妹を2人の男が尾行していた。今夜は早めに寝て、自分の妻が家を出たら村の中央で10時に待ち合わせをする、と作戦を企てていた2人は予定通りに跡をつける羽目になる。こちらの様子がバレないようフードを深く被ると怪しさ満点の二人組の完成だ。
「一応聞いとくけど分からせるって何したワケ?」
「とりあえず問い詰めて3回戦した」
「さっ!?!」
「いや1週間ぶりだったからつい盛り上がっちまってな、あんなにやったのに何事もなく出かけるなんて大したもんだ。まぁお前んちみたいに毎日毎日やってるワケじゃねぇから3回くらいは…なぁ?」
付き合いの長い幼馴染の性事情を聞いてベイリーはわざと「オェ~」と言いながら苦々しい顔をした。ここで自分の性事情が知られていることは敢えてつっこまない。
「てか問い詰めたって…なんか分かったことあったのか?」
「浮気ではないの一点張りだったがキスマーク付けられたくないだのまだ詳しくは話せないだとか怪しさは満点だったな…まぁでも問い詰められた数時間後にこうやって出かけるってことは本当にやましいことはないんだろ」
「そうか…」
結婚してからの期間も関係してはいるだろうが、ベイリーはハーヴィルの浮気してないとキッパリと言える友人が羨ましかった。それと同時にあんなに愛を伝えてくれているのにエリーを100%信じきれてやれない自分に嫌気がさす。
「お前のそういうとこ悔しいけど憧れるわ」
「お前なぁ…あんな可愛い子捕まえといてまだ自分に自信がないとか言うのか?あの子お前以外目もくれないくらいゾッコンだろうが…それこそあの子に失礼だぞ?」
普段は文句ばかり言っているが、隣を歩いている男はどこをとってもトリプルエーな男だ。助平でナルシスト気味なところは玉に瑕だがそれを差し引いても、頭脳、カリスマ性、体力、ビジュアルと一級品な男なのだ。なんだかんだで説明せずともベイリーの不安要素を汲み取る頭の回転の速さや気遣いまでできる。同性の自分から見たって自分が女だったら彼に惚れていたかもしれない。
「分かってるよ、嬢ちゃんが俺のこと愛してくれてることくらい」
乾いた笑いをこぼすベイリーにハーヴィルは息を吐いた。ベイリーだって人並みには恋愛経験を積んでいるはずだがあの妻の前では全てないものにされてしまうらしい。
(不安って…36の男が、しかも女関係は割とドライだったベイリーがねぇ…変わっちまうもんだ)
ハーヴィルもハーヴィルで思うところがあったがそれを口にしたところで反論されるだけだ。そのまま特に何も突っ込まず歩いて行くと前を歩いている彼女が飲み屋が立ち並ぶ路地へと向かっていく。小路は入り組んでいていて姿は見失ってしまうがお互い先ほどのマーキングと優れた嗅覚のせいでどこにいるかは分かってしまう。多少道に迷いはしたが最終的にとある居酒屋に到着する。
「この飲み屋に入ったみたいだけど…どうする?入るか?」
「そりゃここまできて入らねえって選択肢は無いだろう…ていうか毎晩飲みに行ってたのか?酒がそこまで好きとは聞いてなかったけど…」
はて?とハーヴィルは首を傾げた。それに毎晩飲み屋に行っているなんていったらある程度自分の稼ぎはあるとはいえ財布の変化に気付くだろう。しかし無駄遣いされている感じは一切しない。
「とりあえず考えてもしょうがないだろ。入ろうぜ」
ベイリーの声にハッとして飲み屋のドアを開けるとチリンと音が鳴る。広いホールには無造作に席が並んでおりカウンター、壁側はボックス席、あとはその間を丸いテーブルと椅子が並んでいる。空いている適当な席に腰掛け、改めて店内を見まわした。店内は割と盛況しているようで客層は男性が多いようだ。その中で女2人がいたら目立つだろうが見る限り彼女たちは見つけられない。
「どこ行っちまったんだろうな…確かに匂いはするからここにいるとは思うんだが…」
なにも頼まないわけにもいかないのでとりあえずビールを頼んでしばし店内を観察する。たちこめる酒とタバコの匂いは確かにここに居たら香りが移ってしまいそうだ。
「今日は店員さんどういう格好してくるんだろうな」
「昨日のは可愛かったよなぁ…」
隣の席の男の会話が不意に耳に入って、聞き耳を立てる。
「昨日の見たか?すげぇ際どいバニーの格好してただろ」
「髪の長い子なんておっぱいすげぇから隠すの大変だったわ」
店員さんが際どい格好をする店と聞いて、女の子が接待する店かと思ったが視界に入る店員は普通のウェイターの制服でいたって普通の接客をしている。
(特別な格好をした店員がいるってことか…?)
今この状況でそんなことは関係ないと思いつつもなぜか気になってしまう。そうしてるうちに建物の奥から何かが出てきたのか歓声が上がったのちにすぐさまその周囲に人だかりができる。何事かと思ってそちらの方に耳を傾けると”可愛い”だの”今日も際どい”だの下世話な声が聞こえてきてそのウワサの店員なのだとすぐに察することができる。
「際どい衣装の店員さんだと、見に行ってみるか?」
「俺は嬢ちゃん以外勃たねぇから遠慮するわ」
「いやそりゃそうだが興味本位っていうか…」
そうして歩いてきたその店員さんとやらを見てハーヴィルとベイリーは飲んでいたビールを吹き出した。
紛れもない。そこにいたのは自分たちが探していた妻2人が居たからだ。しかも何故か丈の短いメイド服のようなものを着て。
「お姉ちゃんたちこっちにビール注いでくれ」
「はーい」
ビールサーバーを抱えながら笑顔で接客する2人はみるみるうちにビールを売り上げていってしまう。目の前の光景に呆然とする2人だったが数分経過したところで漸く正気を取り戻す。
「すまないお嬢さん方、こちらでこぼしちまってよ、ふきんくれるか?」
先に動いたのはベイリーだった。声色をいつもより高めにしてすぐに気付かれないようにしている用意周到さ。そんなことにも気づかずエリーは無防備にこちらに近づいてくる。
下着が見えそうなくらいギリギリまで攻めたスカートの丈、胸元は開いてサイズが合ってるのか合ってないのか今にもこぼれ落ちそうだ。
「はい、ふきんですね…こちらをどう────────」
フードの奥から凄まじい鋭い視線を受けてエリーは一瞬時が止まったかのように体が硬直した。そして漸く状況を理解したようで「ヒッ」と悲鳴のような声を上げた。
「お、お姉ちゃんッ!」
そうしてまともに発した第一声は助けを求める声だった。
「どうしたのエリー!?何かあっ───────────」
さすが姉妹と言うべきか、妹の声を聞いて駆けつけてきたミサも目の前の客を見て妹同様硬直した。後ずさる2人の腕を夫たちはほぼ同時に掴んで大きく息を吸った。
「「何してんだバカ女ッ!!!!!!!!!」」
「別に浮気って決まったワケじゃないでしょうよ」
夜は10時を回った頃、2人並んでどこかへと向かう姉妹を2人の男が尾行していた。今夜は早めに寝て、自分の妻が家を出たら村の中央で10時に待ち合わせをする、と作戦を企てていた2人は予定通りに跡をつける羽目になる。こちらの様子がバレないようフードを深く被ると怪しさ満点の二人組の完成だ。
「一応聞いとくけど分からせるって何したワケ?」
「とりあえず問い詰めて3回戦した」
「さっ!?!」
「いや1週間ぶりだったからつい盛り上がっちまってな、あんなにやったのに何事もなく出かけるなんて大したもんだ。まぁお前んちみたいに毎日毎日やってるワケじゃねぇから3回くらいは…なぁ?」
付き合いの長い幼馴染の性事情を聞いてベイリーはわざと「オェ~」と言いながら苦々しい顔をした。ここで自分の性事情が知られていることは敢えてつっこまない。
「てか問い詰めたって…なんか分かったことあったのか?」
「浮気ではないの一点張りだったがキスマーク付けられたくないだのまだ詳しくは話せないだとか怪しさは満点だったな…まぁでも問い詰められた数時間後にこうやって出かけるってことは本当にやましいことはないんだろ」
「そうか…」
結婚してからの期間も関係してはいるだろうが、ベイリーはハーヴィルの浮気してないとキッパリと言える友人が羨ましかった。それと同時にあんなに愛を伝えてくれているのにエリーを100%信じきれてやれない自分に嫌気がさす。
「お前のそういうとこ悔しいけど憧れるわ」
「お前なぁ…あんな可愛い子捕まえといてまだ自分に自信がないとか言うのか?あの子お前以外目もくれないくらいゾッコンだろうが…それこそあの子に失礼だぞ?」
普段は文句ばかり言っているが、隣を歩いている男はどこをとってもトリプルエーな男だ。助平でナルシスト気味なところは玉に瑕だがそれを差し引いても、頭脳、カリスマ性、体力、ビジュアルと一級品な男なのだ。なんだかんだで説明せずともベイリーの不安要素を汲み取る頭の回転の速さや気遣いまでできる。同性の自分から見たって自分が女だったら彼に惚れていたかもしれない。
「分かってるよ、嬢ちゃんが俺のこと愛してくれてることくらい」
乾いた笑いをこぼすベイリーにハーヴィルは息を吐いた。ベイリーだって人並みには恋愛経験を積んでいるはずだがあの妻の前では全てないものにされてしまうらしい。
(不安って…36の男が、しかも女関係は割とドライだったベイリーがねぇ…変わっちまうもんだ)
ハーヴィルもハーヴィルで思うところがあったがそれを口にしたところで反論されるだけだ。そのまま特に何も突っ込まず歩いて行くと前を歩いている彼女が飲み屋が立ち並ぶ路地へと向かっていく。小路は入り組んでいていて姿は見失ってしまうがお互い先ほどのマーキングと優れた嗅覚のせいでどこにいるかは分かってしまう。多少道に迷いはしたが最終的にとある居酒屋に到着する。
「この飲み屋に入ったみたいだけど…どうする?入るか?」
「そりゃここまできて入らねえって選択肢は無いだろう…ていうか毎晩飲みに行ってたのか?酒がそこまで好きとは聞いてなかったけど…」
はて?とハーヴィルは首を傾げた。それに毎晩飲み屋に行っているなんていったらある程度自分の稼ぎはあるとはいえ財布の変化に気付くだろう。しかし無駄遣いされている感じは一切しない。
「とりあえず考えてもしょうがないだろ。入ろうぜ」
ベイリーの声にハッとして飲み屋のドアを開けるとチリンと音が鳴る。広いホールには無造作に席が並んでおりカウンター、壁側はボックス席、あとはその間を丸いテーブルと椅子が並んでいる。空いている適当な席に腰掛け、改めて店内を見まわした。店内は割と盛況しているようで客層は男性が多いようだ。その中で女2人がいたら目立つだろうが見る限り彼女たちは見つけられない。
「どこ行っちまったんだろうな…確かに匂いはするからここにいるとは思うんだが…」
なにも頼まないわけにもいかないのでとりあえずビールを頼んでしばし店内を観察する。たちこめる酒とタバコの匂いは確かにここに居たら香りが移ってしまいそうだ。
「今日は店員さんどういう格好してくるんだろうな」
「昨日のは可愛かったよなぁ…」
隣の席の男の会話が不意に耳に入って、聞き耳を立てる。
「昨日の見たか?すげぇ際どいバニーの格好してただろ」
「髪の長い子なんておっぱいすげぇから隠すの大変だったわ」
店員さんが際どい格好をする店と聞いて、女の子が接待する店かと思ったが視界に入る店員は普通のウェイターの制服でいたって普通の接客をしている。
(特別な格好をした店員がいるってことか…?)
今この状況でそんなことは関係ないと思いつつもなぜか気になってしまう。そうしてるうちに建物の奥から何かが出てきたのか歓声が上がったのちにすぐさまその周囲に人だかりができる。何事かと思ってそちらの方に耳を傾けると”可愛い”だの”今日も際どい”だの下世話な声が聞こえてきてそのウワサの店員なのだとすぐに察することができる。
「際どい衣装の店員さんだと、見に行ってみるか?」
「俺は嬢ちゃん以外勃たねぇから遠慮するわ」
「いやそりゃそうだが興味本位っていうか…」
そうして歩いてきたその店員さんとやらを見てハーヴィルとベイリーは飲んでいたビールを吹き出した。
紛れもない。そこにいたのは自分たちが探していた妻2人が居たからだ。しかも何故か丈の短いメイド服のようなものを着て。
「お姉ちゃんたちこっちにビール注いでくれ」
「はーい」
ビールサーバーを抱えながら笑顔で接客する2人はみるみるうちにビールを売り上げていってしまう。目の前の光景に呆然とする2人だったが数分経過したところで漸く正気を取り戻す。
「すまないお嬢さん方、こちらでこぼしちまってよ、ふきんくれるか?」
先に動いたのはベイリーだった。声色をいつもより高めにしてすぐに気付かれないようにしている用意周到さ。そんなことにも気づかずエリーは無防備にこちらに近づいてくる。
下着が見えそうなくらいギリギリまで攻めたスカートの丈、胸元は開いてサイズが合ってるのか合ってないのか今にもこぼれ落ちそうだ。
「はい、ふきんですね…こちらをどう────────」
フードの奥から凄まじい鋭い視線を受けてエリーは一瞬時が止まったかのように体が硬直した。そして漸く状況を理解したようで「ヒッ」と悲鳴のような声を上げた。
「お、お姉ちゃんッ!」
そうしてまともに発した第一声は助けを求める声だった。
「どうしたのエリー!?何かあっ───────────」
さすが姉妹と言うべきか、妹の声を聞いて駆けつけてきたミサも目の前の客を見て妹同様硬直した。後ずさる2人の腕を夫たちはほぼ同時に掴んで大きく息を吸った。
「「何してんだバカ女ッ!!!!!!!!!」」
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