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番外編6
しおりを挟む「ミサ、俺に隠し事してるだろ?」
「へ!?!」
妹との買い物から帰ってきたミサにハーヴィルは直球で質問を投げかけた。ハーヴィルのまっすぐな視線を真正面から受けたミサはたじろいでしまう。その態度で彼への質問の答えは決まり切っていた。
「毎晩俺に隠れて何してるか分からねぇけどよ、ベイリーも気付いてる。妹まで巻き込んで何してんだ?」
「べ、ベイリーさんまで勘付いてるの…」
「今質問してるのは俺の方だろ」
いつもの砕けた声ではない、真面目な声色にミサはしばし無言になる。流石にここで誤魔化せないと思ったのか彼女は深く息を吐いた。
「まず浮気とかではない、それは誓える」
「まぁこんないい男捕まえといて浮気はねぇだろ」
「理解と高い自己肯定感ありがとうございます」
「なんだって?まだ、話は続きだろ?」
ハーヴィルのモテ経歴からくる自惚れに安堵するが、彼の尋問は止まらない。全身から圧力を発する彼に誤魔化しは効かないのは十分身に染みている。
「それで…ちょっと事情がございまして…今は詳しく話せないというか…再来週!再来週なら詳しく話せるんだけど!」
「再来週ってなんだそりゃ!ンなモンで納得しろってのか?」
突拍子もない回答に当然のように遺憾の意を表明される。さらに再来週というなんとも絶妙な日にちだ。それにその事情とやらだって本当のことを話す確証はない。やはり今夜跡をつけるかと心に決めたハーヴィルはため息をついた。
「わかった、ちゃんと話してくれるって約束するか?」
「…っ!うん、絶対するから!」
こちらが理解の態度を示すと目に見えて明るく答えるミサにハーヴィルは苛立ちを隠せない。反射的に眉間にシワが寄って、咄嗟に俯いた。
(そこまで俺に詮索してほしくねぇのか…あからさまにホッとしやがって…)
「…んで?ベイリーはキスマークつけんのも拒否されたって言われたがそこんとこどうなんだ?」
「あ、はははは…」
痛い質問だったらしい。その苦笑いと乾いた声は遠回しにその言葉が図星だと訴えていた。キスマークつけられたくないことってどういうことだ。ついにハーヴィルの苛立ちは隠しきれなくなっておもむろに立ち上がるとミサの首筋に突然唇を寄せてわざと音を立てて吸い付いた。
「ちょっ、ちょちょちょ…っ!?!?!何してくれちゃってんの!???」
「うるせぇヘラヘラ笑って誤魔化してっからお灸を据えただけだ。旦那の俺が妻であるお前にキスマークもつけられないなんておかしいだろうが」
「普通に恥ずかしいんですけど!!!!!」
「じゃあしばらくは首元が開いた服は控えるんだな」
ああ言えばこう言う、無意味な抗争が繰り広げられて
最終的に経験と物理的な力で打ち負かすハーヴィルに軍配が上がった。
「ぅ゛…」
「言っとくが謝まらねぇぞ、だって俺が同じことしててもお前は俺のこと一切怪しまないなんてこと無理だろ?」
流石にそれには何も言い返せないようでミサはぎこちなく頷いた。彼の言うことはもっともだ。自分がやられて納得のいかないことを自分は相手にしてしまっていて、そんな自分には彼を糾弾する資格はない。何か事情があるにしても、だ。それを隠している以上は文句を言える立場ではない。
「遠回しに別れたいってワケじゃねぇよな」
「そんなはずない!!!!!」
ハーヴィルの言葉にミサはすぐさま反論した。あまりにも勢いのある声色にハーヴィルはやや圧倒されながらも安堵する。この様子では本当に浮気などでは無いみたいだ。
「ハーヴィルにこんなこと言わせてごめん…でも、本当に、別れたいとか、やましいことがあるとかそういうことじゃ無いの。」
明らかに落ち込んでいる妻にハーヴィルもハーヴィルでこれ以上何も言えなくなってしまう。しかしこのまま黙って今夜も行かせるわけにはいかない。せめてものマーキングとして彼女を抱き寄せた。
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