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しおりを挟むベイリーさんがシャワーを浴びている間、私は慌てて荷物をまとめた。ベイリーさんの家に何日もお世話になるわけにはいかないし、何より彼女でもないのにあんなことが毎朝あったら心臓がもたない。
寝室にお礼の手紙と気持ち程度の宿賃を置いて静かに家を出て行った。
でもこれからはどうするべきだろう、お姉ちゃんのそばにはいたいけど…家はないし、お姉ちゃんの家に滞在するわけにはいかない。家を建てる、部屋を借りる財力もないししばらくは魔物を倒してチマチマお金を稼いでからまたここを訪れるべきだろうかと頭を悩ませた。
そうやっていろいろ考えながら適当に歩いていると村の敷地内でも森のようなところにやってきた。その最奥には大きなテントがあって、人の気配がしないので軽く覗き込むと、大きなベッドまで置いてある広い部屋のようなテントだった。昔本で見た東国の遊牧民族の家のゲルというものに似ているかもしれない。
もしかしてこの辺りは外から来た人のキャンプ場みたいなものなのだろうか。とりあえずあのテントから少し離れたところにテントを張ってその中で今後のことを思案した。
そうしているうちに日は落ち、外は暗くなってきている。直ぐ近くで足音がしたので、近くのテントの人が戻ってきたのかと思ってテントから出ると、それは予想外の人だった。
「あれ…?ベイリーさん…?」
「嬢ちゃん?!なんでこんなとこに!」
ベイリーさんは小声で驚きつつも、私をテントへと戻して、彼もその中に入った。
「あ、あの…一体…」
何がなんだか分からない。だが、ベイリーさんは何故だかそわそわして落ち着かない雰囲気で外を気にしている。
「嬢ちゃん探してまさかと思ってここに来たら…本当にそのまさかとは…」
「ここ…もしかしてまずいところでした?」
「ああ、かなりな…見つかるとやばいから小声で話してくんねぇか?」
ベイリーさんの慌てぶりから相当ダメなところだったみたいだ。
「それより私を探してたってなんかあったんですか?」
「なんかも何もねぇだろ…何も言わねぇで手紙だけ残して消えちまうんだもんな…確かにおじさんがダセェとこ見せたからなんも言い返せないんだが…改めて、朝っぱらから迷惑かけて本当に悪かった」
ベイリーさんは突然頭を下げて、私は慌ててその顔を無理矢理起こした。
「ち、違いますよ…、迷惑だなんて…その、ただベイリーさんと過ごして、毎朝あんなことがあると思うと想像以上にドキドキしてしまって…」
「嬢ちゃん…?それは…」
そんな時木々が擦れるような音がして、ベイリーさんはテントの中の電気を消した。そして人差し指を立てて静かにするよう促した。
「それより、だ…なんであのテントがこんな森の中にあると思う?」
「このあたりに…外から来た人がテント張ってるってことじゃないんですか?」
「ちげぇな、あれは儀式用のテントなんだよ」
「儀式…?」
さらに音は近づいてくる。ベイリーさんは咄嗟に私の口を手で塞いだ。そして耳元でそっと説明を続ける。
「ここは神聖な場所でな、婚姻の儀式…夫婦となったものはここで必ず初夜を迎えるんだ。」
初夜…つまり…それって…
「あのテントでセックスするってことだよ。それで生憎今夜は結婚した夫婦がいる…」
ベイリーさんの声色がバツの悪そうな雰囲気になる。そして白状するように述べた。
「終わるまで、いや、明け方あたりまでは俺たちはここを動かないほうがいい。儀式の途中からいる立会人もそろそろ来るからな」
「ひ、人のえっち聞きながらベイリーさんと一晩一緒ってことですか?」
「ま、しょうがないわな…こんなところにテントを張った自分を恨め」
呆気にとられる間も無く、儀式は始まったようで甘ったるい情事の声が聞こえてきてしまう。
「あんっ♡あ、そこっ…だめ…っ♡」
「ここ、好きだろ?こんなに濡らして…俺が今日をどれだけ待ちわびたか」
他人の情事など見たこともない私はその声とそれと合わせて聞こえる粘着質な音に全身沸騰しそうに真っ赤になった。
暗闇で視覚以外感覚が鋭くなった私は突然ベイリーさんに抱き寄せられて過敏に反応してしまう。
「昨日は初めてって分からねぇにしろ…乱暴にしてすまなかったな。女の子にとって初めては大事なものだろうに…」
「な、なんで…私が初めてって…」
「昨日は興奮しすぎて気付かなかったが…今朝シーツを交換する時血の匂いがした…」
初めてだなんて知られたら面倒くさいと思われないか怖くてそれを隠して彼を誘ったがそんなのは直ぐにバレてしまうらしい。あまりの彼の鋭さに嘘をついたり誤魔化すのはやめようと誓いそうになる。
「なぁ、おじさんにチャンスをくれねぇか?」
「チャ、チャンスって…なんの、ですか?」
「嬢ちゃんと付き合えねーかっていうチャンス」
耳の後ろをちゅっと口付けられて、熱くなった体は性感まで呼び起こされる。ベイリーさんはそれをどういうつもりで言ってるんだろう…
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