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act4 見せちゃダメ
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しおりを挟むいくら獣人とはいえクマの爪で引っ掻かれて2日で治る人がどこにいるのだ。私は野菜を奪い取ってとりあえずじゃがいもの皮を剥いていく。
「お前絶対ビーフシチューとか作ったことねぇだろ」
「へ、偏見!…たしかに、ない、けど…」
「っつってもお前聞きそうにないしな、なら一緒に作るか」
「それを言ったら…エリスさんも折れるつもりはないんでしょ」
「そりゃそうだ。それなりにいい肉買ってきたんだからな、微妙な食事にされちゃ困る」
地味にひどいことを言われた気がするが聞かなかったことにする。精々簡単な料理しかしない私は小学生でもできる皮むきに専念した。その間にもエリスさんは慣れた手つきで既に一口大に切られた牛肉の塊を炒めている。口の悪さと横暴な態度さえなければ本当にいい男なのに相変わらずもったいない人だ。
「…昨日から様子おかしかったけど、なんかあったのか?」
「へ?」
「俺の勘だけど…お前俺のこと避けてただろ」
いきなり図星をつくような言葉を言われて思わずピーラーに手を巻き込むところだった。その動揺は心の中にギリギリ留めて平然を装って「何の話?」と返す。
「はぁん…それを貫き通すつもりか?」
「た、ただ…近頃展覧会もあるしあんまり人と話す余裕ないっていうか」
「へぇ…過去二年毎日欠かさず付きまとってたくせに今更…ねぇ?」
めちゃくちゃ怪しまれてる…こうやって追いつめられると付き纏っていた過去の自分が恨みがましい。
「まぁそういうことにしてやるよ…今は普通に話してるしな」
絶対に納得いっていさそうだが話が終結しそうでほっと息をついた。…というか今更だけどこの状況は彼女への裏切りになるのではないか。協力すると言いながら彼を家に招き入れて一緒に夕飯なんて…友人関係の範疇は超えているような気がする。そもそも生理だという嘘をついていなければセックスまでしている仲なのだからどうあがいても弁解の余地がないのだが。だからといって彼女に思いを打ち明けられた時点で「実はエリスさんとはセックスを代償にモデルをしてもらっている仲なんです」とは口が裂けても言えない。それを考えると早々に彼との関係を解消すべきなんだろうが…どう話の流れをもっていこう。
「エリスさんって好みの女性のタイプとかあるの?」
とりあえず少しでも彼女にアドバイスが出来るよう探りを入れてみる。
「……………今の話の流れでなんでそういう話題になるんだよ」
「いや、さっきまでの話題とかは関係なく!ただ単純な好奇心。いままで彼女がいなかったわけでもなさそうだし」
「何で俺に彼女いなかったわけじゃないって思うわけ?」
「だって童貞だったらあんなにえっち上手じゃないだろうし…雰囲気作りも…甘いっていうか…」
自分で言って顔が熱くなってきた。何を言っているんだろう私は。横でエリスさんはニヤニヤしてるし嫌な予感しかしない。
「まぁそうだよな、お前毎回気持ちよさそうに身悶えてるしな…頭撫でると幸せそうに擦り寄ってくるし」
「あぁもういいでしょ!質問に答えてよ!」
「俺の好みが知りたいからってんなムキになんなよ」
軽くあしらわれたが誤解はされたままだ。これじゃあ私が彼に好意を持ってこの質問をしているみたいじゃないか。
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