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act3 ハッピーバースデー
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しおりを挟む「誕生日じゃなくても…甘えたい時は言って?私でよければ…いつでも相手になるから…」
「ん、なんだ…?いつもはキーキー言ってくんのに…今日はやけに優しいな…」
「いいからっ、ね?」
彼の頭を撫でると少し黙り込んだ後に私の首のあたりに擦り寄った。くすぐったいけど珍しい雰囲気が心地よくてその後も頭を撫で続ける。
「頭…撫でられんのっていいな…お前の、匂いも安心する」
「に、おいって…」
「甘くて、あと少し石鹸の香り…それに俺のマーキングした匂いが僅かに香って…落ち着く」
大きな腕が私の背中に回ってそっと抱きついてきた。甘やかすのは兄弟たちで慣れている。もう反対の手で背中をぽんぽんと優しく叩いて眠りを誘った。
「ん、きもち…シャノン…もっと…」
私よりも二回りも体格のいい彼が甘えてくるのは新鮮で、思わず頬が緩んだ。それと共にいつもはやられっぱなしの彼の優位に立てたようで気分がいい。
「あ、でも…今日は水曜日だから泊まれないよ?明日登校の見回りで朝早いし、だからそろそろ…」
「ダメだ、泊まっていけ。外もう暗いし…危ないだろ、それに…帰したくない」
彼の腕の力が強くなって逃すまいと引き寄せられてしまう。帰したくないという声がやけに甘ったるくて体が強張った。
「帰ろうっていうなら…またセックスして…ぐずぐずにとろかして足腰立たなくしてやるぞ?」
「泊まらせていただきます」
彼の言葉に間髪入れずそう答えた。足腰立たなくなるのは非常にまずい。彼がそう言ったら本気でやるだろう。
「じゃあ今日はもう寝るか、ほら…腕枕すっから頭乗せろ」
エリスさんは甘やかされモードは終わりなのかいつものように腕を伸ばして私の頭を受け入れる体制に入る。
「もういいの…?」
「ん、甘やかされんのもいいけど…俺はお前を甘やかす方が性に合ってるみたいだ」
確かに、私もちょっとだけ物足りない気はしていたが。おずおずと頭を乗せると体を抱き寄せられる。厚い胸板と筋肉に素肌同士で触れ合う感触。慣れてるはずなのにそれが何度味わっても心地よくてその感触を楽しむようにしがみついた。
「ん、よしよし…今日はいろいろとありがとな」
「ううん、改めて…おめでとう」
甘やかされるのは本当に気持ちがいい。意識がとろんと蕩けてすりすりと頬を擦り寄せる。それに応えるようにエリスさんも撫でてくれて、そっと顔が近付いた。
「可愛い、シャノン…来年は…お前の誕生日も祝ってやろうな」
「んっ、む…っ」
(しあわせ…)
キスをしながら溶け切った脳でそう感じた。彼に彼女ができて、こういう関係が終わったら私はどう思うんだろう。想像しただけで胸の奥がモヤついて、自分でもよくわからないそれをかき消すように彼の脚に自分の脚を絡めた。
「なんだ、まだシ足りないのか?」
「そうじゃなくて…今だけは私だけのエリスさんでいて欲しいなって…思って」
「…お前以外いないよ、俺を求めるような物好きは」
その言葉に安心すると共に胸の奥がきゅう、と甘く締め付けられる。前髪をどうにかしたらどんな女性だってイチコロなのに…と思いつつ、今は私だけの彼でいてほしいと思う狡い私は、そうは言わず彼の腕にただ愛撫され続けるのであった。
act3 ハッピーバースデー fin
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