約束は後先を考えて!

めぐみ

文字の大きさ
上 下
28 / 36
act3 ハッピーバースデー

10

しおりを挟む

「誕生日じゃなくても…甘えたい時は言って?私でよければ…いつでも相手になるから…」

「ん、なんだ…?いつもはキーキー言ってくんのに…今日はやけに優しいな…」

「いいからっ、ね?」

彼の頭を撫でると少し黙り込んだ後に私の首のあたりに擦り寄った。くすぐったいけど珍しい雰囲気が心地よくてその後も頭を撫で続ける。

「頭…撫でられんのっていいな…お前の、匂いも安心する」

「に、おいって…」

「甘くて、あと少し石鹸の香り…それに俺のマーキングした匂いが僅かに香って…落ち着く」

大きな腕が私の背中に回ってそっと抱きついてきた。甘やかすのは兄弟たちで慣れている。もう反対の手で背中をぽんぽんと優しく叩いて眠りを誘った。

「ん、きもち…シャノン…もっと…」

私よりも二回りも体格のいい彼が甘えてくるのは新鮮で、思わず頬が緩んだ。それと共にいつもはやられっぱなしの彼の優位に立てたようで気分がいい。

「あ、でも…今日は水曜日だから泊まれないよ?明日登校の見回りで朝早いし、だからそろそろ…」

「ダメだ、泊まっていけ。外もう暗いし…危ないだろ、それに…帰したくない」

彼の腕の力が強くなって逃すまいと引き寄せられてしまう。帰したくないという声がやけに甘ったるくて体が強張った。

「帰ろうっていうなら…またセックスして…ぐずぐずにとろかして足腰立たなくしてやるぞ?」

「泊まらせていただきます」

彼の言葉に間髪入れずそう答えた。足腰立たなくなるのは非常にまずい。彼がそう言ったら本気でやるだろう。

「じゃあ今日はもう寝るか、ほら…腕枕すっから頭乗せろ」

エリスさんは甘やかされモードは終わりなのかいつものように腕を伸ばして私の頭を受け入れる体制に入る。

「もういいの…?」

「ん、甘やかされんのもいいけど…俺はお前を甘やかす方が性に合ってるみたいだ」

確かに、私もちょっとだけ物足りない気はしていたが。おずおずと頭を乗せると体を抱き寄せられる。厚い胸板と筋肉に素肌同士で触れ合う感触。慣れてるはずなのにそれが何度味わっても心地よくてその感触を楽しむようにしがみついた。

「ん、よしよし…今日はいろいろとありがとな」

「ううん、改めて…おめでとう」

甘やかされるのは本当に気持ちがいい。意識がとろんと蕩けてすりすりと頬を擦り寄せる。それに応えるようにエリスさんも撫でてくれて、そっと顔が近付いた。

「可愛い、シャノン…来年は…お前の誕生日も祝ってやろうな」

「んっ、む…っ」

(しあわせ…)

キスをしながら溶け切った脳でそう感じた。彼に彼女ができて、こういう関係が終わったら私はどう思うんだろう。想像しただけで胸の奥がモヤついて、自分でもよくわからないそれをかき消すように彼の脚に自分の脚を絡めた。

「なんだ、まだシ足りないのか?」

「そうじゃなくて…今だけは私だけのエリスさんでいて欲しいなって…思って」

「…お前以外いないよ、俺を求めるような物好きは」

その言葉に安心すると共に胸の奥がきゅう、と甘く締め付けられる。前髪をどうにかしたらどんな女性だってイチコロなのに…と思いつつ、今は私だけの彼でいてほしいと思う狡い私は、そうは言わず彼の腕にただ愛撫され続けるのであった。

act3 ハッピーバースデー fin
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!

臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。 やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。 他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。 (他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)

処理中です...