剛柔なお前の為。

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ep 115 大河のお願い

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大河は山口教師の所に駆け寄っていく。


山口教師は妄想デートを邪魔されて少し不機嫌だった。


大河 「山口先生!ありがとうございます!おかげで泳げそうです!!」


山口教師 「ああ、よく頑張ってたな。」


大河は目を細めて、笑いながら話す。



大河 「先生!俺、人生で初めてなんです。…泳げるかもしれないってw…嬉しくて!」



山口教師 「そ、そうか/////」
山口教師 (そんな無邪気に笑わないでくれよ/////)



大河 「山口先生!!!お願いがあります!!」


山口教師 「?っ!?…ん?な、なんだ?」



山口教師は大河がいきなり大きく声を出してびっくりするがしっかり聞いている。



大河 「その……もし、放課後お時間があれば泳ぎを教えてくれないでしょうか…今なら先生の指導に耐えられそうなんです……30分だけでもいいんです!!お願いします!!」


大河は山口教師に頭を下げる。
 

山口教師 「おぃ!ばか!顔あげろ。…ほら。…… 少しなら、時間作れるから放課後すぐに俺の所にくるんだぞ?」


大河は顔をあげる。


大河 「いいんですか?!」



山口教師 「ああ!水泳部は屋内プールで、屋外のプールは使ってねーし!」 


大河 「ありがとうございます!俺早く先生と皆とで泳げるようになりたいんです!先生の泳ぎも見てみたいです!」



大河は自分より出来る人間を良く観察し、吸収していく為、自身の成長材料という意味合いだったが山口教師は少し違うように捉えたようだ。



山口教師 「お、俺とも泳ぎたいって////?
おれの泳ぎはそんなに上手くねーぞ////選考が違うし…」
山口教師 (大河ぁ、期待しちまうだろ////)




大河 「あ、一緒に入れなくても監督して貰えれば大丈夫ですので…」 


山口教師 「だめだ!!!」

大河はビクっと驚く。



山口教師 「あ、いやその、側にいないと何かあった時も危険だからな!俺も泳いでやる!!」


大河 「ありがとうございます!!…ではまた後で!!」 



大河は一礼をして、急いでシャワーを浴びる。


山口教師はプールを見つめながらため息をつき、呟く。



山口教師 「…教師失格も良いとろだな…」
山口教師 (あんな、真っ直ぐな生徒見た事がねー。まだ子供だからか……それとも青年になったからか……大河。)




大河はシャワーを浴びて、制服に着替えて外に出ると、武藤と相良が待ってくれていた。


大河はタオルで頭を拭きながらお風呂上がりのようになっている。


武藤 「お、来たなー。山口にでも怒られたか?w」

大河 「いや、放課後自主練に付き合って貰えるように頼んだだけだw」


相良 「俺達の顧問なのになw でも、タイガー、お前偉いなー。」
 

大河 「ん?なにがだ?」


相良 「出来ねー事から逃げ出さねーからすげよー。」


武藤 「それな。…俺はお前が羨ましいー。」

 

大河 「そーかー?俺は泳げるお前達が羨ましい……なんかさ、プールあとって身体ポカポカしねーか?w」


武藤 相良 「「わかる!!」」


大河 「だろー!!!ww」

3人は笑いながら、教室にもどった。

ちょうどチャイムがなり、昼休みになった。


相良は柔道部員と学食に向かった。


相変わらず武藤、大河は一緒にご飯をたべている。

大河の席は1番後の窓際である。


日が指して、皆嫌がる席だが大河は好きだったため大河の特等席になった。



大河 「なー、晃。この前の話なんだけどな」


武藤 「んー?」


大河 「お前が告った話。」


武藤 「んご!?////ここでか?!」


大河 「場所変えるか?」

武藤 「いや、大丈夫だけど////」
武藤 (こういう所が肝がすわってんだよなー)


大河 「お、俺は…」


大河の表情がなくなった。

この時間は2人にとって体感的にはかなり長く感じられる。

無言の時間。


大河は目を開けたまま、片方の目尻から水滴が落ちそうだった。

武藤は大河に何もせず自分の肩にかけたタオルを大河の頭にかけた。


武藤 「…大河。言っただろ…何があってもお前の親友だって……」
武藤 (そんな顔すんなよ………させたのはおれか。)


大河 「ごめん。…ずっとおれの親友でいてくれて。……ありがとう…」


武藤は大河の頭を掛けたタオルでガシャガシャと拭く、プールと武藤の匂いとが大河を包む。


武藤 「飯食うぞ!!!w あと部活の合間に様子見にくっからw」



大河 「頑張るから応援してくれw」


2人の会話が気になると女子生徒達だが、会話が聞き取れれないのを残念におもっていた。


工藤ミカは2人のジャレ合いを妄想しながら脳内でアテレコを付けていた。


「ミカちゃん、ガン見しすぎっ」



友達から注意されるまで、工藤は視線を送り続けていた。


所変わって、翔座の昼休み。


翔座は浩二に電話をいれた。


浩二 「はい、もしもし。」


翔座 「俺だ。昨日の事なんだが。」

浩二 「ああ。」


翔座 「明後日の夜時間あるか?」

浩二 「………大丈夫だ。時間と場所は?」


翔座 「21時からだ。駅近の飲み屋街の1番奥のホテルだ。分かるか?」


浩二 「わかった////…これは大河の為だからな!」


翔座 「勿論だ!…すまん、ありがとう。」


浩二 「おう、またな。」


浩二から電話をきり、翔座は画面を見つめている。


翔座は浩二と出会いたての頃、本当に仲のいい兄弟のようにはしゃぎ回っていた。


その度に和泉から叱られて、また繰り返す。



若き日の思い出に酔いしれている翔座であった。




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