剛柔なお前の為。

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ep 12 坂鬼家の休日

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-----------坂鬼家の休日-------------------



朝がきた、大河が時計をみるとam 7:00前。


大河は携帯をみると、武藤から連絡が入っていた。

寝落ちしてしまったらしい。



《明日の12:30駅前に集合なー!》とある。


「わかった!」と連絡をする。



気持ちよく背伸びをして、横をみるといつも隣にいる巨漢の弟。相変わらず大河にべったりだ。


大河は翔吾の頭に手を乗せる。


大河(コイツ学校では甘えないんだよなー…呼び方も兄ちゃんじゃなくて、兄貴だし…)


大河はなんだか少し寂しそうである。


弟から甘えられるのも内心満更ではないのかもしれない。


大河は目が冴えて、翔吾の片腕をそっと退ける。


いつも通りの習慣の始まりだ。


トイレに行きリビングの電気を付ける。
まだ、誰も起きていない。 


坂鬼家の休日の朝は平日より少し遅く始まる。
大河ゆったりと朝を満喫する。


コップに水をくみ、母親の所へ行く。 


水をかえて、リンを2回鳴らし手を合わせ目を閉じる。


ゆっくりと目を開けて呟いた。



大河 「……今なら。」


大河は道着に着替え、母親袴を着る。


人の尋常を捨てるようだ。


リンの音が聞こえて、翔座が起きてきたようだ。

翔座 「おはよー、大河ぁ、コーヒー入れてくれるかぁ?」


翔座はお願い言いながら、ふすまを開く。


すぐさま翔座は道着を着た大河の後ろ姿が目に付く。


翔座 「…、おい。、何でまた。」


翔座の声は、か細く聞こえない程の声で悲しく震えている。

大河は翔座の方へ振り返る。


大河 「おはよっ、コーヒーな、ちょっとまっ」



翔座はすぐに、大河を強く抱きしめた。


絶対離さないという意思を込めて。


大河 「っ、父さ、苦しぃってー」

翔座 「駄目だ!!お前は俺の子供!和泉の子供なんだぁ!!……くっぅ。。。。」


翔座は涙しながら、抱きしめていた。



大河は一瞬目を見開き、驚きで身体が硬直してしまった。 

しかしすぐに、ふっと笑いながら翔座をゆっくりと抱き返す。



大河 「……父さん、大丈夫だ。」



翔座 「ぇ??!…。」

翔座は目を見開くと、涙が止まる。



大河から抱き返され、翔座に伝わる安心感は以前にも感じた事あるものであった。


翔座 (和泉ちゃん?)



翔座は大河を抱きしめながら、仏壇の前にある和泉の写真を見て、大河を解放した。


大河 「…コーヒーいれるよ?」


翔座 「…ああ。」


大河 「…でも、その前にに見せておきたい事がある。」


翔座 「な、なんだ?…」


恐る恐る聞いてくる父、翔座に対して大河は母、和泉にそっくりの笑顔をみせる。



翔座 「っおい。」

大河 「ついてきてくれっ。」

翔座 「おいっ!大河ぁ?!」

大河は翔座の腕を掴むとずんずんと、廊下を歩き道場へ向かう。



翔座 「なにすんだ?まったく…」

大河 「…父さん。こっち。」

大河は普段使っている畳の道場のではなく。

隣にある、引き戸に手をかける。

翔座 「?!……。」




大河は引き戸を開けると畳の道場ではなく、板張りにされた道場に入った。

翔座は動揺しながら大河についていく。

この道場は生前、和泉が使用していた場所である。

和泉だけの部屋。


何故か誰も、今まで和泉の道場を使わなかった。

母のだからと誰も使わなかったのだろう。



翔座 「久しぶりに入ったぜ……ずいぶんと綺麗になったなぁ。…大河がやったのかぁ?」


懐かしさからか、自然と翔座の気分も上がる。


大河 「修行でも掃除もしっかりしてたからな。」


翔座 「…修行って?」


大河 「…………鷹虎流柔術」


翔座 「………お前知ってたのか?!」



大河 「………なにを???………俺がやってる柔術は鷹虎流って事だけだ。母さんからは何で俺だけにさせるのかは教えてくれなかった。」



大河 「……父さんは知ってるんだろ?何で俺に、この柔術をさせたか…… 教えてくれないのか?」

大河は寂しそうに真剣な声で翔座に問う。

翔座 「…すまん大河、もう少し待っていてくれ、必ず教えてやるから、な?」


翔座の表情をみると大河は「わかった。…」とだけ答える。


翔座 「でーー、大河?、見せたいのはこれか?確かにここは懐かしい場所だが。………お前その格好。」


大河 「もう少しで、できそうなんだ。鷹虎流柔術の真髄が。」

大河がゆっくりあるの物に視線を送る。

続けて翔座も大河の視線の先を追った。


視線の先には掛軸があり、こう書かれていた。

「無心不殺」

少し2人は沈黙を保つと大河が切り出す。

大河 「父さん、ちょっとだけ勝負してくれないか?」


翔座 「だめだっ!!!やらんぞ俺は。」


翔座は即答で却下し、腕組みをする。
そっぽを向いてしまった。


大河は両手で翔座の腕を掴む。


大河 「父さん……頼む。」
まっすぐと、翔座をみる。


翔座はぐぐぐーーと、うなるが大河のお願いに折れる。



翔座 「……あぁ。、わかった。」


大河 「ありがとうっ!」


不意に無邪気に笑う大河に翔座も困った顔で笑う。


翔座は準備運動をしている。

大河をチラッとみるが全く動かない。


翔座 「おーい、大河ぁ!怪我するからお前もしとけよー。」


それでも、動かない。
大河はただ、深く。深く息をしている。


大河が口を開く。


大河 「父さん、全力頼む。じゃないと意味がない。修行の制限時間は5分だ。」


父親の翔座ですら聞いたこのない、大河の深い声に圧倒される。



翔座 「…………はーーーーーーー。わかった」


翔座はため息ではなく、空手の呼吸。息吹をして答える。

集中しているのだ。

お互いが向き合った。

翔座 「いくぞ?」

大河 「うん。」



もの凄い速さで距離を縮める翔座。
翔磨よりも鋭く速い正確な攻撃をたたみかける。


素足のため板張りの尖った摩擦音がより高く響く。



翔磨、翔吾の父親でもある翔座は2人の武術の師匠でもある。
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