剛柔なお前の為。

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ep 7 坂鬼家の夜

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-------所変わって翔磨のベット--------


 大河は、何かあたたかい温もりと匂いを感じた。


目を覚ますと兄の翔磨が大河を抱きしめている。


めったにない事だからか、じっとしている他なかったのだ。



大河はうっすら目と目をあけ、翔磨の方を見上げると、すぐに目があった。



翔磨 「ん?? 起きたか?」

とニヤっと笑う。



大河 「兄貴はっ?身体平気か?」

と、焦って言う大河。


翔磨 「大丈夫だ。けど、俺たち親父から確実に怒られるだろうから、覚悟しとかねーとなぁー?w」



ケラケラと笑うだけ。


大河は冷静になり、かなりマズいなと考えていると翔磨が問いかける。



翔磨 「最後、俺がお前を堕とそうとしたとき、お前俺に何をした?何故できた?」



翔磨の真剣な眼差しは、多分格闘家ゆえの性分なのだろう。

大河はゆっくりと話しはじめた。



大河 「あの時、意識が飛びそうになったら母さんの言葉が不意にでてきたんだ。……“呼吸をとめて流されろ”って」



翔磨 「……………。」


大河 「だから、もがかずに流されてたら、堪えることができた。…最後に兄貴に掛けた技は最初とおなじ掌底だ。」



翔磨 「ただの掌底であそこまでぶっ飛ぶかよ。」



大河 「一本の腕だけならな。」



翔磨 「ッ!!??」



大河 「あの時顎にそえていた腕の肘をもう片方の手で一緒に持ち上げただけだ。普通の威力より2倍の力なったけどな。」



翔磨 「なるほどなぁ、距離が近かったからできる系統だな、そりゃ」



敗北の原因を知り、ニヤリと笑う強面の兄に大河は少し恐怖と凄みを感じた。


翔磨 「…少し休もーぜ…」

大河 「…うん。…寝る…」




大河は30分くらい寝て、時計を見るとpm6:30に近づいていた。


少し身体重いが、何とか動ける。 


大河は「ょし!」と気合いを入れ起きる。



翔磨 「んぁ?なんだ、飯か?別にいいだろ今日ぐらい。…」


と翔磨は微睡ながら大河を見る。



大河 「大丈夫、作れるぜ。色々食材もあるし……何食いたい?」



翔磨 「唐揚げ……」


そっぽを向いてボソリと呟いた。

大河 「わかったwすぐ用意する」

大河は立ち上がり大きく背伸びをした。


翔磨の部屋から出て行き階段をおりてキッチンに向かう大河であった。


翔磨は大河の後ろ姿を見るなり

翔磨 (デカくなったなー……)

としみじみ思うのであった。



------所変わって坂鬼家の夕食--------


大河は夕飯の準備を色々してる間に風呂掃除と洗濯物を取り入れて畳んでいく。




すると玄関から「ただいまぁ~ッ」と翔吾の声が響く。



翔吾は廊下に荷物をドカッと置くとキッチンへまっすぐ進む。



翔吾「腹減ったーー。。今日の飯は何ぃー?」


大河「おかえり。今日は唐揚げだ。風呂沸かしてあるから先に入ってこい!」


翔吾 「しゃっ!唐揚げとかテンションあがっ…………。」


一瞬翔吾が完全に動きが止まった。


動いたと思えば物凄い形相でこっちに迫ってきた。



大河 (ぁ?!やべっ!!)


大河は咄嗟に顔を背ければ、翔吾はガシッと俺の両肩を掴んだ。


まっすぐに俺を見れば眉間にシワがより、目は怒りと悲しみが混同していた。



大河 「クソォ゛!!!」



と、吐き捨て俺のシャツをガバッと上まで引き上げた。


大河 「なっ!ちょ、おい!何すんだろ!あぶねーだろ!油つかってんだぞ!!!」


と、離れるよう牽制するが



翔吾 「誰にやられた?!おぃ!!誰だよ!!ッ」

と迫ってくる。



翔吾は物凄い重低音の大声をだしていたら、二階から翔磨が降りて来た。



翔磨 「どーしたぁ?!うるせーぞ!近所迷惑だろぉーがぁ!!」
 

翔吾 「どーしたもこーしたもあるかよ!!今それどころじゃ……。」



またもや翔吾は翔磨を見ると、完全に固まってしまった。


しかし、翔磨の「チッ」舌打ちが聞こえると震えながらだが、翔吾は声を発した。



翔吾 「おぃ。なんだよ、まさかこれ…どう言う」



翔磨 「見ての通りだ、翔吾。今日俺と大河は死合い(しあい)をやった。」


翔吾は拳握り、下を向いてしまう。


翔磨 「そして、俺は大河に、もう一度負けてしまった。」


翔吾は振り返り大河を見つめ、嘆き問い掛ける。



翔吾 「な、なー、兄ちゃん、……大河兄ちゃん?ジョーダンだよな?w…ただの兄弟喧嘩だろ?な?そだろ?!」


大河は目を逸らしながら答える。


大河 「いや、本当なんだ……また俺から申し出た………ごめん。」



翔吾 「……そうか。」


翔吾は再び下をむき、落胆する。


しばらくの沈黙が続く。


唯一の3人の兄弟の心を沈黙が死ぬほど苦しめた。


翔磨 「おぃ、翔吾。お前ひとまず風呂入ってこい、…ほらっおいで。」



翔吾は何も言わず、翔磨と風呂場へ向かった。


大河は何故かお互い傷つけあった当事者2人よりも、それを聞いた翔吾があんなにも、嘆きと悲しみを見せるなんて思いもしなかったのだ。


思いたくなかったのだ。

いたたまれなかった。


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