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ep 5 肉親との死合い。
しおりを挟む---------所変わって坂鬼宅------------
大河は家の玄関の鍵をあけ扉を開く。
「ただいまーっ」と声をはる。
手を洗い、自分の部屋に戻る。
そして、制服を脱ぎぴったりなアンダーシャツ1枚になると、道着に着替えた。
下の袴は亡き母、和泉のお下がりである。
そして仏壇の母の所に行きリンを二回鳴らして手を合わせる。
大河 「………よし。」
これを着る事は彼にとって、人としての尋常を捨てる覚悟を決めた事である。
坂鬼家には自宅である母屋の後ろに、畳の道場と今は使われていない板張りの道場、そして地下にある総合格闘技場が存在する。
大河は階段を降りて地下にある、兄の翔磨がいる総合格闘技ジムに向かう。
大河 「こんちわー」
と覗くようにリングを見渡す。
何人かの選手は
「大河くんおかえりー」と笑っている。
そして兄を見つけ、目が合う。
こちらに向かってくる。
翔磨 「お、大河ぁー、おかえりー。」
翔磨は茶化しまじりに大河の頭をなでる。
しかし、大河は一切同様しなかった。
そして顔色一つ変えず、口を開く。
大河 「……お願いします。」
一礼し、翔磨の目だけを見つめる。
お互い数秒見つめ合う。
翔磨はため息をして、後ろを向いた。
翔磨 「……わかった。場所は畳の間だな…」
翔磨は低い声で答える。
すると、ジムの中堅選手や古株選手たちが翔磨に詰め寄る。
「おいっ!翔磨!!また”あれ”をやるんじゃねーだろうな!お前、正気か?!」
「そ、そーですよ!翔磨さん、流石に今日はヤバイですって!!翔座のオヤジさんもいないんですよ!!もしもの事があったら!」
翔磨 「うるせー!!少し黙ってろ。精神統一してるんだこっちは。」
翔磨 (アイツのあの眼、久しぶりに見たぜ。本気だな大河……)
武者震いか、大河への恐怖かどちらか分からず翔磨は、一度拳を見つめ、握りつぶした。
翔磨はタオルを肩にかけ、階段を登って畳の道場に向かう。
選手達がザワザワとしている中、中堅層数名が地下ジムに残った。
彼らは主軸に立ち、ざわついている者達にトレーニングに戻るよう指示する。
そして、ジムの中で最も実力のある者4名が急いで翔磨の後を急いで追う。
ジムのドアが閉まると同時に大河と歳が近いくらいの選手達が口々に呟く。
「さっきの大河君の眼みたか?ヤベーって!」
「あぁ、俺も見ちまった、、何なんだよあの気迫…いつもの大河じゃーねって!ありゃ…」
「兄弟で…やり合うんだろ?……」
「お前らうるせーぞ、私語してんじゃねー!!っ!」
中堅選手から一喝が入る。
しかし皆内心、
「どうなるのか。」
「実際に見てみたい。」
などの心配と興奮の最中にいたのだ。
------所変わって畳の間。
肉親の死合い------------
翔磨は地下の階段を上がり畳の間に向かい進んでいる所、最古株の田中に呼び止められらる。
田中 「翔磨、本当にいいんだな?」
田中の視線からは心配と寂しさが伝わってくる。
翔磨 「あぁ。俺はあいつの兄貴として、武術者として、あいつの為にやる。只それだけの事だ。………」
田中 「わかった……だが、翔座さんには必ず連絡は入れておく。これは年長者として大河君の保護者としてだ。…」
コクりと、翔磨は頷き畳の間の道場にたどり着き引き戸に手をかける。
田中は他3名に
「いいか?最悪の場合、4人がかりでも止めるぞ…。」と念を押す。
広い道場の少し奥に胡座をかいて背を向けて座っている大河がいる。
翔磨 「来たぞ。」
大河は声が掛けられると、翔磨の方向に向きを変え正座する。
田中を含む同伴者4名は2名ごとに、左右壁側に別れて座る。
見ている側は、緊張と狂気で気持ちが悪くなりそうである。
翔磨 「堅っ苦しいのは、無しだ。いつでもヤレるぜ。」
大河 「……わかった。」
大河は一言だけ言い放ち立ち上がる。
死合いが始まった。
ゆっくりと、一歩ずつ、すり足でお互いの距離を近づけていく2人。
ジリジリと詰める。
お互いが届く距離まで詰める。
翔磨の方がリーチが長い分、手を出せば確実に当たる。
しかし翔磨は、下手に手を出せば簡単に腕の骨を持っていかれると翔磨の”野性の感“が危険を察していた。
現に彼は過去一度だけ、大河に腕をやられた経験があるからだ。
(まだ詰めるのか?!)
(近すぎるぜ!ありゃ!)
同伴のギャラリーは戸惑いを隠せない。
翔磨はファイティングポーズを取りつつ、ただ距離を縮める。
翔磨 (何を企んでやがる?コイツ…うかつに手が出せねー。)
拳一個分の距離達した瞬間、大河から動いた!
翔磨 (!!⁈来る!!)
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