木の実と少年

B.Branch

文字の大きさ
上 下
34 / 45
第1章

魔剣誕生。

しおりを挟む
「カリン様、どうぞ」
キリが黄金色の欠片を差し出した。

『これを剣に嵌め込むの?』

「はい、カリン様の魔力と一緒に剣に注ぎ込んでください」

ほうほう、やってみましょう!!

魔力を込めて黄金の欠片を剣に押し当てる。
次の瞬間、剣がまばゆい黄金の光に包まれた。

黄金の光!?や、当然といえば当然だけど・・・
まさか、また、派手くさい黄金剣が誕生してしまうの!?
望んでないよ!!目立っちゃダメだから!!

『質実剛健な機能重視でお願いします!!』

切実な思いで光を見つめていると、黄金の光がどんどん剣に吸い込まれ小さくなっていく。

「お」
『あ~』
「おお」

みんなが現れた剣に声を上げた。

お~、一緒でした。
全く完璧に寸分違わず一緒。
手入れはされているが、華美装飾の一切ない初心者向けの普通の剣。

『つまんないね~』

レンちゃん・・・絶対、金ピカな悪目立ち剣を期待してたよね?
しかも、理由は「ちょっと、面白そう」だよね?
実は私も内心思ったけども!!

『ウィル、剣を抜いてみてくれる?』

「あ、うん」

ウィルが柄に手をかけ、ゆっくりと剣を抜いた。

あっ、ありますね。
装飾ありました。
剣の中程から先にかけて、金の花のが浮かび上がっている。
華美にならず、上品で美しい精緻な意匠だ。

「すごい・・・」

ウィルが、指で刀身をなぞりながら、嬉しそうに呟いた。

うん、いいじゃないですか!!
あとは、性能ですね!!機能重視になっているはず!!

『ウィル、あんまり切るものないから、その積んである石でも崩してみてよ』

「うん、・・・えいっっ、うわっと・・・」

ウィルは、石を崩そうと軽く剣を振った瞬間、バランスを崩して前によろめいた。

大丈夫?
お?お~、石は崩れなかったらしい。
でも、それはウィルが空振りしたせいではない。

「切れ、ましたね・・・」

キリが呆然と呟いた。

うん、切れた。
不安定に積み上げられた石たちが、軽く刃を当てただけで、下部分の石は崩れることなく横なぎにすっぱり切れている。
レーザーか!?ってくらいの切れ味だ。

機能重視って言ったけど~・・・切れすぎでしょう?
なんか、他にもとんでも機能がついてそうで怖い・・・
知りたくないです。

『よし、剣も無事強化できたみたいだし、私が入ってもいいかな?』

「そ、そうだね。いいよ」

ウィルも剣の件はサラッと流したいみたいだ。
現実を見たくない時ってあるよね。うん、ある。

『じゃあ、入りま~す』

意識を剣に集中させて・・・なんてことしなくても、はい、もう、私は剣です。
やぱっり、木とは違って、冷たくて硬い感じがする。
でも、悪くないよ!!

『命名「林」と名付けます』

名付けた途端、剣がピカッと光を放った。
お?どうした?

「カリン様・・・それ以上剣に力を与えると魔剣になってしまいますよ」

キリが呆れ顔で疲れたように溜息をついた。

「魔剣、リン~」

やっちゃった?
ハハハ~っとね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

落ちこぼれの半龍娘

乃南羽緒
ファンタジー
龍神の父と人間の母をもついまどきの女の子、天沢水緒。 古の世に倣い、15歳を成人とする龍神の掟にしたがって、水緒は龍のはみ出しもの──野良龍にならぬよう、修行をすることに。 動物眷属のウサギ、オオカミ、サル、タヌキ、使役龍の阿龍吽龍とともに、水緒が龍として、人として成長していく青春物語。 そのなかで蠢く何者かの思惑に、水緒は翻弄されていく。 和風現代ファンタジー×ラブコメ物語。

現代に生きる勇者の少年

マナピナ
ファンタジー
幼なじみの圭介と美樹。 美樹は心臓の病のため長い長い入院状態、美樹の兄勇斗と圭介はお互いを信頼しあってる間柄だったのだが、勇斗の死によって美樹と圭介の生活があり得ない方向へと向かい進んで行く。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう! そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね! なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!? 欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!? え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。 ※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません なろう日間週間月間1位 カクヨムブクマ14000 カクヨム週間3位 他サイトにも掲載

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...