荒涼の華

2,9

籠の中の鳥が次に取るべき行動は一つしかない。
それは無理をしてでも脱出することだ。
私は、また出ていくことを考えた。
ここにとどまると、何があるやら分からない。
ここにいると奇妙な満足感が訪れることが嫌だ。
私は外に出た。
次帰るときはいつだろう。
もっと、もっと大きくなることは、できるか。
この生活に意味を見出すことは、可能か。
私は手ぶらで歩き出した。
家には「いつか帰る」と書置きをしておいた。
私はまた山のてっぺんに向かっていった。
街はごめんだ。
田辺の息吹が色濃く残っている甘い地獄だ。
ハコベの近くへ来た。
しかし今の目的は遠くへ、遠くへ行って今の生活を見直すことにある。
私は唇に力を入れて過ぎた。
向こうの方に川が流れていた。
細く、綺麗なようだったから、そこの水を飲んだ。
ほうといって、ため息をつく。
山を一つ越えると上から見える家が急に少なくなった。
私の、仕事は、大丈夫かな？
そんな思いが一瞬かすめたけれど、佐野がなんとかするなと考えた。
空は少し曇り空だった。
雲の厚さはそれほどではないはずなのに、絞り出すようにしとしとと雨が降ってきた。