追憶

Nick Robertson

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……打ち明けると、私は、地方でタクシードライバーという仕事をしている。
タクシードライバー。
誰もが一度は頼ったことがあるのではなかろうか。

例えば、急な雨に降られた帰り道。
例えば、約束の時刻に間に合わなくなりそうな時。

予期せぬ出来事に見舞われた際に、彼らは使われる。
だが、ほんの時折、客の話し相手として呼ばれることもある。

ドライバーはずっと前を向いているので、顔を合わせることがない。しかも、赤の他人だ。
こういったことが理由で、心に積もった感情を吐露しやすいのかもしれない。

数日前にも、そんなことがあった。
仕事が多くなる年末年始の時期に、ある客が乗り込んできたのだ。

電話で呼び出されたので、指定の場所へ向かってみると、一人の青年が手を挙げている。
駅のホームだった。

私は停車すると窓を開け、「白石さん(仮名)ですかぁ?」と聞いた。
するとその男がコクコクと頷いたので、扉を開ける。
彼は、少し赤ら顔だった。酔っていたらしい。

男を乗せると、私は事前に連絡を受けていた彼の自宅へ進もうとした。ここから近い距離である。
しかし彼は小さい声で「できるだけ遠回りをして下さい」と言った。

「え?」と私が驚いて後ろを振り返ろうとすると、その青年は堰切ったように泣き始めた。
それを聞いて、私は急いで角を曲がり、全く別の方向へと車を進めた。

これから話すのは、彼がその十分から二十分に満たないような時間のうちに私へ聞かせた顛末を、大幅に脚色した
ものである。彼には悪いと思うが、ここには私見や憶測が多分に含まれていることを了承願いたい。
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