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神の娘、呪いをとく
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楼閣の中に入ると朱理は座敷を二枚出すとその内の一枚の上に正座すると青年に座るように声をかけた。
青年はおとなしく腰を降ろすと朱理を見つめた。
その視線に耐え切れなくなった朱理は、慌てて青年に尋ねる。
「ど、どうされました?」
「いや、別に何も・・・。」
こちらの質問には一切答えずまたこちらを見てくる青年に、朱理はだんだんイライラしてきてとうとう口を開いた。
「あのぅ、何か言いたいことでもあるのですか?」
朱理がそう聞いてみると青年は何かを決意したらしく口を開いた。
「朱理姫、貴女は何者ですか?」
思いもよらぬ質問に朱理はぎこちなく口を開いた。
「何者とは?」
そう聞いてみると青年は、こちらを真摯な眼差しで見ながら考えるように言った。
「ただの人ならば、こんなにも美しくないはずだし、それに貴女からは、神気を感じるのです。」
朱理はそれを聞いて、まずいと思いとっさに立ち上がって逃げようとした。
青年が言う、美しいは良く分からないが、神気を感じるということは神の血を引く者(娘)だとばれてしまう。
慌てて逃げようとした朱理だったが青年に腕を掴まれ、逃げることができなかった。
「お願いします。正体を教えて下さいますか。」
真摯な眼差しで問い詰められた朱理は、観念して口を開いた。
「誰にも言ってはいけませんよ。」
朱理は、青年に釘を刺すと自分のことを話した。
「実は私は、この忌部氏の親神である布刀玉命の娘です。なので半神半人なのです。」
と短く話終えると青年は、
「そうだったんですか。無理に聞いて申し訳なかった。」
そう言われ朱理は内心、"本当です。"と思いつつ口を開く。
「とりあえず呪いを解きますね。」
朱理は青年の額に手を伸ばすと術を唱える。
『・・・音もなく姿も見えぬ咒詛神、心ばかりに負うてかえれ・・・。』
朱理の手から黄金の光が表れ、ソレは青年の額に吸い込まれて消えた。
「どうですか?一応、呪いは解けましたよ。」
「ああ。分かりました。ありがとうございました。」
青年にホッとした顔でお礼を言われて朱理は苦笑した。
(さすが、母様の血を引いているだけはあります。お礼を言われて嬉しいと思ってしまいました。)
「ええ。それでは呪いを解き終わったので忌部氏当主様の所へ戻りましょうか。」
「ああ。」
青年も頷いたので朱理は立ち上がった。
だが、力を使いすぎてしまったらしく身体がふらついた。
朱理は"早く忌部氏当主の所へ戻って甘い菓子を食べて力を補給しなくては"と思い急いで歩き出した途端、今度は敷居に躓いた。
「あっ。」
淡紅色の領巾が空気をはらみ、まるで天女が纏っている天の羽衣のようにフワリと膨らむ。
天地が反転する────────。
朱理は眼をつぶり衝撃が来るのを待っていたが、一向に痛みは来なかった。
(はっ。まさか今日は床が軟らかいのでしょうか?)
と思い薄く眼を開くと信じられない光景が眼に入った。
眼の前が紫紺に染まっていた。
その色は確か謎の青年が纏っている袍の色と同じ色だった。
まさかと思いおずおずと顔を上げると、頭一つ分高い位置から青年がこちらを見下ろしていた。
「えっ。」
「大丈夫ですか?」
朱理は青年に聞かれて慌てて口を開いた。
「す、すみません。ありがとうございました。」
と謝りとお礼を言いながら青年から離れようとした途端、急に身体がフワリと浮いた。
(えっ、私、今飛行の術なんて唱えましたっけ?)
と思ったものの、しばらくしてやっと青年に抱き上げられていることに気付いてあわてて叫んだ。
「え──────────っ。す、すみません。じ、自分で歩けますから、お、降ろしてください。」
「何を言っているんですか。こんなに顔色が悪い女性をほっといたら男失格です。」
と青年に言われて朱理は真っ赤になった。
(た、確かに霊力を使いすぎてしまって顔色は悪いとは思います。が、そんな私をほっといても男失格にはならないと思いますし・・・。そ、それに、今日知り合ったばかりの人にここまでしてもらう訳には・・・。)
「私は大丈夫です。なので」
"降ろしてください。"と続けようとしたが、青年が溜息を零したので朱理は最後まで言えなかった。
「もう黙って頂けますか?俺は貴女に何を言われても、こればっかりはやめませんので。」
その言葉に朱理は黙り込んだ。
(あーぁ。どうすれば良いのですか?私、お父様にも忌部氏当主様にもこんなことやって貰ったことないですのに。)
そう思っている間にも青年はもう歩み出していた。
青年はおとなしく腰を降ろすと朱理を見つめた。
その視線に耐え切れなくなった朱理は、慌てて青年に尋ねる。
「ど、どうされました?」
「いや、別に何も・・・。」
こちらの質問には一切答えずまたこちらを見てくる青年に、朱理はだんだんイライラしてきてとうとう口を開いた。
「あのぅ、何か言いたいことでもあるのですか?」
朱理がそう聞いてみると青年は何かを決意したらしく口を開いた。
「朱理姫、貴女は何者ですか?」
思いもよらぬ質問に朱理はぎこちなく口を開いた。
「何者とは?」
そう聞いてみると青年は、こちらを真摯な眼差しで見ながら考えるように言った。
「ただの人ならば、こんなにも美しくないはずだし、それに貴女からは、神気を感じるのです。」
朱理はそれを聞いて、まずいと思いとっさに立ち上がって逃げようとした。
青年が言う、美しいは良く分からないが、神気を感じるということは神の血を引く者(娘)だとばれてしまう。
慌てて逃げようとした朱理だったが青年に腕を掴まれ、逃げることができなかった。
「お願いします。正体を教えて下さいますか。」
真摯な眼差しで問い詰められた朱理は、観念して口を開いた。
「誰にも言ってはいけませんよ。」
朱理は、青年に釘を刺すと自分のことを話した。
「実は私は、この忌部氏の親神である布刀玉命の娘です。なので半神半人なのです。」
と短く話終えると青年は、
「そうだったんですか。無理に聞いて申し訳なかった。」
そう言われ朱理は内心、"本当です。"と思いつつ口を開く。
「とりあえず呪いを解きますね。」
朱理は青年の額に手を伸ばすと術を唱える。
『・・・音もなく姿も見えぬ咒詛神、心ばかりに負うてかえれ・・・。』
朱理の手から黄金の光が表れ、ソレは青年の額に吸い込まれて消えた。
「どうですか?一応、呪いは解けましたよ。」
「ああ。分かりました。ありがとうございました。」
青年にホッとした顔でお礼を言われて朱理は苦笑した。
(さすが、母様の血を引いているだけはあります。お礼を言われて嬉しいと思ってしまいました。)
「ええ。それでは呪いを解き終わったので忌部氏当主様の所へ戻りましょうか。」
「ああ。」
青年も頷いたので朱理は立ち上がった。
だが、力を使いすぎてしまったらしく身体がふらついた。
朱理は"早く忌部氏当主の所へ戻って甘い菓子を食べて力を補給しなくては"と思い急いで歩き出した途端、今度は敷居に躓いた。
「あっ。」
淡紅色の領巾が空気をはらみ、まるで天女が纏っている天の羽衣のようにフワリと膨らむ。
天地が反転する────────。
朱理は眼をつぶり衝撃が来るのを待っていたが、一向に痛みは来なかった。
(はっ。まさか今日は床が軟らかいのでしょうか?)
と思い薄く眼を開くと信じられない光景が眼に入った。
眼の前が紫紺に染まっていた。
その色は確か謎の青年が纏っている袍の色と同じ色だった。
まさかと思いおずおずと顔を上げると、頭一つ分高い位置から青年がこちらを見下ろしていた。
「えっ。」
「大丈夫ですか?」
朱理は青年に聞かれて慌てて口を開いた。
「す、すみません。ありがとうございました。」
と謝りとお礼を言いながら青年から離れようとした途端、急に身体がフワリと浮いた。
(えっ、私、今飛行の術なんて唱えましたっけ?)
と思ったものの、しばらくしてやっと青年に抱き上げられていることに気付いてあわてて叫んだ。
「え──────────っ。す、すみません。じ、自分で歩けますから、お、降ろしてください。」
「何を言っているんですか。こんなに顔色が悪い女性をほっといたら男失格です。」
と青年に言われて朱理は真っ赤になった。
(た、確かに霊力を使いすぎてしまって顔色は悪いとは思います。が、そんな私をほっといても男失格にはならないと思いますし・・・。そ、それに、今日知り合ったばかりの人にここまでしてもらう訳には・・・。)
「私は大丈夫です。なので」
"降ろしてください。"と続けようとしたが、青年が溜息を零したので朱理は最後まで言えなかった。
「もう黙って頂けますか?俺は貴女に何を言われても、こればっかりはやめませんので。」
その言葉に朱理は黙り込んだ。
(あーぁ。どうすれば良いのですか?私、お父様にも忌部氏当主様にもこんなことやって貰ったことないですのに。)
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