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閑話 シャルドネはご飯が食べたい
閑話 シャルドネは回復魔法が使えないですか…?
しおりを挟む「す…凄い…。」
フードを被った御者の子がそう呟いた。
「助けて頂いてありがとうございます。あなたのおかげで本当に助かりました。」
と馬車から慌てて降りてきたふわりとした金髪を風になびかせながら、見るからに豪華なドレスを着た少し華奢な女の子が出てきて言った。
「え?だれ?」
そう、シャルドネからしたら、盗賊たちを倒したのは、自分のご飯をダメにされたからであって、助ける気持ちも全くなく、ただ、ただ恨みを晴らしただけである。
食べ物の恨みは恐ろしい。
「申し遅れました。私はニームベルグ王国第二皇女のアンリエット・ヴァン・ニームベルグと申します。」
「あ、そう?」
と、シャルドネはすぐに興味を無くした。
しかしアンリエットは焦ったようにシャルドネに
「失礼を承知でお願いがあります。もし回復魔法使えましたら、どうしても助けて頂きたい人がいるのです!どうか、お願い致します!」
と言って頭を下げてきた皇女のアンリエットだが、もちろん…
「別に回復魔法くらいなら簡単に使えるけど、そんなの知らないよ、私はご飯が食べたいんだ!君たちもあそこにいる奴らみたいになりたくなかったら邪魔しない事ね。」
「そこをなんとか、お願い致します!」
「え。やだよー。あいつらのせいでせっかく作ったご飯がダメになっちゃって、作り直しだもん。」
「殿下!こんな者に頭なんて下げる必要ありません!おのれ!こっちが下手に出ていたら、そもそも、皇女殿下に対して、その口のききかたはなんだ!」
あまりのシャルドネの態度に側近の騎士らしき女性が怒り出す。
「そんなの知らないよー。そもそも、私この国の住人でも無いし~」
とことん我関せず状態のシャルドネであった。
「さてはお前、本当は回復魔法を使えないけど、使えるって意地張った手前、実は使えませんって言えないだけなんじゃないのか!?」
「むぅ…。」
流石にその言葉にシャルドネはイラっとして魔法を発動しようとした時に素早くアンリエットが察知した。
「シェリー。お黙りなさい!申し訳ございません。後で厳しく言っておきますので、許していただけないでしょうか…。」
「しかし、殿下…。」
「シェリー。これは命令です。すぐにこの方に謝りなさい!」
「す…すみませんでした。」
と渋々謝るシェリーと言う女騎士であった。
「まぁ良いけど?」
まだご機嫌斜めであるが、魔法を撃つことは止めた。
「それと、お食事でしたら、私たちがご用意いたしましょう。お城に付きましたら、豪華な料理を、おなかいっぱい用意させます。またそれとは別にお礼もさせていただけないでしょうか…?」
「豪華なご飯を…おなかいっぱい!?」
「はい、あなたの好きなものを好きなだけ食べていただけれるように手配します。」
アンリエットは早々にシャルドネの要求することを理解した。
このように物事の観察ができ、それを瞬時に判断することが出来る能力が上に立つ為に必要な能力である。
「それなら、少しはあんた達の力になってあげてもいいかな?」
シャルドネも、美味しいご飯をおなかいっぱい食べれると聞いて心なしか優しくなっている。
「ありがとうございます!!どうか中にいるアイリスさんを急いで助けてください!お願いします!!」
「あんたにとってそのアイリスって子はそんなに大切な子なの?」
「はい…。私だけではなく、この方は世界最強の3大天使の1人なのです。夜天の天使という名で呼ばれていますが、ご存じないでしょうか?」
「知らないや~。でもなんでそんな世界最強って言われる人がやられてるの?」」
「アイリスさんは、通り名通り、夜や暗い所でとても強いネクロマンサーなので、夜の番を眠らずに1人でしていただいて朝食の準備時に私の隣で仮眠を取っていたのですけど、そこを襲撃されてしまいました。」
「ふーん?」
「襲撃に遭った時はすぐに目を覚まされたのですけど私が…私を…グスッ…かばってあんな事に…」
アンリエットが泣き出してしまった。
いくら皇女と言っても、まだ幼い娘である。
「ぞじでアイリスざんをぜおっで…グスッ…ばじゃでにげでぎだのでず…。」
「分かったよー!その怪我した人の所に早く案内して!」
「え…ぞれでば!?」
「ご飯のためだからね!そのアイリスって子を助ければ、ご飯が早く食べれるのだよね!」
「は…はい!こぢらでず!」
とまだ泣きながらシャルドネを引っ張って馬車に連れて行くアンリエットであった。
そして、どこまでもご飯のためと言い張るシャルドネであったが本当は目の前で泣かれたのに対して少し同情心があったのかもしれない。
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