上 下
18 / 21
閑話 シャルドネはご飯が食べたい

閑話 シャルドネは回復魔法が使えないですか…?

しおりを挟む

「す…凄い…。」
フードを被った御者の子がそう呟いた。

「助けて頂いてありがとうございます。あなたのおかげで本当に助かりました。」
と馬車から慌てて降りてきたふわりとした金髪を風になびかせながら、見るからに豪華なドレスを着た少し華奢な女の子が出てきて言った。

「え?だれ?」
そう、シャルドネからしたら、盗賊たちを倒したのは、自分のご飯をダメにされたからであって、助ける気持ちも全くなく、ただ、ただ恨みを晴らしただけである。

食べ物の恨みは恐ろしい。

「申し遅れました。私はニームベルグ王国第二皇女のアンリエット・ヴァン・ニームベルグと申します。」
「あ、そう?」
と、シャルドネはすぐに興味を無くした。

しかしアンリエットは焦ったようにシャルドネに
「失礼を承知でお願いがあります。もし回復魔法使えましたら、どうしても助けて頂きたい人がいるのです!どうか、お願い致します!」
と言って頭を下げてきた皇女のアンリエットだが、もちろん…

「別に回復魔法くらいなら簡単に使えるけど、そんなの知らないよ、私はご飯が食べたいんだ!君たちもあそこにいる奴らみたいになりたくなかったら邪魔しない事ね。」

「そこをなんとか、お願い致します!」

「え。やだよー。あいつらのせいでせっかく作ったご飯がダメになっちゃって、作り直しだもん。」

「殿下!こんな者に頭なんて下げる必要ありません!おのれ!こっちが下手に出ていたら、そもそも、皇女殿下に対して、その口のききかたはなんだ!」

あまりのシャルドネの態度に側近の騎士らしき女性が怒り出す。

「そんなの知らないよー。そもそも、私この国の住人でも無いし~」

とことん我関せず状態のシャルドネであった。

「さてはお前、本当は回復魔法を使えないけど、使えるって意地張った手前、実は使えませんって言えないだけなんじゃないのか!?」
「むぅ…。」
流石にその言葉にシャルドネはイラっとして魔法を発動しようとした時に素早くアンリエットが察知した。

「シェリー。お黙りなさい!申し訳ございません。後で厳しく言っておきますので、許していただけないでしょうか…。」

「しかし、殿下…。」

「シェリー。これは命令です。すぐにこの方に謝りなさい!」
「す…すみませんでした。」

と渋々謝るシェリーと言う女騎士であった。

「まぁ良いけど?」
まだご機嫌斜めであるが、魔法を撃つことは止めた。

「それと、お食事でしたら、私たちがご用意いたしましょう。お城に付きましたら、豪華な料理を、おなかいっぱい用意させます。またそれとは別にお礼もさせていただけないでしょうか…?」

「豪華なご飯を…おなかいっぱい!?」
「はい、あなたの好きなものを好きなだけ食べていただけれるように手配します。」

アンリエットは早々にシャルドネの要求することを理解した。
このように物事の観察ができ、それを瞬時に判断することが出来る能力が上に立つ為に必要な能力である。

「それなら、少しはあんた達の力になってあげてもいいかな?」
シャルドネも、美味しいご飯をおなかいっぱい食べれると聞いて心なしか優しくなっている。


「ありがとうございます!!どうか中にいるアイリスさんを急いで助けてください!お願いします!!」
「あんたにとってそのアイリスって子はそんなに大切な子なの?」

「はい…。私だけではなく、この方は世界最強の3大天使の1人なのです。夜天の天使という名で呼ばれていますが、ご存じないでしょうか?」
「知らないや~。でもなんでそんな世界最強って言われる人がやられてるの?」」

「アイリスさんは、通り名通り、夜や暗い所でとても強いネクロマンサーなので、夜の番を眠らずに1人でしていただいて朝食の準備時に私の隣で仮眠を取っていたのですけど、そこを襲撃されてしまいました。」

「ふーん?」

「襲撃に遭った時はすぐに目を覚まされたのですけど私が…私を…グスッ…かばってあんな事に…」

アンリエットが泣き出してしまった。
いくら皇女と言っても、まだ幼い娘である。

「ぞじでアイリスざんをぜおっで…グスッ…ばじゃでにげでぎだのでず…。」

「分かったよー!その怪我した人の所に早く案内して!」

「え…ぞれでば!?」

「ご飯のためだからね!そのアイリスって子を助ければ、ご飯が早く食べれるのだよね!」

「は…はい!こぢらでず!」

とまだ泣きながらシャルドネを引っ張って馬車に連れて行くアンリエットであった。
そして、どこまでもご飯のためと言い張るシャルドネであったが本当は目の前で泣かれたのに対して少し同情心があったのかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

ゆるふわ系乙男召喚士、異世界に舞い降りる

玲音
ファンタジー
碓氷昴広(うすいあきひろ)はどこにでも普通の(いや、そこいらの女の子達より女子力高めの乙男なのだが、本人無自覚)独身アラサー男子だ。 いつも通りの道を通り、会社に出社していたはずがいつの間かスーツ姿で見知らぬ大草原に立っていた。 ひょんなことから出会い契約することになったフェンリルのスハイルと共に、召喚士(サモナー)という異世界リンドグレーンでは不人気の職業をしながら、美の女神 ティルラツィーリ様の生き写しか!?と騒ぐ周りを気にすることなく、美味しい料理や様々な魔物達と出会い面白楽しくゆるーくまったりと旅をすすめる。

処理中です...