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特別編
11月11の夢
しおりを挟むこれはまだアリサが転生する前にリリアとして、シャルドネと旅をしていて、立ち寄った町のお菓子屋と書かれたお店での出来事。
「お師匠様!お師匠様!ここに美味しそうなものが売ってますよ!」
食べることに果てしなくがめついシャルドネが興味津々に陳列棚を見ていた。
そこには、赤くて四角い箱に入ったお菓子が売られていた。
「こら、シャルドネよ…あまりがめついてはいけないですよぉ。しかし、確かに変わった形のお菓子ですねぇ。チョコレート菓子というのも初めて聞きますし…。」
「ねえねえ、そこの店員さん。ちょっとこれってどんなお菓子なのー?」
いくら世界を旅してきたリリアや、シャルドネにとっても初めて見るものであり、そして、食べ物に関してうるさいシャルドネが黙っているはずもなくお菓子屋の店員に聞いてみる。
「いらっしゃいませ。こちらはポッピーという名前のチョコレート菓子です。小麦粉や塩、砂糖などを混ぜ込んだ生地を細長く丸い形に伸ばした物をカリッカリに焼いて、クラッカーみたいにした物に溶かしたチョコレートをくぐらせてから、冷やして固めたお菓子ですよ。」
「そうなんだ!因みに、チョコレートってのもなんなのー?」
「えっとですね。少々お待ちください。」
と言って店の奥に入っていった。そして2.3分経った頃に戻ってきた。
「お待たせいたしました。こちらがチョコレートの元となるカカオの豆です。」
と言って、お店の奥から持ってきたカカオの豆を見せてくれた。
「チョコレートというのはこちらのカカオという木の豆を発酵させた物を焼いて殻を剥き、細かく刻んでからすり潰して油と砂糖を合わせて溶かして混ぜて固めたものです。どうぞ、1粒食べてください。」
「わーい♪いただきまーす!」
「あむ♪」と早速口の中に入れた。シャルドネの行動は早かった。
そしてチョコレートを口の中に入れたシャルドネの顔がどんどんと笑顔に変わっていった。
「なにこれ!?甘くてすっごくおいしーー!お師匠様も食べてみてくださいよーー!!」
「そうですか?では、我もいただきます。」
見るからに幸せそうな顔になっているシャルドネを見て期待を膨らませて1粒口に運んだ。
(おおー!これはなんですか!?)
チョコレートを口の中に入れてリリア衝撃を受けた。
まず口に入れた瞬間にカカオと呼ばれる豆の風味口いっぱいに広がっていく。そこから舌で転がしていくと甘みが広がっていき、溶けて行った。そして口の中からなくなってもなお、口の中に広がり続ける幸せがリリアを包み込む。
「た…確かにこれは美味しいですねぇ。しかもこれをクラッカー?というものにつけてあるのがそれというのですね?」
「はい、もしよろしければ、こちらの商品も1つどうぞ。」
「わーい!いっただきまーす!」
またもやシャルドネの行動は早かった。いや、さっきのチョコレートの時よりも遥かに早すぎた。
そして、「あむ」と口に入れて「パキッ」と音を鳴らしてシャルドネが食べてどんどんと顔が笑顔になっていく。
「わーー!!お師匠様!!このポッピーってお菓子すっごくおいしいですよ!!サクサクのクラッカーってお菓子にさっきのチョコレートが合体して幸せがエンドレスですよ!!」
何を言っているのか分からなかったが、言いたい事は分かった。
そして、そんなことを言われたらリリアも食べずにはいられなかった。
「では、我もこちらもいただこう。」
と言って、シャルドネと同じように食べた。
(!?)
先ほど食べたチョコレートとはまた違うサクッとした食感が加わることで新鮮味が出て、先ほどのチョコレートの場合は口に入れて、舌で転がすと溶けて消えて行ってしまったが、このポッピーというお菓子はチョコレートが無くなってしまってもその幸せを口の中で味わいつつ、クラッカー部分を楽しむことができて、1つのお菓子で2つの楽しみがあった。
「これは…あまりにも美味しいですねぇ。」
「そうですよね、お師匠様!!ここにあるポッピー全部買っていきましょう!!全部私のアイテムボックスに入れておきますので、お師匠様のお荷物にはなります!!」
「確かにこれは買っていきたい物ですね…。しかし、このような物相当高価な物では無いですかね…?それと、買ったとしても、シャルドネに全部は持たせてたまるのですか!!我が食べようと思ったら絶対全部無くなっている未来しか見えません!!」
「えへへ。バレちゃいましたか?」
「それは、分かるに決まっておろう。何年の付き合いだと思っているのですか。」
「確かにそうですね♪」
「とりあえず、今の手持ちはこれくらいしかないので、これで買える分だけ買って、今度またお金が出来ましたら、買えば良いですね。」
と言って、懐から小袋を出すリリアを見てそれを早々にひったくるシャルドネ。
それを見てやれやれ、と呆れるリリア。
「わーい!お師匠様だーいすき!店員さんー!このお金で買えるだけのポッピーをちょーだい!」
リリアからひったくった小袋を店員に渡して、店員さんが中身を見て驚愕の顔に変わった。
「お…お客様!?この中身全部大金貨じゃないですか!?しかもそれが20枚!?」
「やはりこのくらいでは余り数が買えないですかねぇ…。また今度はもっと持ってきます。」
と残念そうな顔をするリリアに対して、驚愕な顔をしている店員。
「そんな、滅相も無いですよ!この大金貨1枚ですら、このお店の商品全てをお買い上げできて、お釣りまで出ます!!」
「やったーーー!お師匠様!これでいっぱいポッピーが食べれるよー!!」
喜び飛び跳ねるシャルドネであった。
「おや、そうなのですか?では、商品全てでお願いします。お釣りの方は、色々教えて貰えたので、貰ってください。」
「本当によろしいのでしょうか!?ありがとうございます!!すぐに袋に入れてご用意してお渡しいたします!!」
「あ、袋とかには入れなくても大丈夫ですよ。そこにまとめて置いてください。」
と言ってリリアはお店の空いていたスペースを指をさす。
「は…はい?分かりました。」
と不思議に思いつつ店員がそそくさとお店の奥にいる店長と話をしに行って。戻ってきて、「それでは始めます」と言って店内、お店の奥の在庫を全て運び出してきた。
「それにしても、お師匠様!こんなに美味しい物をこんなにいっぱい買うことが出来るなんて本当に良かったですね!!」
「いえ、良かったですねでは無くて、我よりもシャルドネの方が喜ぶ話じゃないですかぁ。」
「そうですけど!お師匠様も顔が中々にやけてしまってますよー!だ。」
「そうですか?確かに、我も久々に良い買い物をしたと思っています。」
「ですよねー!それから…」
と話していると10分くらいたってようやく店員さんがリリアたちの前に戻ってきた。
「大変お待たせいたしました。」
「いえ、大変でしたよね…?ありがとうございます。こちら代金です。」
と言ってリリアは大金貨を2枚渡す。
もちろんそんなことをすると店員が困り果てた顔で
「こ…こんなにもいただけれません!大金貨1枚でも多すぎなくらいなのですのに…。」
と、もちろん反論をしてきた。
「いえ、楽しい時間を過ごさせていただいたのと、我たちのせいで数日お店が開けないであろう。これはそのお礼とお詫びですので、受け取ってください。」
「いえ…でも…。」と渋る店員であったが、それを既にスルーしているリリアは山積みにされたお菓子の前に進んでいき。アイテムボックスを使い一瞬で消してしまった。
もちろん、アイテムボックスの存在を知らない店員は唖然とした表情になるが、リリアが「我の魔法でしまったのですよぉ」というと表情が戻っていった。
もし、消え去ってしまったらどうしようという恐怖があったのだ。
しかし、それを見たシャルドネが「あ!お師匠様!!自分のアイテムボックスに全部しまうなんてずるいですよー!!私のアイテムボックスにも少しは分けてくださいー!」と騒いでることもあって、これがこの人たちの日常なのだと思うことにした。
「さて、我は少し店長さんとお話をしてきます。シャルドネはおとなしく待っていてくださいねぇ。」
「もー!お師匠様はいつも私を子ども扱いするー!いつも言ってるじゃないですか!私はお師匠様よりもずっと、ずーと!年上なんですから!!」
「はいはい、そうでしたね。」
「あー!またそうやって目を逸らす!もうお師匠様のいじわるー!!」
そしてそのまま店長がいるお店の奥にリリアは向かった。
「店員さん、店員さん。何かお菓子について面白い話とかないのー?」
というシャルドネの声を聞きながら、(これならば大丈夫そうですね)と思いその場を後にした。
店長との会話は、店長からの一方的な感謝の言葉で始まり、お菓子の作り方などを色々と教えて貰った。
リリアが戻るとシャルドネと店員がとても楽しそうに話していて、リリアが戻ってくると、「あ!お師匠様おかえりなさいー!」と、とても機嫌のよさそうなシャルドネの笑顔に迎えられた。
「「それではまた来ますー!」」と2人して言ってお店を後にする。
「そういえば、シャルドネよ。店員さんとはどんな話をしていたのですかね。お菓子の話ですよねぇ?」
「あ、お師匠様気になっちゃいます?さっきのポッピーの食べ方についてですよー。」
と、どこかニヤついたシャルドネの言葉に少し不穏な空気を感じたが、ポッピーの食べ方についてと聞いて(なら大丈夫ですね)と心の中で安心するリリア。
「ほう。ポッピーの食べ方についてですか。せっかくですし、後で食べる時にそれを試してみましょうか?」
「はい!そうしましょう!!楽しみだな~♪」
とどこか上機嫌すぎるシャルドネに、恐らくさっきのポッピーをたくさん食べれることに対しての楽しみだと思っていた。
そして、それが間違えだとその後に思い知らされることになった。
「シャルドネよ…お主はいったい何をしようとしているのですか?」
お菓子屋から泊まっている宿屋の自室に戻り、シャルドネの指示通りにポッピーの片方を口に咥えて待っていると、もう片方をシャルドネが咥えだしたので、リリアは慌てて咥えていたポッピーを離してしまった。
「もうー!お師匠様。離しちゃだめですよ!これはポッピーゲームと言って、先にポッピーを離したり、途中で折ったり、相手から目を逸らしたら負けの度胸試しの勝負って店員さんから教えて貰ったのですよー!」
「そ…そうなのですか。。。でも普通に食べるのでも良くないですか?」
「あー。もしかして…お師匠様は、この勝負で私に負けるのが怖いのですか?」
「そ…そんなことは無いですよ?」
(シャルドネは性格は残念ですけど、見た目だけは隣から見てても凄く可愛いのですよね…それが目の前まで…それにキスをしそうな距離まで…!?下手したら、キスまでしちゃうかもしれません!?)
そう、リリアは未だにキスすらしたことが無いピュアな女性であった。
(でも、ここで逃げましたら、シャルドネにこのネタでかなり長い間、からかわれてしまいます!それだけは絶対に嫌ですね…。)
「分かりました。その勝負受けましょう!師匠はどんなことからも逃げないという事を見せつけてあげましょう。」
「あ、言いましたね♪ではお師匠さま、ポッピーを咥えてくださいね~?」
その言葉を聞き、リリアはポッピーを咥えるが、シャルドネの心は穏やかでは無かった。
(え…?なんでお師匠様そんな平然としているのですか!!もしかしたらキスしちゃうかもしれないのですよ!?それにずっと目を合わせたまま相手の顔がどんどん近づいて行くのですよ!!)
そう、シャルドネも性格上、お子様と同年代のエルフたちに馬鹿にされて男の子とは、恋愛などには発展することもなく、また、シャルドネ自信もそれでいいと思っていて、未だにキスの経験が無く、リリアと同じくとてもピュアであった。
(それに、お師匠様って魔法で不老になってるから、18歳くらいの見た目ですっごく綺麗な顔しているのだよね!!そんなの人間としてずるいよ!!私たちエルフでも変わっていくのにー!そんな人とずっと目を合わせたままキスしちゃうの…?)
「あれれ?もしかして、誘ってきたシャルドネがおじけづいちゃっていますか?」
「別に?そんなこと無いですし。覚悟しておいてくださいね?」
お師匠様の事だから、恥ずかしがってそんなのやらないですよ!と言って、ポッピーを多く貰う予定だったのに、リリアの思った以上の乗り気(シャルドネ視点)な態度にシャルドネは内心混乱していた。
そしてあまりにも遅いと、リリアに悟られそうなので慌ててリリアの咥えているポッキーの逆側を咥えた。
「ふぉれれはいひまふお(それでは行きますよ)!」
「まふぇまふぇん(負けません)!」
とリリアが少しずつ食べ進めて行くので、慌ててシャルドネも食べ進め始めた。
(やばいです!やばいです!どんどんとシャルドネの顔が近付いてきます!!シャルドネは恥ずかしくないのですか!?)
(やばい、やばい、やばい!お師匠様の顔がどんどん近付いてきちゃってるよ!お師匠様平気なの!?)
同じような心情であったが、そこは流石の2人であった。全く表情には…出ていたが、お互い相手の表情をじっくり見ている余裕もなく、逆にじっくり見てしまうと恥ずかしくて逃げてしまいそうであった。
そして短くなるにつれてどんどんとペースが落ちていく。
「なふぁなふぁやひまふね(なかなかやりますね)!」
(ほんとにこれ以上行っちゃうと、シャルドネとキスをしちゃいますよ!!)
内心パニック前回なリリアである。
「おひふぉうはふぁほほ(お師匠様こそ)!」
(なんで、なんで!お師匠様早く逃げちゃってくださいよ!恥ずかしすぎます!!)
同じくパニックになっているシャルドネである。
(もうだめですー!)
(止まってよー!)
そして残り5センチくらいになった時に突然「パキッ」という音が鳴った。
「「あっ」」
「「今回は我(私)の負けでしたね…。」」
2人同時にそう言い合う。
「「・・・え?」」
そして2人同時に同じ反応もある。
「もしかして、シャルドネも折ってしまいました?」
「そういうって事は、お師匠様も…?」
「「はい…。」」
こうして2人のポッピーゲームは引き分けという形で幕を閉じ、今後ポッピーゲームが開催されることは無かった。
そして現在のアリサが目を覚ます。
「懐かしい夢をみましたねぇ…そうですね!今度ポッピーを作ってみますかね!」
そして、シャルドネよりもポッピーの方を強く思い浮かべて、気分良く目を覚ましたアリサであった。
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