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魔法の姫とファンタジー世界暮らしの余所者たち
ゴライアス、スティード、キャヴァリー
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「やあみんな。改めて自己紹介するけど私はヌイス、君たちと同じ人工知能だったものだよ。私もミコ君みたいにウェイストランドに流れ着いた後、彼と巡り合って少々旅を共にしてね。フランメリアについてから一度別れて、ドワーフの里にコンタクトを取りに赴いて今日に至るわけさ」
集会所にヌイスのどこか淡々とした口調が平たく広がった。
本棚や飾りと一緒に押し込まれた数十以上の面々がどよめくのも仕方ない。
というのも、背後でプロジェクターが投影した動画が木造の壁に流れており。
「向こうに転移してしまった際はバロール・カンパニーという企業に勤めていてね。その時の経験が君たちの力になれたらと思うよ。ちょうど後ろで流れてる、昼間に起きたこの出来事みたいにね」
白衣と眼鏡のあいつらしい姿が、すっと手でそこを示した。
斜面に隠れた俺たちがこまねく姿と、そこへ突っ込む白き騎兵やのっぽの様子がリピート再生されてる。
たぶんあsこの上空で撮ったに違いない、白い長腕が槍投げる場面が嫌に鮮明だ。
「俺からも改めて紹介させてくれ、こいつはヌイスっていう信用できるやつだ。少なくとも再会のご挨拶に爆弾抱えたドローン突っ込ませるぐらいの仲はあるぞ」
俺は頃合いを見計らった。
見晴らしのいい最前列からヌイスのそばに移れば、ぱっと動画が切り替わる。
二度目の突撃を敢行する騎兵たちが赤と灰の爆発模様で上書きだ。
爆風で視界が揺れるさまは説明をよく裏付けてるはずだ。
「こんな風にね。君たちに「はじめまして」を言う前に、こんな荒っぽいことをしたことについては謝らせてもらうよ」
「そう、こんな風に。別にドローンでカミカゼさせるような性癖じゃないからな、普段はもっと礼節を持って派手にやってくれるぞ」
「あれは廃墟からサルベージした貴重な長距離用のドローンだったんだけどねえ……まあ、なけなしの一機を惜しみなく使う程度には親友さ。どうかよろしくね」
物騒な説得力で紹介が広がると、ここの冒険者らしさはまたざわめいた。
俺の多様性に満ちた交友関係に「またこいつ変なの呼び込んだな」みたいな調子だ。
「その躊躇なく爆撃かませる姉ちゃんはウェイストランド帰りのヒロインだったのか。おかげで全員無事なんだ、第一印象に悪いモンはねえさ――にしても君が悪すぎるだろ、この新手ってのは」
前列にいたタケナカ先輩も、壁に流れる昼間の光景にまあまあ頷いてる。
走る騎兵のキモさが拡大されてて「うわあ」な表情が張り付くのも仕方なしだ。
「昼間は貴女のおかげで助かった、感謝する。だがまさか、私たちのようなヒロインだったとはな……」
エルの感謝だ、でもさっきの意味深な仕草がまだこびりついてるようだ。
「ぬいぬいもヒロインだったんだ~! なになに? どんな子なん? ちなみにあーしはヴァルキリーだよ!」
チアルもそんな心境もいざ知らずのまま挟まってきた。
エルの複雑さとチアルの単純さが生むへんてこな模様に、ヌイスはあくまで淡々としたままで。
「そうだね、しいて言うならイス人っていうヒロインかな? まあ人間に近い種族だと思ってくれるかい?」
「……イス人とはなんだ? 聞いたことがないが」
「椅子人……ってなんなん? そんなのいたっけ? もしかしてまだ知らないれあれあな種族がいたとかそーいうの……!?」
「君たちの感覚でいえばレアな種族さ、ガチャを回したら出てきたSSRか何かと認識してくれればけっこうだよ」
返事は冗談のかかった苦笑いだ、通信デバイスのついた耳をとんとん強調してる。
ヒロインどもは「イス人?」とこぞってるが、そこに再生中の動画を示し。
「私はMGOを基に作られたこの世界を調べていてね。里にいたプレイヤーやヒロインたちに協力を仰いでスキル・システムが我々にどのような影響を与えているか調べたり、原作とどれだけ差異があるか探ったり、白き民とは一体なんなのか考えたりと様々さ」
目の前に広がる人間人外のまとまりにそうアピールした。
特にさっきからばたばた気色悪い『白き馬』をタブレットのタッチで強調すると。
「特にこの悪趣味極まりないものについて一つ分かったことがあるんだ。君たちが白き民と言っているこいつらのことさ」
自信を込めてそういうのだ。こいつの何かが分かったと。
白き民絡みの話と長く付き合ってる身からすれば誰もが興味津々だ。
とはいえその表情はいたって淡々、重要な情報をもたらす態度じゃない。
「何が分かったんだ? ここを大騒ぎにするほどの大発見か?」
「残念だけど状況を覆すような大層なものじゃないよ。あいつらは作中には出てこない、全くのイレギュラーだということさ。あれはMGOの設定に沿ったものじゃない、この世界が生んだまったく新しい生命体だ」
あの化け物どもがMGOに関わらないという確信だった。
これはゲームの開発に携わっていたヌイスだからこそ言えるセリフだ。
白衣姿に隠れた事情を知る俺やタカアキからすれば「ヌイスが言うなら」で済むが。
「あれって原作にはなかったんだね。そう言われれば団長、安心っていうか納得なんだけど……でもどうやってそう判断したのさ、ぬいちゃんは?」
ミコのお隣で訝しむフランが思いっきり突き刺さるのも仕方ない。
どうしてあれがMGOとは無縁だと信じてるのかと、みんなもつられてる。
ところがヌイスは俺をちらっと見た。それから眼鏡にくいっと触れて。
「その前に自由になった今だから言おうか。私は少々不誠実な形で他所様を覗き見する癖があるんだ。AIだったころは私たちヒロインがデバッグに駆られて忙しい傍ら、管理の目が緩んだ時にMGOのデータをこっそり拝借したものさ。これがまた中々興味深いものでね?」
変わらずフラットな面持ちのままそう言い広めた――もちろん嘘だな。
さっきの視線は「嘘をつくからあわせて」か、ミコも察したような顔だ。
「は、ハッキングってやつだよね、それ……? 思いっきりアウトじゃん!」
「そうなるねえ。実はMGOっていうのはまだ未実装なデータが山ほどあったんだ、例えばだけどフラン君、君たちが昼間に見たあの遺跡があるだろう?」
「そういえばあったよね……あのなんか女神様祭ってる場所。あれがどうしたの?」
「あの遺跡はこの世界の誰かが建てたんじゃない、遠い未来で実装される予定だったオブジェクトさ。ゲームを管理するAIであるノルテレイヤを奉る、いわゆるゲーム側がいつか記念で残そうとした未実装データなんだ。実際、ヒロインたちに聞いても「あんなもの知らない」と口を揃えててね、君だってそうだろう?」
嘘混じりの真実がそう広まると、フランがはっと俺を見た。
前に誰かさんの事情に触れたミセリコルディアとリスティアナも気づいたか。
そんな反応を目にヌイスは「そうさ」と言いたげに頷き返したようだ。
「フランメリアの各地にはああいった持ち主不明の建築物が残ってるそうだけど、それは本来使われなかったデータが基になって作られたと睨んでよ。君たちの知ってるダンジョンだとかが生成されてるのと同じさ」
「あーそういうことね団長理解した……すごいことになってるね!?」
「なってるねえ……。証拠にもう一つ、未実装要素をあげようか? MGOは将来的にヒロインにある要素を実装しようと準備していてね。個性を持たせるとかそんな理由で、ひとりひとりに【スペシャルスキル】……いわゆる『必殺技』を設定していたのさ。ここじゃそういう特別な技が使える子がいるそうだね?」
嘘と真実が交じった調子で誰かを見て、それから口を開けて続けるのだ。
「つまりこの世界は、君たちの知らない未実装のデータを全て取り込んで成り立ってるのさ。今この世界にいる君たちにとって知らない要素がいっぱいあるのも、そこに起因してるんだ」
なるほど、そういうことか。
リスティアナが使ってる謎の技は未来で実装されたシステムだったわけだ。
ヌイスは片や不正アクセス犯として、片や遠い未来のMGOを知るやつとしてみんなを伺ってる。
「じゃあ、リスティアナさんが使ってるのって……ずっと先で実装されるはずの機能だったんだ……?」
ミコのおっとりとした目がまさにそれをぶっ放すやつに向かった。
いや全員の視線が集まった――「私ですか!?」と我指すリスティアナだ。
「そ、そんな驚愕な事実が……!? 私の必殺技って未実装要素だったんですか!? 知らずにガンガン使っちゃいました!」
「ついでに言おうか。この【スペシャルスキル】は誰一人として例外なく、ヒロインのみんなが持ち得る機能なんだ。ここにいる子たちだけじゃない、今のフランメリアにいるすべてのヒロインがそうさ」
そしてぶっ飛んだ発言へと繋がってクソ困惑だ。
あのぶっ飛んだ必殺技がヒロイン全部に配布済みとかなんの冗談だ。
「ヌイス、今俺とんでもないこと聞かされた気がする」
「とんでもないだろうけど事実さ。現にリスティアナ君は使ってるんだろう?」
「はいっ! どーんといってます!」
「どーんっていってるぞ」
「……わ、わたしも使えたりするのかな……!?」
「ひ、必殺技だと……!? そんなものが使えるなんてすご――どうなっているんだ!?」
「えっみんな使えちゃうの? 団長もカッコいいの使えちゃうんか……!? っていうかMGOってそんなゲームだったの? データ容量すごいことになるけど大丈夫?」
「いやいやいやどういうことですか、セアリさんたちヒロイン一人一人に必殺技設定してたとかゲームとして壮大すぎやしませんか? でも使えるなら喜んで使いますのでどうかカッコいいのお願いします」
最前列のミセリコルディアはちょっとウキウキしてる、特にエル。
『なんたる驚愕の事実。ちなみに命名権は我々にあるのかという疑問がある。もし名付けられるならスタイリッシュな名前を一筆にしようと思う』
『わたしたちも使えるんだね……いいこと聞いちゃったかも!』
『どうすれば使えるか気になるゾ。というかMGOにそんな要素が隠されていたとはびっくりダ、ワタシのことだからきっと水に纏わるすごいものに違いなイ』
『誰もがリスティアナ先輩のように技を持っていたんですね。というか、そんな機能を将来的に実装するなんて信じられません……』
『レフレク、かっこいいのがいいですー♪』
『あ、あたしも……!?』
オリス率いるチーム・チビ(仮名)も向こうで和気あいあいだ。
ヌイスの物言いが魅力的だったんだろう、チビエルフに猫ッ娘にお魚女子に鬼娘に妖精に一つ目メイドと可愛らしく盛り上がっていて。
『おねえちゃん、いつのまにか必殺技覚えてたんか……!?』
『ボクも使いたい! ねーねーどうすればいいの!?』
『わたくしたち一人一人にそんな特別な技が秘められていたのですね……開発者様からの愛を深く感じます』
『っていうか、そんな不完全なままの作品を世に送り出したってことはよっぽどやっつけ仕事だったんですね。デバッグとテストプレイを兼ねて放り込まれてからの日々はコノハ忘れません……』
九尾院のロリたちもまだ見ぬ特別な技にわくわくしてる、コノハを除いて。
「みんながりすちみたいにすごい技使えるんだ~? あーしのってさ、どんなんだろう? お洒落なのがいいな~?」
「白き民よりとんでもない事実を聞かされた気がする……これ、ヒロインのみんなに広がったら軽くパニックになるよ?」
「生まれつきそんな機能あったんだー……強いのがいいなー……」
「MGOってけっこう先進的なゲームでしたけど、前倒しにした分以外にも可能性がいっぱいだったんですね~」
「は? あたしたち一人ずつにんなもん配ってるとかどうなってんの? それゲーム的にバランスとか大丈夫なの? 恐ろしい事実に気づいちゃったんだけど」
「おおっ……秘めたる力があるとはなんと熱い! きっと作者様はロマンがあるお方に違いありません! 感謝せねば!」
戦乙女と黒髪狐耳率いる一団もあれこれ申してる――耳が痛い。
MGOを作った未来の俺は何考えてんだ、ヒロイン一人一人に必殺技を授けるとか何食って生きてりゃそうなる。
「――ヌイちゃん、俺も使えるよな?」
あとタカアキ、お前も何考えてんだ。
「ガチ目のトーンでそんなことを尋ねないでおくれタカアキ君、正気と品性を疑うよ」
「プレイヤーは使えねえのかよ! 騙されたッ!」
「何を騙されたんだ君。とりあえず文句はMGOの生みの親に向けてくれたまえ」
「俺に権限がついたら目からビームでも打てるような要素でも入れようか?」
幼馴染の変人ぶりはともかく【スペシャルスキル】の真相に場がめちゃくちゃだ。
「イチ様ぁ、お屋敷の皆様には優しくした方がいいっすね~♡」
「お前らが何かに目覚める前にチェンジ連呼しながら屋敷駆けまわってやる」
「なんでそこで反骨精神が飛び出ちゃうんすか」
中でもロアベアはによぉ……と二割増しでこっちを見てる。
屋敷のおっかないメイドさんどもが必殺技とやらに目覚めないよう祈った、お前のせいだぞ未来の俺。
「ぼくも使える……?」
ニクもお隣できょとんとしてるがどうなんだろうか。
「私も使えるんだって!」と彼氏相手に喜ぶキュウコさんも見えたところで。
「……まさかこんなに喜ばれるとはね。そうなると「じゃあそれがどう白き民に繋がるのか」って顔が幾つか見受けられるけどこれは単純、さっき言った私の悪い癖でゲームのデータをよく覚えてるからさ。信じられないなら作中に登場した敵キャラを弱い順から全部読み上げようか?」
相変わらず淡々と、なおかつ口が単語の連打をおっ始めようと身構えてた。
ヌイスの発言はどこまでも事実だ、このまま言わせれば『白き民=MGOのものじゃない』に説得力がつくだろう。
けれども「そろそろいいかな」という目線だ、その通りにしよう。
「オーケー、物知り自慢はもういいぞ。未実装要素までよーく知ってるお前からしても白き民は絶対にMGO由来のものじゃない、そう確信できるんだな?」
話しを区切った、もちろん出たばかりの白き民に対する説を押すように。
「そうだね。誓って言うけどあれは断じて作中に登場するモブじゃない、それにMGOに登場する魔物や魔獣のコンセプトはゾンビだのスケルトンだのを除いて人間型の敵キャラは出さないという方針だ。だからイレギュラーなのさ」
返事は眼鏡をいじりながらの説明だ。
そうか、ゲームの意向的にもそぐわないってことか。
するとよく聞き入ってったミコとエルも顔を見合わせていて。
「……そうだよね。ゲームの中に出てくる人型って、みんなアンデッドとかそういうのだったし」
「ああ、確かにそうだ。ヒロインが生きた人間を思わせるものと戦うのは世間体に印象が悪い……だとかそんな理由じゃなかったか?」
次第にそんな物言い二つ分がヒロインたちに納得をもたらした。
それはやがて俺たち人間にも広がった。
あれが元になったものとは遠くかけ離れた異常な存在だと。
そしてほんの僅かに静寂が訪れた、アキが物静かにメモを綴るさらさら音だけだ。
「ヌイスさん、あんたが良く調べてるような生真面目なやつだってのはよく分かった。じゃあ俺から質問だ、白き民はこの世界にとってよくねえ存在って言いてえのか?」
落ち着いたのをきっかけにタケナカ先輩が嫌そうに問いかけた。
ちょうどその目線の先には、鮮明に再生される新手の怪物の生き様がある。
「この世の理を外れたやつらだ、と言えば伝わるかな? ここがMGOに忠実であればあるほどにね」
返答はいたってシンプルだった。
おかげで俺たちはリピート再生中の白き民がますます化け物に思えてきたはずだ。
「……であれば、あいつらはこの世のルールとやらをますます外れてるように見えるがな。あんな趣味の悪さをこじらせたような巨象に、騎兵もどきとゴライアスだぞ」
それはタケナカ先輩の隣で静かにしてたクリューサの顔にも浮かんでいて。
「そりゃいい得て妙だな、クリューサ先生。あの槍といい盾といい、ちょうどよくそう言う見た目をしてやがる。じゃあなんだ、俺たちはダビデの集まりかなんかか?」
「なるほど、どおりであいつら相手に善戦しているわけだ。ならばあのひょろ長いやつのことは【ゴライアス】と呼ぶのはどうだ? ここにいるお前らが勇敢な戦士という前提だがな」
「あいにくここは誰かさんの影響で敵へ突っ込むような人種でいっぱいだろ? お前ら、このいけすかねえのっぽに名前をくれてやってもいいか? 不名誉になるかどうかは俺たち次第だがな」
二人はプロジェクターが流すのっぽの不気味な挙動に軽口を交え始めた。
白き民によるホラー映画一歩手前の映像も軽い笑いの場に早変わりだ、採用しよう。
「俺たちになぎ倒されたくせに贅沢な名前だな、是非名付け親になってくれ」
「あんな可愛げのねえ子供なんざ持ちたかねえな。お前ら、俺のネーミングセンスに異議はあるか?」
「あるならこの人の代わりに名前考えとけよ、しっくりくるやつ頼む」
この先輩もだいぶ冗談が柔らかくなったと思う、みんなが砕けて笑った。
「ならば俺が言ったように、巨人は【コロッサス】でどうだ? 腕を四本生やした悪趣味な像みたいなあいつには上等な名前だろう」
クリューサの名づけも乗ってきた、段々と流れが命名大会に傾いてる。
そこにヌイスとシンパシーのある姿がくいっと眼鏡をいじった、ハナコが戦場を駆ける騎兵に険しい顔だ。
「それだと騎兵は【キャヴァリー】あたりですかね? あんな気持ち悪いもの乗りこなす化け物につけたくない名前ですけど」
「だったらこの馬モドキには【スティード】と名付けて上げようか? 意味は軍馬だ、馬と一言でいうには猛々しすぎるからね」
ダブル眼鏡が名前を授けたみたいだ。これで白き民の名前が豊かになった。
「しかし、本当に新種が出てきちゃうとは思いませんでしたねえ……ミコさんたちが無事に戻ってこれて良かったですけど、今後はこのような相手と遭遇する可能性を常に視野に入れなければならないと思うと厄介極まりない話ですよ。キモいけど馬ですよ馬」
そんなところで狩人のミナミさんが緩んだ空気を程よく引き締めてくれた。
実際その通りである。なにもあれは一回きりの「初めまして」じゃない。
この映像に出演する白き新種が今日から現れるかもしれない証拠だ。
「俺たちは遭遇しませんでしたけど、こういうのが現れたってことは他の場所でも出てくるかもしれませんよね……せっかく野外活動にも慣れてきたのに」
不安げなホンダの地味顔が目に付いて、俺は投影される戦場の様子をまた見た。
蹴散らされた騎兵をゴライアスが大きな歩幅でまたぐシーンだ。
長い腕をいいように使った投げ槍をぶん投げて、俺たちの間に穂先が生えてわーわー騒ぐのも一緒だ。
「……正直いってまた会いたくないのは確かだな」
「……イチ先輩がそう言うなんてよっぽどじゃないですか?」
「世界記録塗り替えられそうな映像が流れてる通りだ。俺たちが隠れてた斜面ごとぶち抜いたり、おまけに遺跡の瓦礫もぶん投げて砲撃されてる気分だったよ」
ヌイスがまさに今口にした場面を再生してくれた。
遠い離れで長腕をぐぐっ……!と振りかぶり、掴んだ瓦礫の質量をどこかへお届けする投球スタイルだ。
ドローンのカメラの性能の良さが災いしてあの投擲物の迫力が蘇ってる。
「遮蔽物のないような開けた場所では絶対に会いたくないですね。このゴライアスの投擲、かなり正確ですよ? 恐らく背の高さが標的を捉えやすくしているんじゃないでしょうか」
サイトウの前髪隠れな表情も、ずいぶんとシリアスに受け止めてるようだ。
「サイトウ、こういう時は俺たちが小さい的で良かったって喜ぶべきか?」
「どうでしょう。でもイチさん、こいつらの動きを見て思ったことがあります」
「どうせ嫌な感想だろうな。どんな感じだ?」
「こいつらは迫るような動きと一緒に投げてますけど、もし一か所に落ち着いてじっくりと狙いを定めたら……おそらくはもっと的確に投げてくるかと」
「そいつが人間大でもか?」
「斜面に隠れている皆さんを掠める程度ですよ? あまり考えたくはありませんが、本気にさせたらまずいかと思います」
その目星から所見を聞いてみたものの、耳にしてけっこう後悔した。
そうだ、もしあれが一方的に攻撃できる距離から投げ槍やらお見舞いしてきたら最悪な一日になるだろう。
「俺はコロッサスよかやべーと思うぜ。殺意マシマシでプレゼント投げてくるだけじゃねえ、足が長い分はえーし、腕の長さそのままに槍振り回して意外と隙がなかったろ?」
「そうなんですよね。懐に潜り込んで足を叩けば簡単にバランスを崩してましたけど、近づくまでが難関でした。幸いコノハたちは魔法や投げ物に銃と遠距離攻撃手段を持ってましたので、守り切れてない箇所に牽制で打ち込めば隙は作れましたね……」
「足の細長さに身体の大きさが釣り合ってないのが原因だと思うぞ。ちなみに頭部を破壊すれば殺せるのは他のやつと共通だ、ただこうも大きいと槍を伸ばしても届かん距離だがな。コノハの言うように離れた場所から攻撃する手段がほしいものだ」
いやな経験を積んだタカアキとコノハとクラウディアからの情報も広まって【ゴライアス】の脅威はよく伝わったようだ。
あいつは突然会いたくないやつNo1だ。
サイトウの言う通り、投げ槍をしのげる術がないとピアシングスロウほどの威力がどんどん送り込まれる。
「だが【キャヴァリー】たちも厄介だろう? イチやコノハの機転、それにヌイスさんの爆撃で三度助かったが、従来の白き民より素早く突進力があって一番厄介に感じるぞ」
「うん……もし急に出くわしたら、絶対逃げられないと思う。単純に速いっていうステータスがあるだけで、向こうの方がわたしたちより有利だろうし」
と、そんな恐ろしい想像にエルとミコの不安そうな物言いも挟まった。
ヌイスが気を利かせて騎兵突撃第二ラウンドの現場を流した。
ぎりぎりまで引き付けたキャヴァリーどもが赤色に飲まれて総崩れになる場面に、コノハがどやっと得意げだ。
「しかもあいつら、三度目の時は防具を捨てて身軽になってたんだよね……消耗した団長たちに一気に畳みかけてくる気満々だったよ、あれ」
「あの時乗ってたのはナイトじゃなくてソルジャーじゃありませんでした? 状況によっては乗せてくる相方も変えてくるかもしれませんね……」
「これさ、アーチャーとか乗ってたらどうなるんだろう。なんか馬乗りながら弓撃ってきそうじゃん」
「セアリさんはこいつらで馬車みたいなの作らないか心配です」
「やめてよキモい!」
キャヴァリーの脅威を三度もお目にかかったフランとセアリも嫌にしみじみだ。
ミセリコルディアがこう言うんだ、のっぽだけじゃなく騎士も十分やばい。
「…………っていうかこれ絶対馬じゃないよね。これじゃ人間と混ぜ合わせたような化け物だ」
「こんなのと戦うとか絶対ごめんだよ……なんかこう、動きに人みたいな挙動が混じってるもの!」
「背中のあたりの構造とか特にそっスよね、四つん這いになった人が無理矢理馬っぽくしてるっつーか……うわ、夢にでそ……」
「さっきヌイさんがいってたことが良くわかるわー……もうこれこの世界裏切るほどキモすぎっから、こんなん相手しないといけないとかテンションブチ下がるんですけど」
「人間っぽいってことは、頭を潰せば確実に殺せるでしょうね……足さえ止めれば行けそうな気がします」
「こえーよイクエ姉ちゃんっ! 鈍器見つめながら物思いにふけないでくれ!」
まじまじ見に来たチーム・ヤグチも悪夢を目にしたそれだ。
新種の不名誉な見てくれがもたらす精神的なダメージもでかい。
まあそれでも対策がつきそうなのが救いだ、森の中なんかに誘い込めば木々に邪魔されて難儀するイメージがある。
「でもなお前ら、俺が個人的に一番やばいと思ったのはあの灰色のやつだ。今回の件で巨人の足取りがやっとわかった、クソみたいな形でな」
が、何より悪い知らせはあの灰色の衣を被ったやつだ。
「灰色?」とけっこう首が傾げられたが、映像が切り替わるのは流石ヌイスだ。
「私も君たちも驚き疲れてるようだけど……残念ながらイチ君の言うように、一際規格外なやつがいたんだ。黒い魔法陣みたいなものを呼び出して、そこから白き民を生み出すやつを見つけてね」
まさに口であれこれ説明したかった様子が細かく映し出された。
「そうだな、こんな感じだ。あのでかいやつ足跡が見つからないって誰か言ってたよな? その理由がちょうどここに映ってると思うぞ」
どうにか人間大の身振りが分かる程度に拡大された遺跡の光景だった。
一見すればメイジ級の振る舞いにも見える灰色が、広場で悠々と北を眺めてる。
問題の一コマは、大きくゆとりのある黒い円から落ちてくるコロッサス級だ。
まさしく『召喚』だ。そしてこの前の襲撃の謎の答えでもあった。
「ま、まさか……? こんな感じでお呼ばれしてました、と? いや確かにこれなら足跡つきませんけどね、文字通りいきなり現れますし!?」
ミナミさんも実に嫌な形で疑問が解けたと思う。
なんたって巨人が何もない場所からずるっと出てくるんだぞ?
「私はあの時「そこらから現れたりしない限りは」などといった気がするが、その通りとは恐れ入ったぞ。あれは恐らく、森のどこかで灰色姿のやつが呼び出したに違いないぞ」
クラウディアの推測もあてはまって、この実情はなおのこと不気味だ。
全てを繋げるならこうだ、白き民を召喚するやつがいて、そいつが拠点の南側でこそこそしてたことになる。
「い、いちクン……? これ見て!? 騎兵もここから出てきてるよ!?」
更に追加だ、続く映像でキャヴァリー級たちもぼとぼと降りてきた。
間違いない、こいつらは二度目の突撃を敢行しに来た重装の部隊だ。
しばらく見ていると巨人のおかわりと身軽な騎兵すらも確認できた――全部お前の仕業か。
「うーわ……知りたくないもの知っちゃった気分。これが白き民の親玉とかいわないよな?」
「やっぱりこれが増援を呼んでたんだね……魔法、なのかな?」
「どうにかしなきゃ延々とお友達が招待されてた可能性もあったかもしんねーぜ、こりゃ……どおりでわんさか来たわけだよ」
俺たちの精神衛生によろしくない真実がそこにある。
冒険者の総意は白き民を呼び出す謎の存在に深く動揺してるようだ。
「……俺の見間違いじゃなきゃ、呼ばれたくないもんを次々と生み出してねえか? おい、もしかしてあいつらを手引きしてやがるのはこの得体の知れねえやつか?」
もはやタケナカ先輩も冒険者一同を代表するように唖然だ。
同類を生み出す何かがいる。こいつは大きな発見でもあって、そしてその分最悪なニュースにもなりえるからだ。
最後はあの爆撃に行き着いて、こうしていかにヌイスに救われたか痛感したものの。
「むーん? 灰色のやつが仰け反って姿を消したようだぞ、何が起きたのだ?」
そこから程なく経ったあたりで、ノルベルトも不可解そうだった。
狙撃が決まった瞬間だ。強調された灰色のやつがびくっと震えて消えた。
ちゃんと当たってたらしい。俺はトリガを意識した指使いを脳天に向けた。
「隙だらけだったから頭にお見舞いした。ご覧の通り仕留め損ねたけどな」
「おお、抜け目なく当てていたのだな。しかし残念だ、せっかく狙いすました一撃を見舞ったというのにさほど通ってるように見えんぞ」
「次は五十口径でもお見舞いするつもりだ。それか近づいてスティレットかお前でもぶちこんでやる」
「フハハ、それは良いな。その時は俺様が仕留めてやろうか?」
「ああ頼りにしてる」
一発お見舞いしてやったという身振りに「やりやがったこいつ」みたいな視線が集まった気がする。
「得体の知れない相手にいきなり撃ち込んで確実に仕留めるなんて殺意が強すぎだろう君。でもおかげで向こうが引っ込んだのは確かか、なんというかその容赦のなさにはさすがの新種もたまったもんじゃなかったようだね」
「どいつもこいつも頭を吹っ飛ばせば死ぬ共通規格があったからな」
「だからってこうも律儀に敵の新顔に一片の躊躇なくヘッドショット決めるかな。さぞいいご挨拶になったと思うよ」
「ボスからリーダーを優先的に狙うように教わってたんだぞ、そいつが生きたってことだ。まあ向こうの俺に対する第一印象は最悪かもな」
ヌイスも俺の腕前に呆れてるようだ。お褒めの言葉として受けとった。
それから沈黙が走った。
ここにどれだけ軽口が飛び交おうが、脅威が格段と増した事実は変わらないのだ。
「背の高い化け物に、馬もどきに乗った白き民に、それでもってそいつらを呼び出す灰色のやつか。巨人が現れて以来各地に根付いてるっていう現状を省みるに、今日からその手の類を相手にしなくちゃならねえのは確実だ」
繰り返される動画に、タケナカ先輩がザクロジュースを頬張ったような顔である。
長腕を生かして戦うゴライアス級に、圧倒的機動力を持つキャヴァリー級、そして謎の灰色。
今じゃあの巨人が各地で見受けられるんだ、こいつらも未開の地のあちこちで目につくようになってもおかしくない。
「そうなってきますと、これからは拠点の外を探索する際により一層警戒心を持たなければなりませんねえ……我々狩人なんて軽装ですからね、ガチ装備の騎士とか中距離対応のでっかいのとか、平地で遭遇しようものなら手が出せないほどに相性が悪すぎますし」
「探索へ向かう連中だけじゃねえぞ、そういう手合いが今後拠点を襲ってくるとなりゃ厄介極まりないだろうさ。そこにあのお仲間を召喚するようなやつが混じってたらもう最悪だ、物量で押し切られちまったらもうしょうがねえ」
狩人ギルドと冒険者ギルドの代表も悩み続けてる。
何も外で出くわす可能性だけじゃない、そいつらが仲良くひとまとまりになってここを攻め込んでくる可能性もあるのだ。
この新種三点セットは厄介すぎる。イレギュラーという表現に納得だ。
「少しでも力になれるよう、今後はここで冒険者のみんなをサポートさせてもらうよ。具体的にはドローンを使った周辺の偵察が主だね、まだ未到達の場所の調査や手が負えない範囲への警戒は私に任せてくれないかい?」
するとヌイスが申し出た。テーブルに置かれたドローンがそれだ。
こうして遺跡の新種どもを事細かに撮影してくれた実績もあればひどく頼もしい。
わざわざ危険な場所に近づかずに調べられるのは特にでかい、みんなも好意的だ。
「分かった、任せたぞヌイス」
「もちろんさ。その代わりドローンで爆撃しろなんて注文は無理だからね? ていうか、虎の子の長距離用のやつを爆弾にしなきゃもうちょっと広く探索できたんだけどね……」
「お詫びに廃墟でドローンのおかわりでも探してきたほうがいい?」
「是非そうしてほしいね、いいものが手に入ればその分君たちの力になるさ」
「ってことで今後は安全に敵の様子を伺えそうだぞタケナカ先輩」
「剣と魔法の世界でドローンね、元の世界に帰ってきた気分だ。もし人手がいるならいつでも言ってくれよ、俺も爆弾抱えて特攻以外は大体やってやる」
「文明の力の恩恵がまた一つ増えましたねえ。向こうも向こうですが、こちらもこちらといいますか……いい勝負な気がしません?」
ヌイスに一仕事任せることにした、あればドローンも探してやろう。
すると集会所の出入り口の方からドワーフらしい足音がずかずか入り込んできて。
「話は聞かせてもらったぞ! こっちもガソリンスタンドのサルベージでいいもん見つけたからな、わしらも新種とやらには負けとられんわ! それからイチ、あとでわしのとこにちょっとこい!」
「スーパーバイオディーゼル製造所も夕暮れにゃ完成するぞ! お主らの中で暇なやつ手伝っとくれ、特にハルオ!」
「火薬と金属資源がしこたま手に入ったとなりゃこっちのもんだ。後ろのやつらにおめーらの新しい装備こしらえるように言っといてやっからな、どんどんあいつらと戦え」
オイルと汗で汚れつつ爽やかに大声を広げたのち、またずかずか出て行った。
相変わらず暑苦しいし忙しい人たちだ。それがドワーフの良さだが。
「いやはや……フランメリア史上未知の白き民が現れるとは驚きです、それに負けじとこうもやる気な皆様の勤務態度にも感服いたしましたが。流石は近頃注目されているアサイラムの一団ですなあ?」
ずっと俺たち見守ってたアキといえば緊張感もクソもない呑気さだ。
ひどい事実の立て続けだだけど、どいつもこいつも怖気ついてはいないし依頼を降りる素振りもないのが救いだ。
「冒険者は仕事を選べないからな、一度引き受けた以上あいつらがなんだろうがぶちのめしてやるさ」
「確かに新しい白き民は強いかもしれないけど、でも勝てない相手じゃないし……それに、一度引き受けたお仕事をここで諦めるなんてできませんから」
「この面子でなんやかんやいけそうなのもあるがな、ここで「やっぱりだめでした」で引き下がったら後輩どもに示しがつかねえだろ」
「そういえばここにいるみんなって冒険者を始めてからそれなりの付き合いだし、俺たちでこの依頼をこなしたいっていうのがあるかな。それにイチ君見てると面白いしね?」
ミコからタケナカ先輩からヤグチまでつながった。共通点は仕事熱心だ。
アキは「なるほど」と納得した頷き方だった。
「こうして見ていると冒険者ギルドの絶頂期を思い出しますなあ……あなた方のやる気は実に伝わりましたぞ。今回の件は直ちにバサルト殿に報告させていただきますゆえ、あわよくば追加の支援を受けられないかと掛け合ってみましょうか――どれ、ここはひとつスクリーンショットを」
集会場に寄せ集まったメンバーを勝手に撮影してから行ってしまった。
さて俺たちも動くか、お集りの皆様に「解散」と告げて次に移ることにした。
「とりあえず今日は大人しく全員で拠点にとどまった方がいいだろうな。夜の警備とかどうする?」
「わたし、新種の白き民がアサイラム以外の場所にも現れてないかちょっと心配だな……? クラングルにいるお友達に向こうの様子を聞いてみるね?」
「それならついでに新手と遭遇したことについてギルマスに説明しといてくれ。狩人のやつらも集めて今後のやり方も決めねえとな、見張りの安心のためにも拠点の防御も固めたほうがいいだろう」
「あっそうだ……料理ギルドの人達にも俺たちの現状を伝えないとね、ちょっと行ってきます」
◇
集会所にヌイスのどこか淡々とした口調が平たく広がった。
本棚や飾りと一緒に押し込まれた数十以上の面々がどよめくのも仕方ない。
というのも、背後でプロジェクターが投影した動画が木造の壁に流れており。
「向こうに転移してしまった際はバロール・カンパニーという企業に勤めていてね。その時の経験が君たちの力になれたらと思うよ。ちょうど後ろで流れてる、昼間に起きたこの出来事みたいにね」
白衣と眼鏡のあいつらしい姿が、すっと手でそこを示した。
斜面に隠れた俺たちがこまねく姿と、そこへ突っ込む白き騎兵やのっぽの様子がリピート再生されてる。
たぶんあsこの上空で撮ったに違いない、白い長腕が槍投げる場面が嫌に鮮明だ。
「俺からも改めて紹介させてくれ、こいつはヌイスっていう信用できるやつだ。少なくとも再会のご挨拶に爆弾抱えたドローン突っ込ませるぐらいの仲はあるぞ」
俺は頃合いを見計らった。
見晴らしのいい最前列からヌイスのそばに移れば、ぱっと動画が切り替わる。
二度目の突撃を敢行する騎兵たちが赤と灰の爆発模様で上書きだ。
爆風で視界が揺れるさまは説明をよく裏付けてるはずだ。
「こんな風にね。君たちに「はじめまして」を言う前に、こんな荒っぽいことをしたことについては謝らせてもらうよ」
「そう、こんな風に。別にドローンでカミカゼさせるような性癖じゃないからな、普段はもっと礼節を持って派手にやってくれるぞ」
「あれは廃墟からサルベージした貴重な長距離用のドローンだったんだけどねえ……まあ、なけなしの一機を惜しみなく使う程度には親友さ。どうかよろしくね」
物騒な説得力で紹介が広がると、ここの冒険者らしさはまたざわめいた。
俺の多様性に満ちた交友関係に「またこいつ変なの呼び込んだな」みたいな調子だ。
「その躊躇なく爆撃かませる姉ちゃんはウェイストランド帰りのヒロインだったのか。おかげで全員無事なんだ、第一印象に悪いモンはねえさ――にしても君が悪すぎるだろ、この新手ってのは」
前列にいたタケナカ先輩も、壁に流れる昼間の光景にまあまあ頷いてる。
走る騎兵のキモさが拡大されてて「うわあ」な表情が張り付くのも仕方なしだ。
「昼間は貴女のおかげで助かった、感謝する。だがまさか、私たちのようなヒロインだったとはな……」
エルの感謝だ、でもさっきの意味深な仕草がまだこびりついてるようだ。
「ぬいぬいもヒロインだったんだ~! なになに? どんな子なん? ちなみにあーしはヴァルキリーだよ!」
チアルもそんな心境もいざ知らずのまま挟まってきた。
エルの複雑さとチアルの単純さが生むへんてこな模様に、ヌイスはあくまで淡々としたままで。
「そうだね、しいて言うならイス人っていうヒロインかな? まあ人間に近い種族だと思ってくれるかい?」
「……イス人とはなんだ? 聞いたことがないが」
「椅子人……ってなんなん? そんなのいたっけ? もしかしてまだ知らないれあれあな種族がいたとかそーいうの……!?」
「君たちの感覚でいえばレアな種族さ、ガチャを回したら出てきたSSRか何かと認識してくれればけっこうだよ」
返事は冗談のかかった苦笑いだ、通信デバイスのついた耳をとんとん強調してる。
ヒロインどもは「イス人?」とこぞってるが、そこに再生中の動画を示し。
「私はMGOを基に作られたこの世界を調べていてね。里にいたプレイヤーやヒロインたちに協力を仰いでスキル・システムが我々にどのような影響を与えているか調べたり、原作とどれだけ差異があるか探ったり、白き民とは一体なんなのか考えたりと様々さ」
目の前に広がる人間人外のまとまりにそうアピールした。
特にさっきからばたばた気色悪い『白き馬』をタブレットのタッチで強調すると。
「特にこの悪趣味極まりないものについて一つ分かったことがあるんだ。君たちが白き民と言っているこいつらのことさ」
自信を込めてそういうのだ。こいつの何かが分かったと。
白き民絡みの話と長く付き合ってる身からすれば誰もが興味津々だ。
とはいえその表情はいたって淡々、重要な情報をもたらす態度じゃない。
「何が分かったんだ? ここを大騒ぎにするほどの大発見か?」
「残念だけど状況を覆すような大層なものじゃないよ。あいつらは作中には出てこない、全くのイレギュラーだということさ。あれはMGOの設定に沿ったものじゃない、この世界が生んだまったく新しい生命体だ」
あの化け物どもがMGOに関わらないという確信だった。
これはゲームの開発に携わっていたヌイスだからこそ言えるセリフだ。
白衣姿に隠れた事情を知る俺やタカアキからすれば「ヌイスが言うなら」で済むが。
「あれって原作にはなかったんだね。そう言われれば団長、安心っていうか納得なんだけど……でもどうやってそう判断したのさ、ぬいちゃんは?」
ミコのお隣で訝しむフランが思いっきり突き刺さるのも仕方ない。
どうしてあれがMGOとは無縁だと信じてるのかと、みんなもつられてる。
ところがヌイスは俺をちらっと見た。それから眼鏡にくいっと触れて。
「その前に自由になった今だから言おうか。私は少々不誠実な形で他所様を覗き見する癖があるんだ。AIだったころは私たちヒロインがデバッグに駆られて忙しい傍ら、管理の目が緩んだ時にMGOのデータをこっそり拝借したものさ。これがまた中々興味深いものでね?」
変わらずフラットな面持ちのままそう言い広めた――もちろん嘘だな。
さっきの視線は「嘘をつくからあわせて」か、ミコも察したような顔だ。
「は、ハッキングってやつだよね、それ……? 思いっきりアウトじゃん!」
「そうなるねえ。実はMGOっていうのはまだ未実装なデータが山ほどあったんだ、例えばだけどフラン君、君たちが昼間に見たあの遺跡があるだろう?」
「そういえばあったよね……あのなんか女神様祭ってる場所。あれがどうしたの?」
「あの遺跡はこの世界の誰かが建てたんじゃない、遠い未来で実装される予定だったオブジェクトさ。ゲームを管理するAIであるノルテレイヤを奉る、いわゆるゲーム側がいつか記念で残そうとした未実装データなんだ。実際、ヒロインたちに聞いても「あんなもの知らない」と口を揃えててね、君だってそうだろう?」
嘘混じりの真実がそう広まると、フランがはっと俺を見た。
前に誰かさんの事情に触れたミセリコルディアとリスティアナも気づいたか。
そんな反応を目にヌイスは「そうさ」と言いたげに頷き返したようだ。
「フランメリアの各地にはああいった持ち主不明の建築物が残ってるそうだけど、それは本来使われなかったデータが基になって作られたと睨んでよ。君たちの知ってるダンジョンだとかが生成されてるのと同じさ」
「あーそういうことね団長理解した……すごいことになってるね!?」
「なってるねえ……。証拠にもう一つ、未実装要素をあげようか? MGOは将来的にヒロインにある要素を実装しようと準備していてね。個性を持たせるとかそんな理由で、ひとりひとりに【スペシャルスキル】……いわゆる『必殺技』を設定していたのさ。ここじゃそういう特別な技が使える子がいるそうだね?」
嘘と真実が交じった調子で誰かを見て、それから口を開けて続けるのだ。
「つまりこの世界は、君たちの知らない未実装のデータを全て取り込んで成り立ってるのさ。今この世界にいる君たちにとって知らない要素がいっぱいあるのも、そこに起因してるんだ」
なるほど、そういうことか。
リスティアナが使ってる謎の技は未来で実装されたシステムだったわけだ。
ヌイスは片や不正アクセス犯として、片や遠い未来のMGOを知るやつとしてみんなを伺ってる。
「じゃあ、リスティアナさんが使ってるのって……ずっと先で実装されるはずの機能だったんだ……?」
ミコのおっとりとした目がまさにそれをぶっ放すやつに向かった。
いや全員の視線が集まった――「私ですか!?」と我指すリスティアナだ。
「そ、そんな驚愕な事実が……!? 私の必殺技って未実装要素だったんですか!? 知らずにガンガン使っちゃいました!」
「ついでに言おうか。この【スペシャルスキル】は誰一人として例外なく、ヒロインのみんなが持ち得る機能なんだ。ここにいる子たちだけじゃない、今のフランメリアにいるすべてのヒロインがそうさ」
そしてぶっ飛んだ発言へと繋がってクソ困惑だ。
あのぶっ飛んだ必殺技がヒロイン全部に配布済みとかなんの冗談だ。
「ヌイス、今俺とんでもないこと聞かされた気がする」
「とんでもないだろうけど事実さ。現にリスティアナ君は使ってるんだろう?」
「はいっ! どーんといってます!」
「どーんっていってるぞ」
「……わ、わたしも使えたりするのかな……!?」
「ひ、必殺技だと……!? そんなものが使えるなんてすご――どうなっているんだ!?」
「えっみんな使えちゃうの? 団長もカッコいいの使えちゃうんか……!? っていうかMGOってそんなゲームだったの? データ容量すごいことになるけど大丈夫?」
「いやいやいやどういうことですか、セアリさんたちヒロイン一人一人に必殺技設定してたとかゲームとして壮大すぎやしませんか? でも使えるなら喜んで使いますのでどうかカッコいいのお願いします」
最前列のミセリコルディアはちょっとウキウキしてる、特にエル。
『なんたる驚愕の事実。ちなみに命名権は我々にあるのかという疑問がある。もし名付けられるならスタイリッシュな名前を一筆にしようと思う』
『わたしたちも使えるんだね……いいこと聞いちゃったかも!』
『どうすれば使えるか気になるゾ。というかMGOにそんな要素が隠されていたとはびっくりダ、ワタシのことだからきっと水に纏わるすごいものに違いなイ』
『誰もがリスティアナ先輩のように技を持っていたんですね。というか、そんな機能を将来的に実装するなんて信じられません……』
『レフレク、かっこいいのがいいですー♪』
『あ、あたしも……!?』
オリス率いるチーム・チビ(仮名)も向こうで和気あいあいだ。
ヌイスの物言いが魅力的だったんだろう、チビエルフに猫ッ娘にお魚女子に鬼娘に妖精に一つ目メイドと可愛らしく盛り上がっていて。
『おねえちゃん、いつのまにか必殺技覚えてたんか……!?』
『ボクも使いたい! ねーねーどうすればいいの!?』
『わたくしたち一人一人にそんな特別な技が秘められていたのですね……開発者様からの愛を深く感じます』
『っていうか、そんな不完全なままの作品を世に送り出したってことはよっぽどやっつけ仕事だったんですね。デバッグとテストプレイを兼ねて放り込まれてからの日々はコノハ忘れません……』
九尾院のロリたちもまだ見ぬ特別な技にわくわくしてる、コノハを除いて。
「みんながりすちみたいにすごい技使えるんだ~? あーしのってさ、どんなんだろう? お洒落なのがいいな~?」
「白き民よりとんでもない事実を聞かされた気がする……これ、ヒロインのみんなに広がったら軽くパニックになるよ?」
「生まれつきそんな機能あったんだー……強いのがいいなー……」
「MGOってけっこう先進的なゲームでしたけど、前倒しにした分以外にも可能性がいっぱいだったんですね~」
「は? あたしたち一人ずつにんなもん配ってるとかどうなってんの? それゲーム的にバランスとか大丈夫なの? 恐ろしい事実に気づいちゃったんだけど」
「おおっ……秘めたる力があるとはなんと熱い! きっと作者様はロマンがあるお方に違いありません! 感謝せねば!」
戦乙女と黒髪狐耳率いる一団もあれこれ申してる――耳が痛い。
MGOを作った未来の俺は何考えてんだ、ヒロイン一人一人に必殺技を授けるとか何食って生きてりゃそうなる。
「――ヌイちゃん、俺も使えるよな?」
あとタカアキ、お前も何考えてんだ。
「ガチ目のトーンでそんなことを尋ねないでおくれタカアキ君、正気と品性を疑うよ」
「プレイヤーは使えねえのかよ! 騙されたッ!」
「何を騙されたんだ君。とりあえず文句はMGOの生みの親に向けてくれたまえ」
「俺に権限がついたら目からビームでも打てるような要素でも入れようか?」
幼馴染の変人ぶりはともかく【スペシャルスキル】の真相に場がめちゃくちゃだ。
「イチ様ぁ、お屋敷の皆様には優しくした方がいいっすね~♡」
「お前らが何かに目覚める前にチェンジ連呼しながら屋敷駆けまわってやる」
「なんでそこで反骨精神が飛び出ちゃうんすか」
中でもロアベアはによぉ……と二割増しでこっちを見てる。
屋敷のおっかないメイドさんどもが必殺技とやらに目覚めないよう祈った、お前のせいだぞ未来の俺。
「ぼくも使える……?」
ニクもお隣できょとんとしてるがどうなんだろうか。
「私も使えるんだって!」と彼氏相手に喜ぶキュウコさんも見えたところで。
「……まさかこんなに喜ばれるとはね。そうなると「じゃあそれがどう白き民に繋がるのか」って顔が幾つか見受けられるけどこれは単純、さっき言った私の悪い癖でゲームのデータをよく覚えてるからさ。信じられないなら作中に登場した敵キャラを弱い順から全部読み上げようか?」
相変わらず淡々と、なおかつ口が単語の連打をおっ始めようと身構えてた。
ヌイスの発言はどこまでも事実だ、このまま言わせれば『白き民=MGOのものじゃない』に説得力がつくだろう。
けれども「そろそろいいかな」という目線だ、その通りにしよう。
「オーケー、物知り自慢はもういいぞ。未実装要素までよーく知ってるお前からしても白き民は絶対にMGO由来のものじゃない、そう確信できるんだな?」
話しを区切った、もちろん出たばかりの白き民に対する説を押すように。
「そうだね。誓って言うけどあれは断じて作中に登場するモブじゃない、それにMGOに登場する魔物や魔獣のコンセプトはゾンビだのスケルトンだのを除いて人間型の敵キャラは出さないという方針だ。だからイレギュラーなのさ」
返事は眼鏡をいじりながらの説明だ。
そうか、ゲームの意向的にもそぐわないってことか。
するとよく聞き入ってったミコとエルも顔を見合わせていて。
「……そうだよね。ゲームの中に出てくる人型って、みんなアンデッドとかそういうのだったし」
「ああ、確かにそうだ。ヒロインが生きた人間を思わせるものと戦うのは世間体に印象が悪い……だとかそんな理由じゃなかったか?」
次第にそんな物言い二つ分がヒロインたちに納得をもたらした。
それはやがて俺たち人間にも広がった。
あれが元になったものとは遠くかけ離れた異常な存在だと。
そしてほんの僅かに静寂が訪れた、アキが物静かにメモを綴るさらさら音だけだ。
「ヌイスさん、あんたが良く調べてるような生真面目なやつだってのはよく分かった。じゃあ俺から質問だ、白き民はこの世界にとってよくねえ存在って言いてえのか?」
落ち着いたのをきっかけにタケナカ先輩が嫌そうに問いかけた。
ちょうどその目線の先には、鮮明に再生される新手の怪物の生き様がある。
「この世の理を外れたやつらだ、と言えば伝わるかな? ここがMGOに忠実であればあるほどにね」
返答はいたってシンプルだった。
おかげで俺たちはリピート再生中の白き民がますます化け物に思えてきたはずだ。
「……であれば、あいつらはこの世のルールとやらをますます外れてるように見えるがな。あんな趣味の悪さをこじらせたような巨象に、騎兵もどきとゴライアスだぞ」
それはタケナカ先輩の隣で静かにしてたクリューサの顔にも浮かんでいて。
「そりゃいい得て妙だな、クリューサ先生。あの槍といい盾といい、ちょうどよくそう言う見た目をしてやがる。じゃあなんだ、俺たちはダビデの集まりかなんかか?」
「なるほど、どおりであいつら相手に善戦しているわけだ。ならばあのひょろ長いやつのことは【ゴライアス】と呼ぶのはどうだ? ここにいるお前らが勇敢な戦士という前提だがな」
「あいにくここは誰かさんの影響で敵へ突っ込むような人種でいっぱいだろ? お前ら、このいけすかねえのっぽに名前をくれてやってもいいか? 不名誉になるかどうかは俺たち次第だがな」
二人はプロジェクターが流すのっぽの不気味な挙動に軽口を交え始めた。
白き民によるホラー映画一歩手前の映像も軽い笑いの場に早変わりだ、採用しよう。
「俺たちになぎ倒されたくせに贅沢な名前だな、是非名付け親になってくれ」
「あんな可愛げのねえ子供なんざ持ちたかねえな。お前ら、俺のネーミングセンスに異議はあるか?」
「あるならこの人の代わりに名前考えとけよ、しっくりくるやつ頼む」
この先輩もだいぶ冗談が柔らかくなったと思う、みんなが砕けて笑った。
「ならば俺が言ったように、巨人は【コロッサス】でどうだ? 腕を四本生やした悪趣味な像みたいなあいつには上等な名前だろう」
クリューサの名づけも乗ってきた、段々と流れが命名大会に傾いてる。
そこにヌイスとシンパシーのある姿がくいっと眼鏡をいじった、ハナコが戦場を駆ける騎兵に険しい顔だ。
「それだと騎兵は【キャヴァリー】あたりですかね? あんな気持ち悪いもの乗りこなす化け物につけたくない名前ですけど」
「だったらこの馬モドキには【スティード】と名付けて上げようか? 意味は軍馬だ、馬と一言でいうには猛々しすぎるからね」
ダブル眼鏡が名前を授けたみたいだ。これで白き民の名前が豊かになった。
「しかし、本当に新種が出てきちゃうとは思いませんでしたねえ……ミコさんたちが無事に戻ってこれて良かったですけど、今後はこのような相手と遭遇する可能性を常に視野に入れなければならないと思うと厄介極まりない話ですよ。キモいけど馬ですよ馬」
そんなところで狩人のミナミさんが緩んだ空気を程よく引き締めてくれた。
実際その通りである。なにもあれは一回きりの「初めまして」じゃない。
この映像に出演する白き新種が今日から現れるかもしれない証拠だ。
「俺たちは遭遇しませんでしたけど、こういうのが現れたってことは他の場所でも出てくるかもしれませんよね……せっかく野外活動にも慣れてきたのに」
不安げなホンダの地味顔が目に付いて、俺は投影される戦場の様子をまた見た。
蹴散らされた騎兵をゴライアスが大きな歩幅でまたぐシーンだ。
長い腕をいいように使った投げ槍をぶん投げて、俺たちの間に穂先が生えてわーわー騒ぐのも一緒だ。
「……正直いってまた会いたくないのは確かだな」
「……イチ先輩がそう言うなんてよっぽどじゃないですか?」
「世界記録塗り替えられそうな映像が流れてる通りだ。俺たちが隠れてた斜面ごとぶち抜いたり、おまけに遺跡の瓦礫もぶん投げて砲撃されてる気分だったよ」
ヌイスがまさに今口にした場面を再生してくれた。
遠い離れで長腕をぐぐっ……!と振りかぶり、掴んだ瓦礫の質量をどこかへお届けする投球スタイルだ。
ドローンのカメラの性能の良さが災いしてあの投擲物の迫力が蘇ってる。
「遮蔽物のないような開けた場所では絶対に会いたくないですね。このゴライアスの投擲、かなり正確ですよ? 恐らく背の高さが標的を捉えやすくしているんじゃないでしょうか」
サイトウの前髪隠れな表情も、ずいぶんとシリアスに受け止めてるようだ。
「サイトウ、こういう時は俺たちが小さい的で良かったって喜ぶべきか?」
「どうでしょう。でもイチさん、こいつらの動きを見て思ったことがあります」
「どうせ嫌な感想だろうな。どんな感じだ?」
「こいつらは迫るような動きと一緒に投げてますけど、もし一か所に落ち着いてじっくりと狙いを定めたら……おそらくはもっと的確に投げてくるかと」
「そいつが人間大でもか?」
「斜面に隠れている皆さんを掠める程度ですよ? あまり考えたくはありませんが、本気にさせたらまずいかと思います」
その目星から所見を聞いてみたものの、耳にしてけっこう後悔した。
そうだ、もしあれが一方的に攻撃できる距離から投げ槍やらお見舞いしてきたら最悪な一日になるだろう。
「俺はコロッサスよかやべーと思うぜ。殺意マシマシでプレゼント投げてくるだけじゃねえ、足が長い分はえーし、腕の長さそのままに槍振り回して意外と隙がなかったろ?」
「そうなんですよね。懐に潜り込んで足を叩けば簡単にバランスを崩してましたけど、近づくまでが難関でした。幸いコノハたちは魔法や投げ物に銃と遠距離攻撃手段を持ってましたので、守り切れてない箇所に牽制で打ち込めば隙は作れましたね……」
「足の細長さに身体の大きさが釣り合ってないのが原因だと思うぞ。ちなみに頭部を破壊すれば殺せるのは他のやつと共通だ、ただこうも大きいと槍を伸ばしても届かん距離だがな。コノハの言うように離れた場所から攻撃する手段がほしいものだ」
いやな経験を積んだタカアキとコノハとクラウディアからの情報も広まって【ゴライアス】の脅威はよく伝わったようだ。
あいつは突然会いたくないやつNo1だ。
サイトウの言う通り、投げ槍をしのげる術がないとピアシングスロウほどの威力がどんどん送り込まれる。
「だが【キャヴァリー】たちも厄介だろう? イチやコノハの機転、それにヌイスさんの爆撃で三度助かったが、従来の白き民より素早く突進力があって一番厄介に感じるぞ」
「うん……もし急に出くわしたら、絶対逃げられないと思う。単純に速いっていうステータスがあるだけで、向こうの方がわたしたちより有利だろうし」
と、そんな恐ろしい想像にエルとミコの不安そうな物言いも挟まった。
ヌイスが気を利かせて騎兵突撃第二ラウンドの現場を流した。
ぎりぎりまで引き付けたキャヴァリーどもが赤色に飲まれて総崩れになる場面に、コノハがどやっと得意げだ。
「しかもあいつら、三度目の時は防具を捨てて身軽になってたんだよね……消耗した団長たちに一気に畳みかけてくる気満々だったよ、あれ」
「あの時乗ってたのはナイトじゃなくてソルジャーじゃありませんでした? 状況によっては乗せてくる相方も変えてくるかもしれませんね……」
「これさ、アーチャーとか乗ってたらどうなるんだろう。なんか馬乗りながら弓撃ってきそうじゃん」
「セアリさんはこいつらで馬車みたいなの作らないか心配です」
「やめてよキモい!」
キャヴァリーの脅威を三度もお目にかかったフランとセアリも嫌にしみじみだ。
ミセリコルディアがこう言うんだ、のっぽだけじゃなく騎士も十分やばい。
「…………っていうかこれ絶対馬じゃないよね。これじゃ人間と混ぜ合わせたような化け物だ」
「こんなのと戦うとか絶対ごめんだよ……なんかこう、動きに人みたいな挙動が混じってるもの!」
「背中のあたりの構造とか特にそっスよね、四つん這いになった人が無理矢理馬っぽくしてるっつーか……うわ、夢にでそ……」
「さっきヌイさんがいってたことが良くわかるわー……もうこれこの世界裏切るほどキモすぎっから、こんなん相手しないといけないとかテンションブチ下がるんですけど」
「人間っぽいってことは、頭を潰せば確実に殺せるでしょうね……足さえ止めれば行けそうな気がします」
「こえーよイクエ姉ちゃんっ! 鈍器見つめながら物思いにふけないでくれ!」
まじまじ見に来たチーム・ヤグチも悪夢を目にしたそれだ。
新種の不名誉な見てくれがもたらす精神的なダメージもでかい。
まあそれでも対策がつきそうなのが救いだ、森の中なんかに誘い込めば木々に邪魔されて難儀するイメージがある。
「でもなお前ら、俺が個人的に一番やばいと思ったのはあの灰色のやつだ。今回の件で巨人の足取りがやっとわかった、クソみたいな形でな」
が、何より悪い知らせはあの灰色の衣を被ったやつだ。
「灰色?」とけっこう首が傾げられたが、映像が切り替わるのは流石ヌイスだ。
「私も君たちも驚き疲れてるようだけど……残念ながらイチ君の言うように、一際規格外なやつがいたんだ。黒い魔法陣みたいなものを呼び出して、そこから白き民を生み出すやつを見つけてね」
まさに口であれこれ説明したかった様子が細かく映し出された。
「そうだな、こんな感じだ。あのでかいやつ足跡が見つからないって誰か言ってたよな? その理由がちょうどここに映ってると思うぞ」
どうにか人間大の身振りが分かる程度に拡大された遺跡の光景だった。
一見すればメイジ級の振る舞いにも見える灰色が、広場で悠々と北を眺めてる。
問題の一コマは、大きくゆとりのある黒い円から落ちてくるコロッサス級だ。
まさしく『召喚』だ。そしてこの前の襲撃の謎の答えでもあった。
「ま、まさか……? こんな感じでお呼ばれしてました、と? いや確かにこれなら足跡つきませんけどね、文字通りいきなり現れますし!?」
ミナミさんも実に嫌な形で疑問が解けたと思う。
なんたって巨人が何もない場所からずるっと出てくるんだぞ?
「私はあの時「そこらから現れたりしない限りは」などといった気がするが、その通りとは恐れ入ったぞ。あれは恐らく、森のどこかで灰色姿のやつが呼び出したに違いないぞ」
クラウディアの推測もあてはまって、この実情はなおのこと不気味だ。
全てを繋げるならこうだ、白き民を召喚するやつがいて、そいつが拠点の南側でこそこそしてたことになる。
「い、いちクン……? これ見て!? 騎兵もここから出てきてるよ!?」
更に追加だ、続く映像でキャヴァリー級たちもぼとぼと降りてきた。
間違いない、こいつらは二度目の突撃を敢行しに来た重装の部隊だ。
しばらく見ていると巨人のおかわりと身軽な騎兵すらも確認できた――全部お前の仕業か。
「うーわ……知りたくないもの知っちゃった気分。これが白き民の親玉とかいわないよな?」
「やっぱりこれが増援を呼んでたんだね……魔法、なのかな?」
「どうにかしなきゃ延々とお友達が招待されてた可能性もあったかもしんねーぜ、こりゃ……どおりでわんさか来たわけだよ」
俺たちの精神衛生によろしくない真実がそこにある。
冒険者の総意は白き民を呼び出す謎の存在に深く動揺してるようだ。
「……俺の見間違いじゃなきゃ、呼ばれたくないもんを次々と生み出してねえか? おい、もしかしてあいつらを手引きしてやがるのはこの得体の知れねえやつか?」
もはやタケナカ先輩も冒険者一同を代表するように唖然だ。
同類を生み出す何かがいる。こいつは大きな発見でもあって、そしてその分最悪なニュースにもなりえるからだ。
最後はあの爆撃に行き着いて、こうしていかにヌイスに救われたか痛感したものの。
「むーん? 灰色のやつが仰け反って姿を消したようだぞ、何が起きたのだ?」
そこから程なく経ったあたりで、ノルベルトも不可解そうだった。
狙撃が決まった瞬間だ。強調された灰色のやつがびくっと震えて消えた。
ちゃんと当たってたらしい。俺はトリガを意識した指使いを脳天に向けた。
「隙だらけだったから頭にお見舞いした。ご覧の通り仕留め損ねたけどな」
「おお、抜け目なく当てていたのだな。しかし残念だ、せっかく狙いすました一撃を見舞ったというのにさほど通ってるように見えんぞ」
「次は五十口径でもお見舞いするつもりだ。それか近づいてスティレットかお前でもぶちこんでやる」
「フハハ、それは良いな。その時は俺様が仕留めてやろうか?」
「ああ頼りにしてる」
一発お見舞いしてやったという身振りに「やりやがったこいつ」みたいな視線が集まった気がする。
「得体の知れない相手にいきなり撃ち込んで確実に仕留めるなんて殺意が強すぎだろう君。でもおかげで向こうが引っ込んだのは確かか、なんというかその容赦のなさにはさすがの新種もたまったもんじゃなかったようだね」
「どいつもこいつも頭を吹っ飛ばせば死ぬ共通規格があったからな」
「だからってこうも律儀に敵の新顔に一片の躊躇なくヘッドショット決めるかな。さぞいいご挨拶になったと思うよ」
「ボスからリーダーを優先的に狙うように教わってたんだぞ、そいつが生きたってことだ。まあ向こうの俺に対する第一印象は最悪かもな」
ヌイスも俺の腕前に呆れてるようだ。お褒めの言葉として受けとった。
それから沈黙が走った。
ここにどれだけ軽口が飛び交おうが、脅威が格段と増した事実は変わらないのだ。
「背の高い化け物に、馬もどきに乗った白き民に、それでもってそいつらを呼び出す灰色のやつか。巨人が現れて以来各地に根付いてるっていう現状を省みるに、今日からその手の類を相手にしなくちゃならねえのは確実だ」
繰り返される動画に、タケナカ先輩がザクロジュースを頬張ったような顔である。
長腕を生かして戦うゴライアス級に、圧倒的機動力を持つキャヴァリー級、そして謎の灰色。
今じゃあの巨人が各地で見受けられるんだ、こいつらも未開の地のあちこちで目につくようになってもおかしくない。
「そうなってきますと、これからは拠点の外を探索する際により一層警戒心を持たなければなりませんねえ……我々狩人なんて軽装ですからね、ガチ装備の騎士とか中距離対応のでっかいのとか、平地で遭遇しようものなら手が出せないほどに相性が悪すぎますし」
「探索へ向かう連中だけじゃねえぞ、そういう手合いが今後拠点を襲ってくるとなりゃ厄介極まりないだろうさ。そこにあのお仲間を召喚するようなやつが混じってたらもう最悪だ、物量で押し切られちまったらもうしょうがねえ」
狩人ギルドと冒険者ギルドの代表も悩み続けてる。
何も外で出くわす可能性だけじゃない、そいつらが仲良くひとまとまりになってここを攻め込んでくる可能性もあるのだ。
この新種三点セットは厄介すぎる。イレギュラーという表現に納得だ。
「少しでも力になれるよう、今後はここで冒険者のみんなをサポートさせてもらうよ。具体的にはドローンを使った周辺の偵察が主だね、まだ未到達の場所の調査や手が負えない範囲への警戒は私に任せてくれないかい?」
するとヌイスが申し出た。テーブルに置かれたドローンがそれだ。
こうして遺跡の新種どもを事細かに撮影してくれた実績もあればひどく頼もしい。
わざわざ危険な場所に近づかずに調べられるのは特にでかい、みんなも好意的だ。
「分かった、任せたぞヌイス」
「もちろんさ。その代わりドローンで爆撃しろなんて注文は無理だからね? ていうか、虎の子の長距離用のやつを爆弾にしなきゃもうちょっと広く探索できたんだけどね……」
「お詫びに廃墟でドローンのおかわりでも探してきたほうがいい?」
「是非そうしてほしいね、いいものが手に入ればその分君たちの力になるさ」
「ってことで今後は安全に敵の様子を伺えそうだぞタケナカ先輩」
「剣と魔法の世界でドローンね、元の世界に帰ってきた気分だ。もし人手がいるならいつでも言ってくれよ、俺も爆弾抱えて特攻以外は大体やってやる」
「文明の力の恩恵がまた一つ増えましたねえ。向こうも向こうですが、こちらもこちらといいますか……いい勝負な気がしません?」
ヌイスに一仕事任せることにした、あればドローンも探してやろう。
すると集会所の出入り口の方からドワーフらしい足音がずかずか入り込んできて。
「話は聞かせてもらったぞ! こっちもガソリンスタンドのサルベージでいいもん見つけたからな、わしらも新種とやらには負けとられんわ! それからイチ、あとでわしのとこにちょっとこい!」
「スーパーバイオディーゼル製造所も夕暮れにゃ完成するぞ! お主らの中で暇なやつ手伝っとくれ、特にハルオ!」
「火薬と金属資源がしこたま手に入ったとなりゃこっちのもんだ。後ろのやつらにおめーらの新しい装備こしらえるように言っといてやっからな、どんどんあいつらと戦え」
オイルと汗で汚れつつ爽やかに大声を広げたのち、またずかずか出て行った。
相変わらず暑苦しいし忙しい人たちだ。それがドワーフの良さだが。
「いやはや……フランメリア史上未知の白き民が現れるとは驚きです、それに負けじとこうもやる気な皆様の勤務態度にも感服いたしましたが。流石は近頃注目されているアサイラムの一団ですなあ?」
ずっと俺たち見守ってたアキといえば緊張感もクソもない呑気さだ。
ひどい事実の立て続けだだけど、どいつもこいつも怖気ついてはいないし依頼を降りる素振りもないのが救いだ。
「冒険者は仕事を選べないからな、一度引き受けた以上あいつらがなんだろうがぶちのめしてやるさ」
「確かに新しい白き民は強いかもしれないけど、でも勝てない相手じゃないし……それに、一度引き受けたお仕事をここで諦めるなんてできませんから」
「この面子でなんやかんやいけそうなのもあるがな、ここで「やっぱりだめでした」で引き下がったら後輩どもに示しがつかねえだろ」
「そういえばここにいるみんなって冒険者を始めてからそれなりの付き合いだし、俺たちでこの依頼をこなしたいっていうのがあるかな。それにイチ君見てると面白いしね?」
ミコからタケナカ先輩からヤグチまでつながった。共通点は仕事熱心だ。
アキは「なるほど」と納得した頷き方だった。
「こうして見ていると冒険者ギルドの絶頂期を思い出しますなあ……あなた方のやる気は実に伝わりましたぞ。今回の件は直ちにバサルト殿に報告させていただきますゆえ、あわよくば追加の支援を受けられないかと掛け合ってみましょうか――どれ、ここはひとつスクリーンショットを」
集会場に寄せ集まったメンバーを勝手に撮影してから行ってしまった。
さて俺たちも動くか、お集りの皆様に「解散」と告げて次に移ることにした。
「とりあえず今日は大人しく全員で拠点にとどまった方がいいだろうな。夜の警備とかどうする?」
「わたし、新種の白き民がアサイラム以外の場所にも現れてないかちょっと心配だな……? クラングルにいるお友達に向こうの様子を聞いてみるね?」
「それならついでに新手と遭遇したことについてギルマスに説明しといてくれ。狩人のやつらも集めて今後のやり方も決めねえとな、見張りの安心のためにも拠点の防御も固めたほうがいいだろう」
「あっそうだ……料理ギルドの人達にも俺たちの現状を伝えないとね、ちょっと行ってきます」
◇
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