魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー

ウィル・テネブリス

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魔法の姫とファンタジー世界暮らしの余所者たち

仕事も終わってひと段落、それから始まるま た お 風 呂

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 「……今日も濃い一日だったな」

 宿舎の柔らかいベッドに身体を預けつつだが、天井めがけてそう思った。

 ドワーフどもが燃料づくりに忙しくなりはじめた後のことだ。
 その日すべきことが大体終わると、アサイラムにゆるい時間が流れた。
 南の脅威は変わらずだけど、また一段と確保できた安全と、冒険者の数がここに安心感をもたらしたからだろう。
 伐採やら物資の運搬を手伝うなり、周囲の見回りに向かうなり、訓練惰眠と好き勝手すれば、夕食の提供が始まった。

 こう至れり尽くせりな俺たちだが、当面の目標は白き民の営みの完全破壊だ。
 あいつらの性質上、根こそぎこの世から追い払わないとまたどこかで増える。
 お住いの地域も再利用できないように破壊しないといけない、徹底的にだ。

 その徹底的を実現するためにドワーフたちが過激なお話をしてくれた。
 まずあの町の形から触れると、あそこは最奥と東西が低い山に囲まれてる。
 登ろうと思えば登れるし、下ろうとすれば下れる、そんな地形に挟まれつつのささやかな盆地だ。
 唯一の由緒正しい入り口は北側、ちょうどこっちに向けた門構えが堂々と喧嘩を売ってるわけだが。

『逆にいや向こうもあの地形に包囲されとるんじゃし? ならそこらをここの戦力で囲って、そのど真ん中に砲撃かましてから真正面に突撃すりゃ挟み撃ちよ』

 と、スパタ爺さんの考えがそこに及んだ。。
 つまりこうだ、まず周囲の小山をここの連中で陣取ってから、囲んだ街中へありったけの砲撃をぶち込む。 
 そこへ北側、すなわち町の玄関へ動きのいい主力を突入させて中身を潰す。
 逃げようが高所には待ち伏せ。後ろからは追撃。「鉄は熱いうちに打て」のままに、槌と金床のごとく挟み撃ちにしろとのこと。

 そのために必要なものも揃いつつある。
 火薬はクリアしたし、金属資源だって白き民の装備やら廃墟の鉄くずで賄える。
 できればそれにあわせた冒険者の訓練、もっと言えば戦車の火力と機動力、更に欲張るなら敵拠点周辺の情報も欲しい。
 でもこのやり方もけっきょく、敵がどれだけ悠長にするかだ。

 食事の場に出されたこんな案だが大体は賛成が取れた。
 というか現状、あれをどうにかする術が他にないのもあるが。

【こんばんは、ミナミです。依然として敵の動きに変化はないですねえ、おかげでだいぶ砦も整備がすすんで快適になりましたよ。ピナちゃんやチアルちゃんの配達してくれたお弁当もすごく美味しかったです、食堂の取り放題よりこっちの方が趣があっていいかもしれません】

 PDAのメッセージ機能には、どうにも呑気なミナミさんの様子が映ってた。
 白き民の拠点から1kmにも満たない砦が、それらしい改装を受けて快適そうだ。
 なんなら焚火を囲って大きな弁当箱を手にスマイルなおっさんと、後輩狩人が真摯なまなざしでマシュマロを焼く場面だってある。
 画面奥に至っては野郎どもがビールで乾杯中だ――敵の目前で余裕だなオイ。

【とりあえず俺からはこうだ、なんだかこっちでくつろいでて申し訳ないって思ったらキャンプでも楽しんでるような一枚だぞ。どうなってんだそっちは】
【いやあ、ほんとに動きがないんですよね。奴さんたちも頑なに街を出まいという様子なんですが、おかげで周辺の調査が捗りました。そのついでにクラングル周辺では見かけられない野草が山のように見つかったんですけど、なんといいますかこの地の豊かさをしんみりと感じておりましたねえ……】
【あんたらが仕事ほったらかしてアウトドア楽しんでるのか心配になったぐらいだ。それくらい余裕があるってことでいいんだよな?】
【ちゃんと偵察もこなしてこれですからご心配なく。とにかく調査して分かったのは、一番の脅威は南側の町ぐらいってことですね。一応周辺には雑多な場所がありましたが、大したものではないので後日冒険者の皆様に頑張ってもらおうかと】
【そりゃ土産話が楽しみだな、情報どうも。交代待ちの狩人たちはちゃんと準備万全の状態でお留守番してるからな、何か異変があったらすぐ教えてくれ】
【あ、異変と言えばですけど、砦に地下室がありまして……なんと炭酸水の湧き出る泉があったんです。これがまたけっこう強めなんですよね、眠気も覚めるから重宝してますよ。お土産に持って帰りましょうか?】
【なあ、もしかしてそっち思った以上に平和?】
【和気あいあいとしてます。クラングルで過ごしてると、中々こういうことはできませんからねえ……】

 しまいにはまたスクショが送られてきた。
 床も壁も石材で固められた涼し気な屋内だ。
 青い松明に神秘的に照らされたそこで、くりぬかれた岩に水が溜まってた。
 刻まれた道からは絶えず水の流れが続いてるようだ、誰かが持参したグラスで美味しそうに飲んでる。

「狩人のやつも肝が据わってるっていうか、だいぶおかしいっていうか……クラングルには変なやつしかいないのか?」

 もう良い方向として受け止めよう、俺たちがフランメリアに染まった証拠だ。 
 【一本よろしく】と送ってから、ダブルベッドの広さにPDAを落とすと。

「ん……? なあに……?」

 寝る子を起こしてしまったか。丸くなってたニクから黒い耳がぴんと立つ。
 夕食のローストビーフで顔がふにゃっとしてる、今日も幸せそうだ。

「気にするな、敵襲じゃなくて俺の愚痴だ」

 同じようにごろっとした。
 寝巻姿の黒髪ショートな少女(男)と目が合う。
 顎をベッドに埋めて、尻尾も寄せてのジャーマンシェパードそっくりな眠り方だ。
 眠そうな黄色い瞳がうとうとこっちを見つめてきた――撫でてやった。

「ん……♡ へへへ……♡ 大好き……♡」

 耳の間をなぞると心地よさそうだ。口も緩んでとろんと目も閉じていく。
 もっと撫でてやるとくうくうまどろんだ。洗ったわん娘の匂いがする。

「今日はお互いあれこれ忙しかったよな。お疲れさん」
「ふぁ……♡ ん、んんー……♡ んへー……♡」

 ご主人愛犬揃ってぐったりしつつ、しばらく犬の毛並みを楽しむことにした。
 爪先を埋めればふわふわ、指の腹でなぞればつやつや、つまめばさらさらの不思議な感触だ。
 耳にも触れてぺこっと折ってみると、眉も頬も緩んで幸せそうにとろけた。

「……そういえば、ロアベアのマッサージってこんな感じだったか?」

 そこでふと、変な好奇心が働いた。
 とりあえず頬は掌でもちもち揉むとして、そこからなぞって降りた先だ。
 すうっと白肌を指先で降りれば、首と肩の間でぐにっと張りに当たる。

「ん……、んぉ……?」

 そこをぐっと押すと、なんとも微妙な反応をされた。
 心地よさに異物を挟まれたような眉のひそめ方だ。
 ごまかすように肩の形に添ってすっ、すっ、とさすった。
 いや硬いな、もっとふにふにしてると思ったら指が埋まらないぐらいは詰まってる。

「…………ぁ♡ ん……へへ……♡」

 すると反応が変わる、途端に気持ちよさそうに肩の力が抜けた。
 もしかしてさするのがいいのか? そう考えが及んで、指の腹で肩のこわばりを押さえてなぞる。
 肩の付け根と首筋を何度かすりすり往復すると、白い頬がむちっと指に当たった――気持ちいいらしい。

「意外と凝ってるんだな、お前……」
「ん……きもちいい……♡」

 冗談で始めたつもりだけど、なんだか面白くなってきた。
 リラックス度が強まったわん娘の"凝り"を撫でまわすうちに、硬い肉の感触が少し温かみを帯びてきた。
 今度はどうだろう? 変なこわばりがなくなったそこにぐぐっと親指を押し込む。

「あふぅ……♡ あったかい……♡」

 眠たげなニクの声が漏れた。指もだいぶ沈み込むほどだ。
 さっき触れた硬さをぐっぐっと揉んでいく。
 解れを感じるにつれて、ジト顔もとろけて心地よさそうだ。

「あいつほどじゃないけど、俺もこういう才能あったのか……?」

 仕上げにぐーっと肩のラインを押してなぞれば、わん娘も満足、くったり目を細めて極楽な表情だ。
 頑張った甲斐あって、口元からよだれの筋が降りてきてる。
 こんなに気持ちよさそうなニクは初めてだ、ついでだしもう反対側もやっておこう。
 もう片方へ触れて同じ真似をすれば、幸せそうな寝顔がゆったり寝息を立て。

「……ん……♡ すう……すう……♡」

 撫でて押して解して。起こさない程度の動きで凝りを伸ばすと、ニクは可愛らしく寝込んでしまった。
 一目見ただけで分かる深いまどろみだ。笑ってるようにも見える。

「……何やってるんだろうな俺。おやすみ、相棒」

 愛犬がとても幸せそうな寝顔を浮かべてしばらく、俺はふと我に返った。
 呑気にやってるのはこのストレンジャーも同じか。
 そう鼻で笑うも、ここに反応してくれる奴はいない。

 それにしても、この世界の暮らしのせいで人生が濃厚になってる気がする。
 例えば今だってそうだろ?
 白き民タウンはあるわ。各地に巨人がいるわ。火薬を生み出せるわ。ポテトフィリドの存在意義を見出すわ。
 ここに携わる冒険者が増えた分、湧き出る情報量もずっと色濃くなってる。

「まあ、飽きずにやってられるのは確かか? あれから俺もお前も楽しくやってるよな?」

 眠るわん娘をまた撫でた。それから窓の外を少し見た。
 ふわふわな毛並みから移った先は、相変わらずのきれいな夜だ。
 そういえば、夜空とは何かと縁があるな。
 尻に矢を食らったその日も文句と一緒に見上げてた気がする。

「で、けっきょくファンタジー世界でストレンジャーズ再結成か。この哨戒任務もまだまだ終わりそうにないな」

 星が良く見えるそこに向かっておかしく笑った。
 世のため人のために働いてこいという任務だが、まだ終わっちゃいない。
 最初は不安だったさ。ウェイストランドで育った我が身が、果たして剣と魔法の世界でやってけるのかって。

「……相変わらずうまくやってますよ、俺。きっとあんたのことだ、これくらい見越してたんでしょうけどね」

 その答えはPDAに表示した画像がよく表してる。
 こっちに来てからの思い出がいろいろだ。
 タカアキとの買い食い、冒険者の集合写真、パン屋の様子、突然の螺旋怪段。
 俺の恩人に見せてやりたいぐらいだ、「うまくやってるぞ」と。

「なんだかこうして思い返すと、また会いたくなってきましたよ。もしかしてそっちも同じ気分なんですかね?」

 最後に、少し昔の写真を選んだ。
 強い顔とまっすぐな背をした老人と、気のいいやつと、付きまとう褐色肌の二人に過激な不良と見た目豊かな連中だ。
 そしてジャンプスーツ姿の茶髪男に、肩の短剣と黒いジャーマンシェパード――プレッパーズの面々がここにあった。

 「人は独りじゃ生きていけない」と、恩人がそういっていた。
 あの時からこの日まで生きているのは、周りにいい奴がいっぱいいるからだ。
 その人たちのために生きろ。思えばあの言葉は、こうしてこの世の中でうまくやっていける処世術だったのかもしれない。

「ありがとな、アルゴ神父。あんたにつないでもらった分は、また別の誰かさんにいっぱい返してやるさ」

 枕もとに手を突っ込んだ、重みのある硬さを引っこ抜く。
 三連散弾銃だ。切り詰めて良かった理由の一つとして、こうして咄嗟に取り出せる点がある。
 さすがに弾は入っちゃいないけれども、俺はそれを夜空に掲げた。

「もしいるならそこで見ててくれ。こんな人生だ、あんたも退屈しないだろ?」

 誰かに向かってそう言っといた。伝わってるかどうかは知る由もない。
 でも満足だ。少なくとも、あの人への感謝はこうして言えたのだから。

 にしても、今頃ウェイストランドのみんなはどうしてるんだか。
 プレッパーズから自警団にかけてもそうだが、擲弾兵たちやブルヘッドで世話になったやつらは元気にやってるのか?
 まあ、そうそうくたばりそうにない友人ばかりだから大丈夫か。
 ……そうだ、ヌイスは? あいつもこの世界にいるそうだけど、どこで何をしてるんだろう?

「…………少し考えすぎたな。ちょっとシャワーですっきりするか」

 でもすぐに考えるのをやめた。
 だってストレンジャーズだぞ?
 ノルベルトも来たんだ、いずれあいつも「やあ」とかいって現れるはず。
 その時はパンを焼けることをまず自慢しようか。そう楽しみつつ部屋を出た。

「イチ様ぁ、どうしたんすかこんな時間に~?」

 ここでロアベアにばったり遭遇するのもストレンジャーゆえだと思う。
 シャワーを求めた矢先、ちょうど通路の奥から緑髪メイドがニヨニヨしてた。

「一仕事終えた気分転換に向かうところだ」
「なんかしてたんすか? それともなんかお悩みだったんすか?」
「いや、ただマッサージしてたところだ」
「どういうことっすか」
「ニクで試した、我ながらいい腕だった気がする」
「そういうプレイっすかもしかして」
「んもーすぐそういうのにつなげるこいつ……」

 思うにこいつは絶対に退屈しのぎ目的の顔だ。
 手ぶりでさっきのマッサージぶりを表現しつつ距離を置くことにするも。

「あっ……こ、こんばんは? どうしたの? 眠れないのかな……?」

 によつくメイドボディの後ろからすっ……と桃色髪のお姉さんが追いついてきたのもすぐだった。
 なぜかご一緒した感じのミコだ。おっとり顔の下は可愛らしい寝間着である。
 白色桃色混じりの装いに太もものデカさが浮かび上がってるし、谷間を作る胸元が妙に開放的な気がする。

「まあそんな感じだ。ロアベアの真似してニクの肩揉んでたらぐっすりして暇になったところ、シャワー浴びてすっきりしてくる」
「ろ、ロアベアさんの真似……?」
「えっほんとにマッサージしてたんすか、ニク君まだ無事っすか?」
「なんの心配してるの!? さすがにそんなことしないからねいちクン!?」
「死んでないからクソみたいな心配するな、思うにパン屋で培ったスキルが活きたんじゃないか?」
「パン生地扱い……!?」
「パン屋がすっかり染みついておられるっすねえ、ニク君もちもちにしたんすかイチ様ぁ」
「すごく気持ちよさそうに寝てるぞ。ところで二人してどうしたんだ? 暇してんの?」

 それにしてもどうしてこの二人がいるんだろう、ちょっと気になった。
 ロアベア単体ならともかく、ミコがセットでいる理由がどうにも分からない。

「え、えっと……わたし、あの……」

 相棒はこんな質問に律儀に返してくれる、と思ったのだが。
 くいくい、と横から布地を引っ張るメイドのおかげで中止だ。
 言い淀みが途切れてロアベアのによ顔がなぜか強くなって。

「うちらちょっと暇だったんで、うろうろしてただけっすよぉ♡ ごゆっくりっす~♡」

 なんかよそよそしい感じで紛らわされた気がする。
 ミコも戸惑い混じりで引っ込んで、何か怪しいものは感じるものの。

「宿舎は知っての通り防音済みだけどあんまり騒ぐなよ、寝るやつは寝る時間だからな。夜更かしは自己責任で」
「あっ……う、うん、ごゆっくり……?」
「あひひひっ♡ 大丈夫っす、静かにやるっすから!」

 この二人も暇だったんだろうか。手をひらひらしながらその場を離れた。
 続けて階段を降りて曲がれば、お目当てのシャワーはすぐそこにある。
 こんな時間となればもう使うやつもいなくて、宿舎の静けさもあればとうとう不気味さすら触れるほどだ。

「…………もっと明るく設計するべきだったな」

 通路の奥はあまりにも静かすぎる――幽霊の二文字を思い出した。
 電気もしっかりつけて進めば「男か女」を問われる扉構えが左右にある。
 当然男だ、開けた先は防音性が仇となった静寂がぽつりと待ってるのみ。
 明かりを点けたところで利用者もおらず、さんざん使われて今日は用済みになったシャワー室がひどく虚しい。

「未開の地でシャワーか、こんな時間に入って後ろめたくないのもレージェス様のおかげだろうな」

 こう考えよう、貸し切りだ。幽霊なんて存在しない。
 そう割り切って明るさを進むと、カーテンに仕切られたブースがいくつもあった。
 めくれば脱衣用の空間を一度挟んで、シャワールームへ通じる扉がある仕組みだ。
 冒険者たちのアドバイスによってプライバシーはしっかり守られてる、もちろん湿気対策も万全である。

「俺の建築センスも日に日に磨かれてるな――いいか幽霊なんていない」

 カーテンをしゃーっとしめて服を脱いで、丁重にたたんでから扉を開けた。

「…………私はお化けじゃないわ、ようこそイチちゃん。おっぱい吸う?」

 ……天井に頭をぶつけるデカ乳なお姉さんがこっちを見てた。
 青白いもち肌がどゆんっとドレス越しの胸を強調してる――「おいで」と。
 ドアを閉めておいた。レージェス様がいた気がするけど気のせいだろう。

「――いいか、幽霊なんていない」

 気を取り直して隣のブースへ移った。
 シャワーを前にすれば、ガラスいっぱいにうつるストレンジャーがいた。
 傷だらけの身体は相変わらず、それ以外何もない。
 あとは捻るものを捻ってお湯を出した。熱々の湯加減が身体にしみる。

「……ふう」

 そこでようやく、気分がすっきりした。
 熱いお湯をかぶれば大体がすっきりするようになったのは、きっとプレッパーズに仲間入りした時の影響だ。
 ひどい訓練で疲れてもシャワー室で流してしまえば元通り、そんな生活を繰り返したからだろう。

『お湯加減いかがっすか~♡』

 シャワーの温度を身体に馴染ませてると、心地よさにそんな声が混じる。

「最高、疲れた時はやっぱりこいつ――」

 そのまま身体を洗おうと思ったがちょっと待て。
 ボディソープに手をつけたところでふと気づく、聞こえちゃいけない部類の声が聞こえたよな?
 幽霊にでも遭遇した気分だった。シャワーもきゅっと止めて身構えるも。

 がらっ。

 開いた。まさにイメージ通りのやつがによによ無遠慮に押しかける寸前だ。
 そこにはロアベアがきわめてきわどい――水着を語る資格を失いそうな、極めて心細い布地で胸の先をぎりぎり隠していて。

「助太刀にきたっす!」

 と、乳肉をばいんばいんさせながら押し迫ってきた。
 下を見れば情熱か費用不足かで面積不足な黒い布が、むちっとした鼠径部をどうにか……馬鹿野郎! それはもう水着じゃねえ!
 しかも腹が立つことに、ちゃんと白いブリムを被ってちゃんとメイド部分だけは厳守してる。

「――なんの?」
「いえ、すっきりするっていうんでうちらが手伝うおかと」
「そうか、チェンジで」

 ばたん。お前は追放だ。
 余計なお気遣いに感謝して戸を閉じた。
 「そんな~」とか聞こえてきたが無視しよう、いっそハウジング・システムで錠でもつけてやろうと思ったが

 がらっ。

 また開いた。またお前かロアベア、と身構えた先には――

「……ふ、ふふっ♡ わ、わたしも着ちゃいましたー……なんて……?」

 ミコがいた。
 それも恥ずかし気に、なんならヤケクソ気味に笑みながらだ。
 足元に脱ぎ捨てたばかりの寝間着が温かそうに転がって、むっちり重そうな肉感に白い布地が張り付いてた。
 ロアベアと違って更にきわどい――というのも、このマイクロビキニの存在感が千切れそうなほどにデカいからだ。
 胸の大きさを抑え込む面積が目に見えてぎちぎちいう上に、視線を落とそうものなら実りすぎな太ももがぎりぎりを作っていて。

「――くそっ! お前らそういうことか!? さっきそれでお邪魔しようとしたのかこの痴女ども!?」

 やっと気づいた、こいつらこんな格好で押しかけようとしてやがった。
 なんか話をごまかされたと思ったらこれだ、騙したな!

「あひひひっ♡ なんかお疲れのようなんで、それと最近ご無沙汰なんでうちらの方から来ちゃったっす! マッサージ用のオイルも持参してきたっすよ!」
「おい待て!? そもそもここ男の人専用なの! ばっ馬鹿来るな! 男の人呼ぶぞ!? おい! おい!!」
「……いちクンが悪いんだよ? 他の女の子といっぱい仲良くなってて、ずるいもん……♡ ふふっ♡ その分いーーーっぱい気持ちよくなろうねー♡」
「なんでそんな恐ろしいこと笑顔でするのお前ら!? 馬鹿野郎来るな! ここ一人用だうわあああああ!」

 扉を閉じようにもミコのデカさが災いした。
 揺れの大きい身体が隙間を縫ってどっしり突入してくる。
 そうなるとダメイドも変なボトルを胸に押し入ってきた、シャワーブースで定員オーバーするとか言う大惨事だ。

「……まずは綺麗になろっか♡ 待っててねいちクン、ちょっと泡立てるから……んんっ♡」
「うちも後ろからお手伝いするっす~♡ サンドイッチっすねイチ様ぁ♡」

 前後を挟まれたまま、二人がわしゃわしゃと泡を纏い始めた。
 これから何をするか訴えるようにオーバーなぐらい石鹸を見に馴染ませると、ぺろっ……♡とミコの舌なめずりがよく見えてしまった。
 とりあえず言わせてくれ、こんなことにために設計したんじゃないんだ……!

「……えーい♡」

 次の瞬間、白泡がよく混ざった巨体が両手を広げて迫ってきた――

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