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魔法の姫とファンタジー世界暮らしの余所者たち
パジャマパーティーは中止せよ! 繰り返す、やめろ馬鹿野郎が!
しおりを挟む食後の一仕事だ、拠点周りを軽く整えた。
今まで掘った穴やらフェンスやらを埋め立て解体し、前よりも広く囲い直す。
分解して手に入れた資源を元手に、今後の発展を見越して土地を多く押さえた。
まず、情報を基に重要視したのはステーションや発電所がある方角の防御だ。
待機組が切り倒した丸太やら切り株も解体して、南側を広く取って守りを固めた。
そこで新しい建築物が活躍した。【金属】と【布】を使った大型土嚢だ。
要はあれだ、キャンプ・キーロウを囲ってたあの分厚い防壁のことである。
戦車砲でもぶち込まれない限りは役立ちそうな質感はまさにうってつけだ。
拠点の南に視界を遮るような壁を二段重ねて高く組んで、その合間には巨大な門も挟んだ。
仕上げに金属の骨組みと階段をあわせた見張り塔もいくつか添えて完成、これで森の向こうを物騒に隔てた。
これで守りも強固になった、もちろん役に立つような事態がなければなおいい。
後は見張りだ、今日は新米やら爺さんたちが交代でやってくれるそうだ。
そうこうあれこれやって話し合えばあたりは真っ暗だ。
「……やることやってもうこんな時間か。G.U.E.S.Tめ、タカアキの言う通り時間泥棒を律儀に再現しやがって」
自然とそんな愚痴もでるぐらいには。
だけど返事はない。なにせここはヴァルム亭の寝床に及ばぬ宿舎の一室だ。
「……ん……? どうしたの……?」
寝床を一緒にしたまま、うつらうつらしてたわん娘がぴくっと耳を立ててた。
せっかく気持ちよく眠れるところを邪魔したらしい、ごめんよグッドボーイ。
「起こしてごめん、個人的なお休みの挨拶だ。眠り心地はいかが?」
「……ヴァルム亭の方がいいかも。でもご主人と一緒だから平気」
「俺もそう思ってた。もっといいベッド作れるように頑張るよ、よしよし」
「んぇへへへ……♡」
耳の間を撫でてやった。犬の毛並みをなぞればジト目が細くなるのもすぐだ。
そばで丸まったわん娘は穏やかな息遣いの後、またくうくう浅く眠り出した。
もっと撫でてやった――幸せそうなジャーマンシェパードの笑顔そっくりだ。
「まあ、こっちはこっちで眠れないんだけどな。おやすみニク」
「……ん……♡ おやすみなさい……♡」
黒髪ショートなわん娘は寝落ちした。残るは眠れないストレンジャーだ。
寝床といい土地といい、睡眠環境がいきなり変われば中々寝づらい。
「第二のアバタールね。俺は一体この世界で何したんだか……」
大きく取った窓を見ながら思った――なお明るく照らされるアサイラムの向こうで、真っ暗な森が続いてる。
都市からずっと離れたここで、そこまで良くないベッドに身を預けるはめになったのは未来の自分のせいだろう。
もっというなら各地に中途半端な開拓地があったり、都市が生まれたり、フランメリアがここにあるのもそいつのおかげだが。
「――くたばったらフランメリア人が悲しむぐらいはうまくやってたのか? それもいろいろやり残したままだ、なんだかお前の未練すら感じるよ」
……そう言ったって、窓越しの景色が言語をもって返してくれるわけないか。
都市とは違う静けさに混じって、さぁっ、と森の擦れる音が聞こえる。
でもここから見える暗い世界には謎がいっぱいある。
例えばノルテレイヤ、例えば原作にいなかった白き民。例えばこれからの人生。
「…………もしかしたら、ちゃんと代理人としてこの世の真実に少しずつ近づいてるのかもな? それにしたってお前はいろいろ残し過ぎだけど目は瞑ってやるさ」
考えてみれば、この国を生んだ奴は【テセウス】に永住を決め込んだような人柄だろう。
何せ俺自身だからだ。元の世界にクソほど未練もなきゃ、飯のうまい剣と魔法のファンタジー世界のほうが身にあってる。
きっと、その上でいろいろ悩んだんだろうな。
元の世界のこととか、手塩にかけた人工知能のこと、そしてこの世でどう振舞っていくか。
「その結果が魔王と結婚か。挙句の果てに元魔王だろうがバケモンだろうが魔女だろうが楽しく共存できる国を作ったんだから、お前は今の俺よかずっとすごいぞ」
もう一つ疑問も追加、アバタールが結婚した魔王ってどんな奴だろう。
いや俺のことだ。見た目がなんであれ、面倒くさい事情を受け入れてくれるいい女性かもな。
そう、子供が作れなくても――良かったな、俺も一緒だぞ。
「まあ見てろよ、フランメリアは今日も明日も混沌としてるけどいいところだ。いいところに招待してくれたお詫びにこの世界を守ってやるさ、お前が作ってくれた縁もな」
我ながら一体どいつに言ってるのやら。ノルテレイヤか、アバタールか。
ここの開拓が落ち着いたら、冒険者とパン屋の仕事の傍らでこの世をじっくり調べてみるか。
そう思ったところでニクを撫でてベッドに落ち着くも。
――がちゃっ。
そんなくつろぎもいきなりの扉の音にかき消された。誰だこの野郎。
「いつもと違う場所で眠ろうとすると中々寝付けないよね! ところで鍵ついてなかったけど入っていいってことでオーケー?」
現れたのはそろそろ夜も遅いのにマフィア姿の変人だ、タカアキともいう。
左手に冷たく汗をかいた瓶入りの飲み物が二本、右手に面積薄めの桃色な衣装を着たきわどい造詣の一つ目美少女だ。
「……良かったなタカアキ、手元に銃あったら今頃事故が起きてたぞ」
「そうなると思ってちゃんと防弾装備仕込んでるぜほら」
「ボディアーマー着ていきなりお邪魔するとかまるで喧嘩売ってるみたいだ」
いきなり来るもんだからびびった、エーテルブルーインかと思った。
「いやまあ眠れねえし? 冷たい飲み物で少しすっきりしないかって話だ。ドクターソーダはカフェイン入りだからジンジャーエールだぜ」
ただし幼馴染奇行種は瓶の緑色をちらつかせてる。
いいだろう、にやっとした笑顔に免じてそこらの椅子にご招待した。
「俺もまさにそんな感じだった。それよりその……片手にいらっしゃる美少女はどちらさま?」
「こいつ? サキュバスの姉ちゃんとフィギュア原型師のプレイヤーに作らせた最新作。その名も【もちもち単眼美少女アイちゃんエロ魔法少女コスVER】だ」
「次に出てくる質問はどうして俺の部屋に連れ込んできたかって話になるぞ」
「心配いらねえぜ、こいつは布教用だ」
「俺の部屋に飾る気満々じゃねーか」
やっぱり後悔した、あの馬鹿野郎勝手に飾りやがった。
どうもベッド隣のナイトスタンドに彼女の居場所を見出したらしい。
黒髪で大きな赤目の美少女が可愛らしくポーズを取ってる。持ち上げたぶっとい太ももと安心感のある腰回り。
「ちなみに作者のこだわりとぎりぎりの妥協によって下着すっげえことになってんぞ。過去一やべえ」
しかしタカアキはきもちわ……単眼美少女の無限の可能性を説いてるときた。
言われてみるとこのアイちゃん、上も下も色々見えてるきわどい格好だ。
持ち上げて見ると――ワーオ、絆創膏。気の毒にも下着はコスト削減の犠牲になったらしい。
「そうだな、下着がなくて肌寒そうだ。回す予算と情熱どっちが切れた?」
「段々恥じらいを捨ててきてんだよアイちゃんは。ほらみろ、前と比べていろいろ増量してるだろ? 下半身とか」
「順当に成長してるらしいな。色々と」
「でも作ってるやつがそろそろネタ切れてきたって嘆いてたぜ。最近は弟ってことで男の娘版も出そうかって話になったらしいけど、二人の間でデカくするかどうかでもめてるってさ。ナニがとはいわんけど」
「弟さんについて詳しく聞かせてくれ」
「おい馬鹿食い気味になるんじゃねえいきなり」
可愛そうなアイちゃん。しょうがないので一晩はいさせてやろう。
瓶からキャップをむしって一口飲んだ。よーく冷えて甘くて辛い、最高だ。
「他のやつらはちゃんと眠れてるかな?」
「見る限りウキウキしてたぜ。ケイタ君が修学旅行みてえだってはしゃでた」
「修学旅行気分かよ」
「それくらい余裕あるってこった。みんなの寝心地の心配はしなくていいぜ」
けれども、なんとなく出てきた一言で嫌なものも連想してしまった。
『修学旅行』というのがそうだ。何せ俺たちは二人そろって行ったことがない。
理由? 毒親の一言で済む。
「そう言えば俺たち、揃いも揃って修学旅行に行けなかったんだよな」
「お互いクソ親のせいでな。こっちの原因は覚えてる?」
「覚えてる。クソ親父の機嫌損ねてあのザマだろ?」
「で、お前はクソバ……母親がカルトに旅費つぎ込んだわけだ」
「あんなのクソババァで充分だ。その代わりお前の親父はクソ親父って呼ぶぞ」
「じゃあクソババァ決定だな、まったくお互いひどい青春だったな」
馬鹿みたいな思い出だ。どうも俺の親は旅行の費用よりも神様の方が大事だったらしい。
タカアキに至っては親父の乱暴さと母親の冷たさで行き損ねた。俺たちの人生なんてそんなもんだ。
「なら今日を修学旅行にするってのはどうだ? ちょうどこれから学ぶことはいっぱいあるだろ?」
まあ、今は違う。強く笑って冗談を口に出せるほどお互い変わった。
こうして知らない土地で軽口をたたいて、寝る前に好きな飲み物で乾杯するような人生になるなんてな。
「いいね。アサイラムのボス、イチに乾杯」
「俺たちのこれからに乾杯。ちゃんと冷えてるな」
「こんなシチュエーションでぬるいソフトドリンクなんてカッコ悪いじゃん?」
良く冷えた瓶を近づけてぶつけあった。そこから飲む一口はもっとうまい。
しかも頼れる愛犬もいる。炭酸の音色にうとうとしてるが――撫でてやった。
「んぅ……♡ んへへへ……♡」
「なあタカアキ」
「なんだ?」
「いや、未来の俺は「ジンジャーエール飲みてえ」とか思ってたのかって疑問」
「思ったろうな。でもこんな国を作ってんだぜ? だったら炭酸飲料ぐらい執念で生み出したんじゃねえの?」
「確かにそうだな、俺だったら試行錯誤して作ってるかもしれない」
「しかもどんな奴か知らんけどガチ魔王と結婚したんだろ? そんな行動力あんならいけるいける」
「そう考えたらジンジャーエール作りの方がずっと楽か」
こうして話して思った。
アバタールもこの世界で甘くて辛いこいつを飲んでたかもしれない。
窓からまた外を覗いてみた。木々の暗さのその上で月が真っ白だった。
「なあ」
「重い方の「なあ」だな、今度はどうしたよ」
「……白き民ってさ、ノルテレイヤが絡んでると思うか?」
そこから白く不気味な怪物を連想してしまうのはこの土地柄のせいだろう。
白き民。MGOにも出てこない、人を真似たような謎多き奴らのことだ。
誰かさんは言ってたな。この世界はあるべき姿に戻れなかった地球だって。
元の世界にするための材料が消えて、代わりにゲームだのなんだののデータをぶち込んでまぜこぜにした『2度目の地球』だと。
「そりゃやらかしたって意味か?」
「そうだな、どういう事情でこの世界が成り立ってるか知ってるよな?」
「聞いたさ。やむを得ずそこらの娯楽作品とMGOの設定ぶち込んで再構築した数千年後の地球だろ」
それをタカアキがこうして知ってるってことは、ニャルも丁重に教えてくれたみたいだ。
なら考えることは簡単だ。ぶち込んだデータの中に白き民にあてはまる何かがいたんじゃないか、と。
「実はさっきまでそのエンタメの中に白き民が混じってないか心配してた」
「ごちゃ混ぜで何が起きてもおかしくねえってのは分かるけどよ、だからってあんな一方的に突っかかってくるわけわからんバケモンがなんかの作品で出てくると思うか?」
「元の世界でもなかなかないだろうな」
「それにだ。この世界が未来のお前のやらかしで存在してる以上、意図的にぶっこんだようなもんじゃねえのは確かだ。軽いノリであんな趣味悪いの入れてみようって思うか?」
「俺だってあんなの実装しようとは思わないな。しかもどいつもこいつも俺たちより図が高いのがなんか腹立つ」
「どいつも身長に恵まれてるからな、あいつら。そういやこの前アオちゃんが「その身長よこせ」ってあいつらに対して嘆いてたぜ」
「30㎝ぐらい削り取ってあいつにくれてやろうか?」
「それでもヤグチにゃかなわないだろうがな。まあなんだ、考えられるのはこのハチャメチャな世で偶然生まれた産物とかそのあたりじゃねえの?」
「そうであってほしい気分だよ。ノルテレイヤに会えたら聞いてみるか」
「おいおい、ご本人と会えるのかよ?」
「そのためにここに来た、いまだ行方掴めずだけどな。まあこんな世界につれて来てくれるようなやつだ、あいつのチョイスで放り込まれたバケモンじゃないのは確かだろうさ」
けっきょく「でもそれはないだろう」と思い至った。
ここまでお膳立てするようなやつが、わざわざそんなストレスの種になるようなバケモンを用意して出迎えるか?
きっと予期せぬ何かで生まれた謎のバケモンなんだろう。少なくとも今は。
「……俺もお会いしたいねえ、ノルテレイヤちゃん。つーかマジで白き民ってなんなんだろうな、実はフランメリアを支配しようとする悪いやつらだったり?」
「今のところはそんな安直なやつらには見えないけどな」
「もしそうだとしたらどうするよ?」
「どうってその時は根こそぎぶっ殺すまでだ」
こうして出てきた結論は? 単純に「ぶっ殺す」だ。
すんなりそう言えばタカアキにヒュウと口笛でからかわれた。面白がってる。
「ノルテレイヤちゃんびっくりするだろうな、育ての親が真正面からドンパチしでかす命知らずになってやがる」
「文句は俺を鍛えてくれた奴ら全員に言えよ」
「たった今頭の中に古き良きハリウッドアクション映画の主役が勢ぞろいな様子が浮かんでる。あってる?」
「大体あってる。会う機会があればそいつらに会わせてやりたいよ」
「初対面のご挨拶今のうちに決めとっかー。とりあえず「どうもイチが世話になってます」からのスピーチだな」
「返しは「どうもこいつにお世話になってます」からでいい?」
「それでいこうぜ。第一印象が大事だ、そうだなもうちょっと爽やかに……」
それから、少しだけくだらない話が続いた。
元の世界と変わらないやり取りをだらだら続ければ、妙な緊張もだいぶ解れた。
「……でだタカアキ、明日はこうするつもりだ。南側は保留、北に向かって俺たち向けの案件にいくぞ。書店があるそうだ」
「こんな場所に書店ねえ、スキル本とかレシピ本手に入るかもな」
「そりゃ嬉しいな、まあ実をいうとリム様へのお土産のこともある」
「リム様の? 何をお探しで?」
「戦前の料理本だ、そういうの欲しがってる。ああそうだ、店のためにパンの本でも探してみるか」
「料理熱心だねえ。よし、俺も付き合うぜ」
「頼んだ。良い子はそろそろ寝るとするか?」
「だな、明日が楽しみになってきたぜ。それじゃおやすみ、寝坊すんなよ」
「もちろんだ、おやすみ。アイちゃん大事にするんだぞ」
明日の予定まで話したところで、ようやく脳がその気になってきた。
あいつも同じだったらしい、俺に瓶を預けて「じゃあな」と去ってしまった。
もう寝るか。瓶を分解して、優しく寝息を立てるわん娘に続こうと思ったが。
*Knock Knock*
幼馴染が去ってしばらく、そんなノックの音が聞こえた。
控えめなやり方だ。タカアキの帰還か? いやあいつならずかずかくるはず。
「……誰か知らないけどお前に謝っとくぞ。宿舎の扉に鍵つけるの忘れた、つまり不法侵入し放題だ」
なので扉一枚の向こうにいる誰かさんにそう伝えた。
すると躊躇うように少し遅れて『だんなさま……?』と聞こえた。
その呼び方とか細い声はもしや。
「し、失礼します……。あの、夜分遅くにごめんなさい……だんなさま」
メカだった。こしょこしょしながらお邪魔しにきた。
澄んだ水色髪に隠れた目元といい、ワンピース型の部屋着に包まれた小さな身体といい、間違いなくあのメイドだ。
「メカか、どうした? なんかあったん?」
「えっと、あの……少し、お時間をいただいてもいいでしょうか?」
どうしたんだろうこいつ。かなりもじもじしてる。
まさかトラブルか、と思えど違う感じだ。
恥ずかしがるように身体を丸めてるというか……。
「お話なら歓迎だぞ、お好きな場所に座ってくれ」
「は、はいっ……じゃあ、失礼します……?」
「かしこまらなくていいぞ。それで? こうして夜に話に来るってことは悩み事でも持ってきた感じか?」
まあいいか、もう少し誰かと話したい気分だったし。
おどおど二倍なメカに「どうぞ」とそこらを案内すれば、おやすみ姿はちょこんと椅子に座って。
「あのっ、あ、あたし、だんなさまに――――えっ」
さあいざ向き合おう、という時だ。
挙動不審に(隠れた)目を泳がせるその拍子に、どこか焦点が定まったらしい。
そこに何があるかって? 偽りの一つ目美少女のきわどい姿だ。
「……ごめん、そいつは事故だメカ。ついでにいうと俺悪くない」
「こ、これって……!? こっこんなえっちな格好……♡ い、いけませんだんなさま!?」
タカアキの野郎、とんでもない爆弾置いてきやがったな。
よりにも本職の一つ目にご対面させてしまうというインシデントが発生してる。
その威力たるや一つ目メイドを釘付けにするほどだ。身体も視線も。
「いいか、お前が今目にしたのはな、さっきすれ違ったであろう幼馴染が勝手にインテリアにした単眼美少女だ。あの野郎隙あらば勝手に一手間加えてきやがる」
せっかくの雰囲気が台無しだ、メカクレ顔に赤面を足したものから引き剥がした。
置く場所に困った先は窓際だ、不運にも月の明るさがもちもちボディを妙に強調するのだが。
「と、取り乱して、ごめんなさい……えっと、あたし、だんなさまに……」
メカは変わらず恥ずかしそうだった。
小さく丸い口をごにょごにょ、視線も俯き気味である。
白肌透ける身なりでぎゅっと縮こまれば、何を言い出すのか不安にもなるが。
「俺がどうしたって? ご覧の通り逃げやしないから落ち着いて話せ」
「ね、寝る時はご一緒しなさいっていわれたんです……だから、あの、ふつつかなメイドですけど、よろしくおねがいします……」
「ええ……」
でも――本当にふつつか系メイドだった。
どういう教育を受けて、どういう気持ちでそれを成そうとしてるんだこいつは。
しかもどうしてまんざらでもなさそうに照れ照れなのか、とりあえず妙なこと吹き込んだ犯人探しだ。
「オーケー、誰に言われた。クロナか? ロアベアか? ラフォーレか? それともリム様か?」
「お屋敷のみなさまです……だんなさまのおそばにいてあげてください、って」
「んもー犯人多すぎる……いいかメカ、仕事に忠実なのはいいけど添い寝サービスは注文してないぞ。部屋にお戻り、そしてはよ寝ろ」
犯人はお屋敷の総意らしい、ふざけやがってファッキンメイドども。
さほど快適でもないベッドの上でメカクレッ娘を見送ろうとすると。
「あっ……ご、ごめんなさい……や、やっぱりあたしなんて、いやですよね……」
自己評価が低そうにしょんぼりし始めてしまった。
表情は下向き、身体はおろおろ、段々細くなっていく声でかなり残念そうだ。
そのまま次を待とうものならお帰りしかねない――しょうがない。
「まったくお前はどうなってんだ、いつの間にメイドになってるわデカい斧ぶん回すわ夜遅くお邪魔してくるわ、アサイラムの中で情報量多すぎる気がするぞ」
寝床に腰かけて隣をぼんぼん叩いた。
するとメカは閉じてた口をやわく開けて、それは嬉しそうにとてとて歩いてきて。
「は、はい……あたしも、まさかリーゼル様のお屋敷で働くことになるなんて、思ってませんでした……」
ずっしり。そんな感じの重みがベッドをきしませた。
横を見ればけっこうなデカケ……質量のある小さな身体が、拳一つ分の隔てで腰を下ろしてる。
でもムショの中に転職した先輩どもにいじめられてた時より幾分まっすぐだ。顔も気持ちも。
「それであのメイドどもの仲間入りを果たして俺に回ってきたってわけか。あの屋敷どうなってんだほんと」
ついでだし頬をつまんでむにむにした。ニクよりすっごい伸びる。
「あっ……♡ い、いけませんだんなさま、あたしのほっぺ揉まないで……っ♡」
「そういえばお前、あの騒ぎの後どうしてたんだ? しばらく冒険者ギルドに顔出さなかったらしいけど」
「……そのこと、なんですけど」
「言いづらかった言わなくていいぞ」
「大丈夫です。あの後、しばらく市場とかで働いてました。あたし、力には自信があるので……」
このまま「あの後」を聞けば、メカは少し得意げにこっちを見てきた。
そこから連想するのは昼間の斧ぶん回すメイドさんだ、特に308口径すらいまいちなバケモンを叩き壊す場面。
「食い扶持はちゃんとあったか。そういえば確かに自信いっぱいだったな、自分よりデカい斧振り回してる頼もしいやつがいた気がする」
「た、頼もしい……ですか?」
「ああ、俺がちまちまやっつけてる間数匹は倒してただろ? お屋敷のメイドらしいと思った」
「うぇ、うぇへへ……♡ あ、あたし、だんなさまのお役にたてましたか?」
「みんなの役に立ってたぞ。どうやったらそうなるのか秘訣を教えてほしいぐらいだ」
「きゅ、【キュクロプス】はみんな力持ちなんです。それに、クロナおね……先輩たちが戦い方を教えてくれて……」
「期待の新人が生まれたわけか、なんて職場環境だ。屋敷で働いてからはうまくいってる?」
「はいっ、みんないい人だし、働きやすいし、お給料もいっぱいもらっちゃって、拾ってくれたご恩を返そうとがんばってます」
「あのイロモノメイド軍団の中ですげえ真面目な気がする。えらいぞメカ」
メカクレメイドは口元ゆるっゆるでご機嫌だ。
褒めれば褒めるほど柔らかくなる頬に、にへらっと柔らか笑顔を作ったあと。
「……あたしが冒険者に戻ってこれたのも、だんなさまのおかげですから」
今まででだいぶ落ち着きのある調子でそう伝えにきた。
俺が?と表現すると、髪をさらさらさせながら頷かれた。
「俺なんかした? 心配だから教えてくれ」
「あの後、時々だんなさまが活躍してるのを耳にしたんです。あたし、それを聞くたびに勇気づけられてました」
「図らずも応援してたのか、俺。例えばどのあたりだ?」
「みなさまで白き民を倒したり、白き教え子たちを捕まえた時とか、です。また冒険者としてがんばろう、って思いました」
「こうして冒険者として一緒にいるってことは、俺の頑張りも無駄じゃなかったか」
「はい。そこからオリスさんたちと知り合って少しずつ復帰したり、リーゼル様に雇っていただいたりして……それで、あの、だんなさま?」
「なんだどうした」
「あ、あたし、だんなさまにご恩を返したくって、こうしてお屋敷のメイドになったんです。こうすれば、せんぱいたちみたいにあなたにお仕えできるって」
一体どこまで本気なんだろう、メカはじいっと見上げてきた。
髪で隠れた目は俺を見てるはずだ。ふにっとした顔立ちは口をきゅっとさせて。
「……それに、だんなさまはどんな見た目でも気にしないって、せんぱいたちが言ってたし……」
前髪で見えないそれに触れるような言葉が出てきた。
視界を辿ればちょうど俺の背中にある単眼フィギュアも重なるはずだ。
どうもこいつから「一つ目が大丈夫なやつ」と思われてるらしい。
良かったなタカアキ、お前のおかげだ。
「なるほどな、言っとくけど一つ目だろうが俺は気にしないぞ、ほら」
「あの、あたしの目ってひゃああぁぁぁっ!?」
なのでメカの前髪をさっ……と手で持ち上げた。超さらさら。
さらっと上に踊った髪の裏では、濃い青色の宿る大きな一つ目がぎょろっとこっちを向いていた。
でも羞恥が勝ったようだ。目をぐるぐるさせて、がばっとかくして。
「だ、だんなさま……! あたしの髪、いきなり持ち上げないでください……!」
けっきょく恥ずかしそうに目を隠された。
が、こちとらフィギュアとの共同生活で一つ目なんて気にならないレベルだ。
こればっかりはタカアキに感謝だ。ああそれからアイちゃんにも。
「あそこのメイドどもが言うことはマジだぞ。ああいうフィギュア作るやつのせいで完全に免疫ついてる」
「そ、その……えっちな……フィギュアですか……?」
「あれは不慮の事故だ、まあでもああいうので耐性ついたのは間違いない。あの野郎、気隙あらば人の傍らにわけわからんアイちゃん置きやがって」
「あ、アイちゃん……?」
「その子の名前だとさ、元の世界にあったのをこっちで再現したやつらしい」
「え、ええ……」
また持ち上げた。つやのいい髪の裏で大きな目がまた見上げてくる。
髪の付け根に沿って顎下までじっくりなぞってみた。
……もちもちした顔の感触にメカがもっととろけてる。
「んぁっ……♡ それで、えっと、だんなさま……?」
「うん、どうした」
「あの時助けていただいて、ほんとにありがとうございます。おかげであたし、あの頃みたいにまたみんなで楽しく冒険ができてます」
それから、ちっちゃいメイドはこっちに向いてぺこりとお辞儀だ。
こっちはいけすかない先輩をぶちのめした程度のいい思い出だけど、それがどうしてかふにゃっと可愛らしい笑顔を作らせたようだ。
「俺はただ気にくわないやつを全力でぶちのめしただけだ。冒険者復帰を果たしたのも、なんか気づいたらメイドになってたのも、お前の頑張り次第だろ」
「で……でも、あたし、だんなさまにあこがれてたんです。あの時助けてくれた時から、いつも楽しく活躍してるところまで、ずっと勇気づけられてました……」
「そりゃ何よりだ。でもな、まず助けたのは別にお前に恩を売るとかそういうのじゃないからな? あの野郎ども公衆の面前でタケナカ先輩と勤め先のエプロン馬鹿にしやがって、またああいう手合い見かけたら信管抜いたスティレット心臓にぶちこんで心打たれる光景見せてやる。別名あの世だ」
「だ、だんなさま……それってにっこりしながらいうことなんでしょうか……!?」
「それに冒険者的な勤務態度だって別に見せびらかすためにわーわーやってるわけじゃないさ、あいにく行く先々でドンパチ賑やかになる呪いでもかかってるみたいでな。でもまあ、それでお前が楽しんでくれたら何よりだよ」
けっきょく、俺の数奇な人生はこいつにもいい影響を与えたらしい。
手で「また出たらぶっ潰す」とアピールすれば、メカは静かにくすっとした。
「……やっぱり、冒険者に復帰して良かったって思ってます。あれからずうっと、いい人たちに巡り合ってますから」
「そうだな、屋敷の方もいい奴ばっかりだろ?」
「はい、みんなあたしに優しくしてくれますし、いろいろなことを教えてくれて自信がつきました。でも……」
「でも?」
「だんなさまがお仕えする相手だなんて、びっくりしちゃいました」
ただしそこから続く言葉はいつのまにか結ばれてた主従関係である。
リーゼル様、クロナ、どうして「だんなさま」って呼ばせるようにしたんだ。
しかもそれでなんやかんやうまくやってるなら文句も言えない、今や火力つよつよパワフルメイドさんになってる。
「俺だって気づいたら知らないメイド小隊一個分ほど侍らせててびっくりだよ……」
「ど、どういうことですか……?」
「いや、気にしないでくれもう。まあなんだ、お前が能力を発揮できる居場所を見つけたようで良かった」
「はいっ、あたし、だんなさまのお役に立ちたくて……リーゼル様のお屋敷で働こう、って決めたんです。どんな見た目のヒロインでも優しくしてくれるって、みんなあなたのこと慕ってますし……♪」
「差別する条件が他とはちょっと違うだけだ、誰かをぶちのめすときは見た目より中身で判断するように心がけてる」
「ぶ、ぶちのめす……」
「とにかくだ、あそこのメイドさんとして生きてくって腹くくったなら「これからもよろしく」だ。いいな?」
「……えへへ♡ どうぞよろしくお願いします、だんなさま。何かありましたらなんでもあたしに言ってくださいね?」
メカはふんわり笑顔だ、隠れた目元で口のゆるみが強調されてよーく分かる。
しかしなんというか、ようやくまともなメイドとご対面した気分だ。
考えてみろ、屋敷にはどんな奴がいた? 生首取れる、人を持ち運ぶ、自画自賛する、素行悪い、ついでに芋の悪霊だぞ?
「どうかあの一癖強い連中の仲間入りしないように清く正しく生きてくれ」
「一癖強い……!?」
「だったら寝る時一緒しろとかいわねーだろふざけやがってメカに何教えてるんだあいつら」
「……でっでも……だんなさまを気持ちよく寝かせるために、そうしなさいって教わりましたけど……?」
「主に誰が言ってた」
「クロナせんぱいです……だきまくらになってあげなさいって教わりました」
「人のこと睡眠に難儀してるみたいな設定勝手に作りやがったなあの野郎」
「ち、違うんですか……? ロアベアせんぱいもそう言ってたんですけど……」
「ご覧の通りメイドどもにいじられてるんだよ畜生、揃いも揃って人のことフリー素材扱いしやがって。今に見てろあいつら」
「え、ええー……」
……メカもこうして律儀に抱き枕になりにくるほどにいじられてるらしい。
別にいいか、なんだか楽しそうに口元を緩めてるんだから。
「まあ、お前が一つ目だろうが気にしないってのはマジだぞ。職場にはスライム系女子、妹に鳥ッ娘、友達にガチオーガ、首取れるメイドにわん娘だっているような交友関係だ」
なのでまたさらっとメカクレ部分を持ち上げた――ふわっと見えた大きな瞳がとろんと落ち着いてる。
ついでに撫でた。頭頂部から後ろ髪のラインを撫でればきめ細かなつやつや。
「んぉっ……♡ だんなさま……♡ お、お目目見せてる時に頭撫でるの……弱いんです……♡」
甘ったるい声を上げて心地よさそうだ、でもなんでこう反応強めなんだろう。
そのまま顔の輪郭を辿れば柔らかくてすべすべだ。なんだこの手触りは。
「すっごいやわっこいなんだこれ!?」
「ひゃああんっ♡ む、無理矢理なんてそんなっ……♡ い、いけませんだんなさま……乱暴にされるとあたし、どきどきしちゃいます……♡」
――こいつおもしれー!
顔を揉んだり頭を撫でたり髪をなぞったりすればくすぐったさそうだ。
しばし髪をさらさらいじって遊んでると。
*Knock-Knock*
つつましいノックがした。
ちょうどメカの頬を両手でむにむにする場面だ。がちゃっとドアが開いて。
「どうもっす~……ってそういうプレイっすかイチ様、メカちゃん」
「ろ、ロアベアせんぱい!? あのっ、これは……」
「なんてタイミングでくるんだお前は。何しにきた」
いざやってきたのは首のある方のメイドだ。
だが驚くことに寝間着を着てる――ひらひらなやつを。
ベッドの上でもちもちする場面はもしかしたら特別な関係性に見えるかもしれないが。
「メカちゃんがうまくやってるか視察にきたっすよ。仲良しなご様子っすねえ」
「ご覧の通りいろいろ話してたぞ。特に問題なく接してる」
「お~、良かったっす~♡ メカちゃんのデカケツは堪能したっすか? うちも手伝うっすよ!」
「するか馬鹿!! 人の特徴いじるんじゃないよ!」
「デ、デカ……あたしの……!? うぉっ♡ だ、だめっ♡ お尻掴むの……っ♡」
まあ、そこに割り込んで人の尻で遊ぼうとするのはあいつらしいというか。
今にもメカを捏ね倒しそうな様子をやんわり止めてやった。
そうこうしてるうちに二十三をとっくに過ぎた時間だ。もう寝ないと明日の仕事に支障が出るぞ。
「……分かったからもう寝るぞお前ら。こちとら明日早いんだ」
「じゃあうちメカちゃんと寝るっす!」
「ここ俺の部屋だろ見て分からないのか」
「ベッド一台空いてるじゃないっすか~」
「そこは一応ニクのベッドなんだぞ、あるべき部屋に帰れこのイングランドの妖怪。ここはアサイラムのボスの部屋だぞ無礼者」
「そんな~」
「それからお前メカに何吹き込みやがった、返答によっちゃ怒るぞ」
「抱き枕っすねえ……あひひひっ♡」
「んもーその通りに来ちゃってるよ……メカからかうのやめなさい」
「じゃあうちが抱き枕にするんで~」
「ろ、ロアベアせんぱい……だからお尻掴んじゃ……おぉっ……♡」
「分かったから寝かせてくれ、寝てるわんこもいるんだぞ……?」
ひどい乱入者のせいで台無しになったが、もうこいつは無視して寝ることにしよう。
ということで寝よう。取っ組み合うメイドたちもガン無視してぐっすりいこうか。
がちゃっ。
ところがまたドアが開いた。
この状況下でずかずか不法侵入する奴はどんな顔してんだ、誰だコラと見れば。
「えっへへー☆ なんだか夜分遅く賑やかなので来ちゃいました! お祭り会場はここですか~?」
リスティアナだった。しかもよりにもよってパジャマ姿である。
結んだ水色髪の鮮やかさに、でっっかい胸元が見えるゆるめの着こなしは男性の部屋にお邪魔するような姿じゃないと思う。
しかもこの野郎、人の部屋で楽しく一晩明かす気概だ。枕持参してやがる。
「ああどうもこんばんは、ストレンジャーブチギレ祭りになる前に帰れ」
「え~……でもでも、いっぱい女の子はべらせて楽しそうにしてるじゃないですか! ずるいです! 私もパジャマパーティー参加しちゃいますねー♡」
「お~、リスティアナさまもきてくれたっすねぇ♡ お休み前のパーティー会場へようこそっすよ、あひひひっ♡」
「メカちゃんもいたんですね! ふふふ、今夜は眠れなさそうです♪」
「あ、こ、こんばんは、リスティアナせんぱい……だ、だんなさまのお部屋が人でいっぱいに……!?」
「馬鹿野郎ここは俺の部屋だ! 間違えてもパジャマパーティー会場じゃねえ!」
勝手に居座り出したヒロインどもは片方のベッドを陣取ってわいわいやり始めてる。
それならまだしも、開きっぱなしの出入り口からは橙色の明るさがふわふわやってきて。
「おにーさん、レフレク参戦ですっ! 楽しそうなのできちゃいましたー♡」
おそらく旅先テンションで眠れないであろうレフレクも羽ばたいてきた。
自分より大きな籠を吊るして持参した上でだ、恐らくマイベッド。
「おいなんでレフレクも来てるんだよ誰か説明しろ」
「はい私が呼びました! ちなみにレフレクちゃんのベッドを作ったのも私です! 食堂にあったかごをちょっと加工しました!」
「寝心地抜群です、心配ありません!」
「寝床の心配じゃねえよ! 定員オーバーしてるところだクソが!」
駄目だこいつらほんと話聞かない。だけど不幸はまだまだ続く。
続くようにぺたぺた足音が聞こえたかと思えば、ガチョウの白さもやってきて。
「――HONK!」
「なんとガチョウさんも一緒です!」
妖精のドヤ顔に紹介されつつ、今日もガチョウがばさっと羽を広げた。
ふてぶてしいやつめ、つぶらな瞳で当然の権利のように隅で落ち着こうとしてる。
「あ、この子って、リーリム様の使い魔……でしたよね?」
「そっすねえ、ガチョウさんのくせに暇そうっす。パジャマパーティー会場へようこそっすよ」
「私たちについてきちゃったんですよねー……ふふふ、動物もいて賑やかになっちゃいましたね?」
「おにーさんのお部屋に興味があったみたいです! ぺたぺたついてきました!」
「……ん゛……うるさい……」
おかげで深刻な睡眠妨害だ。ニクも眠そうに眉をひそめて不愉快そうである。
「アイペス、俺が部屋の前にガチョウ禁止のプロパガンダを立てる前にどっかいってくれ……」
そう訴えても誰かの使い魔は「HONK」と図々しく部屋の置物になった。
するとまたしても足音。とたとた軽やかなステップが部屋に迫ってきて。
「――なになに? パジャマパーティー!? あーしも混ざるー!」
寝間着を軽く崩した雰囲気も茶髪も明るいお姉ちゃんが乱入だ、羽をぱたぱたさせて枕まで持ってる。
満面の笑顔は寝る前だろうが人懐っこい――だからなんでお前まで来るんだチアル!?
「だからここ俺の部屋だって言ってんだろ!? なんでわいわいやってんだ眠ってるわん娘もいるんだぞ!?」
「おじゃましまーす♪ ってうわっ、なにそのフィギュア? え? いっちそういうの好きなん……? わーお、大胆じゃん……♡」
「タカアキ、お前のせいで被害甚大だよ……」
「あの、だんなさまが困ってますけど……?」
「大丈夫っすよ、これくらいでやられるほどヤワじゃないっすよイチ様」
「あっイチ君、ベッドもう一つ追加でお願いします! 合体させておっきくしちゃいましょう!」
「こんなに夜遅くまで起きてるの、レフレクはじめてです! ワクワクです!」
「あはははっ♪ みんなおもしろーい♡ あーし今日ここにお泊りしよっかなー♡」
おかげでヒロイン数人集まればやかましいのがよく分かった。
もういいここは諦めて別の寝床でひっそり眠ろう。そう部屋を出ようとすると。
「――なんということ、夜這いにきたのに明るくて入れないわ。陽キャどもめ」
…………青白い肌のでっかいお姉さんがガン待ちしてた。
薄くてひらひらの衣装にスイカみたいな胸を二つ浮かべながら、まるで入るタイミングを伺ってたような感じだ。
レージェス様だった。眠気もぶっ飛ぶ陽のオーラに踏み込めないでいるらしい。
*ばたん*
扉を閉めて見なかったことにした。
逃げ場なしじゃねえかボケが! もういい、ここで寝る!
「……俺が何をしたんだノルテレイヤ……」
わいわいやってるやつらを無視してニクと一緒に掛け布団にくるまった。
その前にちゃんとベッドも一つ「がらん」しておいた。
◇
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