魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー

ウィル・テネブリス

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剣と魔法の世界のストレンジャー

変な連中が勢いづいたら大体なんか企んでる証拠

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 まあ、うん、確かに俺は会わせてくれとは言ったさ。

 そもそもさっき考えた「もしかしたらな」の主成分はこうだ。
 白いやつらがどこかに潜んで何かをしようとしてる――例えば"儀式"だ。
 そいつらの生態系は謎だが、そういう催し物は一体感を高めるにちょうどいい。
 それか本気で何かを信じてるかだ。どうであれ、それに犠牲が必要だったら?

「……俺の考えはこうだ。何十人もこそこそできる場所があって、そこで何かオカルトなパーティーでもしてるんじゃないかってな? そういうイベントに生贄だのなんだの付加価値をつけるような連中だったら、っていう話さ」
「なあイチ。つまりお前は白き教え子たちがガチすぎて贄とか捧げちゃう秘密系の邪教かなんかで、行方不明者がいたらそいつらのせいだっていいてえのか? お兄さん流石にぶっ飛んでると思うぜその考えは」
「周りが敵だらけの場所でああも声をデカくできるやつらだぞ、頭の中身が多少ぶっ飛んでてちょうどいいぐらいじゃないか?」
「確かにさあ、ありゃカウンセラーか休日のホットヨガでもすすめたい奴らだけど、そんな大胆なことすると思うか? 俺たちが掴めないほどこそこそしてやがんだぞ?」
「もしあいつらが本腰入れて何かやらかす頃合いだとしたらじゃないかって思ったんだよ。あんな日に日に主張がデカくなる奴らがあのまま一生静かなわけないだろ」
「お前、そういうのに対して理解が深まってやがるな。お兄さん何があったか心配だよ」
「何度か生贄にされりゃ分かるさ。それでその事情をお尋ねしたいと思ったわけだけど……」

 白き教え子たちが生贄を使って妙な儀式でもしてるんじゃないか、と至った。
 そこまで差し掛かったところで、タカアキと合わせて前を向けば。

「――行方不明者がいるというのは彼女たちのことだ。ご覧の通り妖精族同士で集まって活動している冒険者の一団なんだが」

 トカゲな衛兵の紹介がそこに重なった。
 会議室の地味加減にはなんだかこう……可愛いのがふわふわ浮いてる。
 というか、手のひらに乗りそうな女の子たちだった。
 冒険者らしい格好をした各々は色とりどりの羽でぱたぱた羽ばたいており。

「……あ、あのっ……そうなんです……わたしたちのおともだちが、いなくなっちゃって……!」
「レフレクっていう好奇心旺盛な子なんだけど……昨日からメッセージも送られてこないし、みんなで探してるけど見つからなくって……」
「どうしちゃったんだろう、レフレク……返事も送ってこないなんてぜったいおかしいよ、何かあったんだよきっと……」

 『妖精』と一言で済むちっこいのがひどく心配そうに物語ってた。
 手のひらに乗っかりそうな身の丈二十センチほどのちっこさが、そこでふよふよ浮いてるのだ――物理的にも雰囲気的にも。
 そして首元には小柄さにあわせた『シート』が同じ冒険者だと証明してる。

「こういうように、つい昨日メンバーの一人が急に姿を消したらしい。音沙汰もなく行方不明、という体で捜索願いを広げているものの一向に見当たらなくてな……」

 そんな彼女たちに衛兵のお姉さんはとても困っておられるようだ。
 行方不明というのは妖精さんのことで、そのお友達がどっかで生贄にされてる――なわけあるか。

「……ミコ、これヒロインか?」
「うん、妖精族の子だね。わたしたちと同じ冒険者みたいだよ? 等級はストーンみたいだけど……」
「オーケー、行方不明者はちっこい妖精さん、んで同じ職場の新入りさんってか? どうなってんだクラングルは」

 ミコに確かめたが、ふわふわしてる子に親し気な目だ。これが現実らしい。
 中に浮く小さな女の子が見えたら通常は目か脳か心の病院どれか一つを選べるけど、あいにくここは剣と魔法の世界だ。
 ボスが見たらドクのとこいってベッドの上で休養でも取りそうな有様だが。

「ミセリコルディアのおねーさんだ……」
「パン屋のせんぱいもいる……!」
「あ、あのあの……? もしかして、あの子を探してくれるのかな……?」
「おねがい、人間さん……レフレクちゃんが急にいなくなるなんて絶対おかしいの、きっと何かあったんだってあたしたち心配で……!」

 サイズの差がひどい後輩たちはけっこうな音量を乗せてそう訴えてるのだ。
 行方不明者、という点では確かにあってる。
 そんなちっこい生贄で物足りるようなのを崇拝してるかどうかは謎だが。

「心配するなお嬢ちゃんがた。そこのパン屋のお兄ちゃんは困ってるやつを見捨てるように訓練されちゃいねえし、ミコお姉さんは困ってるやつを助けるようなやつらだ、任せろよ」
「ほんと……?」
「お、おねがいします……! あの、わたしたちもお力になりますからっ!」

 タカアキが「任せちまえ」と肩を叩いてきた。
 おかげで向こうの小さな顔ぶれがぱあっと明るくなったようだ。
 ウェイストランドと差がありすぎる愛くるしさに調子は狂うが、重要な情報を持ってるかもしれない。

「今度は妖精族が行方不明か。どうしてこのタイミングで絡むのかは俺も気になるが、後輩を行方不明のままにするのも気持ち悪い話だ。詳しく聞きてえもんだな」

 タケナカ先輩も混れば、向こうのちっこい顔立ちは厳つさにびくっとした。

「オーケー、妖精の子が行方不明か。今回の件とどうか絡んでませんように」
「大丈夫だよ。あなたたちのお友達、みんなで探してあげるからね?」

 だから相棒と一緒に「任せろ」と伝えた。
 妖精の子たちは顔を見合わせてちょっとは明るくなったみたいだ。

「よし、その失踪について話してくれ。話せる限りでいい」
「う、うん……どこからはなせばいいのかな?」
「昨日のことなんだけどね、うちにレフレクっていう子がいて……」
「まってよみんな、一斉に話したら人間さんが混乱しちゃうでしょ?」

 さっそく「座れよ」とテーブルの縁を促した、質問タイムだ。
 ミニマム極まった冒険者がふわっと座れば、ちょうどそばには地図がある。

「……つい昨日のこと、なんだけど」

 すると紙の上のクラングルを背に、妖精ッ娘たちが見上げてきた。
 小さな集まりの中で一番落ち着いた浅い金髪の子だ。
 そいつの心配そうな言葉のつまりにまず耳を傾けると。

「お昼過ぎに依頼が終わって、みんなでおやつ買いに行こうって話になって。それでいつも行ってるお店に向かってたら、いつの間にかあの子がいなくなっちゃったの……すぐにメッセージを送ったんだけど、それからずーっと返事もこなくて」

 少し焦るような口の早さだけど、まずどういう状況か掴めた。
 昼過ぎあたりにいきなり行方が途絶えたらしい。
 しかし俺たちの特権たるメッセージを使えないときた、確かに妙だ。

「何時ごろだ? 分かるだけでいいから教えてほしい」
「午後の二時ぐらいだったかな……」
「午後の二時あたりか。場所はどのあたりだ?」

 じゃあどこでそれが起きたか、と地図を示してみた。
 すると妖精な顔ぶれはそっと顔を見合わせて。

「このあたり……だよね?」
「えっとあの通りにあるお店の前……」
「ここなんだけど……中央広場の近くにある、この通りだよ」

 見下ろす先の金髪姿が、いや他のカラフルな髪色も「ここ」と表現してくれた。
 指先が示すのはあの中央広場……の南東側、居住区前を通る小さな通りだ。
 誰もが「また南側か」と思ったはず。しかもハナコのつけた丸がない場所か。

「なるほど、南側か。ずいぶん入り組んだ場所にあるみたいだな」
「ここってね、妖精の大きさも考えてくれたお店がいっぱいなんだよ。だからよく通ってる場所なの」
「いつも来てるってことか?」
「高いところを飛ばなくても快適だし、他にも妖精の子がけっこういるの。だからあたしたちもお世話になってるんだけど……」
「そんな場所で消えてメッセージが返ってこない、か。妙だ」
「……おかしいでしょ? それにあの子、すぐに返事してくれる子なんだよね。誰かが送ったらすぐ元気に返してくれるんだよ」

 妖精系女子にとって親しみ深い場所で、突然消えて音信不通だって?
 そしてこうして詰所に駆け込むぐらいのことになってるのだ、何かおかしい。
 お人形さながらのサイズは友達が消えたであろう箇所を心細く辿ってるものの。

「じゃあ……その時、どんな状況だったか話せる? 消える直前に何をしていたとか、何か気になるものとかはなかったかな?」

 そこへ顔も声もおっとりしたミコが問いかけた。
 テーブルに落ち着いた妖精の面々を少し悩ませたようだが、少しを挟んで。

「いつものお店に行こうとしてたんだよね。みんなで集まって飛んでて」
「そういえば、いちばん後ろにいたレフレクちゃんが「あっ」っていってなかった?」
「うん……お店に向かってまっすぐ進んでるときに、どこか見てたよね」
「それからちょっとして気づいたら、あの子がいなくなってたの。最初はどこかふらふらいっちゃったのかなって思ったんだけど」

 数人分の小柄さが「店に向かう途中で消えた」と証言してる。
 それを地図と照らし合わせるも……店とやらの合間にあるのは小さな路地裏だ。
 しかも東の居住区へどんどん向かうような仕組みだ、もし「妖精さらい」がいても逃げ場に困るに違いない。

「途中にあるのはクランハウス密集してるとこに通じてる路地ぐらいってか? あの辺はそんな入り組んじゃいねえし、っていうか迷えるような場所でもなくね……?」

 おまけに、タカアキが気にかけるほどに単純な造りなのだ。
 人間妖精問わずに分かりやすく道ができてる、つまり迷子になるには不親切さが足りない。

「あたしたちもね、いろんな人たちにかけあって一緒に探してもらったよ? でもあの子を見かけた人はいないって」
「妙じゃねえか、お嬢ちゃん。一応あそこは結構な人の数だろ? 妖精小さいいえど気づかない人間はいねえと思うんだがな」
「オーケー、事情は分かった。そういえば白い格好をしたクソやかましいやつは見なかったか? 白き民がどうこううるさいのだ」

 じゃあ、そこにあの連中がいらっしゃったかってお話だ。
 しかし返答は「いいえ」を込めた首の振り方で。

「あのいつもうるさくてこわい人たちのこと?」
「そんな人はいなかったよね。あそこって、あの人たちが来ない場所だし」
「別にいなかったけど……おにーさん、あの変なおじさんたちがどうしたの? っていうか、この地図の印はなんなのかな……?」
「もしかして、その人たちと何か関係あるの……?」

 ついでに白き教え子にあんまりいい印象がないもこうして教えてくれた。
 聞く分にはあの灰色になりつつある連中は絡んでないようだ。
 気になるなら足を運んで確かめてみるべきか。よくわかったと頷いて返した。

「私たちは私たちで街の人達からクレームを受けて、そこの怖いお兄さんが言うクソやかましい方たちのことを調べてるところなんですよ。お友達はみんなで必ず探してあげますから心配しないでくださいね」

 そこへハナコがずいっと出てきた。その物言いで向こうは安心してくれたらしい。
 ナイスだ後輩。後でパンをおごってやるとして、うまく話がまとまると。

(……やっぱり南か。あんまりこういうことは考えたかねえが、どこか絡んじまってる気がしてきたぞ)

 タケナカ先輩が小声で伝えてきた。
 よく見れば周りもうっすらと何かを感じてるらしい。
 それもそうだ、タイミングや場所があまりにも重なってるのだから。

(そうなるとお友達とやらはメッセージを送れないような状況に陥ってるってか?)
(だから言ったろ、あんまり考えたくないってな)
(次の考えは「手遅れじゃないことを願う」だ、どんどんきな臭くなってるぞ)

 メッセージを送れない、それだけで十分まずい事実もある。
 ステータス画面は手が使えることが前提だ。じゃそれをいじらない状況は?
 嫌な考えだが単純に両腕が何らか不自由か、それかもう動かせないかだ。

「話しづらかったと思うけど教えてくれてどうも。お前らの友達は探してやるよ、すぐ連絡できるようにフレンド登録頼む」
「う、うん……! お願いします……!」
「俺たちは集会所にいるからな。何かあったら駆け込んでくれ、そこの坊主頭の先輩がだいたいどうにかしてくれる」
「ちゃんと名前で説明しろ馬鹿野郎、俺はタケナカだ。まあ何か困ったらあそこの連中を頼るんだぞ」

 想像したくないオチを今否定しつつ、俺は金髪妖精にフレンド申請を頼むが――

「……すまないお前たち、ちょっとこのお方のお話を聞いてくれないか?」

 妖精さんを傍らに全員で再び悩み始めようとした時だ。
 別の衛兵が誰かを連れてきたみたいだ。
 見れば白い髪と髭を蓄えたご老人をここまで案内してきたようで。

「すまないな、お若い衛兵よ。ちょっとお前たち冒険者にお尋ねしたいことがあるんだが……よろしいかな?」

 現れたのはまっすぐと伸びた身体に薄い衣をかぶせた、質素な人柄だった。
 当たり前のように会議室まで押しかけると気さくな様子で接してきて。

「にゃー」

 真っ白ふわふわな猫も尻尾を立ててご一緒してきた。
 唐突の知らない老人に「誰?」とここに疑問が浮かぶのも仕方ないが。

「あー、おじいちゃんどちらさま? なんかあったのか?」

 いいご老人には親切するのが礼儀だ、一声かけた。
 見知らぬ誰かはすりよる猫と仲良く話に加わろうとしていて。

「お若いの、私はノーデン・スルトだ。いや、ちょっと気になることがあってな」
「ノーデンさんはクラングル中の猫の面倒を見ているお方だ、無礼のないようにな」
「いやいや、そうかしこまらんでくれ。それよりお前たち、話を聞くに行方不明者を探してるそうだな?」
「つまりたった今行方不明者が増えたということだ。そこでお前たちに話を聞いてもらおうと思ったんだが」

 お付きの衛兵がそう言葉を足すのだ、つまり行方不明者追加だとさ。
 いきなりそんな知らせを持ってくるおかげで事件の香りはますます強まった。

「ちょうどよかった、そういう話題を待ってた」

 そんなあるおじいちゃんに「話してくれよ」と促した、あと猫にも。

「誰かユキネとユキノという名前の旅人を知らんか? 銀髪をした兄弟で、大きな弟に眼鏡をかけた小さな兄という出で立ちなんだが」
「知らない人物像だな。どんな奴かも知りたいかな」
「私と一緒にクラングルの猫の面倒を見てくれる変わり者の兄弟でな。急にその二人が消えてしまったのだよ」

 猫好きの二人が「また」「急に」消えたそうだ。
 タイミングのひどさに俺たちはげんなりだ、足元の猫が「にゃー」とこっちを心配するほどに。

「妖精さんに猫好き二人か急に増やしやがって。何があったんだおじいちゃん」
「いやな、私の考えすぎかもしれないんだが、昨日は私の屋敷で猫の面倒を見てくれると約束していたはずなんだ。ところがいつまで経っても二人が来てくれなくてな」
「あー、昨日から猫の面倒を見にこないって?」
「それがおかしいんだ、あの兄弟は約束を一度もたがえなければ、事前に連絡も欠かさない礼節のあるお人柄だ。そんな者たちが働きにくるといったのに、いきなり前触れもなく姿を見せなくなったら不安ではないか?」

 しかしご老人は本気で気に掛けてる。よほどイレギュラーな事態があったらしい。
 足元の猫もどことなく心配げで、白髭を蓄えたおじいちゃんに上目遣いである。

「ほら、この子も心配しているだろう。あの二人が特に可愛がってる猫でな、いつまで経っても来ないもんだからずうっと待ってるんだ」
「にゃー」

 正直今までの話題に関わってそうな気がするも、周りに猫好き二人の行方を知るやつはいない。
 一目でわかる「存じない」な様子に相手は少しがっかりしてる。

「今のところは見当もつかずって感じだな。でもその二人を探せばいいのか?」
「すまないな、私の大切な友人なのだから心配でたまらんのだ。もちろん礼はするから、耳に挟んでおいてくれないかね?」
「ちょうどみんなで人探しパーティーやってるんだ、まあ任せてくれ」
「やってくれるか、ありがとうお若いの。ところでこうも集まって何をしているのだね、冒険者の諸君は?」
「白き教え子たちの迷惑ぶりに対処中だ」
「ああ、あの迷惑な連中か。うちの猫たちもあれには困ってるようだからな、あの変な主張を声高々に上げぬよう振舞ってほしいものだ」
「にゃー」
「ほら、この子もそうだと言ってる。一目で分かるような兄弟だから見ればすぐに分かるはずだ、どうかよろしく頼むぞ」

 知らないご老人は「忙しいところを失礼したな」と去った、白猫の尻尾と一緒に。
 行方不明(と仮定)がまた増えれば、会議室にこもる謎もまた深まるわけだが。

「……いちクン、やっぱり今のも絡んでると思う? タイミング的に何かあったのかなって気になるよ、今のって」
「なあ、気づいたらまた行方不明者増えるんじゃねーの? 次はここにいる誰かが消えるとか起きねーか心配だぞ俺」

 心配事が増えるのもしょうがないだろう。
 ミコは「まさか?」が強まってるし、タカアキはそろそろ俺たちの身を案じてる。

「妖精に旅人の兄弟が消えた、か。実に嫌なタイミングで重なりやがって、なんか妙になってきやがったぞ」
「……ね、ねえ人間さん……? ほんとにここで何が起きてるの? わるいことでもあったのかな……?」

 タケナカ先輩の心配も降りかかれば、ご一緒してる妖精さんたちも不安げだ。

「お前らの心配事が全部当たらないことを祈ってくれ。で、これでとりあえず南側が怪しいのははっきりしたな」

 地図をもう一度見た。
 妖精がひょいと避けてくれた先では、怪しさ漂い始めるストレンジャーお住まいの地域がある。

「演説してるところを抑える必要はねえだろうな。中央広場から南区にかけての線を調べる、これが現状の最善だ」
「どうするタケナカ先輩、このまま調べに行くか?」
「独断でやるにはえらくデリケートな場所だ、俺たちだけで直行はなしだぞ」
「ギルマスの言う通りにやるしかないってことか。もどかしいな」
「お前の住まいの心配はごもっともだが、まずはギルマスに報告だろ。今頃向こうのやつらが情報をまとめて報告してくれてるはずだ」
「そういえば誰がまとめてるんだ?」
「キュイトとかいう集会所に居座ってるやつだ」
「なんで料理ギルドの奴にやらせてんだよ」
「暇だから任せてくれと言われたんだが……まあちゃんと伝わってるし、俺たちが戻る頃には次の指示が飛ぶだろうさ」

 できればここの全員で押しかけてやりたいところだが、ああいうオカルト極まりない連中は下手な刺激はNGだ。
 何か後ろめたいことを企んでるのは間違いない、そう分かっただけで十分か。

「こういう時向こうの世界がすごく恋しくなるよ」
「一応冗談と思って聞いてやるが、どういう意味だ」
「銃口とナイフどっちがいい? 次の瞬間には全部吐いてくれるぞ」
「拷問でもするつもりか馬鹿野郎が、今は冒険者のイメージのために我慢しろ。いいかお前ら、ここまで突き止めたのは確かだ、ギルマスからお願い事が来るまでいつでも行けるように準備しとけよ」

 世紀末世界なら得物を手に「話せ、死ね、お邪魔します」で済んだに違いない。
 今はフランメリアで冒険者だ、それらしくやつらの首を掴んでやろう。


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