魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー

ウィル・テネブリス

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剣と魔法の世界のストレンジャー

バンカーにいるのはだーれ?

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 相棒の呼びかけにすぐ駆けつけるのがストレンジャーだ。
 だけど一体何があったのやら、いざヴァルム亭でミセルコルディアと合流してみると

「ご、ごめんね? お休みだったのにいきなり呼んじゃって……えっと……」

 テーブルの隔ての先でミコが少し落ち着きを欠いていた。

「まさかあんなものがあるとは思いませんでしたよね、セアリさんびっくりです……ところでニクちゃん元気でしたか、ちゃんとお散歩してますか?」
「ん、元気。おさんぽすごく楽しい」
「ちょっとあれは予想外だったよねー……あっ、このザクロジュースって言うのくださーいそれと揚げじゃがも一つ」
「フラン、飲み物程度ならまだしもこの場で揚げじゃがを頼むな! 何しに来たと思ってる貴様!?」

 周りを見れば狼やら蜥蜴やら竜やらヒロインもいて、思い思いに落ち着いてる。
 向かい側で人様のわん娘をがさがさ手で毛づくろいするワーウルフのセアリ。
 店につくなり一直線にカウンター席で注文するドラゴン系女子のフラン。
 それを止めようとするも止められず苦労しているリザードマンのエル。
 対してこっちはというと――

「ウェイストランドから転移した建物だって? ミコちゃんたちがこうして助けを求めるってことはなんかやべえことでもあったん?」

 隣で意地でもサングラスもフェドーラ帽も外さぬ幼馴染のスタイルと。

「わ~……! ミセリコルディアの方たちとお話ができるなんて私びっくりですよー!」

 その反対側で人様の横にぴしっと座り、距離感近めで目をキラキラさせるお人形系ヒロインだ。
 間に挟まれたストレンジャーこと俺はどうだって?
 リスティアナのせいで相棒がじとぉ、とした視線に変わってるのを感じてるところだ。

「あー、ミコ。こいつはリスティアナ、ついこの前引っ越してきた新入りだ」

 くれぐれも誤解のないように曇りかけてる相棒の顔に説明するも。

「はいっ! 『ドール』のヒロイン、リスティアナです! 皆さんと同じく冒険者ですけれど、最近居心地がいいのでこちらの宿にお引越ししちゃいました! イチ君にはとってもお世話になってます!」

 お隣の人形ガールは相対的に声も表情もくっそ明るい調子でご挨拶だ。
 晴れ空の下のクラングルがもう一段と明るくなるほど元気だが――

「そ、そうなんだ……? は、初めまして? ミセリコルディアのマスター、ミセリコルデです」

 おかげでミコは精神衛生上あんまりよろしくなさそうな笑顔だ。
 いや確実に目線がぶすっとしてる。
 「お世話になってます」あたりで優しい顔に不機嫌さが出てる――ごめんミコ。

「これが噂のミコさん……! 本当に優しそうなお姉さんって感じがしますね!」
「こいつとはいろいろあって長い付き合いなんだ。相棒ってやつだ」
「う、うん……! 相棒です……!」

 せめてもの気持ちで相棒アピールをすると乗ってくれた、視線はまだ痛い。
 タカアキが隣で笑いをこらえてふるふるしてる。この野郎しばくぞ。

「相棒……なるほどっ! お二人はお友達だったんですね! ふふふ、イチ君って顔が広いんですねー?」

 ところがリスティアナの無邪気さは底なしだ、にっこり顔を覗いてきた。
 さすがに向かい側にいたセアリも「うわあ」と戦慄してる。
 今それほどにミコはむすっとしてるのだが。

「……さて、件の『遺跡』とやらの話なんだが、少々厄介なことになっていてな。私はリザードのエルフレアだ、よろしく頼む」

 場の空気に区切りをつける気満々でエルが割り込んできた、助かった!

「ミセリコルディアの常識人担当セアリさんですよ。リスティアナさん、よろしくお願いしますね」
「ミセリコルディアのもっと常識人担当フランチェスカ団長だよ、団長のことはフランって呼んでね?」
「は? 喧嘩売ってますフランさん?」
「おお……! 噂のリザードファイターなエルさんに、ワーウルフ格闘家のセアリさん、それに燃える団長フランさんまで! すごく豪華ですね!」
「やかましい連中ですまない。こいつらの言うことはあまり真に受けるなよ」
「どーいうことですかエルさん、セアリさんが非常識とでも?」
「こんなケツでっかいヒロインより団長の方が常識的だからね! 身体も心も!」
「やめんか貴様ら!!」

 セアリとフランも混じれば、人形系な美少女はそれはもうにっこりだ。
 しかしそれでミコのご機嫌がかき消されるわけもなく。

*ぴこん*

 わいわいやってる最中、しれっとPDAに着信が。
 ミコからだ。いつの間に書いたたのやら、向こうでじとっと見ていて。

【むすー】

 ……訳の分からない文章を送ってきた。
 でも今の表情と照らし合わせてやっと気づく、頬が少し膨らんでてかわいい。

【こいつは超がつくほど天然なだけだ、そういうのじゃないぞ】
【わかってるけどうらやましーなーいっしょにすんでるなんてー】
【好きなのは相変わらずお前だからな】
【おうちデート一回】
【了解、相棒!!!】

 じとっとした顔は公正な取引にて元に戻ったらしい。
 それに足元でもちっと柔らかい感触が――ミコの柔らかい足が絡んでた。
 かわいいやつめ。でも俺を騙してラブホに連れて行った件は忘れない。

「……それでね? わたしたちは商業ギルドの依頼で郊外を調べてたの。ここから南の方に、半年ほど前にいきなり現れた遺跡があるから見てきてほしいって……いうものなんだけど」

 テーブル下で足を絡めつつだが、ミコはさっそく例の話を始めたようだ。

「もしかしたら転移してきたものかもしれないって言ってたな」
「うん、その通りだったみたい」
「いい朝のニュースじゃないのは確かだな。それでどんな物件だ? ミュータントつき? テュマー? それか無人兵器? 幽霊だったらパスだ」
「えっと、まずこれを見てほしいんだけど……」

 今分かるのは俺を呼ぶほどの何かが見付かってしまったってことか。
 嫌な予感がするが、すぐにミコから【画像を受信】と通知がきて。

「半年前に商業ギルドが保有する土地に不審な建物が現れたそうでな。長らく放置されていたんだが、最近になって人が出入りした痕跡が見られたらしい」

 そこへエルの言葉に補われつつも、俺は送られてきた画像を開いた――

「あーうん確かに……こんな豪華な事故物件みたいなのがいきなり建ってたら、そりゃあんまりいい気分にはなれないだろうな」

 そこに映ったのは豪邸だ。
 石垣とフェンスをまとう現代的なアメリカ式建築が荒野の上で堂々としてる。
 青白の国旗がフランメリアらしからぬ主張を立てていて、使わずに放置された車がどれほど朽ち果ててるのか訴えており。

【我々はテュマーに屈しない!】

 と、大きな手作りの看板が誇らしげに掲げてある。
 ただし問題の豪邸は反対側が覗けるほどの大穴が空いて風通しがいいし、屋根もばらばらに崩れてまさに廃墟だ。
 周囲には犯人にも見える逆関節型の無人兵器の残骸がある――屈したらしい。

「……うわあすげえ、これデザードハウンドじゃねーか。しかもこの建物……ウェイストランドのダンジョンだな、ってことはルイジアナ州マップか? それともバージニアか?」

 タカアキにも見せれば間違いない、メイドイン・ウェイストランドだ。

「これは……ロボットですか……? MGOにこんな敵いませんでしたよねー?」
「しいて言えば外来生物みたいなもんだ、駆逐対象のな」

 リスティアナにも見せたが知るはずもないか。きょとんとしてる。
 ひとまずこの画像から推測できることは二つだ。
 間違いなく向こうからきたもので、そしてテュマーが使役してる無人兵器があるということだ。

「うん……無人兵器の残骸がいっぱいあったんだ。建物も崩れて人が住める状態じゃなかったし、人が出入りする痕跡なんて全然なかったんだけど……」

 そこからミコは言いよどんでる。
 続く話はナノマシンゾンビがいた感じじゃなさそうだ、そんな顔をしてるが。

「ははあん、お兄さん分かっちゃったぞ。この邸宅の下にシェルターがあったんだな?」

 タカアキは分かったようにニヤっとした――シェルターだって?
 言われてみればそうか。あんまり思い出したくないが、クリンの人喰い族の件があてはまってる。

「まさかタカアキ、今の言い方は何か知ってる感じか?」
「あの世界じゃこういう邸宅は地下にでっかいシェルターを持ってるのが普通なんだよ、分かるか?」
「そうか、ってことはこいつもか。嫌なもん思い出させやがって畜生」
「クリンの時もそうだったよね、うん……」
「……また人食いがいるの? それならやっつけるよ」
「俺の心配はまさにそこだ。どうか人食い族がいたとか言わないでくれ」
「もしそうだったらもっと大慌てで連絡してると思うよ……」
「それもそうか。くそっ、またクリン思い出した」

 俺たちの間に嫌な記憶が蘇ったものの、幼馴染によるとあの世界の屋敷にはこういうのがあるしきたりらしい。
 「人食いとはなんだ」とエルが戸惑ってるが、そうなるとこの画像には深い意味がもたらされる。

「タカアキ君の言う通りなんだよねえ。うちらが調べにいったらさ、なんか車庫に大きな入り口があって……」
「なんとそこに地下空間がありました、っていうオチなんですけど……」

 更に情報追加だ、フランとセアリが嫌な思い出し方をしてる。
 何かまずいものでも見た言い方にそろそろ「テュマー案件」が現実味を帯びてくる。

「てことはなんだ、テュマーがうじゃうじゃでやばいから手貸してくれって?」

 まあそれならぶちのめす。そう構えて尋ねるも。

「そうじゃないんだけど……いちクン、これ見てくれる?」

 また画像が送られてきた。
 それはきっと『シェルター』とやらの入り口に違いない。
 斜面の先にあるガレージの中に、けっこうな数の人の形が転がっている。

「……おいおい、こりゃどういうことだ」

 そいつが誰かは一目で理解できた。
 テュマーだ、それも分隊半分ほどの数がごろごろとくたばってる。
 頭を潰されたり、顔を矢で射貫かれたり、心臓に槍をねじり込まれたりと死に方の多様性を披露してる。

「ワーオ、テュマーがくたばってやがるな。で、誰がやったんだこれ? 犯人この中にいる?」

 流石のタカアキもしかめ顔だし、リスティアナは「うわあ」な怯え方だ。
 このテュマー殺人犯は行方知れずだが、するとミコは首をふるふる振って。

「わたしたちが来たときにはこうなってたの。それも――」
「ここ最近やられたような感じだったぞ。何せこのシェルターとやらの奥から悲鳴が聞こえたんだからな」

 エルがその有様を口で補ってようやく由々しき事態が見えてきた。
 テュマーがいるのはいいとして、それをぶちのめす何かがいるのだ。

「一応聞くけどどんな声だった? まさか助け求めてた? その悲鳴ってもしかして「メ」と「デ」が主成分じゃないよな?」
「……メーデー」

 不安は的中だ、ミコがぼそ……と嫌な思い出し方をして良く分かった。

「テュマーが中にいるのは間違いないわけか。最悪だ」
「メーデーって仲間呼ぶときの信号じゃねーか、大丈夫なんか」
「でもね、その、問題はそこじゃなくて……」

 悪いニュース続きで俺もタカアキも「マジかよ」だが、ミコはまだ続けて。

「ここに"白き民"がいるみたいなの。多分どこかから流れてきたんだと思うけど」

 いきなり知らない単語をぶちまけてきた。
 だって? 初めて耳に触る言葉だ。

「おいおいおい最近噂の白き民がいるのかよ。てことは待てよ、このテュマーたちがくたばってるってこたー……」

 タカアキが引っかかっているあたり、それは俺の知らないだけの何かなんだろう。

「白き民……えっ? クラングルの郊外にそんなのがいるんですか?」

 リスティアナだって驚いてる。だから白き民ってなんだ。

「団長思うんだけど、たぶん徘徊してここにたどり着いたと思うんだよね。居心地がよくて住まい構えちゃったみたいな……」
「テュマーが何なのかセアリさんたちさっぱりなんですけど、ちょっと様子見に行ったら思いっきりいたんですよね……ていうかあいつら、最近よく見かけません?」
「おそらくまだ住処にしている最中なんだろうな。そうなると早い段階で倒さなければまずいことに……」

 フランも気難しそうな顔をして、セアリも恐る恐る思い返し、エルなんて悩み深い様子でいるが。

「……オーケー、俺から次の話題だ。白き民ってなーんだ」
「……白き民? なんなんだろう」

 まったく分からぬ俺はわん娘と一緒に首を傾げた。
 するとみんなが、いやカウンターの向こうの親父さんすら「まずそこからか」みたいな眼差しだ。

「……そういえばお前、まだこの世界のことあんま知らなかったよな」

 しょうがなさそうにタカアキがこっちを見てきた。

「普通に暮らせるぐらいには分かって来たはずなんだけどな俺」
「まあ無理もねえか、最近になって急に目撃情報が増えたっていうし、そもそもお前クラングルから出てねえし。白き民ってのは……なんていやいいんだこれ」
「うん、どう説明すればいいんだろう……」

 次第にミコすらも混ざってくるが、どうにも説明しづらいものらしい。
 そんなところで親父さんが揚げじゃがの皿を持ってきて。

「白き民はその昔、フランメリアに突然現れた謎の生き物だ。わしらを脅かすものでもあるが、同時にこの国を豊かにするというなんとも複雑な存在でな」

 熱々のやつがごとんと置かれた。サービスは「謎の生き物」についてだ。
 脅威でもあって国の利益でもあるなんて言われても俺の知らぬ言葉だ。

「そんな奴がいるなんて初耳だぞ、たった今知った」
「この国ができてしばらくしてから現れたというやつらさ。やつらはいまだに正体が掴めんし、疎通もできずひたすら攻撃的で、やつらには多くの民が苦しめられていたもんだ」
「しかも仲良くできない類か。なんなんだその、白き民って」
「人に似た何かだ。大昔に国が総出を挙げて狩りだしてからだいぶ見なくなったんだが、お前さんらが来る少し前からまた徐々に現れ出したようでな……せっかく平和だったのにまた物騒な世に戻るなんてわしゃごめんだぞ」

 親父さんはいい思い出がなさそうな顔をしてる。
 「どんなん?」と周りを見て伺えば。

「超シンプルに答えるなら俺たちの敵だ。皮肉なことに近頃の冒険者が食ってけるのもフランメリアにまだがうじゃうじゃいるのもあるみてーだ」

 タカアキが「そういうと思って」とばかりに宙をかき始める。
 何か送信してきたみたいだ。開いてみると……。

「……は? まさかこいつが白き民ってやつか……?」

 その名前に負けないものがそこにいた。
 見知らぬ草原で近代建築が【ドッゴ動物病院】と看板を掲げる場所だ。
 屋上や近辺にいびつな形の人間が佇んでいるようだが、目で詳細を追えばすぐに分かった。

 青寄りの白に塗りたくられた全身に、どこかを見る顔のない顔。
 人に近い骨格にがっしりと力強く浮かぶ真っ白な肉。
 更にそこらの冒険者より上等な武具で身を固めて戦う気概もあるようだ。

「なんていやいいのかな、こいつは本当に謎なんだよ。こんな見た目のくせして他のやつと連携して襲い掛かってくるし、殺してもすぐに溶けちまうし、写真みたいに手つかずの土地があると住み着くんだよ」
「おい、このすげえ気味悪いのはマジでなんなんだ。真昼間からホラーはごめんだぞ」
「すげえ気味悪いし強いぞ、お前の大嫌いなやつだ」
「強いってことはテュマーもやっつけられるぐらいか?」

 気味の悪い化け物にタカアキは「そのとおり」って感じの苦い笑みだ。
 この得体のしれないやつがテュマーより強いって? なんの冗談だ?

「確かに気味悪いですよねあいつら……こんな見た目して、まるで人間さながらにコミュニケーションとって動いてきますし」

 そんな化け物と一戦交えました、みたいにセアリも思い出してる。
 まさかMGOに登場するモンスターか何かか? 未来の自分が趣味でぶち込んだのかもしれない。

「もしかしてMGOにいたモンスターだったりしない?」

 思わず事情が分かるやつらに聞いたが――誰一人首を縦に振りやしない。
 フランもザクロジュースを苦そうに「いいえ」と首を横振りだ。
 こいつが作中に登場していた敵キャラじゃないとはっきりした。

「ううん、これってMGOに出てくる敵じゃないみたいなの。ヒロインのみんなもそんなのいなかったって言ってるぐらいだし……」
「こんな敵見たことありませんからねー……もしかしたら実装予定だった敵かもしれない、とか思っちゃったりはしたんですけども……」

 ミコもリスティアナも存在を否定してるが、事実は永遠の謎である。
 それにしても美少女だらけの世界に似つかわしくない気味の悪さだ。

「この白き民はフランメリアを悩ませる存在なんだ。その土地に落ち着くとどこからか仲間がやってきて住み着くし、中には防御を固めて要塞を作るものだっている。こいつは本当に我々に害をなすだけ以外は理解できない存在だ」
「でも倒すとマナが飛び散ってその土地が豊かになるから、可能であれば駆逐してねって国が言ってるんだよね。危険だけど利益になるとかどうなってんだろ?」

 エルとフランの物言いから分かるのは、冒険者が腕を振るうのにちょうどいい相手がいたってことぐらいか。
 
「で、話をまとめるとその白い方々がシェルターにお住まいになってましたと?」
「……ねえご主人。この変な人たちがテュマーをやっつけたのかな?」
「こいつらがを強制退去させて居座ったって話じゃねえよな」

 今一度俺は現状を尋ねた。今ならニクとタカアキも一緒だ。
 するとミセリコルディアの面々は悩ましそうに「YES」で頷き。

「現状報告したら商業ギルドから白き民を駆除してほしいって頼まれちゃって……。建物の大きさはそれほどじゃないけど、テュマーもいるかもしれないし、わたしたちだけじゃ不安だし……」
「内部の構造からして大人数で押しかけるわけにもいかないからな。こういう場所に詳しいやつがいれば助かるんだが」
「放っておくとその土地に拠点を構えてどんどん増えちゃいますからね。早めに駆除してほしいとのことですよ」
「もちろん手伝ってくれるならギルドに伝えておくよ~? 報酬は惜しまないってオークのおじさんがいってたし」

 つまりストレンジャーがお役に立てる時がようやく来たみたいだ。
 こんなバケモンがいるなんて知らなかったが、物理的衝撃でぶっ殺せるなら俺の出番か。

「質問したいことが1つあるけどいいか? シンプルなやつだ」
「う、うん。なにかな……?」
「その白いやつらってのは頭をぶち抜けばくたばる人種か?」

 確かめることは一つ、ストレンジャーでもぶっ殺せるかどうかだが。

「たぶん、いちクンなら大丈夫だと思います……」

 呆れてるのか困ってるのか、なんにせよ信頼してくれる瞳が返事だ。

「お祓いとか儀式が必要なタイプの敵じゃなきゃお任せあれだ、やるぞ」
「……それは笑って尋ねることじゃないだろう、貴様」
「えっなにこの人笑顔で恐ろしいこと言ってるんですけど」
「いやー頼もしいねイチ君。ミコはいい相棒持ったと思うよ団長、うん……」
「んじゃ決まりだな、俺も参加だ。事故物件まで車で運んでやるよ」
「ん、そういう敵はぼくに任せて。やっつけるから」
「イチ君がいれば無敵ですよ! 私もお手伝いさせてください!」

 ヴァルム亭の四名も参加することになって怖いものなしだ。俺は荷物を取りに動いた。

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