魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー

ウィル・テネブリス

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Journey's End(たびのおわり)

まだ見ぬ世界を夢に求めて(5) 【戦い終わり♡】

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『はっはっは、頭上で大騒ぎしてるのが聞こえますぞ。阿鼻叫喚といった具合ですなあ』
『フハハ、奴らの悲鳴が良く聞こえるわ。だがそちらに気づいたようだ、車両が何両かそちらに向かったぞ』
『うちらにはまだ気づいてないっすよイチ様、敵の皆様が山の方に攻撃中っす』

 無線から伝わった別動隊の声からして敵の意識を引き寄せられたらしい。
 重機関銃の衝撃が山の形をえぐるのを感じてすぐ引っ込んだ。遅れてぱぱぱぱぱっと小口径弾が頭上をよぎる。

*Do-do-do-do-domm!*

 エンジンの回る音に続いて機関砲まで襲ってきた――地面が揺れる。
 瞬く間に山頂は土煙だらけだ。お互い何も見えぬまま無数の火器が山を襲う。

『ひゃああああぁッ……!?』
「おーおーあいつらマジだな、全員攻撃が止むまで頭下げてろよ」

 足元に広げた武器と一緒に下がった。山のつくりの陰に隠れてやり過ごす。
 すると今度はぼんっ、と向こう側に爆炎が上がる。50㎜ロケット弾の炸裂か。 
 だが気にすることはない。向こうに取れる手札は山なりに攻撃できる手段を取るか、こうして制圧射撃してる間に回り込むかの二択だ。

「そりゃあんな起こし方されたら誰だって機嫌が悪くなると思うわ。まだ朝ご飯時ですらないもの」

 しかし流石は女王様、俺と同じ考えがあるのかいたって冷静だ。
 段々と滅茶苦茶な連射がぱすぱす頭上を掠めるが、腰のホルダーから魔法瓶を取って一杯嗜んでる。

『じょ、女王様!? 今お茶なんて飲んでる場合なんですか!?』
「んもーまた紅茶飲んでるこの人」
「向こうはこっちを抑えてるだけよ、当たってないもの。少し落ち着いたらまたお見舞いしてやりましょう」
「みんな、もうそろそろで回り込んで山に向かってくると思うぞ。それでまでじっとして体力を保つんだ」

 向こうはクラウディアの考え通りに動いてるんだろう、攻撃の激しさは増していく一方だ。
 機関砲が必死に俺たちを探してあたりをなめ回す。向こうの山の表面が爆発、土くれが飛んでくる。
 次第に耳に『出てこい!』とか『ぶち殺してやる!』『あそこにいるぞ!』だとかほんのり罵詈雑言がたどり着く。

『すごい攻撃されてるっすけど大丈夫なんすか皆さま、生きておられるっすか』

 段々と敵が接近する肌触りを物理的に感じ入ってると、ロアベアがぼんやり気にかけてきた。
 そこで機関砲の砲撃が止まった。雑多な小銃弾がぱちっと弾ける音だけ続く。

「女王様が一人でティータイムおっ始めてる」
『じゃあ大丈夫っすねえ、そろそろうちらの番すかね?』
「そっちの状況を伝えてくれ、どんな感じだ?」
『駐車場でまだ生きていらっしゃった皆様が態勢を整えたところっすよ。そっちにいっぱい向かってるっす』
『イチ、道路の門を開いて続々そちらに走っていったぞ。奴らの寝床に残ってるのは三分の一ほどといったところか』
『こちらからあなた方の側面に回り込もうという魂胆が見え見えですな。駐車場側は完全に手薄ですぞ』

 襲撃チームの報告と現状が重なった。銃声がぴたりと止んだ――頃合いだな。
 足元の小銃擲弾を掴んだ。銃口に尾翼を差し込んで装填完了。

「聞いたか? あいつら俺たちに夢中だとさ」

 違うエンジンの音も重なった。道路から装甲車が何両か近づいてる証拠だ。

「ようやくか。ではこいつの出番だな?」

 待ってましたとばかりにクラウディアがグレネードランチャーを見せてきた。

「側面から迂回してこっちに向かってるらしいわね、そいつらやっちゃうわ」
「ん、来れないように足止めするね」

 ニクと女王様も『スティレット』対物発射器を展開してる。対人榴弾の丸みがいつでも発射可能だ。

「クラウディア、ダム上道路の入り口にまず一発ぶち込め、その後は物陰に隠れて駐車場あたりを狙え。できるか?」
「ダークエルフをなめてもらっちゃ困るぞ」
「よし、散開。ニクと女王様は両脇から生身の奴狙ってすぐ下がれ」

 俺たちはすぐ散開した。スティレット持ちが左右に回り込む。
 ダークエルフを連れて小銃擲弾を抱えたまま低い姿勢で這うように進んだ。
 土煙の残る山肌を身体でなぞると、うっすらとダムの道路が見えた。
 遠くの開いたゲートから武装車両と随伴する人間が続いてた。路上の障害物に隠れた生き残りが中々の数を揃えてる。

「クラウディア、まず一発撃て。俺が攻撃したら駐車場方面だ、あとはお前のセンスに任せる」
「分かったぞ」

 そこへグレネード弾を撃ちこむように指示した。目測で100mほどの入り口だ。

 *Bamn!*

 40㎜弾の太い発射音がした。クラウディアがすぐ引っ込んで次弾を込める。
 その間に銃口の擲弾から安全ピンを抜いた。得物を向けつつ路上から山の左右へ向かうとする連中を発見。
 山頂を這って狙いを定める――山に回り込む奴らの後ろで装甲車と随伴する奴らを発見、援護するつもりか。

「――やれ!」

 銃床を肩にあてて持ち上げた。感覚的に弾頭を一団に向けてトリガを引く。

*BAMM!*

 肩をぶん殴られるような衝撃がきた。ぎりっと痛みすら走るほどだ。
 同時に左右からばしゅばしゅっとスティレットの発射音、ふもとの傭兵崩れたちの足元で濃い灰色が立ち上がり。

 ――ぼんっ!

 最前列にいた車のそばで爆発が起きた。広がる爆炎にまとわりつく人型が弾き飛ばされる。
 急な攻撃に向こうはあたふただ。装甲車が慌ててバックし、銃座の男がこっちに向けて五十口径を撃ちまくる。
 だがその眼前には濃い青煙が漂う頃だ。視界の通りを確かに遮っていく。

「クラウディア! 次弾!」
「500mほどか……こうか?」

 銃撃がまた山を襲った。さっきみたいに引っ込んでまた擲弾を突っ込む。
 代わるようにクラウディアが陰から立ってグレネードを撃つ。確かめる暇もないが、きっと当たってるはずだ。

『クラウディア様ぁ、手前の道路に落ちてるっすよ~』
「む、もっと遠くか。これでどうだ?」

 いやメイドから報告があった。それならばとまたグレネードが発射された。
 あたりにまた攻撃が飛び散っていく最中、屈んだダークエルフから一発二発四発とダムへとガス弾がばら撒かる。
 本当にクリューサのお薬の効果はあるんだろうか? そう思うほどに重機関銃の弾幕が背後に落下するも。

『お~、なんかとてつもなく苦しんでるっすよ皆さま。効いてるっすね』
『クリューサ殿の薬で大騒ぎだぞ! やるなら今しかなかろう!』
『お見事ですぞクラウディア殿、薬効ありですな』

 そんな報告が届いた、いや、攻撃だって止んでしまった。
 もしやと思って身を乗り出せば、ダム上の道が立ち込める青でいっぱいだ。
 煙に巻かれた傭兵らしい姿がどいつもこいつも顔や胸を抑えてよろめくのがはっきりと――今しかないな。

「行くぞストレンジャーズ! 後はいつも通り適当にやっちまえ!」

 それだけ伝えて堂々と立ち上がった。膝立ちのまま突撃銃を斜めに構える。
 青い煙からバックしていく装甲車を発見。弾頭の先に重ねるように狙いを定めて発射。

 *Bamn!*

 反動にぐらっと押されたがどうにか耐えた。続けざまに三発目を装填。
 離れた景色で後退していく車の目前が爆ぜた、外れだ。
 しかしビビりあがったに違いない。変な方向に活路を求めた結果、ぎゅるっと空っぽのダムへ落ちていく。

『ちょっと露払いしてくるわ! 援護よろしく、行くわよニクちゃん!』
『ん、行ってきます』

 ここぞとばかりに女王様とニクが駆けだしたらしい。二人の姿が勢いよく山から下りてくのが見えた。
 煙から逃れた連中が慌てふためきながら銃を向けていた――立ち上がって直感的に狙って射撃。
 今度は命中だ。背中で爆発、糸が切れたように一斉に苦しみ転んだ。

『フーッハッハッハ! おはよう諸君、ストレンジャーズがご挨拶にきたぞォ!』
『固まってちゃダメっすよぉ、あひひひひっ♡』
『そちらまで誘導いたしますので後はよろしくお願いします。それでは私も徳を積むと致しましょうか!』

 向こうも派手に始めたか。ずっと遠くから銃声が聞こえてきた。
 そのころにはもうクラウディアが『お薬』を撃ち終えたようだ、空っぽになったグレネード弾の帯を捨てて。

「イチ、私たちも行くぞ」

 ニヤっと短剣とクロスボウを見せてきた。そして軽やかに駆け下りていく。
 下では煙に突っ込んだ二人が暴れてるご様子だ。俺も加わるとしようか。

「クリューサ、お前の薬は効いてるらしいぞ。良かったな」
『そうか。ああなりたくなかったら薬は控えることだな』
「アドバイスどうも。行くぞミコ!」
『う、うん……! 気を付けてね!?』

 山を下りる前に一度戦況を確かめた。
 真っ青に染まったダムは滅茶苦茶で、行き場を失った連中が車両ごと道路上であたふた足止めを食らってる。
 駐車場も同様だ。何が起きてるのか戦闘車両がダムの半ばへ逃げ出してた。
 どうも向こうの戦力がこっちに流れてるらしい――そんな時、ふと目につく。

「……誰かさんの真似でもするか」

 山頂に置かれた60㎜迫撃砲だ。砲弾もまだ二発ある。
 急いでプレートから外した。根元にあるセレクターをいじって『D』から『T』に変えた。
 ベルトに無理やり砲弾を挟んで……ずっしり重いそれを引っこ抜く!

『……いちクン? それ迫撃砲……』
「行くぞォッ! 借りたもん返してやるぜぇ!」
『待っていちクン!? そんなの持ってどうするつもりなの一体!?』

 俺は走った――迫撃砲を両手に抱えてだが。
 重みの増した身体にでこぼこの足場のひどさが良く伝わった。だが走る。
 目ざとく誰かが俺を見つけたのか足元にびしっと弾が落ちた。構わず重力と勢いに任せて駆け下りる。

「おごっ……ふっ……なんだ、これ、毒なのか……!?」
「気を付けろ! 変なやつが来やが……!?」
「う、げっ……! く、るしい……! 誰か……!」
「おい大丈夫か!? くそ、何が起きてる!? あいつら何使いやがった!?」

 真っ青なダムへと向かえばその異変は直に理解できた。
 散布された薬のせいで傭兵崩れたちの体たらくはひどいものだ。
 胸を抑えて息苦しそうに戦おうとする者、それすらできずにうずくまって悶える奴、平然としたまま困惑する誰か。

「通るわよ! どきなさいオラァッ!」

 そこへ回るように踏み込みつつクォータースタッフで薙ぎ払う女王様も追加だ。
 ひとまとまりのまま足止めを食らった連中が一撃で崩れた。続けざまにしなりを効かせた殴りで一人ずつ仕留めていき。

「す、ストレンジャーズだ! あいつら俺たちのこと――」
「うるさい、黙って」

 *papapapapapapapapm!*

 青色の中で後ろへ身じろぐ連中にわん娘の機関拳銃が唸る。
 突然の掃射に怯んだところにニクが突っ込む。持ち替えた槍で誰かを叩き潰す。
 煙の中は死屍累々だ。そんな中を進んで道路にこぎつくと。

「で、出やがったな!? 死にやがれっ! 俺たちはてめえのせいで……!」

 お薬の向こうから敵が現れた――突撃銃を逆手に殴りかかってきた。
 だがこっちにあるのは何だと思う? 60㎜迫撃砲だ、俺だって逆さに構えて。

「よお、借りたもん返しにきたぞ」

 これみよがしにニヤっとしてから振りかぶった。
 人の迫撃砲を見て相手は混乱したようだ。そんな何をするのか分からない顔にめがけて振り回す!

 ――ごしゃっ。

 横合いに殴った一撃はそれはもう鈍かった。思考をぶっ壊されてそいつは死んだ。
 『うわぁ……』とガチで引くミコと共に進んだ。向こうからエンジンの唸りが響く。

「ストレンジャーだって!? 俺たちを追いかけてきやがったのかァ!?」
「マジでいやがるぞ!? く、くそがっ! 舐めるんじゃねえぞ善人気取りが!」

 更に進めばこっちに気づいたやつらと目が合った。間合いは数メートル、得物は短機関銃か。
 なのでお構いなく進んだ。迫撃砲の重さもろともずっしり踏み込むと、その銃口が目についた。

「おらぁッ!」

 そんなところに足を捌いて身体を反転、ぐらりと足先を放った。
 【レッグパリィ】を決めた。握った武器を弾いて宙に躍らせる。

「……なっ!? こいつっ」

 驚くもすぐナイフを抜いたらしい。だがリーチは生憎こっちが上だ。
 蹴りの慣性を生かしたまま更に回転、握った迫撃砲の砲身を横にぶちかます。
 ごん゛っと非常に重々しい感触。顔面を横から破壊された敵が引きつった声と共に倒れた。

「ば、馬鹿かおまっ、そいつそんな風に使う」

 二人目も追いかけた。ハンドルを握ってたじろぐ様子に向けて一突き。
 ボディアーマーごと腹に砲口が叩き込まれた。手にした短機関銃をぱぱぱぱっとまき散らしつつぶっ飛とんだ。
 「おあ゛ぁぁ」と苦しそうにするところに接近、その顔面に振りかざし――

 ぐぢゃっ。

 底で叩き潰した。誰かが目の当たりしたのか、煙から悲鳴が聞こえた。

「ひ、ひいいいいいいいいいいいいっ!? ば、化け物だ! 化け物がきやがった!?」
「ストレンジャーが来たぞォォォッ! 逃げろ! 俺たち殺されちまう!」
「何やってんだ! 装甲車を引かせるんじゃねえ!」
「み、身動きがとれねえ! 後ろつっかえてんぞどうなってんだ!?」

 どうも向こう側に敵が固まってるらしい。青色の中からいろいろな音が混じっていた。

*DODODODODODODOM!*

 重機関銃の銃声も追加だ。慌てず土嚢の壁にくるっと隠れる。
 その間にベルトから砲弾を抜いて砲身に突っ込んだ。ごちっと装填された感触を確かめて。

「――おはようお前ら! こんなのはどうだ!?」

 できる限り相手が嫌がる笑顔を浮かべてから身を乗り出した。
 ちょうどよく煙が薄まった時らしい。そこにあったのは団子のごとくまとまった敵だ。
 ただでさえ障害物で狭まった道路に車がスタック、その先頭で逃げ場を失った戦闘車両が機関砲をこっちに向けていた――もちろん射角が足りずに。

『……は、はぁ!?』
『お、おい……あいつ、正気かよ……!?』
『ま、まてまてまて! 待ってくれ頼む……!』

 そのそばで傭兵崩れが固まっていた。こっちを見てシリアスな顔をしながらだが。
 ご一行の総意として、人様の持つ迫撃砲が気に食わなかったに違いない。
 なぜなら俺はそれを腰だめに構えていたからだ。砲身を握ってハンドルを掴み、砲弾の行く先を車両に向けていて。

 *BAMM!*

 トリガを握った。耳を圧迫するような音とすさまじい反動に後ろに突き出される。
 それでもよろめき身体を捻じって耐えれば。

*zzZZBAAAAAAAAAAm!*

 僅かな間を置いて向こうの景色に爆煙が上がった。
 破片すら飛んできた。アーマーにこつっと当たって熱すら感じる。
 だがその威力は間違いなく上等だ。水平射撃を食らった車両が煙混じりの火を上げながら後退してる。

『ふ、ふざけやがって……何考えてやがんだクソがァァァッ!』

 すると砲塔から誰かが逃げ出してきた。耳当て付きの帽子をかぶった男だ。
 まだ無事だったか。なので砲弾を装填、いそいそ離れようとする姿にまた重ねて。

*BAMM!*

 ぶちかました。流石の二度目は通用したのかぼふっと火柱が上がった。
 弾切れだ。迫撃砲を捨てて突撃銃に切り替える。

「はははっ! 派手にやってるじゃないか!」

 強引な手段でぶっ壊された戦闘車を横切ろうとするとクラウディアが追いついてきた。
 二刀のナイフに切り替えて白兵戦の気概を見せてる。俺も乗ってやることにした。

「こんだけやったからみんな目が覚めたんじゃないか?」
「ファクトリーに届いているかもな。もっと盛大にやって安心させてやるのはどうだ?」
「名案だ。行くぞ」

 銃身上に銃剣を取り付けた。少しリーチが上がって短い槍ほどの威圧感だ。
 灰色と青色混じりの煙をかき分ければ、はっきりした空気の中で待ち構える連中が見えた。
 バリケードに身を隠して銃を向ける連中だ。クラウディアがすたっと足を速めて。

「ミコ、魔法を頼む」
『えっ、あっはい!? 【セイクリッド・プロテクション】!』

 ミコに頼んで魔法をかけてもらった。そしてマナの盾に守られながら突っ込んでいく。
 俺も負けちゃいられない。腰から『取っ手』を抜いて人差し指を引いた。
 薄白の膜が広がった。それを突き出して駆け出す――!

「あのイカれ野郎こんなとこまで来やがったぞ!? どうなってんだよぉぉ!」
「う、撃て! 近づけるな! ぶっ殺されるぞ!」
「後ろからも来てやがるぞ! これ以上接近を許すな、阻止しろ!」

 駐車場側も片が付いたか。目の前の連中は前にも後ろにも構えてぶっ放してる。
 そんな有様めがけて次のバリケードめがけて走る。展開したシールドがびょんびょん音を立てて弾をそらす。
 一足お先に向かったクラウディアは道路を逸れて敵の側面に回り込んだみたいだ。ナイフ両手に飛び込んでいき。

『そんなところで固まっているとはよほど死にたいみたいだな? 愚か者め』
『て、敵っ!?』『う、あああああああっ!』『ばっばか撃つなあぁぁぁっ!?』

 かき回したらしい。滅茶苦茶な銃声と悲鳴がミックスされた。
 シールドを下ろして突撃銃に切り替えた。銃剣を突き出しながら小走りで寄れば。

「白兵戦だ! 銃は使うな! 同士討ちになるぞ!」

 より固まった連中が褐色エルフ一人に対峙する場面だ。
 目と鼻の先、サンドブロック越しにこっちに気づいた一人がぎょっと銃を向けて来たー―

「――しっ!」

 そんな顔面の顎下を持ち上げるようについた。ごりっと中身をえぐった。
 一瞬で静かになったそいつを蹴り飛ばして次へ。仲間を背中で突き飛ばしながら散弾銃を構える敵を発見。

*Papapapapakink!*

 フルオートで散らした。数名ほど巻き込んで墓場へと散っていく。
 その間にクラウディアが二人の間に捻じり入って突き上げた。腰と脇を鋭く抜かれて苦しそうに死んだ。

「に、逃げろ! こっちの方がまだマシだ!」
「何なんだよあの化け物ども……ッ!? ストレンジャーじゃねえか畜生!」
「こ、この野郎……! てめえのせいで、よくもっ!」

 ところが増援が来た。バリケードをよぎった向こう、開きっぱなしのゲートからだ。
 どうにか生き延びたであろう2ダースほどの連中が死に物狂いで逃げて来たようだが。

「お前らのケツ追いかけるほど悪趣味にみえるか? 勘違いするなよ」

 すかさず腰だめに構えた突撃銃をぶっ放した。
 ぱぱぱぱぱぱきん、と全弾吐き出す勢いの連射がそいつらを襲った。ばたばた倒れた。
 そこで弾切れだ。斜めに構えてそいつらめがけて走り出す。

「ひぃっ……!? イカれ野郎が来るんじゃねえええええええっ!?」

 向こうだってただ撃たれる的じゃない。手持ちの短機関銃を撃ちまくる。
 車線を外れるように斜めに走るがばちっと頭に当たった。ヘルメット越しの九ミリの感触だ。
 次々と小火器が合奏されるが隠れた。砂でいっぱいのブロックにびしびし着弾が伝わる。

『ああああああああああああああっ!?』
『い、ぎゃっ』
『な、なんだ……!? 矢だぁ!?』

 ところが収まった。悲痛な声が広がってる。
 まさかと思って山の方を見れば、追いついてきた女王様がバリケードの上で弓を構えていて。

『行きなさいいっちゃん! やり放題よ!』
「ご主人、援護するよ」

 ニクが機関拳銃片手にご主人の元までたどり着いていた。
 ふらっとした足取りのまま連射、ゲート近くに弾をばらまきつつ物陰に隠れたようだ。

「――そりゃどうも!」

 ご親切さに感謝しながら身を出した。屈みながらレンジャーっぽく走る。
 その向こうにいたのは隠れようとする元傭兵たちの姿だ。そんなところにずんずん迫って。

「AAAAAAAAARGHHHHHHHHHHHHHHH!」
「……あっ、あっ……うわああああああああ!?」

 ちょうどその目の前、退きながら小銃で女王様を狙う男に突っ込んだ。
 深く構えた突撃銃を持ち上げるように突く――腹をぶち抜き、ぐっさりとした感触が両手に伝わる。

「あ゛っあ゛っぎゃああああああああああああああああああああっ!?」

 腰に力を入れて……そんな男を勢いよく持ち上げた。
 じたばた暴れる串刺し傭兵もどきを掲げれば、周りの奴らが明らかに気分をへし折られたのを感じた。

「や、やめろっ。やめ……うわああああああああ……!」
「イカれてる! イカれてやがる! 化け物がァ!!」
「逃げろ! もう駄目だ! 俺たち死ぬんだ!」

 阿鼻叫喚が出来上がった。武器も忘れて逃げようとする姿が見えてしまってる。
 薬で苦しむ奴らも見捨てて逆相していったようだが。

『フーッハッハッハ! 戻ってきたかお前たち、よかろう相手をしてやるぞ!』

 ちょっと離れた場所からそんな声がした。空を舞う傭兵崩れの姿と共に。
 投げ飛ばされたそれはダムの深みへと落ちて行ったようだ。別動隊が追い詰めてくれたか。

「――く、くそぉぉぉぉぉぉ! お前なんかに負けるかァァァ!」

 ところがだ、逃げ戸惑う奴らから抜ける連中がいた。
 逃げ場もなく追い詰められたというべきなんだろう。俺に向かって走り込む様子が何人もいる。
 中でも誰より先に足を動かし、見慣れた白銀の刃を見せる――くそっ、またカタナかよ!

「カタナお断りだ、クソ野郎!」

 だが今の俺は一味違うぞ、クソカタナ野郎。
 串刺し傭兵もどきをぶん投げた。そして銃から弾倉を抜いて槍のように構えて。

 ――ぶぉんっ!

 そいつの胸にめがけてぶん投げた。
 『ピアシング・スロウ』だ。投げ槍に早変わりした突撃銃が後ろごとぶち抜く。

「ほおおおおおおおっ……!?」「おぎっ」
「止まるな! とにかく走れェェ!」

 ところが後続はまだ続く。またカタナを持った男が走ってきた。
 決死の覚悟らしい。殺意やら生存意欲が浮かぶ顔のまま、まっすぐ刃を上げてぶつかりにくるも。

「……来い、カタナ野郎!」

 今まさにその時だ。背中からマチェーテを引き抜く。
 いきなり抜かれた得物のリーチに一瞬向こうは思いとどまったようだが、次に浮かんだ表情はこうだ。
 『カタナの方が上だ』と。それでけっこう、相手の斜めの振り下ろしに備えて逆に突っ込んで。

 がぎんっ。

 肉厚のブレードで交差させるように払った――次に伝わるのはあの金属の感触だ。
 マチェーテを持っていくような衝撃が伝わるも、眼前まで迫った銀色が消えた。
 へし折ったというべきか。根元から幾分離れたところで、あのカタナの忌まわしい姿が叩き斬られていた。

「…………はぁ? ど、どういうこっ」

 いきなり自分の武器がソードオフされたことに理解が及ばなかったらしい。
 ひゅんひゅん回転して飛んでいく刀身が落ちて来てやっと至ったらしいが。

「――ふっ!」

 その顔面を削ぐようにブレードを引き落とした。
 引っ張るような動きを込めて叩き込むと、ざんっ、と独特の感触がした。
 次の瞬間には脳の大部分が斬り落ちていた。ぐるっと目を向きながら、そいつは欠けた脳のまま死んだ。

「うっっあひっっっあっ……!?」
「はは、ははは……なにがどうなってんだ……!?」

 次だ。手首を返して逆手に持って切り込む。
 怯える姿の腹を斜めに切り上げた。ひっかくような一撃によろめき伏した。
 続けざまに呆然とするやつの肩口にさかさまに切っ先を突き立てた。胸まですんなり通って、びくっと嫌な震えを起こして倒れる。

「うそだ、うそだうそだうそだうそだ……! こんな、こんな馬鹿げたことがあるかよ……!」

 敵を押し倒して進めば、十人ほどの敵が残ってた。
 ゲートを超えた先、武器を手に戦うことも忘れて気を抜かれた連中だ。

「おい、次はだれが相手だ?」

 血を払いながら尋ねた。相手が一歩引く。
 ならばと進んだ。更に二歩引く。
 だらんと次の攻撃に備えてマチェーテを下ろせば、そいつらの足取りはなおのこと。

「――あひひひひっ♡ 背中向けちゃダメなんすよ~♡」

 死に近づいたわけである。メイドがその背後に立っていた。
 驚く間もなく数人まとめて首狩りだ。仕込み杖を受けてごろっと律儀に地面に着地。
 更に仕込んだ散弾が誰かを吹き飛ばし、一度に多数を失ったそいつらは――

「これでおしまい……かぁッ!」

 バリケードを踏んづけて跳躍するノルベルトの落下先になった。
 戦槌を突き出すその姿が重なれば、二人が脳天ごとぐしゃっと潰れた。
 そこへぱぱぱぱぱぱぱっと機関拳銃が襲った。巻き込まれた何人かが九ミリの衝撃に転ぶ。

「ん、もう終わった?」

 ニクが弾倉を交換しながらやってきた。撫でてやるのは後だ。

「ふう、いっぱい戦ったわね? これで最後かしら?」
「うむ、逃げた奴も殺したぞ。こいつでしまいだな」

 女王様とクラウディアも戻ってきたとなれば、残るは一人である。
 突撃銃をまだ手にした男がいた。他と比べて明らかに装備の質はいい感じだ。

「……こんなの、ありえねえ」

 そいつがこういうのだ。信じられないと。

「お前ら、お前らはなんなんだ? 俺たちはただ、あそこで傭兵らしくやってただけなんだぞ?」
「知るかよ」
「ふざけやがって……! 何が気に食わないんだ、俺たちの何が! ラーベ社に頼まれて汚い仕事をしてたことか!? それともお前らの逆鱗に触れたってのか!? なあ、おい!? 正義のヒーロー気取って俺たちを追い詰めにきたのか!? このイカれ野郎ども!?」

 何言ってるかよくわからん、マチェーテを握って近づいた。
 お気持ち表明中のそいつは流石に一歩引いた。だが逃がさない、更に迫る。

「お前のお気持ちに答えてやろうか? ただそっちの運が悪かっただけだ」
「俺たちが不運だったって? そんな理由でこんなひどい真似が――!」

 物申したい表情に向けてマチェーテを振った。
 そいつだって慌てて銃を持ち上げた――その銃身にめがけて切り上げる。
 がきっと刀身から引き裂く感触。ラーベ社の誇る製品が木製ハンドガードごと斜めに切断された。

「ここは俺たちのもんだ。あの世にどきな」

 銃としての機能を失ったそれを手で払って、次の言葉を紡ぐ首を払う。
 ざっくりとした手触りだった。一振りが終わればそいつは引いて、やがて首を抑えてよろめいた。
 最後のセリフなんて言わせるつもりはない。血でごぼごぼいいながら、そいつは仰向けにくたばった。

【LEVELUP!】

 死体に視界に浮かんだ通知が重なった。ようこそ、数多の死が織りなすレベル15へ。
 そのころには青い煙はすっかり晴れていた。
 見渡せば数えきれないほどの死体と、無残に破壊された車両がダムを飾ってるだけだった。


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ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

アルバイトで実験台

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父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

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