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広い世界の短い旅路
ブルヘッドの戦い(5) (01/17修正)
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ぶっ壊れたエグゾを捨てて誰かさんのいった『まずい』ものを探した。
都合がいい場所はすぐ見つかった、ブルヘッドの立体駐車場だ。
屋上から今なお聞こえる音を辿れば北部へ続く大通りがちょうど当てはまり。
「……ば、ばっかじゃねーーーーーーーーの……?」
最初の一言はタロン上等兵のエグゾからだった。
間延びした呆れをもたらすほどの何かがそこを闊歩してた。
「クラウディア、お前の言うまずいっていうのが今遺憾なく伝わってる」
「だからいっただろう。あんなに大きなゴーレムはフランメリアでもいないぞ」
『……ひ、ひえー……』
俺もちらっと身を乗り出す――ずずんと威圧感たっぷりの足音に思わず退いた。
「おお……ブルヘッドにあのようなものがいるとはな、なんという光景よ」
「わ~お……しかも音からしてまだいらっしゃるようっすね、あれだけじゃないみたいっすよ?」
ノルベルトとロアベアも一目見て、夢か現か疑ってるレベルだ。
オーガに肩車されたニクも「うわ……」とダウナーに引いてる。
「どうだ? すごいだろ? 悪い意味合いでだが」
ひどい知らせを持ってきてくれたダークエルフもお困りの様子だ。
まあ、無理もない。俺はもう一度だけ頭を出した。
「ああ最高だ。どうかラーベ社の商品じゃありませんようにってさっきからずっと思ってる」
『……な、なにあれ……ウォーカー、なのかな……?』
今一度その姿を確かめた。
グレーカラーの装甲で着飾る四つ足の機械が我が物顔でねり歩いてる。
『パウーク』じゃないのは確かだった。なぜならそれだけデカいからだ。
その横幅がどれだけか測れる比較対象があった、ブルヘッドを走る道路だ。
――車道が五、六本分。それだけの幅を利かせた巨体が車を踏みつぶしてる。
背はウォーカーをゆうに越し、接地面積のある数本の爪が地を踏みならす。
そして巨体の上には雑に取り付けられた人型の上半身があった。
そこらのウォーカーの半身を無理矢理つなげたようなアンバランスさは前に押し出され、前衛的な姿で優雅に散歩中だ。
「あの趣味の悪いラーベの歩く要塞はなんだ? ブルヘッド名物とかいわない?」
いまいち信じがたい光景はもういい、デュオに速攻で尋ねた。
「こっちが聞きてえよ、あんなキモいもん設計するデザイナーが壁の中にいやがったのかって関心してるぐらいだぜ。なんだよあの馬鹿が考えたようなデカブツ」
ところがこの都市を良く知ってる社長殿は全力で関係を否定してる。
知らん、と。それどころか全力で気持ち悪がってる。
「俺だってあんなデカいのが呑気に散歩してるのが信じられないぞ」
「バロール・カンパニーの社長が知らねえってことはそれだけ非常識なものがあると思えよ。つまりありゃマジモンのバケモンだ」
「それもウィルスたっぷりのな」
遠くからでも分かる巨体は地鳴りと共に進んでいた。
双眼鏡を手に距離だけでもと確かめると900mほど先だ。
人型の上半身が無機質な動きで周囲を探りつつ、市街地にひと手間加えてる。
クモ型ボディに搭載した箱形からミサイルが打ち上げられて――空高く飛んだそれが軌道を変えてビルの屋上を吹っ飛ばす。
「――よし、設置したぞ。あの大きいのを見てくれ」
『接続を確認したよ、ありがとうクラウ……って、なんだあれきっっも……』
遠目でも分かる暴れ具合はヌイスも確認したらしい。
第一声がそうなるほどに気持ち悪いのだ、あれは。
『……ば、馬鹿か……? あいつらマジで……!?』
やがてラザロにもあの姿が伝わったんだろう、絶句してた。
こういう時はあいつが頼りだ。俺は暴れ回る巨大機械をしっかり目に収める。
「相棒、何かご存じみたいだな。ブルヘッドと俺たちが無事なうちに話してくれ」
『……タラントルだ』
「タラントル?」
『ラーベ社が数十年前に作ろうとしてた大型ウォーカーだ。陸上の戦艦っていうのがコンセプトで、一説じゃ企業同士の戦争に使われるつもりだったとかなんとか、とにかく不穏な理由が付きまとってるんだ』
説明は良く伝わった、その不穏なものが今こうして実際に歩いてやがる。
デュオに「なんだそりゃ」と伺うが「知らね」というエグゾの仕草だ。
「その数十年モノのウォーカーがこうして悪趣味に歩いてやがるぞ」
『……多分だけど、あれは作りかけだ』
「作りかけだって?」
『そもそもあれは本来動けないはずなんだよ。大量の兵装にあんだけのデカさだ、機体の制御やら火器管制やら、そこらのウォーカーで使うようなOSじゃ管理しきれないんだ。だから試作途中で開発が中止されたって聞いたけど――』
相変わらずのラザロの早口に火薬の音が混じる。
下半身に対して頼りない人型ボディがどどどん、と両腕のオートキャノンを撃った。
街のどこかからロケット弾の白い筋が浮かんだ――ところが備え付けの機銃が唸る、撃墜された。
「ラザロの兄ちゃん、その絵に描いた餅が思う存分に暴れてるように見えねえか」
あまりの暴れ具合にデュオが心配するほどだ。
ラザロの声は少し悩んだようだが「ああ」と短く答えて。
『しっかり見てるさ。あんなデカいのを、まして複数の火器を並行して使いながら動かすなんて人間じゃ無理なんだ、それこそ』
「だったら人間じゃなかったら満足に動かせるって?」
『そうだよストレンジャー、あの最悪の入れ物があったってわけだよ。それも――』
ひどいタイミングでずずん、とまた別の方向からあの唸りが挟まった。
もっと西の方角だ。あいつのいう『入れ物』がもう一つ歩いてる証拠だ。
また聞こえた。北東側からもミサイルが打ち上げられた、つまり三つもいやがるんだぞ?
『それも三機もいるようだね、全部こっちに向かってる』
その上でヌイスが言うのは最悪の知らせだ。
そいつらが北で好きなだけ暴れようが勝手だが、こっちに来てるんだぞ?
「……あんなデカくて悪趣味極まりないのが三つだって!? ふざけんな!?」
さすがに我慢の限界だ、なんてもん持ってきやがるあのクソ企業。
俺たちはたぶん人生で一番悩ましい時期だと思う。
北部部隊のエグゾもストレンジャーズもお手上げなのだ。
暴走した機械どもでただでさえヤバイっていうのに、その親玉みたいなのが三つも南下してるときた。
「な、なあ、あんたらの力でどうにかなんねえの? 魔法とかさ、ハッキングとかで……」
『レンジャーの方、君に言っておくけれどもテュマー由来のウィルスというのはそう簡単なものじゃないよ。この世界の歴史が証明してるように駆除は難しいし、コントロールを奪うのも容易いことじゃない。こんな余裕のない状況なら特にそうだろうね』
『こちらフェルナーなんかでけえのきてやがる!? 無理だこれ、退くわ!』
『市民の皆様、こちらです! 我々が守りますので走って下さいフェルナアアアァァッ!』
タロン上等兵がエグゾでもどうにもなりそうにない姿に「お手上げ」ときたが、無線から続く声も相応なものだ。
そうこうするうち北に見える巨体は迫って来る。一体どうしたもんか。
「――おい! なんじゃあれ! すっげえデカいゴーレムきとんぞ!?」
「ふざけやがって! ゴーレムの親玉みてーのが向かってんぞ!」
「おい社長、どうすんだあのデカブツ!? あんなの来るとか聞いてねえぞ!」
そんなところだ、立体駐車場にフランメリア人が大急ぎで登ってきた。
『ハックソウ』がスピロスさんやプラトンさんたちを伴って合流しにきたらしい。
『……オーケー、じょ、状況をいったんまとめよう』
エグゾ部隊が突然のバケモンに「なんだこいつら」と見回す中、ラザロが言った。
『カメラの映像を見たけど、どうもラーベ社の傭兵やら私兵連中がこっちまで来てるみたいだ。無人兵器たちと交戦してるのが分からないか?』
あいつがいうにはラーベ社の連中が暴走した無人兵器を追いかけてるそうだ。
確かに北側からはしきりに銃撃が聞こえるし、誰かがあの姿にロケット弾を撃ち込むのも確認できる。
「……その方々ってあそこの勇敢な方々っすかねぇ?」
ロアベアが双眼鏡を頼りに北のどこかを見てた。
つられて真似すれば離れた通りの屋上――数百メートル先の建物に誰かがいた。
身軽な装備で固めた傭兵連中の格好だ。手には各々立派なものを握っていて。
「なんだあれ、ロケットランチャーか?」
『重火器』スキルでなんとなく分かった、遠い姿は得物を構えて敵を狙ってる。
獲物は元気なクソデカウォーカーだ、ずんずん歩くそれに一斉に発射された。
うっすらだが、放たれた弾が一瞬落ちてから上空にすっ飛んでいった。
『ジャベリンか、いいものを使ってるみたいだな』
その様子はダネル少尉もどこかで見てるんだろう。
タイミングをずらしての一斉砲撃の結果、飛び上がる弾が巨躯の頭上に落ちていく。
だが機銃が仕事をした。ばらばら撃ちまくって迎撃、上空に幾つも爆発が舞う。
「……撃ち落とされてね?」
俺の気のせいじゃなければ全てお出迎えされて撃沈だ、一応周囲に伺った。
「あのでっけえのに馴染んでるみてえだぞ、機銃でジャベリン全部落としやがった!」
「おいおい……機体の性能を遺憾なく発揮してくれて企業冥利につきるじゃねえか、ラーベ社さんよ」
タロン上等兵とデュオも目の当たりにしたんだからあれは現実なんだろう。
次第にタラントラとやらは立ち止まると、さっき砲撃してくれた連中に身構える。
背中の銃座が、ミサイルの箱が、半身の両腕からのオートキャノンが一斉発射。
双眼鏡の中で逃げ遅れごと屋上がフルリフォーム――建物の高さが二階分減った。
「たった今勇敢な方々が全滅したぞ。で、なんで向こうお抱えの連中がこっちまで出張してるんだ?」
『上からどうにかするように指示されてるんだと思う。そうしないと企業のやらかしが延々広がるだろ?』
「どうにかできてるように見えるか?」
『焼け石に水っていうのが適切だと思う』
「ああそうだな、もうラーベ社の信頼とやらは地の底かどこかだぞ」
『む、向こうも混乱してるんだよ! 事態を収束させようと必死に違いないんだ、だからこれは、その、ラーベ社にとっても最悪のアクシデントなんだ! 収拾がつかなくなってるんだ!』
「ああそうか! そのどうしようもないのがこっちに全部流れてんだぞふざけやがって!?」
『だ、だからその、向こうをアテにするのは無理だ、つまり……』
「はなからアテにしてねえよあんなの! つまり俺たちが頑張れって話か!?」
よく、とてもよくわかった、ラーベ社の奴らしくじりやがったな?
どもりながらのラザロの言葉を聞いてると「そ、それと」ともつれが続いて。
『……や、やっと分かったよ、どうしてこうなったか』
この元凶が分かったそうだ。あのご立派な四つ足の誕生理由はなんだ?
『あ、あの時、フォート・モハヴィの一件で破壊された『デザートハウンド』のAIを持ち帰ったやつがいるんだ。ほ、ホワイト・ウィークスの連中だ』
「あいつらがか?」
『そっそうだ。だってあんたら、あんだけぶち壊しただろ? どさくさに紛れて抜き取れるぐらいいっぱいだ! だ、だからそれをラーベ社が欲しがることなんて、当たり前じゃ……』
「その考えがマジならあんなの起こした原因は俺たちにも当てはまりそうだな」
『ふ、普通無人兵器をぶち壊すなんてありえないんだよ! 危険と割に合わないし、テュマーがいるならなおさらだ、それを……』
『あー、二人とも、そこまでにしてくれたまえ。今更そんなこと考えても――』
ラザロの言い分は確かにそうだ。
あんな場所でテュマーと無人兵器を次々ぶち壊すようなのは俺たちが初めてだろう。
その結果がこれか――そんな考えはまあ、ヌイスの声が仕切ってしまい。
『一機、間違いなく気道の方へ爆進中なんだけどね。こうなった以上もう我々の力でどうにかするしかないんだよ』
どうにかしろだとさ、現場にかけられて嬉しくない言葉の一つだ。
『ついでにそのエリアにはまだ逃げ遅れた民間人がいるみたいだ、彼らの救助を急がないと無人兵器の群れがプログラム通りに仕事をするだろうね』
更に助けを求める人間がいるってことだ、最悪の状況が深い層を作ってらっしゃる。
俺たちは近づく巨大なウォーカーと、まだ市民がいるはずの都市の様子を見比べた。
あの馬鹿みたいな姿とそれに伴う無人兵器どもから街を救う手立てはあるのか?
『――その件ですが我が社から実に素晴らしい提案がありますよ』
そんな時だ、ニシズミ社のやつから連絡が割り込む。
いきなりなんだ、いやこの際なんだっていい、どんな提案だ。
「エヴァックか。状況が状況だ、もったいぶらず言っちゃってくれ」
『そちらにウォーカーを配送いたしました、ニシズミ社の部隊も一緒です』
「あー、なんだって?」
『我が社の新製品ですよ。きっとあなたなら気に入るはずでしょう、どうかお役に立ててください』
ところが続く物言いは明らかに誰かをご指名してる。
その上で「頑張れ」だって? もしかして素敵な贈り物ってそういうことか?
「お役に立てて? そいつは誰かさんがウォーカーに乗って戦うところまでも含んでるのか?」
『実に、その通りでございます』
「……なんで俺なんだ」
『ウォーカーにはウォーカーです、それも実績のある人間がいるとなればもう選択肢は一つしかないでしょう?』
「そりゃまっとうな意見だな、ちょうど相手もウォーカーだ。それも特大サイズのな」
俺の耳が狂ってなければあの声はウキウキしてる。実に。
当然周りはざわめいた、ウォーカー乗って戦えだぞ?
「ははっ、良かったなイチ。またウォーカーに乗れるぜ?」
「いいなぁ、俺も乗りてえのによ」
「その贈り物で一体何と戦うのかよく見てから言ったらどうだ」
『……また乗るんだ……』
デュオはエグゾ越しの手で背中を叩いてくるし、タロン上等兵は羨ましがってる。
それどころじゃねえだろと言いたいが仕方ない、俺たちはもうなりふり構わずだ。
「もう一度確認するぞ、あんな趣味悪いのと鉄鬼で戦えってか?」
『いいえ、ただの鉄鬼ではございません。実に改良を重ねた新型機です』
「お前らが俺使ってテストしようとしてるのかただの善意なのか知らんけど、「ストレンジャーでもお断りリスト」の項目が一つ増えそうだ」
エヴァックのやつはもう完全にこっちを頼ってる、なんなら周りの連中も「こいつなら」みたいな視線だ。
ところが「お、俺も」とラザロの声が伝わって。
『お、俺もサポートするよ。い、一緒ならいけるだろ?』
珍しいことに、あいつがそんなことを言ってきたのだ。
「一緒に戦おう」なんて、あんなおどおどした小男が言うには珍しいセリフだ。
俺は近づく鉄のバケモンと状況を考えて。
「……今北と南の境目の手前あたりだ、立体駐車場あたりにいる。どれくらいでつく?」
PDAで位置を確認しながら尋ねた、もうやれることはやるべきだ。
ヒュウ、と北部部隊からエグゾ越しの口笛が伝わった。茶化してる場合か。
『数十分もあればそちらに着きます。フランメリアの皆様が道を開いてくれたおかげですね、ええ』
「そうか、派手にやってるからそいつを目印に合流してくれ」
『実に良い返事です、直ちに向かわせますのでどうか五体満足でいてくださいね』
「頼んだ。それと相棒、今のセリフはマジなんだな?」
『ま、マジだよ! それに――』
「それに?」
『お、俺も機体の改良に加わったからだよ! だ、だからその、一緒だ! 相棒!』
そこまで通信して分かった、向こうも本気だ。
それにラザロもちゃんと相棒扱いしてくれたか、じゃあ期待に答えてやらないとな。
「……てことでウォーカーで出ることになった、その前にだ」
ひとしきり連絡が終わったところで道路の方を見た。
邪魔者がいなくなったんだろう、半分人間半分蜘蛛な巨大な機械がお散歩中だ。
「そろそろ俺たちのそばを通過しそうなクソロボットはどうする? まさかこのままヴァルハラまでご自由にどうぞなんて言わないよな?」
ニシズミの支援は嬉しいが、まずあのデカブツをどうにかする必要がある。
北部の傭兵どもの横槍も効いちゃいない。快適な都市巡りを楽しんでやがる。
「あの馬鹿みたいにでっけえゴーレムがやべえってのはわしらもよーく分かったが、ありゃ攻撃してもことごとく迎え撃たれとるの」
「上から爆弾でも落としてぶっ飛ばすのが一番じゃろ」
「それができないからそうなってんだろ。それにあのアラクネみてえなゴーレム目ざといぞ、真下に対しても防御手段持ってやがる」
ドワーフの爺さんたちからの興味津々な言い分はもっともだ。
あれは無駄にデカいだけじゃない、武器が山盛りなのだ。
人間的な半身はもちろん、その死角になりえる下半身にも砲塔がついてる。
潜り込もうとすればその機関砲が薙ぎ払うっていう寸法だ、それがAIで完璧に制御されてるとなればなおさらだ。
「第二案、ダネル少尉に狙撃してもらうってのは?」
それならミスリル弾でぶち抜いてもらえ、と思ったが。
『それは可能だが、もし仕留めきれなかった場合を考えろ。周囲どころかヴァルハラ・ビルディングまで届いたらシャレにならんぞ』
「それもそうか。でも的のサイズには事欠かないだろ?」
『嫌でも当てれるが周囲の状況、お前たちの支援、射線の確保と課題は山積みだぞ』
ご本人がそういうのだ、確実性がなければかえってヤバイ。
いっそ背中に飛び乗って肉薄するか? いや、背中いっぱいに抱える兵装が働いてずたずたにされるのがオチだ。
「……要は迎撃されなきゃいいんだろ?」
ところがそんな場面で妙な提案をするやつがいた。
スピロスさんだ。その視線の先、屋上に停まる商業用のトラックがあった。
この前引っ越しで使ったような幅も奥行きもある荷台を積んだものだ。
「おいおい牛の旦那、何考えてやがるんだ?」
第三の案とやらがデュオが気になったらしいが。
「誰が牛の旦那だ。だったら撃ち落とせねえような質量をぶつけちまえって話だ」
何を言ってるんだろうこの牛の人は。
荷台を吟味するとかなりの重さと質量があることを確かめて。
「おい、こいつ動かせねえか?」
「ヌイスにハッキングさせりゃ動くだろうが、なんだってんだ?」
『一応言っておくけれども、遠隔操作は可能だよ。もしかして屋上から突っ込ませようとか考えてる?』
「まあその通りだ」
『残念だけど牛の人、向こうのセンサーは稼働した車にすぐ反応するだろうね。そうなったらその立体駐車場ごと君たちが迎え撃たれる結末さ』
「じゃあ俺たちが直接落とすってのはどうだ?」
スピロスさんの牛ボディはトラックを持ち上げようとしてる。
何か伝わったんだろう、プラトンさんも掴んでぎぎっと軽く車体が浮かぶ。
「なるほど、お前の言う通り動いてなけりゃただの鉄くずだなスピロス」
「そういうことか、じゃあただの事故だな」
「事故ならしょうがねえな、事故なら」
それどころか屈強な亜人の方々が寄り添い始めた。
何する気なんだ、さぞ重たいトラックをみんなで持ち上げかけてる。
『……あの、君たち? まさかと思うけど』
「だったら通り過ぎるタイミングで俺たちが落とせばいいだろ? 簡単な話だぜ」
そしてスピロスさんのミノタウロスボディがいい顔で言う、簡単な話ではある。
こいつをあの巨大なウォーカーに落としてやれというのだ。
いきなりのぶっとんだ発想にみんな正気を疑ってる。
「……え? マジでやんの?」
「坊主、おめーはタイミング数えてろ。おい爺さん、なんか爆発するもん詰め込んどけ」
「やるんじゃな!? よっしゃ、迫撃砲弾でも積んどけ!」
「フハハ、俺様も一仕事するとしようではないか」
四脚の化け物がずんずん迫る中、とうとう俺にすら役割を回されてしまった。
気づけばドワーフの爺たちが爆薬という爆薬を詰め込み、更にトラックがずんっ……と持ち上がり。
「正気かよこのミュータントども!?」
「いややるしかないだろ、このまま進撃のウォーカーやらせるよりマシだ」
「あんなのが近づいてる時点で打つ手なしだ、今できることはするしかない」
北部部隊のエグゾたちも倣ったようだ、タロン上等兵も仕方なく車体を支えていく。
「あーもうこれマジでやるやつだ。何言っても無駄だぞこいつら」
『ほ、ほんとに落とすつもりだね……』
「まあ仕方ねえさ、社長が許可するぜ、持ち主には賠償しとくからやっちまえ!」
こうしてあっという間に『トラック投下』が進んでしまった。
社長の許可も下りればあっという間だ、配送トラックが死をお届けしようとしてる。
『正気かいや正気じゃないね君たち!? 死ぬつもりかい!?』
「俺たちが死ぬ前に向こうを先に死なせるだけだ。諦めろヌイス」
さすがのヌイスも抗議してきたがもう無理だ、とめられない。
「坊主! 来やがったぞ! タイミングはオメー次第だ!」
そうこうしてるとあの足音が更に近づいた。
こっそり眺めると、外敵おらずで快適そうに道路を陣取る巨体があった。
グレーのボディはヴァルハラの方角を見据えたまま道を踏みならしてる。
「先に謝っとくぞ。外してここが吹っ飛んでもどうか恨まないでくれ、ごめん」
『……縁起でもないこと言っちゃだめだよ!?』
俺も覚悟を決めた。振り向けばやる気満々の亜人とエグゾがしっかり抱えてる。
爆薬たっぷりのトラック、荷台の広告は『弾ける美味しさ!』とコーラの宣伝中だ。
双眼鏡の測距機能には250m、しばらくしないうちにもう半分になる。
「あの感じからして数十秒足らずだぜ、いいな?」
「一回きりだな。お前ら、失敗したら速攻で逃げるぞ」
「そうならねえように頑張ってくれたまえ、ストレンジャー上等兵」
「この世界で生きてから無茶ぶりばっかさせられてる気がする」
デュオと一緒に大体の予測もした、滞りなく捗ってくれればあっという間だ。
だがもし向こうがその気になったら? 全兵装がこっちを向く、んで全員死ぬ。
そうなってしまったらとにかく逃げる――なんともひどい作戦だが。
ずずんっ。
その時だ、あの足が止まった。
停止しただって? まさかの行動に思わず目を疑った。
「……デュオ、なんか止まってないか?」
「止まってやがるな。いや、こっちに気づいたわけじゃなさそうだぜ?」
後ろに控える連中に合図を送った、何かおかしい。
しかし変化もすぐだった。すぐにそいつは人間さながらの半身であたりを見回し。
――ずずんっ!
いや、また動き出した。それも今度はずいぶんと早いペースだ。
まるで夏場の害虫を思わせるような不快な動きで道路を進んでいく……まずいぞ。
『いちクン! 早くなってるよね、あれ……!? ていうか気持ち悪い……』
「おいおいおいおい元気になってんぞ!? しかも気持ち悪い!?」
『ヌイスだ! 恐らくまたウィルスが馴染んだんだろうさ、また強くなったってことだ! そんな馬鹿な真似はやめて諦めた方がいい!』
ヌイスの説明で良く分かる、ウィルスともっと仲良くなったんだろう。
想定以上のスピードで機体が横切ろうとしている。間もなく立体駐車場を超えるぞ。
どうする、もうぶちかますか? いや―ー
「……合図するからそのタイミングを狙え、頼んだぞ!」
「おっおい坊主!? どういうこった!?」
「また何か考えがあるんだろうさスピロス! 行かせてやれ!」
決めた、自動拳銃を抜いて走り出す。
後を頼んで下の階へ降りた。タラントラのスケールがここを通過する様子があった。
『なに考えてるのかな……!?』
「最善の方法ってやつだ! こんな風にな!」
実にいいタイミングだった。ウォーカーの『一歩』が間もなくだ。
通り過ぎようとするその身体、前を見据える上半身めがけて。
「おい! それ以上ブルヘッドにキモいデザインを振りまくなクソ野郎!」
『なっなっ何してるのいちクンッ!? そんなことしたら……!?』
撃った。弾倉一本分をぶち込む。
カンカンという装甲を叩く音に、そいつはご丁重なことに止まってくれた。
ぎぎっと不愉快そうな感じでだが。もれなくその兵装も水平に向いてくる。
『危険因子を感知、こんにちは市民、あの世へ行きましょう』
不吉な電子音声さえも向けられた。
上半身がぐるりと向かえば、丸みを帯びた頭部からセンサーが青く誰かを見据え。
「――もちろん、でもお前が先だクソ野郎」
弾切れした得物に変わって中指をおったててやった、その直後。
「よっしゃあああああああああああああ! お届けだオラァァァッ!」
「そういうことか馬鹿野郎が! いけいけええええええええええ!」
「皆のもの、押せ! 奴の頭上に落としてやれ!」
「止まるとは愚かな奴め! 喰らええええええい!」
「こ、こいつら正気かようおおおおおおおおおおおおおッ!?」
頭上でやかしまさが唸る!
タロン上等兵の悲鳴混じりの足音が賑やかさを立ててごごごごっと走り出す。
――そしてトラックが落ちて来た。
不幸にも上空から車が落ちてくるなんて誰が予想するだろうか。
人工知能の頭脳をもっても想定できる事態だと思うか? つまりそういうことだ。
人力で運ばれた質と重みが目の前のそいつに大きな影を落として。
『殲滅します、全火器稼働、さようななッッッッ!?』
……空からの贈り物にぶっ潰された。
いきなりの落下物はストレンジャーごときに構っていたやつに降りかかった。
突然の車体に上半身がひしゃげる。遅れて荷台の重量が蜘蛛の身体で潰れて。
「さようならはこっちこそだ、じゃあな」
全力全霊で伏せた。
*――zzZZBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAM!*
すぐに頭上を爆発の感触が通り過ぎた。
熱々の熱と破片が破壊的な音を伴って働いてくれたようだ。
まだ余波の残る煙っぽい中、俺は立ち上がってみせた。
「……ワーオ」
命を張った甲斐があったと思う、巨大なウォーカーが鉄くずに様変わりだ。
トラックの重みと爆発に負けたそれが、四つの足を崩してだらりと接地してた。
『……ほ、ほんとにやっちゃったね……』
「やればできるもんだな。おい、一機撃墜だおめでとう!」
「よっしゃあああああああああああああ! ざまあみろ! やったぞ!」
「やったな! えらくでかい徳を積んじまったぜ!」
「良し! 巨大なゴーレムなど恐れるに足らずだ!」
「フーッハッハッハ! どうだ、恐れ入ったか! この手に限るなァ!」
「……マジかよ、やっちまったよ俺たち」
真上ではみんなが戦意マシマシのまま喜び合ってる、大成功ってやつだ。
「ご主人、無茶しないで」
「お~、お見事っすね皆さま。イチ様も大胆っすねえ」
「ははっ、やっぱおもしれえなこの世界。俺にとってのすべてだぜ」
すぐにニクとロアベアもやってきた、デュオもエグゾ越しにうきうきしてる。
へたり込んでやりたいがそうもいかない、残るタラントラは二機だ。
「これでウォーカーの弱点に頭上からのトラックが追加されたな」
「ついでに街のルールに「頭上注意」も足されたな、ひでえ事故だぜまったく」
『ウォーカーがぐちゃぐちゃだよ……』
デュオとハイタッチした、ご機嫌な外骨格の手のひらが痛い。
『…………あのねえ君たち? 本当に何考えてるんだい? 物理的すぎないかい? 馬鹿なの?』
『ハハ、やっちまったなあいつら。こっちでも派手な爆発が見えたぜ』
『うぉ……ウォーカーをそんな手段で倒すかよ……』
ヌイスとエルドリーチとラザロからも三者三様、芯にあるのは「マジでやるか」だ。
不法投棄犯人たちはデカブツ撃破に喜んで降りてきたらしい、これで次に移れる。
「ご覧のとおりデカいガラクタができたな。これでこのあたりも安全になったか?」
拳銃の弾倉交換ついでに確かめた。
これでこの辺りは脅威はいない、逃げ遅れた奴らとやらも移動できるはず。
「ああ、こんだけ派手にやったんだからな。そうなりゃ愛すべき市民の皆様をお助けに参るだけだな?」
「こちらストレンジャー、お望み通り市民の救助に向かうぞ。ヴァルハラに向かわせるから誰か守ってやってくれ」
「手分けして効率よくだ。ヤバそうな場所にはエグゾども、小回りが必要な場所は他の連中で地道にやってくぞ」
デュオの言う通りだ、分散して急いでかき集めた方がいい。
俺たちは駐車場の降りてばらけた、気づけばストレンジャーズの面々が集っていき。
「――おい、何しやがったあんたら!? あのバケモンぶっ壊しやがったな!?」
「くそっ、とんでもねえことしやがって! でもひとまず安全だ、感謝するぞ!」
その道すがら街のセキュリティチームが続々と現れた。
バンやら何やら総動員で駆けつけてきてくれたらしい、市民の扱いならこいつらの方が手慣れてるはずだ。
「ここらの安全は確保したぞ、さっさと集めてヴァルハラに向かわせろ」
「了解だストレンジャー、やっぱあんたを頼って正解だったな!」
「それは他のやつにも言っとけ、急げ」
慌ただしいが、そいつらに一声頼んで北へ向かった。
通りに見えるあの無駄にデカい鉄くずはさぞ目立つんだろうな。
あれを目印にざわめく人々が恐る恐るな様子で建物から出てきていた。
どいつもこいつも信じがたそうにタラントラを見上げてたが、すぐ自信を取り戻して逃げて行った。
◇
都合がいい場所はすぐ見つかった、ブルヘッドの立体駐車場だ。
屋上から今なお聞こえる音を辿れば北部へ続く大通りがちょうど当てはまり。
「……ば、ばっかじゃねーーーーーーーーの……?」
最初の一言はタロン上等兵のエグゾからだった。
間延びした呆れをもたらすほどの何かがそこを闊歩してた。
「クラウディア、お前の言うまずいっていうのが今遺憾なく伝わってる」
「だからいっただろう。あんなに大きなゴーレムはフランメリアでもいないぞ」
『……ひ、ひえー……』
俺もちらっと身を乗り出す――ずずんと威圧感たっぷりの足音に思わず退いた。
「おお……ブルヘッドにあのようなものがいるとはな、なんという光景よ」
「わ~お……しかも音からしてまだいらっしゃるようっすね、あれだけじゃないみたいっすよ?」
ノルベルトとロアベアも一目見て、夢か現か疑ってるレベルだ。
オーガに肩車されたニクも「うわ……」とダウナーに引いてる。
「どうだ? すごいだろ? 悪い意味合いでだが」
ひどい知らせを持ってきてくれたダークエルフもお困りの様子だ。
まあ、無理もない。俺はもう一度だけ頭を出した。
「ああ最高だ。どうかラーベ社の商品じゃありませんようにってさっきからずっと思ってる」
『……な、なにあれ……ウォーカー、なのかな……?』
今一度その姿を確かめた。
グレーカラーの装甲で着飾る四つ足の機械が我が物顔でねり歩いてる。
『パウーク』じゃないのは確かだった。なぜならそれだけデカいからだ。
その横幅がどれだけか測れる比較対象があった、ブルヘッドを走る道路だ。
――車道が五、六本分。それだけの幅を利かせた巨体が車を踏みつぶしてる。
背はウォーカーをゆうに越し、接地面積のある数本の爪が地を踏みならす。
そして巨体の上には雑に取り付けられた人型の上半身があった。
そこらのウォーカーの半身を無理矢理つなげたようなアンバランスさは前に押し出され、前衛的な姿で優雅に散歩中だ。
「あの趣味の悪いラーベの歩く要塞はなんだ? ブルヘッド名物とかいわない?」
いまいち信じがたい光景はもういい、デュオに速攻で尋ねた。
「こっちが聞きてえよ、あんなキモいもん設計するデザイナーが壁の中にいやがったのかって関心してるぐらいだぜ。なんだよあの馬鹿が考えたようなデカブツ」
ところがこの都市を良く知ってる社長殿は全力で関係を否定してる。
知らん、と。それどころか全力で気持ち悪がってる。
「俺だってあんなデカいのが呑気に散歩してるのが信じられないぞ」
「バロール・カンパニーの社長が知らねえってことはそれだけ非常識なものがあると思えよ。つまりありゃマジモンのバケモンだ」
「それもウィルスたっぷりのな」
遠くからでも分かる巨体は地鳴りと共に進んでいた。
双眼鏡を手に距離だけでもと確かめると900mほど先だ。
人型の上半身が無機質な動きで周囲を探りつつ、市街地にひと手間加えてる。
クモ型ボディに搭載した箱形からミサイルが打ち上げられて――空高く飛んだそれが軌道を変えてビルの屋上を吹っ飛ばす。
「――よし、設置したぞ。あの大きいのを見てくれ」
『接続を確認したよ、ありがとうクラウ……って、なんだあれきっっも……』
遠目でも分かる暴れ具合はヌイスも確認したらしい。
第一声がそうなるほどに気持ち悪いのだ、あれは。
『……ば、馬鹿か……? あいつらマジで……!?』
やがてラザロにもあの姿が伝わったんだろう、絶句してた。
こういう時はあいつが頼りだ。俺は暴れ回る巨大機械をしっかり目に収める。
「相棒、何かご存じみたいだな。ブルヘッドと俺たちが無事なうちに話してくれ」
『……タラントルだ』
「タラントル?」
『ラーベ社が数十年前に作ろうとしてた大型ウォーカーだ。陸上の戦艦っていうのがコンセプトで、一説じゃ企業同士の戦争に使われるつもりだったとかなんとか、とにかく不穏な理由が付きまとってるんだ』
説明は良く伝わった、その不穏なものが今こうして実際に歩いてやがる。
デュオに「なんだそりゃ」と伺うが「知らね」というエグゾの仕草だ。
「その数十年モノのウォーカーがこうして悪趣味に歩いてやがるぞ」
『……多分だけど、あれは作りかけだ』
「作りかけだって?」
『そもそもあれは本来動けないはずなんだよ。大量の兵装にあんだけのデカさだ、機体の制御やら火器管制やら、そこらのウォーカーで使うようなOSじゃ管理しきれないんだ。だから試作途中で開発が中止されたって聞いたけど――』
相変わらずのラザロの早口に火薬の音が混じる。
下半身に対して頼りない人型ボディがどどどん、と両腕のオートキャノンを撃った。
街のどこかからロケット弾の白い筋が浮かんだ――ところが備え付けの機銃が唸る、撃墜された。
「ラザロの兄ちゃん、その絵に描いた餅が思う存分に暴れてるように見えねえか」
あまりの暴れ具合にデュオが心配するほどだ。
ラザロの声は少し悩んだようだが「ああ」と短く答えて。
『しっかり見てるさ。あんなデカいのを、まして複数の火器を並行して使いながら動かすなんて人間じゃ無理なんだ、それこそ』
「だったら人間じゃなかったら満足に動かせるって?」
『そうだよストレンジャー、あの最悪の入れ物があったってわけだよ。それも――』
ひどいタイミングでずずん、とまた別の方向からあの唸りが挟まった。
もっと西の方角だ。あいつのいう『入れ物』がもう一つ歩いてる証拠だ。
また聞こえた。北東側からもミサイルが打ち上げられた、つまり三つもいやがるんだぞ?
『それも三機もいるようだね、全部こっちに向かってる』
その上でヌイスが言うのは最悪の知らせだ。
そいつらが北で好きなだけ暴れようが勝手だが、こっちに来てるんだぞ?
「……あんなデカくて悪趣味極まりないのが三つだって!? ふざけんな!?」
さすがに我慢の限界だ、なんてもん持ってきやがるあのクソ企業。
俺たちはたぶん人生で一番悩ましい時期だと思う。
北部部隊のエグゾもストレンジャーズもお手上げなのだ。
暴走した機械どもでただでさえヤバイっていうのに、その親玉みたいなのが三つも南下してるときた。
「な、なあ、あんたらの力でどうにかなんねえの? 魔法とかさ、ハッキングとかで……」
『レンジャーの方、君に言っておくけれどもテュマー由来のウィルスというのはそう簡単なものじゃないよ。この世界の歴史が証明してるように駆除は難しいし、コントロールを奪うのも容易いことじゃない。こんな余裕のない状況なら特にそうだろうね』
『こちらフェルナーなんかでけえのきてやがる!? 無理だこれ、退くわ!』
『市民の皆様、こちらです! 我々が守りますので走って下さいフェルナアアアァァッ!』
タロン上等兵がエグゾでもどうにもなりそうにない姿に「お手上げ」ときたが、無線から続く声も相応なものだ。
そうこうするうち北に見える巨体は迫って来る。一体どうしたもんか。
「――おい! なんじゃあれ! すっげえデカいゴーレムきとんぞ!?」
「ふざけやがって! ゴーレムの親玉みてーのが向かってんぞ!」
「おい社長、どうすんだあのデカブツ!? あんなの来るとか聞いてねえぞ!」
そんなところだ、立体駐車場にフランメリア人が大急ぎで登ってきた。
『ハックソウ』がスピロスさんやプラトンさんたちを伴って合流しにきたらしい。
『……オーケー、じょ、状況をいったんまとめよう』
エグゾ部隊が突然のバケモンに「なんだこいつら」と見回す中、ラザロが言った。
『カメラの映像を見たけど、どうもラーベ社の傭兵やら私兵連中がこっちまで来てるみたいだ。無人兵器たちと交戦してるのが分からないか?』
あいつがいうにはラーベ社の連中が暴走した無人兵器を追いかけてるそうだ。
確かに北側からはしきりに銃撃が聞こえるし、誰かがあの姿にロケット弾を撃ち込むのも確認できる。
「……その方々ってあそこの勇敢な方々っすかねぇ?」
ロアベアが双眼鏡を頼りに北のどこかを見てた。
つられて真似すれば離れた通りの屋上――数百メートル先の建物に誰かがいた。
身軽な装備で固めた傭兵連中の格好だ。手には各々立派なものを握っていて。
「なんだあれ、ロケットランチャーか?」
『重火器』スキルでなんとなく分かった、遠い姿は得物を構えて敵を狙ってる。
獲物は元気なクソデカウォーカーだ、ずんずん歩くそれに一斉に発射された。
うっすらだが、放たれた弾が一瞬落ちてから上空にすっ飛んでいった。
『ジャベリンか、いいものを使ってるみたいだな』
その様子はダネル少尉もどこかで見てるんだろう。
タイミングをずらしての一斉砲撃の結果、飛び上がる弾が巨躯の頭上に落ちていく。
だが機銃が仕事をした。ばらばら撃ちまくって迎撃、上空に幾つも爆発が舞う。
「……撃ち落とされてね?」
俺の気のせいじゃなければ全てお出迎えされて撃沈だ、一応周囲に伺った。
「あのでっけえのに馴染んでるみてえだぞ、機銃でジャベリン全部落としやがった!」
「おいおい……機体の性能を遺憾なく発揮してくれて企業冥利につきるじゃねえか、ラーベ社さんよ」
タロン上等兵とデュオも目の当たりにしたんだからあれは現実なんだろう。
次第にタラントラとやらは立ち止まると、さっき砲撃してくれた連中に身構える。
背中の銃座が、ミサイルの箱が、半身の両腕からのオートキャノンが一斉発射。
双眼鏡の中で逃げ遅れごと屋上がフルリフォーム――建物の高さが二階分減った。
「たった今勇敢な方々が全滅したぞ。で、なんで向こうお抱えの連中がこっちまで出張してるんだ?」
『上からどうにかするように指示されてるんだと思う。そうしないと企業のやらかしが延々広がるだろ?』
「どうにかできてるように見えるか?」
『焼け石に水っていうのが適切だと思う』
「ああそうだな、もうラーベ社の信頼とやらは地の底かどこかだぞ」
『む、向こうも混乱してるんだよ! 事態を収束させようと必死に違いないんだ、だからこれは、その、ラーベ社にとっても最悪のアクシデントなんだ! 収拾がつかなくなってるんだ!』
「ああそうか! そのどうしようもないのがこっちに全部流れてんだぞふざけやがって!?」
『だ、だからその、向こうをアテにするのは無理だ、つまり……』
「はなからアテにしてねえよあんなの! つまり俺たちが頑張れって話か!?」
よく、とてもよくわかった、ラーベ社の奴らしくじりやがったな?
どもりながらのラザロの言葉を聞いてると「そ、それと」ともつれが続いて。
『……や、やっと分かったよ、どうしてこうなったか』
この元凶が分かったそうだ。あのご立派な四つ足の誕生理由はなんだ?
『あ、あの時、フォート・モハヴィの一件で破壊された『デザートハウンド』のAIを持ち帰ったやつがいるんだ。ほ、ホワイト・ウィークスの連中だ』
「あいつらがか?」
『そっそうだ。だってあんたら、あんだけぶち壊しただろ? どさくさに紛れて抜き取れるぐらいいっぱいだ! だ、だからそれをラーベ社が欲しがることなんて、当たり前じゃ……』
「その考えがマジならあんなの起こした原因は俺たちにも当てはまりそうだな」
『ふ、普通無人兵器をぶち壊すなんてありえないんだよ! 危険と割に合わないし、テュマーがいるならなおさらだ、それを……』
『あー、二人とも、そこまでにしてくれたまえ。今更そんなこと考えても――』
ラザロの言い分は確かにそうだ。
あんな場所でテュマーと無人兵器を次々ぶち壊すようなのは俺たちが初めてだろう。
その結果がこれか――そんな考えはまあ、ヌイスの声が仕切ってしまい。
『一機、間違いなく気道の方へ爆進中なんだけどね。こうなった以上もう我々の力でどうにかするしかないんだよ』
どうにかしろだとさ、現場にかけられて嬉しくない言葉の一つだ。
『ついでにそのエリアにはまだ逃げ遅れた民間人がいるみたいだ、彼らの救助を急がないと無人兵器の群れがプログラム通りに仕事をするだろうね』
更に助けを求める人間がいるってことだ、最悪の状況が深い層を作ってらっしゃる。
俺たちは近づく巨大なウォーカーと、まだ市民がいるはずの都市の様子を見比べた。
あの馬鹿みたいな姿とそれに伴う無人兵器どもから街を救う手立てはあるのか?
『――その件ですが我が社から実に素晴らしい提案がありますよ』
そんな時だ、ニシズミ社のやつから連絡が割り込む。
いきなりなんだ、いやこの際なんだっていい、どんな提案だ。
「エヴァックか。状況が状況だ、もったいぶらず言っちゃってくれ」
『そちらにウォーカーを配送いたしました、ニシズミ社の部隊も一緒です』
「あー、なんだって?」
『我が社の新製品ですよ。きっとあなたなら気に入るはずでしょう、どうかお役に立ててください』
ところが続く物言いは明らかに誰かをご指名してる。
その上で「頑張れ」だって? もしかして素敵な贈り物ってそういうことか?
「お役に立てて? そいつは誰かさんがウォーカーに乗って戦うところまでも含んでるのか?」
『実に、その通りでございます』
「……なんで俺なんだ」
『ウォーカーにはウォーカーです、それも実績のある人間がいるとなればもう選択肢は一つしかないでしょう?』
「そりゃまっとうな意見だな、ちょうど相手もウォーカーだ。それも特大サイズのな」
俺の耳が狂ってなければあの声はウキウキしてる。実に。
当然周りはざわめいた、ウォーカー乗って戦えだぞ?
「ははっ、良かったなイチ。またウォーカーに乗れるぜ?」
「いいなぁ、俺も乗りてえのによ」
「その贈り物で一体何と戦うのかよく見てから言ったらどうだ」
『……また乗るんだ……』
デュオはエグゾ越しの手で背中を叩いてくるし、タロン上等兵は羨ましがってる。
それどころじゃねえだろと言いたいが仕方ない、俺たちはもうなりふり構わずだ。
「もう一度確認するぞ、あんな趣味悪いのと鉄鬼で戦えってか?」
『いいえ、ただの鉄鬼ではございません。実に改良を重ねた新型機です』
「お前らが俺使ってテストしようとしてるのかただの善意なのか知らんけど、「ストレンジャーでもお断りリスト」の項目が一つ増えそうだ」
エヴァックのやつはもう完全にこっちを頼ってる、なんなら周りの連中も「こいつなら」みたいな視線だ。
ところが「お、俺も」とラザロの声が伝わって。
『お、俺もサポートするよ。い、一緒ならいけるだろ?』
珍しいことに、あいつがそんなことを言ってきたのだ。
「一緒に戦おう」なんて、あんなおどおどした小男が言うには珍しいセリフだ。
俺は近づく鉄のバケモンと状況を考えて。
「……今北と南の境目の手前あたりだ、立体駐車場あたりにいる。どれくらいでつく?」
PDAで位置を確認しながら尋ねた、もうやれることはやるべきだ。
ヒュウ、と北部部隊からエグゾ越しの口笛が伝わった。茶化してる場合か。
『数十分もあればそちらに着きます。フランメリアの皆様が道を開いてくれたおかげですね、ええ』
「そうか、派手にやってるからそいつを目印に合流してくれ」
『実に良い返事です、直ちに向かわせますのでどうか五体満足でいてくださいね』
「頼んだ。それと相棒、今のセリフはマジなんだな?」
『ま、マジだよ! それに――』
「それに?」
『お、俺も機体の改良に加わったからだよ! だ、だからその、一緒だ! 相棒!』
そこまで通信して分かった、向こうも本気だ。
それにラザロもちゃんと相棒扱いしてくれたか、じゃあ期待に答えてやらないとな。
「……てことでウォーカーで出ることになった、その前にだ」
ひとしきり連絡が終わったところで道路の方を見た。
邪魔者がいなくなったんだろう、半分人間半分蜘蛛な巨大な機械がお散歩中だ。
「そろそろ俺たちのそばを通過しそうなクソロボットはどうする? まさかこのままヴァルハラまでご自由にどうぞなんて言わないよな?」
ニシズミの支援は嬉しいが、まずあのデカブツをどうにかする必要がある。
北部の傭兵どもの横槍も効いちゃいない。快適な都市巡りを楽しんでやがる。
「あの馬鹿みたいにでっけえゴーレムがやべえってのはわしらもよーく分かったが、ありゃ攻撃してもことごとく迎え撃たれとるの」
「上から爆弾でも落としてぶっ飛ばすのが一番じゃろ」
「それができないからそうなってんだろ。それにあのアラクネみてえなゴーレム目ざといぞ、真下に対しても防御手段持ってやがる」
ドワーフの爺さんたちからの興味津々な言い分はもっともだ。
あれは無駄にデカいだけじゃない、武器が山盛りなのだ。
人間的な半身はもちろん、その死角になりえる下半身にも砲塔がついてる。
潜り込もうとすればその機関砲が薙ぎ払うっていう寸法だ、それがAIで完璧に制御されてるとなればなおさらだ。
「第二案、ダネル少尉に狙撃してもらうってのは?」
それならミスリル弾でぶち抜いてもらえ、と思ったが。
『それは可能だが、もし仕留めきれなかった場合を考えろ。周囲どころかヴァルハラ・ビルディングまで届いたらシャレにならんぞ』
「それもそうか。でも的のサイズには事欠かないだろ?」
『嫌でも当てれるが周囲の状況、お前たちの支援、射線の確保と課題は山積みだぞ』
ご本人がそういうのだ、確実性がなければかえってヤバイ。
いっそ背中に飛び乗って肉薄するか? いや、背中いっぱいに抱える兵装が働いてずたずたにされるのがオチだ。
「……要は迎撃されなきゃいいんだろ?」
ところがそんな場面で妙な提案をするやつがいた。
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この前引っ越しで使ったような幅も奥行きもある荷台を積んだものだ。
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いきなりのぶっとんだ発想にみんな正気を疑ってる。
「……え? マジでやんの?」
「坊主、おめーはタイミング数えてろ。おい爺さん、なんか爆発するもん詰め込んどけ」
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「フハハ、俺様も一仕事するとしようではないか」
四脚の化け物がずんずん迫る中、とうとう俺にすら役割を回されてしまった。
気づけばドワーフの爺たちが爆薬という爆薬を詰め込み、更にトラックがずんっ……と持ち上がり。
「正気かよこのミュータントども!?」
「いややるしかないだろ、このまま進撃のウォーカーやらせるよりマシだ」
「あんなのが近づいてる時点で打つ手なしだ、今できることはするしかない」
北部部隊のエグゾたちも倣ったようだ、タロン上等兵も仕方なく車体を支えていく。
「あーもうこれマジでやるやつだ。何言っても無駄だぞこいつら」
『ほ、ほんとに落とすつもりだね……』
「まあ仕方ねえさ、社長が許可するぜ、持ち主には賠償しとくからやっちまえ!」
こうしてあっという間に『トラック投下』が進んでしまった。
社長の許可も下りればあっという間だ、配送トラックが死をお届けしようとしてる。
『正気かいや正気じゃないね君たち!? 死ぬつもりかい!?』
「俺たちが死ぬ前に向こうを先に死なせるだけだ。諦めろヌイス」
さすがのヌイスも抗議してきたがもう無理だ、とめられない。
「坊主! 来やがったぞ! タイミングはオメー次第だ!」
そうこうしてるとあの足音が更に近づいた。
こっそり眺めると、外敵おらずで快適そうに道路を陣取る巨体があった。
グレーのボディはヴァルハラの方角を見据えたまま道を踏みならしてる。
「先に謝っとくぞ。外してここが吹っ飛んでもどうか恨まないでくれ、ごめん」
『……縁起でもないこと言っちゃだめだよ!?』
俺も覚悟を決めた。振り向けばやる気満々の亜人とエグゾがしっかり抱えてる。
爆薬たっぷりのトラック、荷台の広告は『弾ける美味しさ!』とコーラの宣伝中だ。
双眼鏡の測距機能には250m、しばらくしないうちにもう半分になる。
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ヌイスの説明で良く分かる、ウィルスともっと仲良くなったんだろう。
想定以上のスピードで機体が横切ろうとしている。間もなく立体駐車場を超えるぞ。
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「……合図するからそのタイミングを狙え、頼んだぞ!」
「おっおい坊主!? どういうこった!?」
「また何か考えがあるんだろうさスピロス! 行かせてやれ!」
決めた、自動拳銃を抜いて走り出す。
後を頼んで下の階へ降りた。タラントラのスケールがここを通過する様子があった。
『なに考えてるのかな……!?』
「最善の方法ってやつだ! こんな風にな!」
実にいいタイミングだった。ウォーカーの『一歩』が間もなくだ。
通り過ぎようとするその身体、前を見据える上半身めがけて。
「おい! それ以上ブルヘッドにキモいデザインを振りまくなクソ野郎!」
『なっなっ何してるのいちクンッ!? そんなことしたら……!?』
撃った。弾倉一本分をぶち込む。
カンカンという装甲を叩く音に、そいつはご丁重なことに止まってくれた。
ぎぎっと不愉快そうな感じでだが。もれなくその兵装も水平に向いてくる。
『危険因子を感知、こんにちは市民、あの世へ行きましょう』
不吉な電子音声さえも向けられた。
上半身がぐるりと向かえば、丸みを帯びた頭部からセンサーが青く誰かを見据え。
「――もちろん、でもお前が先だクソ野郎」
弾切れした得物に変わって中指をおったててやった、その直後。
「よっしゃあああああああああああああ! お届けだオラァァァッ!」
「そういうことか馬鹿野郎が! いけいけええええええええええ!」
「皆のもの、押せ! 奴の頭上に落としてやれ!」
「止まるとは愚かな奴め! 喰らええええええい!」
「こ、こいつら正気かようおおおおおおおおおおおおおッ!?」
頭上でやかしまさが唸る!
タロン上等兵の悲鳴混じりの足音が賑やかさを立ててごごごごっと走り出す。
――そしてトラックが落ちて来た。
不幸にも上空から車が落ちてくるなんて誰が予想するだろうか。
人工知能の頭脳をもっても想定できる事態だと思うか? つまりそういうことだ。
人力で運ばれた質と重みが目の前のそいつに大きな影を落として。
『殲滅します、全火器稼働、さようななッッッッ!?』
……空からの贈り物にぶっ潰された。
いきなりの落下物はストレンジャーごときに構っていたやつに降りかかった。
突然の車体に上半身がひしゃげる。遅れて荷台の重量が蜘蛛の身体で潰れて。
「さようならはこっちこそだ、じゃあな」
全力全霊で伏せた。
*――zzZZBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAM!*
すぐに頭上を爆発の感触が通り過ぎた。
熱々の熱と破片が破壊的な音を伴って働いてくれたようだ。
まだ余波の残る煙っぽい中、俺は立ち上がってみせた。
「……ワーオ」
命を張った甲斐があったと思う、巨大なウォーカーが鉄くずに様変わりだ。
トラックの重みと爆発に負けたそれが、四つの足を崩してだらりと接地してた。
『……ほ、ほんとにやっちゃったね……』
「やればできるもんだな。おい、一機撃墜だおめでとう!」
「よっしゃあああああああああああああ! ざまあみろ! やったぞ!」
「やったな! えらくでかい徳を積んじまったぜ!」
「良し! 巨大なゴーレムなど恐れるに足らずだ!」
「フーッハッハッハ! どうだ、恐れ入ったか! この手に限るなァ!」
「……マジかよ、やっちまったよ俺たち」
真上ではみんなが戦意マシマシのまま喜び合ってる、大成功ってやつだ。
「ご主人、無茶しないで」
「お~、お見事っすね皆さま。イチ様も大胆っすねえ」
「ははっ、やっぱおもしれえなこの世界。俺にとってのすべてだぜ」
すぐにニクとロアベアもやってきた、デュオもエグゾ越しにうきうきしてる。
へたり込んでやりたいがそうもいかない、残るタラントラは二機だ。
「これでウォーカーの弱点に頭上からのトラックが追加されたな」
「ついでに街のルールに「頭上注意」も足されたな、ひでえ事故だぜまったく」
『ウォーカーがぐちゃぐちゃだよ……』
デュオとハイタッチした、ご機嫌な外骨格の手のひらが痛い。
『…………あのねえ君たち? 本当に何考えてるんだい? 物理的すぎないかい? 馬鹿なの?』
『ハハ、やっちまったなあいつら。こっちでも派手な爆発が見えたぜ』
『うぉ……ウォーカーをそんな手段で倒すかよ……』
ヌイスとエルドリーチとラザロからも三者三様、芯にあるのは「マジでやるか」だ。
不法投棄犯人たちはデカブツ撃破に喜んで降りてきたらしい、これで次に移れる。
「ご覧のとおりデカいガラクタができたな。これでこのあたりも安全になったか?」
拳銃の弾倉交換ついでに確かめた。
これでこの辺りは脅威はいない、逃げ遅れた奴らとやらも移動できるはず。
「ああ、こんだけ派手にやったんだからな。そうなりゃ愛すべき市民の皆様をお助けに参るだけだな?」
「こちらストレンジャー、お望み通り市民の救助に向かうぞ。ヴァルハラに向かわせるから誰か守ってやってくれ」
「手分けして効率よくだ。ヤバそうな場所にはエグゾども、小回りが必要な場所は他の連中で地道にやってくぞ」
デュオの言う通りだ、分散して急いでかき集めた方がいい。
俺たちは駐車場の降りてばらけた、気づけばストレンジャーズの面々が集っていき。
「――おい、何しやがったあんたら!? あのバケモンぶっ壊しやがったな!?」
「くそっ、とんでもねえことしやがって! でもひとまず安全だ、感謝するぞ!」
その道すがら街のセキュリティチームが続々と現れた。
バンやら何やら総動員で駆けつけてきてくれたらしい、市民の扱いならこいつらの方が手慣れてるはずだ。
「ここらの安全は確保したぞ、さっさと集めてヴァルハラに向かわせろ」
「了解だストレンジャー、やっぱあんたを頼って正解だったな!」
「それは他のやつにも言っとけ、急げ」
慌ただしいが、そいつらに一声頼んで北へ向かった。
通りに見えるあの無駄にデカい鉄くずはさぞ目立つんだろうな。
あれを目印にざわめく人々が恐る恐るな様子で建物から出てきていた。
どいつもこいつも信じがたそうにタラントラを見上げてたが、すぐ自信を取り戻して逃げて行った。
◇
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最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
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