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広い世界の短い旅路
ブルヘッドの一歩手前
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今まで通った旅路から送られてきた物資もあって、万全の準備で北へ北へとまた進む。
荒野に構える基地から少し離れると、荒れて廃れた小さな町が待っていた。
レンジャーからもらった地図によれば、俺たちはブルヘッド・シティの最南端に差し掛かったようだ。
戦後に書かれたこの情報が正しければだが、ずっと北へ向かえば大都市のひとつにぶち当たることになる。
テュマーはびこるフォート・モハヴィほどじゃないが、もし人間の営みがまだあるとすればかなりの規模だろう。
俺たちの西側を走るクロラド川の曲線は弓なりの曲がりを見せて、そこからはるか遠くのデイビッド・ダムへと向かっている。
そんな曲がりくねった川の形に抱え込まれるように、戦前からまだ息のある都市があるそうだが。
「……ほんとにこんなところにあんのか?」
真昼間のウェイストランドの姿を見ればそう思わざるを得なかった。
廃墟の姿が見えてきたが、でも待ち受けているのはなんだと思う?
前後左右を見ても荒野、はるか遠い北の向こうには大きな山々が見えるだけ、まともな文明な姿はない。
「確かにブルヘッド・シティとやらは見えないな。もう少し先へ進めば見える風景もまた変わってくるはずだぞ」
一緒に前方を眺めていたクラウディアもそういっている。
このダークエルフが言うなら事実だ。前に続く道路は下り坂になっていて、その先に人がいるような様子がない。
それに長い感覚を置いて起伏が激しい道のりだ。もしかしたら見通しの悪い地形だけなのかもしれないが。
「そうだな……てことで、この中にウェイストランド歴の長いお医者様はいらっしゃいませんか?」
軽く足を緩めながら我らがクリューサ先生にお尋ねした。
世紀末スタイルのコートを着た顔色の悪い医者は前方の廃墟を眺めながら。
「ブルヘッド・シティはこの場にいる全員が一目で見ればわかるような場所だ」
そう短く答えてすたすた歩く。
とはいうもののその一目がないわけだが。
「つまりまだその時じゃないんだな。行ったことはあるのか?」
「西のヴェガス育ちに期待するな、ここまでお上品なところまで踏み込んだことはない」
「だったらどこまでご存じなんだ?」
「俺が知ってるのは都市が中世の城郭都市さながらに巨大な壁に丸ごと囲われていて、生活するにもチップがかかる場所だということぐらいだ」
そうやり取りをしてどうにかイメージとして掴めたのが、壁に覆われた都市というものだ。
壁に覆われてる? 世紀末の街づくりの流儀さながらに、廃材やらで作った壁が外敵を阻んでるんだろうか?
『都市が壁に囲われてる……? どんな場所なんだろう……?』
「なるほど、壁で守られた街か。この世界であれば外敵からの脅威を防ぐにはそれが効果的かもしれんな」
「そういった街ならフランメリアでは珍しいことではないぞ。良く知ってる」
「私やお姉さまの住まうクラングルのような感じかしら? それなら想像できますの!」
そこでミコのふとした疑問に、オーガとダークエルフと芋の魔女も混ざると。
「この北部が急激に栄えた背景ならお前たちも知ってるだろうが、ブルヘッド・シティもその一つだ。だがそんな都市があんなテュマーまみれの場所と違いなぜ150年続いているかと聞かれたら、お前らはどうしてだと思う?」
クリューサは一瞬立ち止まって、振り返ってきた。
不健康そう、面倒くさそうが詰まった顔は、すっかり遠のいたフォート・モハヴィを向いている。
妙だな。無人兵器の暴走、テュマーの発生のイベントがあったのにも関わらず都市が残ってるなんておかしい。
みんなが少し考え始めるが。
「そういうのと無縁だったからじゃないっすかねえ?」
抱えた生首に日よけ代わりのデカ乳を乗せていたメイド姿が、なんとなくそう口にする。
普段のによによ顔相応にふわっとした答えだがそれで事足りたようだ。
「その通りになるな。結論から言うと、テュマーにも無人兵器にも襲われるような環境じゃなかったからだ」
言うには150年もなおその都市が残ってる理由はとても単純、機械の脅威がなかったからだそうだ。
いやおかしいぞ。あの無駄にデカい都市が丸ごと一つあんなザマだったのに、対してそっちは無事だって?
「待て、ブルヘッド・シティっていうのはフォート・モハヴィからそんなに離れてないだろ? どうしてそこだけ無事だったんだ?」
「言っただろう、壁のおかげだ」
「その壁は読んで字のごとくの方か?」
「ああ。一体どういう気持ちと脳みその使い方でそう至ったかは知らんが、効果的に治安を維持するために都市そのものを壁を囲ったそうだぞ」
さすがに妙だと尋ねるもその訳はまさかの物理的な保護だ。
その言葉が本当なら、これから向かう先で都市を覆う何十キロメートル分もの壁とご対面するわけになるんだぞ?
『で、でも……壁で囲っただけですよね? なのに暴走した機械の影響がないって……』
「戦前の資料で見た情報だが。大量の土木業者と相応の労働者を雇用した大規模な公共事業のもと、都市の治安を守るために境界線を築いたんだ。その結果、資金不足になって無人兵器を雇う余裕もなかったそうだが」
「少なくともバグる機械はいらっしゃらなかったらしいな」
「むーん。しかしそれならテュマーはどうするのだ? 人間の内側にある機械とやらがそうなるように仕向けられるのだろう?」
ミコの小さな疑問にお医者様は答えてくれたが、次の疑問はノルベルトの口にした通りである。
いずれ人類に歯向かう労働力がいないのはいい。じゃあテュマーは?
まさかインプラントやらをつけた人間が全くいなかったわけじゃないはずだ。出てくるチャンスは人の数だけある。
「そのことだが面白い話があってな。テュマーなりえる資格を持つ人間は数多かっただろうが、壁に囲われた都市の中で転化する者はいなかったそうだ」
ところがどうだ、語られた真実は「テュマーになりませんでした」だって?
さすがの俺たちも戦前の記録でも見たアレが、どうしてか防げるという事実に興味が湧いてしまうが。
『テュマーにならなかった……? どうしてなんだろう……?』
「俺もとても興味深いものだが、その理由は150年経とうが謎に包まれた事柄だ。おかげで生き延びた企業たちが今もなお調べ続けてるほどにはな」
そういってクリューサはまたすたすたと歩きだした。
確かに面白い話だ。限界突破した人類のミスでああなったフォート・モハヴィと違って、ただの巨大な壁が淡々と被害を防いでいるなんて。
それがどういう働きをしてくれたかは幾らでも想像が働くが、とにかく事実は一つなのだ。
「皮肉なもんだな。人類を守ってくれたのが最新のテクノロジーでも無くてただのでっかい壁か」
「でしたらフォート・モハヴィも全部壁で囲ってしまえば今も無事だったかもしれませんわね~」
「そうすりゃ俺たちがテュマーの厄介ごとに巻き込まれることもなかったのにな」
『ちょ、ちょっとあの大きさは無理なんじゃないかな……?』
「口で言うのは簡単だが、あれだけの大都市を囲うつもりなら一体どれだけの金と時間が吹き飛ぶと思ってるんだお前らは」
壁に守られ、戦前からの文明を続ける都市がこの向こうにあるってことだ。
俺は腰かけた杖ごとふわふわ進むリム様と一緒に、緩やかな下り道の先を目で追った。
ぽつぽつと廃車が残る道路に、まだ稼働する電子的な看板がこっちに向かって一言残して。
【アリゾナの誇る安全な都市、ブルヘッド・シティへはこちらです!】
だとさ。肝心の壁に覆われた都市の姿は見えないが、幾つもの標識が北へ向けてこちらを誘っている。
◇
それからまた北上し、時々休憩を挟みながら都市を探す。
さすがにこの旅に慣れてきたのもあって進むペースも良くなってきた。
全員の装備は充実しているし物資もぬかりない、それに俺自身のステータスも相当上がってるからだ。
あのささやかな贈り物の中で何が嬉しいかといえば、このヘルメットもそうだがキッドタウンからの物資にあったスキル本だ。
『自作銃の作り方』『スナイパー入門隠密行動編』『アパラチア山脈狩猟マニュアル』だとか言うもので、それぞれのSlevに経験値が入った。
機械工作がSlev5に、隠密と罠がSlev3から4に上昇。
更にメモリスティックを開けばレシピも増えた。【トマホーク】や【釘爆弾】といった品ぞろえだ。
「ご機嫌っすねイチ様、なんかいいことあったんすか?」
小さな町並みの十字路に差し掛かったところで、喋る生首が近づいてきた。
「昇格してレベルが上がってスキルも上昇した。いいことづくめだと思わないか?」
俺は歩きながら左腕のPDAを得意げに見せた。
それにしてもこの廃墟は妙に静かだ。どこを見ても根こそぎ漁られていて、人の気配が全くしない。
「いいな~……うちもレベル要素欲しいっす」
『こっちの世界、完全スキル制だもんね……。レベルが上がったら特典がもらえるのは確かに羨ましいかも』
「お前らは魔法使えるからいいだろ? こっちは使えないどころか全部無効化されるんだぞ?」
ミコもロアベアも羨ましそうにしてる。言うまでもなく今の自分はちょっとだけ得意げだ。
しかしまあ、どこぞのニャルが言うにはミコの故郷は俺が作り上げた物らしいが。
何があったかは知らないが、そうして生み出したゲームが完全スキル制で人外娘が出てくるMMORPGか。一体どんな人生を歩んできたのやら。
『……あっ、そういえばいちクン? 【アーツアーカイブ】貰ったよね……?』
更に進んで街の様子が変わってくるとミコが不意に言った。
そうだったな、プレッパーズからのお届けものにあった。
ポケットからじゃらっと取り出すとキックだの盾だのいろいろ出てくるが、もし使えそうなものがあると聞かれれば【レッグパリィ】だ。
「色々あるぞ。レッグパリィ、ロックアーマー、シールドスワットとか。俺が使えそうな技あるかこれ」
『えっと……その中だと、いちクンが使えそうなのはレッグパリィかな?』
「お~、使いどころが微妙なのばっかりっすね。でもうちならレッグパリィをおすすめするっすよ」
「どんなん?」
『足で戦うキックスキルのアーツなんだけど、敵の攻撃を蹴りで受け流すの。けっこう便利な効果なんだけど……』
あっちの世界を良く知ってる二人がいうには、俺の想像通りこいつが一番らしい。
せっかくだし覚えてみるか。薄い半透明のプレートを早速使おうとするが。
「そういえばロアベア、これ食えるらしいな」
『えっ』
「食べれるっすよ~、口寂しい時におすすめっす」
ふと思い出した。ロアベアが食べれるって言ってたな。
ちょうどいいから味も確かめよう。そんなわけで口に運んだ。
かみ砕くとばりばりした感触が広がる。硬いお菓子をかみ砕いたようなものだ。
味? 無のテイスト。つまりそんなものはない。
「……おいふぃふふぁい」
いきなり音を立てて食らうと、横を歩いてたクリューサに「何やってんだ」と気味悪がられた。
まあでも食えないことはない。良く噛んで飲み込むと少なくとも空腹は紛らわせた。
『って何食べてるのいちクン!?』
「いや、ロアベアが食えるって言ってたから……」
『だからってどうしてなんの躊躇もなくそれ食べちゃうの!?』
「大丈夫だ、思ったよりこれおいしくない」
『むしゃむしゃするのやめなさいっ! お腹壊しても知らないよ!?』
全部食らうと【アーツ】習得のお知らせが出た。これでものにしたわけだ。
そんな様子を見てくれたお医者様が露骨に嫌悪感を出してたので「食べる?」と適当なプレートを差し出すが、ため息を返された。
「こいつめ、とうとう化け物がすぎて悪食になったか……」
「いや違うんだクリューサ、ロアベアが食えるって言ってたから」
「そんな理由で得体のしれないものを当然のごとく食うやつがどこにいるという話なんだが」
「どうっすかイチ様、アーツアーカイブのお味は」
「味のないおせんべい食ってるみたい」
『食レポしなくていいよ……!?』
「まあ、イっちゃんお腹すいたのかしら!? はい、これおやつのお芋ですわ!」
『りむサマはどうして生のじゃがいも渡そうとしてるの!?』
「せめて焼けよ」
食感が良かったのは確かだ。ついでだしもう一枚食べてみようかと思うぐらいには。
しかし手を伸ばすと、音に反応したのかニクがじーっとこっちを見ていた。
「……おいしい?」
『……いちクン、ニクちゃんに食べさせるのはやめようね?』
首を傾げられた。まあすすめたくなる味じゃない。
代わりに干し肉を取り出して優しく投げる。黒いわん娘はぱくっとキャッチ。
ついでに俺もかじった。スパイシーで塩気のあるあの味がずいぶん懐かしい。
「こっちの方がいいのは確かだな。サンディたちの干し肉は何時食ってもうまい」
「……うまうま」
「イチ、仲睦まじく遊んでいるところに悪いと思うがお客様だぞ」
もう一枚ニクに投げてやろうとしてると先頭のダークエルフの姿がぴたりと止まる。
前方は緩やかな上り坂だ。向こうに幾つか建物があって、そこに注意を向けていた。
白い髪のもとにある表情は鋭かった。なんなら貰ったばかりのクロスボウに手をかけていて。
「そのお客様っていうのはもちろん仲良しな方じゃないよな?」
「……ん、なんだか火薬の匂いがする」
「待ち伏せにうってつけの場所で私たちを待つような連中とは仲良くなれないと思うぞ」
俺ももぐもぐしながら短機関銃を抜いた。ニクもすっと槍を手にして。
「フハハ、こちらに用のある連中だろうな。待ちくたびれたではないか」
ノルベルトも背中の使い捨ての対戦車兵器を示しながら、戦槌と共に強く前を向く。
何も話さぬうち、俺たちは道から外れて早足で近くの建物に寄った。
中がきれいに荒らされたコンビニがあった。そこに寄って身を隠し、北へ目を張らせる。
「クラウディア、何か見えたか?」
「向こうの二階建ての建物の上でかすかに反射光が見えたぞ。それと人の気配がする」
「ご主人、あっちで車と人の匂いがした。いっぱいいるみたい」
「目と鼻で確かめられるってことは確実だな。ほんとに来やがったかあいつら」
物陰から身を乗り出してまずは軽く探る。
北にはこじんまりとした街並みが続き、ブルヘッドまでの道のりがある。
しかしそんな道を邪魔するってわけは――そういうことだな。
「高台っていうことはあの辺か?」
『あそこにある建物、怪しいよね……。こっちが良く見えるだろうし』
双眼鏡を手に見た。ゆるやかな道の起伏を辿り登っていくと、こんな状況にうってつけな物件が見つかる。
向こうの穏やかな高台の上に何件か建物があった。こっちを広く見渡せるはずだ。
特に二階から見下ろすには絶好だと思う。手元に武器があるならなおさらだ。
「南から来る者たちを迎え撃つならあそこが一番都合がいいぞ。地の利もあるし、後ろに戦力も隠せる地形だ。私がお前を狙ってるならそうするぞ」
「なるほど。クラウディア、クロスボウの試し撃ちとかしてみたいか?」
「もちろんだ。私だったら側面からいいところをいくらでも探せるが」
「よし、あぶりだすから潜伏してくれ。厄介そうな敵を狙え」
「心得たぞ。ダークエルフの狩りの技術に期待するといい」
そんな様子から目を離さないままクラウディアにお願いした。
すぐにクロスボウを抱えた姿が無音で町から外れていく。もしことが起きれば横やりをぶちかませるはずだ。
「俺たちもすっかりこういうことになれたものだな。ご用件があるお客様とやらのお顔を是非拝見させていただこうか」
「さっそく来ましたのね? では皆さま、私は後ろでのんびり観戦してますわ!」
後ろにお医者様と魔女を控えたまま、コンビニの壁から身を乗り出す。
「さて……まずはどんな奴らかご対面してみるか?」
それから短機関銃の銃口で景色をそっとなぞった。荒野に浮かぶ廃墟のそばには誰もいない。
向こうの景色に変化が来ないか、まずは少しの間視線を見張らせる……。
荒野に構える基地から少し離れると、荒れて廃れた小さな町が待っていた。
レンジャーからもらった地図によれば、俺たちはブルヘッド・シティの最南端に差し掛かったようだ。
戦後に書かれたこの情報が正しければだが、ずっと北へ向かえば大都市のひとつにぶち当たることになる。
テュマーはびこるフォート・モハヴィほどじゃないが、もし人間の営みがまだあるとすればかなりの規模だろう。
俺たちの西側を走るクロラド川の曲線は弓なりの曲がりを見せて、そこからはるか遠くのデイビッド・ダムへと向かっている。
そんな曲がりくねった川の形に抱え込まれるように、戦前からまだ息のある都市があるそうだが。
「……ほんとにこんなところにあんのか?」
真昼間のウェイストランドの姿を見ればそう思わざるを得なかった。
廃墟の姿が見えてきたが、でも待ち受けているのはなんだと思う?
前後左右を見ても荒野、はるか遠い北の向こうには大きな山々が見えるだけ、まともな文明な姿はない。
「確かにブルヘッド・シティとやらは見えないな。もう少し先へ進めば見える風景もまた変わってくるはずだぞ」
一緒に前方を眺めていたクラウディアもそういっている。
このダークエルフが言うなら事実だ。前に続く道路は下り坂になっていて、その先に人がいるような様子がない。
それに長い感覚を置いて起伏が激しい道のりだ。もしかしたら見通しの悪い地形だけなのかもしれないが。
「そうだな……てことで、この中にウェイストランド歴の長いお医者様はいらっしゃいませんか?」
軽く足を緩めながら我らがクリューサ先生にお尋ねした。
世紀末スタイルのコートを着た顔色の悪い医者は前方の廃墟を眺めながら。
「ブルヘッド・シティはこの場にいる全員が一目で見ればわかるような場所だ」
そう短く答えてすたすた歩く。
とはいうもののその一目がないわけだが。
「つまりまだその時じゃないんだな。行ったことはあるのか?」
「西のヴェガス育ちに期待するな、ここまでお上品なところまで踏み込んだことはない」
「だったらどこまでご存じなんだ?」
「俺が知ってるのは都市が中世の城郭都市さながらに巨大な壁に丸ごと囲われていて、生活するにもチップがかかる場所だということぐらいだ」
そうやり取りをしてどうにかイメージとして掴めたのが、壁に覆われた都市というものだ。
壁に覆われてる? 世紀末の街づくりの流儀さながらに、廃材やらで作った壁が外敵を阻んでるんだろうか?
『都市が壁に囲われてる……? どんな場所なんだろう……?』
「なるほど、壁で守られた街か。この世界であれば外敵からの脅威を防ぐにはそれが効果的かもしれんな」
「そういった街ならフランメリアでは珍しいことではないぞ。良く知ってる」
「私やお姉さまの住まうクラングルのような感じかしら? それなら想像できますの!」
そこでミコのふとした疑問に、オーガとダークエルフと芋の魔女も混ざると。
「この北部が急激に栄えた背景ならお前たちも知ってるだろうが、ブルヘッド・シティもその一つだ。だがそんな都市があんなテュマーまみれの場所と違いなぜ150年続いているかと聞かれたら、お前らはどうしてだと思う?」
クリューサは一瞬立ち止まって、振り返ってきた。
不健康そう、面倒くさそうが詰まった顔は、すっかり遠のいたフォート・モハヴィを向いている。
妙だな。無人兵器の暴走、テュマーの発生のイベントがあったのにも関わらず都市が残ってるなんておかしい。
みんなが少し考え始めるが。
「そういうのと無縁だったからじゃないっすかねえ?」
抱えた生首に日よけ代わりのデカ乳を乗せていたメイド姿が、なんとなくそう口にする。
普段のによによ顔相応にふわっとした答えだがそれで事足りたようだ。
「その通りになるな。結論から言うと、テュマーにも無人兵器にも襲われるような環境じゃなかったからだ」
言うには150年もなおその都市が残ってる理由はとても単純、機械の脅威がなかったからだそうだ。
いやおかしいぞ。あの無駄にデカい都市が丸ごと一つあんなザマだったのに、対してそっちは無事だって?
「待て、ブルヘッド・シティっていうのはフォート・モハヴィからそんなに離れてないだろ? どうしてそこだけ無事だったんだ?」
「言っただろう、壁のおかげだ」
「その壁は読んで字のごとくの方か?」
「ああ。一体どういう気持ちと脳みその使い方でそう至ったかは知らんが、効果的に治安を維持するために都市そのものを壁を囲ったそうだぞ」
さすがに妙だと尋ねるもその訳はまさかの物理的な保護だ。
その言葉が本当なら、これから向かう先で都市を覆う何十キロメートル分もの壁とご対面するわけになるんだぞ?
『で、でも……壁で囲っただけですよね? なのに暴走した機械の影響がないって……』
「戦前の資料で見た情報だが。大量の土木業者と相応の労働者を雇用した大規模な公共事業のもと、都市の治安を守るために境界線を築いたんだ。その結果、資金不足になって無人兵器を雇う余裕もなかったそうだが」
「少なくともバグる機械はいらっしゃらなかったらしいな」
「むーん。しかしそれならテュマーはどうするのだ? 人間の内側にある機械とやらがそうなるように仕向けられるのだろう?」
ミコの小さな疑問にお医者様は答えてくれたが、次の疑問はノルベルトの口にした通りである。
いずれ人類に歯向かう労働力がいないのはいい。じゃあテュマーは?
まさかインプラントやらをつけた人間が全くいなかったわけじゃないはずだ。出てくるチャンスは人の数だけある。
「そのことだが面白い話があってな。テュマーなりえる資格を持つ人間は数多かっただろうが、壁に囲われた都市の中で転化する者はいなかったそうだ」
ところがどうだ、語られた真実は「テュマーになりませんでした」だって?
さすがの俺たちも戦前の記録でも見たアレが、どうしてか防げるという事実に興味が湧いてしまうが。
『テュマーにならなかった……? どうしてなんだろう……?』
「俺もとても興味深いものだが、その理由は150年経とうが謎に包まれた事柄だ。おかげで生き延びた企業たちが今もなお調べ続けてるほどにはな」
そういってクリューサはまたすたすたと歩きだした。
確かに面白い話だ。限界突破した人類のミスでああなったフォート・モハヴィと違って、ただの巨大な壁が淡々と被害を防いでいるなんて。
それがどういう働きをしてくれたかは幾らでも想像が働くが、とにかく事実は一つなのだ。
「皮肉なもんだな。人類を守ってくれたのが最新のテクノロジーでも無くてただのでっかい壁か」
「でしたらフォート・モハヴィも全部壁で囲ってしまえば今も無事だったかもしれませんわね~」
「そうすりゃ俺たちがテュマーの厄介ごとに巻き込まれることもなかったのにな」
『ちょ、ちょっとあの大きさは無理なんじゃないかな……?』
「口で言うのは簡単だが、あれだけの大都市を囲うつもりなら一体どれだけの金と時間が吹き飛ぶと思ってるんだお前らは」
壁に守られ、戦前からの文明を続ける都市がこの向こうにあるってことだ。
俺は腰かけた杖ごとふわふわ進むリム様と一緒に、緩やかな下り道の先を目で追った。
ぽつぽつと廃車が残る道路に、まだ稼働する電子的な看板がこっちに向かって一言残して。
【アリゾナの誇る安全な都市、ブルヘッド・シティへはこちらです!】
だとさ。肝心の壁に覆われた都市の姿は見えないが、幾つもの標識が北へ向けてこちらを誘っている。
◇
それからまた北上し、時々休憩を挟みながら都市を探す。
さすがにこの旅に慣れてきたのもあって進むペースも良くなってきた。
全員の装備は充実しているし物資もぬかりない、それに俺自身のステータスも相当上がってるからだ。
あのささやかな贈り物の中で何が嬉しいかといえば、このヘルメットもそうだがキッドタウンからの物資にあったスキル本だ。
『自作銃の作り方』『スナイパー入門隠密行動編』『アパラチア山脈狩猟マニュアル』だとか言うもので、それぞれのSlevに経験値が入った。
機械工作がSlev5に、隠密と罠がSlev3から4に上昇。
更にメモリスティックを開けばレシピも増えた。【トマホーク】や【釘爆弾】といった品ぞろえだ。
「ご機嫌っすねイチ様、なんかいいことあったんすか?」
小さな町並みの十字路に差し掛かったところで、喋る生首が近づいてきた。
「昇格してレベルが上がってスキルも上昇した。いいことづくめだと思わないか?」
俺は歩きながら左腕のPDAを得意げに見せた。
それにしてもこの廃墟は妙に静かだ。どこを見ても根こそぎ漁られていて、人の気配が全くしない。
「いいな~……うちもレベル要素欲しいっす」
『こっちの世界、完全スキル制だもんね……。レベルが上がったら特典がもらえるのは確かに羨ましいかも』
「お前らは魔法使えるからいいだろ? こっちは使えないどころか全部無効化されるんだぞ?」
ミコもロアベアも羨ましそうにしてる。言うまでもなく今の自分はちょっとだけ得意げだ。
しかしまあ、どこぞのニャルが言うにはミコの故郷は俺が作り上げた物らしいが。
何があったかは知らないが、そうして生み出したゲームが完全スキル制で人外娘が出てくるMMORPGか。一体どんな人生を歩んできたのやら。
『……あっ、そういえばいちクン? 【アーツアーカイブ】貰ったよね……?』
更に進んで街の様子が変わってくるとミコが不意に言った。
そうだったな、プレッパーズからのお届けものにあった。
ポケットからじゃらっと取り出すとキックだの盾だのいろいろ出てくるが、もし使えそうなものがあると聞かれれば【レッグパリィ】だ。
「色々あるぞ。レッグパリィ、ロックアーマー、シールドスワットとか。俺が使えそうな技あるかこれ」
『えっと……その中だと、いちクンが使えそうなのはレッグパリィかな?』
「お~、使いどころが微妙なのばっかりっすね。でもうちならレッグパリィをおすすめするっすよ」
「どんなん?」
『足で戦うキックスキルのアーツなんだけど、敵の攻撃を蹴りで受け流すの。けっこう便利な効果なんだけど……』
あっちの世界を良く知ってる二人がいうには、俺の想像通りこいつが一番らしい。
せっかくだし覚えてみるか。薄い半透明のプレートを早速使おうとするが。
「そういえばロアベア、これ食えるらしいな」
『えっ』
「食べれるっすよ~、口寂しい時におすすめっす」
ふと思い出した。ロアベアが食べれるって言ってたな。
ちょうどいいから味も確かめよう。そんなわけで口に運んだ。
かみ砕くとばりばりした感触が広がる。硬いお菓子をかみ砕いたようなものだ。
味? 無のテイスト。つまりそんなものはない。
「……おいふぃふふぁい」
いきなり音を立てて食らうと、横を歩いてたクリューサに「何やってんだ」と気味悪がられた。
まあでも食えないことはない。良く噛んで飲み込むと少なくとも空腹は紛らわせた。
『って何食べてるのいちクン!?』
「いや、ロアベアが食えるって言ってたから……」
『だからってどうしてなんの躊躇もなくそれ食べちゃうの!?』
「大丈夫だ、思ったよりこれおいしくない」
『むしゃむしゃするのやめなさいっ! お腹壊しても知らないよ!?』
全部食らうと【アーツ】習得のお知らせが出た。これでものにしたわけだ。
そんな様子を見てくれたお医者様が露骨に嫌悪感を出してたので「食べる?」と適当なプレートを差し出すが、ため息を返された。
「こいつめ、とうとう化け物がすぎて悪食になったか……」
「いや違うんだクリューサ、ロアベアが食えるって言ってたから」
「そんな理由で得体のしれないものを当然のごとく食うやつがどこにいるという話なんだが」
「どうっすかイチ様、アーツアーカイブのお味は」
「味のないおせんべい食ってるみたい」
『食レポしなくていいよ……!?』
「まあ、イっちゃんお腹すいたのかしら!? はい、これおやつのお芋ですわ!」
『りむサマはどうして生のじゃがいも渡そうとしてるの!?』
「せめて焼けよ」
食感が良かったのは確かだ。ついでだしもう一枚食べてみようかと思うぐらいには。
しかし手を伸ばすと、音に反応したのかニクがじーっとこっちを見ていた。
「……おいしい?」
『……いちクン、ニクちゃんに食べさせるのはやめようね?』
首を傾げられた。まあすすめたくなる味じゃない。
代わりに干し肉を取り出して優しく投げる。黒いわん娘はぱくっとキャッチ。
ついでに俺もかじった。スパイシーで塩気のあるあの味がずいぶん懐かしい。
「こっちの方がいいのは確かだな。サンディたちの干し肉は何時食ってもうまい」
「……うまうま」
「イチ、仲睦まじく遊んでいるところに悪いと思うがお客様だぞ」
もう一枚ニクに投げてやろうとしてると先頭のダークエルフの姿がぴたりと止まる。
前方は緩やかな上り坂だ。向こうに幾つか建物があって、そこに注意を向けていた。
白い髪のもとにある表情は鋭かった。なんなら貰ったばかりのクロスボウに手をかけていて。
「そのお客様っていうのはもちろん仲良しな方じゃないよな?」
「……ん、なんだか火薬の匂いがする」
「待ち伏せにうってつけの場所で私たちを待つような連中とは仲良くなれないと思うぞ」
俺ももぐもぐしながら短機関銃を抜いた。ニクもすっと槍を手にして。
「フハハ、こちらに用のある連中だろうな。待ちくたびれたではないか」
ノルベルトも背中の使い捨ての対戦車兵器を示しながら、戦槌と共に強く前を向く。
何も話さぬうち、俺たちは道から外れて早足で近くの建物に寄った。
中がきれいに荒らされたコンビニがあった。そこに寄って身を隠し、北へ目を張らせる。
「クラウディア、何か見えたか?」
「向こうの二階建ての建物の上でかすかに反射光が見えたぞ。それと人の気配がする」
「ご主人、あっちで車と人の匂いがした。いっぱいいるみたい」
「目と鼻で確かめられるってことは確実だな。ほんとに来やがったかあいつら」
物陰から身を乗り出してまずは軽く探る。
北にはこじんまりとした街並みが続き、ブルヘッドまでの道のりがある。
しかしそんな道を邪魔するってわけは――そういうことだな。
「高台っていうことはあの辺か?」
『あそこにある建物、怪しいよね……。こっちが良く見えるだろうし』
双眼鏡を手に見た。ゆるやかな道の起伏を辿り登っていくと、こんな状況にうってつけな物件が見つかる。
向こうの穏やかな高台の上に何件か建物があった。こっちを広く見渡せるはずだ。
特に二階から見下ろすには絶好だと思う。手元に武器があるならなおさらだ。
「南から来る者たちを迎え撃つならあそこが一番都合がいいぞ。地の利もあるし、後ろに戦力も隠せる地形だ。私がお前を狙ってるならそうするぞ」
「なるほど。クラウディア、クロスボウの試し撃ちとかしてみたいか?」
「もちろんだ。私だったら側面からいいところをいくらでも探せるが」
「よし、あぶりだすから潜伏してくれ。厄介そうな敵を狙え」
「心得たぞ。ダークエルフの狩りの技術に期待するといい」
そんな様子から目を離さないままクラウディアにお願いした。
すぐにクロスボウを抱えた姿が無音で町から外れていく。もしことが起きれば横やりをぶちかませるはずだ。
「俺たちもすっかりこういうことになれたものだな。ご用件があるお客様とやらのお顔を是非拝見させていただこうか」
「さっそく来ましたのね? では皆さま、私は後ろでのんびり観戦してますわ!」
後ろにお医者様と魔女を控えたまま、コンビニの壁から身を乗り出す。
「さて……まずはどんな奴らかご対面してみるか?」
それから短機関銃の銃口で景色をそっとなぞった。荒野に浮かぶ廃墟のそばには誰もいない。
向こうの景色に変化が来ないか、まずは少しの間視線を見張らせる……。
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