魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー

ウィル・テネブリス

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世紀末世界のストレンジャー

Chosen One

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 ――そうさね、少し昔話をしようか?

 あれはもともと、どこぞの人食いカルトと同じようなものだったのさ。
 はるか南東のパーク・シェルターに住まう、まあ言ってみればあんたみたいなやつだね。
 とにかく人口が多い場所でね、シェルターがパンクして駄目になるのもさほど時間はかからなかった。
 戦後、いち早くウェイストランドに出ていかざるを得なかった連中さ。

 そいつらは安住の地を求めてさまようわけだが、すぐに人肉食を始めた。
 考えてみな。今日この日は食うにもさほど困らなくなってるが、昔は違う。
 文明を失い何十年経ったか。まともな動植物は死滅し、残された人間は死ぬか、お互い食らい合うかの二択さね。
 それしかなかったんだ。食料に乏しいウェイストランドじゃ、別におかしな話じゃなかった。

 そんな人喰い集団は北へ北へと向かいつつ、いかに食っていけるか試行錯誤してたのさ。
 最初は力尽きた仲間を食らって食いつないでいたが、やがて道中で人間を捕えて家畜みたいに生きたまま食料にしたし、当時では盛んだった奴隷商人や傭兵集団とのコネも作った。

 そうして瞬く間に一大勢力に早変わりしたわけだよ。
 人を喰らいつつ規模を拡大したそいつらは、やがて北上した先にあったレイクフバスシティという場所に居付いた。
 そこはこのスティングの何倍、何十倍も大きな場所だと思ってくれ。
 賊が蔓延る広大な廃墟だったわけだが、奴らはそこに押し入って拠点を構えた。

――それだけならあの人食いカルトどもと何ら変わらない? その通りさ。

 最初のうちはただ腹を満たすだけの食人族で済んだが、やがて戦前の軍人が介入してきてその姿を変えた。
 ろくでもないやつだったに違いないよ。人食いたちの思想を血で染めて、強固に結束させたクズ野郎さ。
 食欲以外の欲望が生まれたそいつらはウェイストランドを侵略し始めたんだ。「食肉」と「人口」をどんどん増やしながらね。
 そいつらの名前はライヒランド、あんたが最近よく耳にするあいつらさ。

――肉食ったばかりなのに人肉の話はやめてほしい? あんたへの嫌味だ。

 まあ、そんな人食い集団にもイレギュラーは生まれるもんさ。
 生きるためではなく自分の快楽を優先するようになったことに疑問を持った連中が離反したんだ。
 ほんのわずかな人間がはるか北東へ逃げて、自分たちに同調するものを募った。

 残虐な人食い集団は今も昔も嫌われ者さ、同じ志を持つ人間は山ほどいた。
 そして離反者の寄せ集めから一つのコミュニティとして形を成してきたころ、噂を聞きつけた戦前の軍人たちがやってきた。
 そいつらがどんな意志思想を持ってたかは知らないけどね、お人好しなのは確かだ。
 やつらに対抗するべく、荒廃した世界にあわせた戦い方をその身に叩き込んだんだ。
 その名も擲弾兵さ。彼らの活躍で、侵略者の勢いは大きく削がれたのさ。

――詳しいんですね? そりゃそうさ、そのころ私らデザートレンジャーもここで活動し始めたからね。

 シドのやつと悪者退治をしてるといろいろな噂を聞いたもんさ。
 ガーデンを狙う傭兵風情の邪魔をしたり、奴隷商人を攻撃したり、小さな村を賊から守ったりだとかね。
 時には私らだって助けられたよ。あいつらの戦いぶりは異常だ、装甲車両だってものともせず突っ込むんだからね。
 おまけに戦前の兵器博物館にあった戦車だかを復元して戦闘に投入してたんだ、そりゃ恐れられたよ。

 そういえば、ハーバー・シェルターの人間が賊か何かに捕まって、擲弾兵が助けたって話もあったね。
 あれで感銘を受けてわざわざご指導してもらって、彼らを模範したそうだ。
 その結果生まれたのがあんたってわけだ、最後の擲弾兵。

――でもね、あいつらは強すぎたんだ。それがかえって災いを招いたのさ。

 シド率いる私らレンジャーと擲弾兵の働きは、確かに世の中を良くしたはずだ。
 このアリゾナに散らばっていた幾つもの組織が結束し、このスティングも無法地帯から秩序ある街へと姿を変えたんだ。
 ところがここはライヒランドがずっと前から狙っててね。資源やら土地やらが欲しくて攻め入ろうとしてたんだ。
 あいつらは焦ったんだよ。このままじゃスティングが手に入らなくなるってね。

 レンジャーや擲弾兵の活躍はかなり苛立たしかったに違いないさ。
 最後のチャンスだとばかりにアホみたいな数の兵力をぶつけてきたんだ。
 当然、ガーデンやらキッドタウンやら、各地から援軍が集まったんだが。

――ベーカー将軍が言ってた? そう、スティングの戦いのことだよ。

 問題は増援が間に合いそうになかったことだよ。それだけ攻撃が苛烈だった。
 スティングの街を無差別に攻撃したんだ。だから擲弾兵は、自分から援軍が来るまでの捨て石となったのさ。
 一体どういう理念やらを持ってそんなことをしでかしたのかはさっぱりだ。
 もしかしたらそれだけライヒランドを怨んでいたのかもね。結果的に、自分たちが無残に殺されるまで十分時間を稼いだんだ。

 援軍が来た後、侵略者どもは壊滅したよ。長い間落ちぶれるぐらいにはね。
 まあグレイブランドも同じだ、数え切れないほどの擲弾兵を失ったからね。
 だけど侵略者どもは諦めなかったんだ。いつか、必ずや手に入れるとでも思ったに違いない。
 あいつらのことだ、あれからずっと再戦に備えて工作でもしてたんだろうさ。

――そこにどうあんたが絡むかって話だが、まあ面白いんだ。

 確かにライヒランドは力を蓄えてきたが、急に世界が変わってしまったのさ。
 豊かな土地に新たな資源の出現。これで情勢は変わったし、何よりこの街もだ。
 孤立して頭数だけが取り柄のライヒランドには一切恩恵がなかったんだ。周りは豊かになってくのに自分たちは変わらない、そりゃ焦るだろう。
 スパイ活動を主にスティングの掌握を急ぎ、遠征中のカルト集団やらミリティアやらと肩を並べ始めた、だがうまくいかなった。

――あとは分かるだろう、新兵?

 今ここに至るまで、やつらが引き起こした出来事は全て台無しだ。
 それどころか逆にうちらの結束力を高めてしまったんだ、あんたのせいでね。
 どれだけ悔しく恐ろしいことだろうね、恨みつらみや畏怖の残るあのシンボルが、また自分たちの邪魔をしにきたんだ。

――つまり、奴らはたった一人の擲弾兵を恐れているのさ。



「君のうわさが届いたんだろうな。偵察に行かせた連中からの報告だが、南東部で集結中のライヒランドの主力部隊が、謎の機甲部隊によって足止めを食らってるとのことだ」

 食後のデザートにしては質量の多いボスの話の後に、軍曹は続けた。
 テーブルに広げた地図に指を置くと、スティングシティから続く道路を橋の向こうまで進み。

「現在橋の向こう側にライヒランドの部隊が集結しつつある。しかしその背後から攻撃が加えられているらしい。最初は北部に駐屯してるシド・レンジャーズによるものかと思ったんだが」

 いざ橋に差し掛かる、といったところでマークがつけられてる。
 本来ならこのまま俺たちが歩いていたはずの道のど真ん中だ。
 ここで攻撃を食らって身動きが取れなくなってるみたいだが、そこから北へと続く道と、西への道の二つがあり。

「シド将軍に確認したんだが、北の部隊が駆け付けたのはついさっきだとさ。橋の守りをしてた自警団メンバーかと思ったがそいつらは離反者だ。そうなるとウェイストランドで機甲戦力を持つ奴らと言えば――」

 ツーショットの指先が代わりに道をたどる。
 何十マイルもの道をずっと進み、ライヒランドの待ち構える南への道をスルーし、更に東へ。
 ちょうどスティングと対になる形で存在する『グレイブランド』だ。
 地図上の規模からさほどでもない街だが、奇しくもこれで侵略者を挟み込むようになった。

「グレイブランドしかありえないわけだな。実際に偵察チームからもそう報告があったが、戦車や装甲車両が丘の上から砲撃を加えていたそうだ。そうなるとどこからやってきたか……」

 オチキス隊長は「もし奇襲をしかけるならここだ」とばかりに橋の向こうを囲うように場所を記していく。
 橋の北側には線路が続いている。たぶんスティングのものとつながってるだろう。
 それをずっと東まで追いかけていくと――やっぱりそうだ、グレイブランドまでたどり着く。

「――いや、まさかあいつら、線路を使ったのか?」
「そいつはあり得るな。戦車を運用できるほどの力があるんだ。その気になれば列車ぐらいどうにかできるだろ」

 そこに自警団のオレクスも割り込んできた。

「あいつらは長い間俺たちに姿すら見せなかったが、ライヒランドと同じように水面下でこの時に備えていたのかもな。そうじゃないとこの展開速度は説明がつかないぞ」
「私はこういう説明が得意だから言うが、戦車は燃料を馬鹿みたいに食う。40マイル走っただけでもかなりの量が必要だ、一両二両ならともかく何台も運用するとなればな。するとやはり運搬手段が必要なわけで……」
「キッドタウンのインテリさんの言う通り列車を使った可能性大か。はは、準備が良すぎるじゃないか。きっと作戦のための駐留地も道中どこかに設けてるな」

 二人のやり取りからして――そういうことに違いない。
 橋の向こうでライヒランドの軍が足止めをされている。まるでこの時を待っていたといわんばかりにだ。
 さて、そのきっかけとなったのがここにいる。
 これからそう証明するかのように、隣の軍曹が肩を叩いてくる。

「だが一番いいニュースはそこじゃない。黒い装甲服を着た兵士の姿が目撃されたということだ、諸君なら意味は分かるな?」

 興奮した様子で本人の口からそう告げられた。
 当然のようにみんなの視線が集まってくる。黒い格好に兵士と言えば……。

「……本物の擲弾兵が蘇ったってことかい?」

 俺を見ながら、ボスは言った。
 残念だがこっちは模造品だが、とうとう本物が復活したかもしれないらしい。

「このご時世、このタイミングでそんな姿でわざわざ来てくれる奴が他にいるとでも? あいつらが戻ってきたんだ、伝説の擲弾兵がな」
「はっ、ずいぶん嬉しそうじゃないかいガーデンの」
「当り前さ、興奮せずにいられるか! うちの将軍が聞いたら泣いて喜ぶだろうさ!」
「ライヒランドにちょっかいかけるだけの偽物って路線は少なさそうだね、ここまで条件が揃うとそう信じざるを得ないよ」

 ガーデンの軍曹はえらく嬉しそうだ、やはり関りが深いからなんだろうか。

「まあグレイブランドが助けに来てくれたというのは間違いないだろうな。そこにどんな目論見を挟んでこようが、あいつらの脅威になるっていうなら俺は歓迎さ」
「今までずっと東の方でこもって我関せずな態度を保ってたくせに、ようやくかい。外との関りも断ち続けて何十年ああしてたと思ってるんだいあいつらは」
「まあどうだっていいだろボス? なんにせよこの最後の擲弾兵殿で動いてくれたんだろうさ、ライヒランド側について一緒に襲ってくることはないだろうよ」

 ツーショットがそう付け足して、ひとまずこの場は「グレイブランドが支援しにきた」という路線で固まったようだ。
「何とか彼らと接触できないか」「北部のレンジャーたちはどうしてる」「これからどうする」などと話は複雑になるものの。

「さて、ストレンジャー。こうなった以上うちらはするべきことは二つだ」

 ボスがタバコに火をつけ始めた。
 気づけば周りの面々の意識も一人の老人に集中してる、ここが本題か。

「現在スティングは離反者、レイダー、ミリティア、工作員などでいっぱいだ。しかも街の大半は占拠されてて、面白いことになってる」

 小銃のトリガを絞るためにつくりを変えたその指が、地図を示した。
 スティングの見取り図だ。そこにある情報を正しく読めば、今俺たちがいるママの宿屋周辺は制圧されている。
 それ以外はほとんど敵の手に落ちてるといってもいいだろう、もはや陥落したも同然だ。

「面白いとは言えないような状態に見えませんか、ボス」
「ここからさ。こんなになってもまだ保ってるんだ、なんでだと思う?」

 それでもなお、ここに希望があるのだと問われて困った。
 橋の向こうにいるライヒランドそのものが来ない限りは終わりが来ないからか?
 誰かまだ必死に抵抗しているからか? それなら誰が? 俺たちか?
 そう考えを巡らせていると、

「フランメリアの同胞たちは相も変わらぬ様子だな。吾輩と同じく戦いに飢えておる」

 カウンターの向こうからチャールトン少佐がどすどすと歩いて来た。
 巨体に対して小さく見えるトレーに湯気が立ってる――ほんとに茶を淹れたらしい。

「おい、豚のミューティ。こいつにヒントを与えるんじゃないよ」
「しかしご老人よ、貴公らには分からぬほどフランメリアの民は『戦こその命』なのだぞ。これほど徳を積める機会などもう二度とあるまい」

 恐ろしいことを言いながらも紅茶が差し出されてきた。
 ミルクティーだ。この世界でこんなもの飲むのは初めてかもしれない。
 しかし、徳を積むか。ノルベルトも言ってたけど人を殺せば善行だと――

『……もしかして、向こうの人たちが戦ってる?』

 俺がふとある考えが浮かんだところで、それより早くミコが言ってしまった。
 そうだ、そうだった、チャールトン少佐もノルベルトがああなら、他の奴らは?
 クラウディアもそうだ、徳を積めるとか言ってたよな、ということは。

「その通りである。一体誰がそう始めたのかはわかりかねるが、いいカモ――いやいや、狼藉を働く者たちがことごとく討ち取られているのだ」
「……つまりそういうことさ、ストレンジャー。一体どうしてかこのハロウィンの主役たちが奇しくもここの人たちを守ってるんだよ」

 ボスも認めた。マジかよ、フランメリアのバケモンたちが侵略者と戦ってるって?

「フハハ、悪者なら殺して構わんしな!」

 ノルベルトもそう主張した、そうだよこういうやつらだった。

「えーと、つまり、徳を積むために悪者退治に励んでらっしゃると?」
「そういうことだ。それにもともとライヒランドってのはミュータントが大嫌いだからね、相性最悪だ」
「ワーオ、そうなると良い形でのご対面は期待できなさそうですね」
「一悶着あったんだろうね。今はライヒランド率いる馬鹿どもVSハロウィンモンスターの構図がこの地図にそのまま詰め込まれてると思いな」
「そうなると第一印象最悪だったんでしょうね、お互いに」
「その結果がこれだよ、そこの豚のミューティみたいに暴れまわるバケモンがうじゃうじゃいる。どうなってんだいほんと」

 ボスの言葉からして敵にとっての地獄絵図が繰り広げられてるらしい。
 支配が進んでない理由が良く分かった、向こうの世界の連中がやばいからだ。

「そこで吾輩の出番である」

 呑気に紅茶を配っていたオークの少佐がどっしり構えてきた。
 「飲まないのか?」とも強い視線を送ってきたので急いで一口飲んだ、甘い。

「……チャールトン少佐、あんた何するつもりなんだ?」
「うむ、彼らをここに集わせ戦力に組み込もうと思う。かつての内戦を共にした愛郷心のある連中ばかりだろうからな、容易く結束してくれるであろう。それにローゼンベルガー家の子息もいることだからな」

 とんでもない話へと向かっていくと、チャールトン少佐は横を向いた。
 ちょうどそこには紅茶を上品に嗜んでるオーガがいる。

「フランメリアのかつての戦士たちと共に戦えることなど誉れよ。これほど胸躍る時があったものか」

 ご本人はときめいてらっしゃる。あっちの十七歳はやはりおかしい。
 無差別に紅茶を配るオークがボスにとりかかったが、ご本人が「いらん」と返してしょんぼりするのが見えた。

「ま、そういう訳だぜストレンジャー。今できることはただ一つ、『STEP1・まずは街を取り返せ』だ」

 カップを手にしたツーショットがいつもの笑顔を見せてきた。

「良くわかった。時間的猶予はあるから少しでも侵攻に備えろってことだな」
「その通りだ。この街を回復させれば戦いの土台ができる、援軍も来る、あわよくば侵略者もお帰りになってもらえる。そのために――」

 一口すすって熱そうにしながらも、その顔先はちょうどこっちに向く。
 わかってるさ、俺がカギなんだろ?

「さっきガーデンの軍曹殿が言ってたな、お前はってな。万物に対処する万能なる鍵とは言わないが、お前の存在はここじゃ特別だ。ライヒランドが蛇蝎のごとく嫌う選ばれし一人だ」

 これはもう戦争だ、いつもの態度で軽々しく答えていい話題じゃないのは確かだろう。
 全員の視線が来るが、そこに信頼があるのか、不安があるのか分からない。
 でも、そうだな、俺にはもう大層立派な理由なんていらないんだ。
 ヴァローナ、お前をぶちのめす。借りは全部返してもらうぞ。

「俺がいる限りあいつらに嫌がらせができるんだよな?」
「そうさ。嫌か?」
「誰かさんを一発ぶんなぐれるなら喜んで」
「よし。じゃあこれよりお前を反撃のシンボルとする、全員異論はないな?」

 とんでもない話になってきたな。
 よりにもよって反撃の狼煙かなんかとして扱われてるが、困ったことに誰一人不満はないみたいだ。
 あったとしても、なくなるぐらい活躍しろぐらいの無茶ぶりを要求されそうだが。

「どうせそうじゃなくても派手にやらかして目立つだろ? こいつはそういう人種だ、おっさん分かるんだ」

 コルダイトのおっさんがそう挟まってきて、変に説得力も出てしまった。
 だとしたら「NO」はないな、もっと言えば――

「言い方を変えてやるよ、ストレンジャー。あんたの持てる全てを駆使して、ここで思う存分暴れろ。奴らに二度と癒えない傷を植え付けてやれ」

 そう、今ボスが言ったような感じだ。小難しいことなんているもんか。

「了解、ボス。本日よりクソ野郎ども相手に派手に暴れまわります」
「よろしい。ヒドラ、ラシェル、アーバクル、ドギー、シャンブラー、あんたらもだよ」
「そういってくれるのを待ってたんすよボス、やってやろうぜ」
「悪者相手に好き放題できるなんて最高よ」
「へっへっへ、今日も撃ち放題だ。原型がなくなるまで撃っていいよな?」
「街の一部が吹っ飛んじゃいそうね、このメンツ」
「そう割り切ってやりましょう、誰かさんの言う通り派手にね」

 やるべきことは決まった、ここでプレッパーズらしく暴れまわるだけだ。
 一応、旅の仲間たちにも目を向けた――ニクに、ノルベルトに、ロアベアに、ついでにクリューサとクラウディアにも。

「ウォンッ」
「聞くまでもないぞ、イチ。俺様はお前と共にあるぞ」
「どこかに逃げても退屈っすからね~、アヒヒヒ」
「なぜ俺も――まあ、怪我人が増えるだろうからな、付き合おう」
「徳を積めるまたとない機会だからな、私も行くぞ」

 これからもまだまだ賑やかそうだな。
 共に戦ってくれるそいつらから、肩の短剣に目をやった。

『――大丈夫、わたしも一緒だよ』

 それを聞けて良かった。
 同じくして周りの連中は続々と動き始めてる、俺もこの中に溶け込まなければ。

「よおし、早速足搔いてやろうぜ皆さま。イチ……じゃねえやストレンジャー、さっさと着替えてこい、そんな格好じゃ戦えないだろ?」

 ツーショットに背中を押されて、俺は荷物を取りに部屋に向かった。
 場所も状況も違うが、プレッパータウンに居た頃と何ら変わらない、あの大好きな空気がここにある。

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