92 / 581
世紀末世界のストレンジャー
立つ魔女跡を濁さず
しおりを挟む
町へ戻って装備品を返してもらい、それから次の任務の準備をした。
荷物をまとめたり、装備の点検をしたりといろいろだ。
あれこれしてるうちにあっという間に一日が終わろうとしていた。
「……ミコ、少し話がしたい」
コンテナハウスの中で【クラフトアシスト】を起動しながら俺は謝った。
その言葉の向かう先は、机の上に立てかけられた物いう短剣だ。
『どうしたの?』
「その、あれだ。もう一度お前に謝りたい」
彼女の隣では鉄を削りだして作ったような無骨な刃物が転がっている。
刃そのものは槍の穂先みたいになっていて、柄は棒のように細くくびれていて、後部は輪状になったナイフだ。
いってみればこれは……荒っぽい見た目だがクナイとかいうやつだ。
「リム様から話を聞かされた時からずっと思ってたんだ。俺がこの世のすべてを滅茶苦茶にしたしょうもないやつだって。アルゴ神父の生き方も、お前の居場所も奪ってしまったんだって」
砥石で刃を研いで、柄にダクトテープを巻いて完成。
『PERK』の恩恵で今までの即席ナイフとは違う頼れる親友ができた。
「いや、もっとだ。もっと数え切れないほど、いろいろ奪ってるんだと思う」
ベルトのホルダーに合うか確かめた、問題ない。
ソファからは薄く目を開けたニクがこっちを見ていた、撫でてやった。
「本当にごめんな、ミコ。あれからずっと申し訳ない気持ちで一杯なんだ。お前に、いや、巻き込んだ人たちにどう詫びればいいかって」
机に広げた工具やら弾薬やらを片付けて、バックパックに詰め込んだ。
「これからずっと、二つの世界に償い続けないといけないんだ。自分の力だけでちゃんと穴を埋め合わせないといけない。魔力を壊すとかいうとんでもない爆弾だって抱えてる。……なに言いたいかわかるよな?」
『それって……やっぱり、リム様に預けたいってことなのかな』
それから、窓の外を見た。
とても終末戦争があったとは思えないきれいな夜があった。
だが絶対に忘れない。
二つの世界はこのストレンジャーとかいう男に壊されている。
二人の恩人の死と、運悪く巻き込まれた一人の最期は、死ぬまでこの背中に背負わなければならないだろう。
その上で先へ進まなければいけない、真実と勝利を掴むために。
平凡な暮らしをたった一人の余所者に奪われてしまった物言う短剣を携えて。
「クゥン」
滅茶苦茶にした世界をぼんやり見てると、ニクがむくっと起きた。
きっと俺はみっともない顔をしてるんだろう、ぐりぐり足元にすり寄ってくる。
ひんひん鳴いている鼻先を撫でてあげた。
『……いちクン、あのね』
物いう短剣は言葉に詰まってる。
いっそボロクソに罵倒してくれれば済むだろうが、それは逃げだ。
「無理に言わなくていい」と返してやろうとしたが、
『ごめんなさい。わたし、やっぱりあなたが悪い人だなんて思えないよ』
少し間を置いて、ミコにそういわれた。
適当なことをいって励ますとかそういう感じじゃない、はっきりとした声で。
『前にした約束、覚えてる?』
ミコは何かを掴んだのか……自信のある言葉の調子で問いかけてきた。
思い当たるフシは幾らでもあった。
「……ちゃんと元の世界に帰すってやつか?」
一番大きな約束を出してみると、『ううん』と否定されて。
『前にちゃんと向き合うって約束したよね? あれからずっと、あなたはちゃんと守ってるもん』
ものすごくシンプルにそう答えられてしまった。
言われて気づいた、確かこいつに『ちゃんと向き合え』といわれたままだった。
ただそれだけだ。けれども、どういうことか俺は律儀に守ってる。
『わたしね、いちクンともっと旅がしたいの。今度は鞘の中で怯えてるだけじゃなく、あなたと一緒に前に進みたい』
「……俺と?」
『うん。もう黙って見てるだけじゃなくて、困ってる人をもっと助けたいの。こんな姿でもできることはいっぱいあるんだって教えてもらったし、それに……』
「それに?」
『いちクンがいないと寂しいよ。だって今はあなたのそばが居場所なんだよ? わたしはずっと一緒に過ごして来た戦友なんだから、絶対に見捨てないよ』
……思えばそうか。
成長したのはひとりだけじゃない、この物いう短剣や犬だってそうだった。
俺たちはこの世界で一緒に生きて、成長した仲だ。
「……オーケー、決めた」
覚悟を決めた。
「だったら俺も困ってる人をいっぱい助ける。二人でいっぱい助けよう」
余所者として、旅をしながら人助けをして"世の中捨てたもんじゃないな"って思えるような世界にしてみよう。
「ありがとな、ミコ。やっぱりお前には助けられてばっかだ」
『ふふっ、そう言ってくれると嬉しいなぁ』
「ワンッ」
「それからニク、お前もな」
明日からきっとまた険しい旅路を歩む羽目になるんだろう。
だけどもう迷わない。行くべき場所も、歩き方も覚えたのだから。
「おいっす! ラストおにぎりお届けに来ましたわ!」
ばーん。
明日に備えて寝ようと思ってたら派手に扉が開いた。
今まで通りのじゃがいも大好きなちっこいリム様だ。おかえり。
「……んもーリムさまって急にやってくる……」
『こ、こんばんはりむサマ……前にもあったよね、こういうの……』
「私も旅立ちの準備をしてきましたの! レシピ残してきたり、食堂のスタッフ増やしてきたり! 立つ鳥跡を濁さずですわ!」
ふてぶてしいガチョウも「HONK!」と遅れてやってきた。
どうやらリム様もここを発つみたいだ。
『立つ魔女跡を濁さず』というのか、自分が去った後の食堂のために動いてたらしい。
実際は後を濁さないどころか滅茶苦茶豊かになっているが。
「その姿は?」
『いつものりむサマに戻ってる……』
「ふふん、旅向けの姿に戻りましたの。さ、召し上がってくださいまし」
これから寝ようと思ってたがまあいいか。
まだ熱々のおにぎりにかぶりついた、前に食べた塩にぎりだ。
「……うまい」
『あっわたしも……』
「最後のおにぎりですからよく味わってくださいね? それはそうと」
もう一つのおにぎりにミコをぶっ刺していると、真面目な顔になるのが見えた。
すぐに返事ができるようにおにぎりをおろすと。
「……リっちゃんの言葉は覚えてますわね?」
尋ねられた、もちろん分かってる。
「ああ、南東の……デイビッド・ダムとかいう場所だな」
「ええ、そうですわ。まずは実際に見に行かなければなりませんけれども……」
「けれども?」
「イっちゃんについていくつもりでしたが、そうもいかなくなりました」
てっきりリム様がついてきてくれると思ったが、そうでもないみたいだ。
ちょっと残念だ、まあちゃんとした理由があるんだろう。
「そうか、じゃあいったんお別れってことか?」
「ええ、そうなりますわ。あちらの世界のものがどれだけあるのだとか、いろいろ調べなくてはなりませんの」
『……りむサマとしばらくお別れになっちゃうんだね』
「ふふふ……大丈夫ですわ! その気になればいつでも会えますから!」
いろいろ騒がしい奴だったし、じゃがいも投げつけてくるし、逆レイプしてくるやつだったけどいい魔女だった。
そんな彼女と少しお別れになると思うと、まあ正直少し寂しい。
「あんた一人で大丈夫なのか?」
「もちろんですわ! 魔女は不死身ですから!」
「Honk!」
「それに不運のガチョウ、アイペスちゃんもいますから!」
リム様はたくましいしウェイストランドでもうまくやっていけるだろう。
ガチョウはいまだに謎だが。
「あっ、そうでしたわ! イっちゃんに一つお願いがありますの」
「なんだ? 下ネタ挟んだら今すぐ追い出すぞ」
「それもありますが同じぐらい大事なほうですわ!」
「おい」
そういうとリム様は肩掛けカバンから何かを取り出してきた。
本だ。もっといえば、この世界の料理本だ。
「もしできればの話ですけれども、この世界にあるお料理の本を集めていただけませんか? あっちの世界にはないものばかりですごく興味がありますの」
「料理本を集めとけばいいのか? まあいいけど」
『あ、わたしもちょっと興味あるかも……』
「ええ、ぜひ、ぜひですわ! もちろんただとはいいません、この身体で」
「無償でやらせてくれ」
決まりだ、本も集めることにした。
それにミコも興味があるみたいだしな。
「さすがイっちゃん! では……お先に失礼しますわ」
頼みを引き受けると、リム様は背負っていた杖を手に扉を開けた。
先にって……まさかもう行くつもりなのか。
「……え? もう行くの? この流れでそれは早すぎない?」
『え、ええー……みんなに挨拶とかはしなくていいの、かな?』
「いいんですの。私も余所者ですから、それにいつまでも同じところに留まるのは性に合いませんわ」
どうやら本当に行ってしまうらしい。
せめて見送ろうと思って立ち上がると、リム様は腕を広げてきた。
「どうかご無事で、お元気で。お体を大切にしてくださいね?」
「……いろいろありがとな、リム様。あんたのおかげで俺も、みんなも助けられたよ。でもあんなことしたのは二度と忘れないぞ」
「美食を伝えるのが我が宿命ですのっ! ……次は二人きりの時にシましょうね♡」
「はよいけ」
ストレンジャーは小さな魔女を抱きしめた。
親が子供に言うような言葉を受け止めて、俺は彼女の後ろ姿を見送った。
「では皆様、ご機嫌よう! 何かあったら私の名前を呼んでみてくださいましー!」
リム様は宙に浮かべた杖に腰かけて、その隣にガチョウを乗せて、ふわりと夜空へと飛んで行ってしまった。
そんな姿を見ていまさら「本当に魔女だったんだな」と思った。
『……行っちゃったね』
「今度は俺たちが行く番さ。またな、リム様」
二人で最後のおにぎりを味わって、それからちょっと雑談してから寝た。
◇
荷物をまとめたり、装備の点検をしたりといろいろだ。
あれこれしてるうちにあっという間に一日が終わろうとしていた。
「……ミコ、少し話がしたい」
コンテナハウスの中で【クラフトアシスト】を起動しながら俺は謝った。
その言葉の向かう先は、机の上に立てかけられた物いう短剣だ。
『どうしたの?』
「その、あれだ。もう一度お前に謝りたい」
彼女の隣では鉄を削りだして作ったような無骨な刃物が転がっている。
刃そのものは槍の穂先みたいになっていて、柄は棒のように細くくびれていて、後部は輪状になったナイフだ。
いってみればこれは……荒っぽい見た目だがクナイとかいうやつだ。
「リム様から話を聞かされた時からずっと思ってたんだ。俺がこの世のすべてを滅茶苦茶にしたしょうもないやつだって。アルゴ神父の生き方も、お前の居場所も奪ってしまったんだって」
砥石で刃を研いで、柄にダクトテープを巻いて完成。
『PERK』の恩恵で今までの即席ナイフとは違う頼れる親友ができた。
「いや、もっとだ。もっと数え切れないほど、いろいろ奪ってるんだと思う」
ベルトのホルダーに合うか確かめた、問題ない。
ソファからは薄く目を開けたニクがこっちを見ていた、撫でてやった。
「本当にごめんな、ミコ。あれからずっと申し訳ない気持ちで一杯なんだ。お前に、いや、巻き込んだ人たちにどう詫びればいいかって」
机に広げた工具やら弾薬やらを片付けて、バックパックに詰め込んだ。
「これからずっと、二つの世界に償い続けないといけないんだ。自分の力だけでちゃんと穴を埋め合わせないといけない。魔力を壊すとかいうとんでもない爆弾だって抱えてる。……なに言いたいかわかるよな?」
『それって……やっぱり、リム様に預けたいってことなのかな』
それから、窓の外を見た。
とても終末戦争があったとは思えないきれいな夜があった。
だが絶対に忘れない。
二つの世界はこのストレンジャーとかいう男に壊されている。
二人の恩人の死と、運悪く巻き込まれた一人の最期は、死ぬまでこの背中に背負わなければならないだろう。
その上で先へ進まなければいけない、真実と勝利を掴むために。
平凡な暮らしをたった一人の余所者に奪われてしまった物言う短剣を携えて。
「クゥン」
滅茶苦茶にした世界をぼんやり見てると、ニクがむくっと起きた。
きっと俺はみっともない顔をしてるんだろう、ぐりぐり足元にすり寄ってくる。
ひんひん鳴いている鼻先を撫でてあげた。
『……いちクン、あのね』
物いう短剣は言葉に詰まってる。
いっそボロクソに罵倒してくれれば済むだろうが、それは逃げだ。
「無理に言わなくていい」と返してやろうとしたが、
『ごめんなさい。わたし、やっぱりあなたが悪い人だなんて思えないよ』
少し間を置いて、ミコにそういわれた。
適当なことをいって励ますとかそういう感じじゃない、はっきりとした声で。
『前にした約束、覚えてる?』
ミコは何かを掴んだのか……自信のある言葉の調子で問いかけてきた。
思い当たるフシは幾らでもあった。
「……ちゃんと元の世界に帰すってやつか?」
一番大きな約束を出してみると、『ううん』と否定されて。
『前にちゃんと向き合うって約束したよね? あれからずっと、あなたはちゃんと守ってるもん』
ものすごくシンプルにそう答えられてしまった。
言われて気づいた、確かこいつに『ちゃんと向き合え』といわれたままだった。
ただそれだけだ。けれども、どういうことか俺は律儀に守ってる。
『わたしね、いちクンともっと旅がしたいの。今度は鞘の中で怯えてるだけじゃなく、あなたと一緒に前に進みたい』
「……俺と?」
『うん。もう黙って見てるだけじゃなくて、困ってる人をもっと助けたいの。こんな姿でもできることはいっぱいあるんだって教えてもらったし、それに……』
「それに?」
『いちクンがいないと寂しいよ。だって今はあなたのそばが居場所なんだよ? わたしはずっと一緒に過ごして来た戦友なんだから、絶対に見捨てないよ』
……思えばそうか。
成長したのはひとりだけじゃない、この物いう短剣や犬だってそうだった。
俺たちはこの世界で一緒に生きて、成長した仲だ。
「……オーケー、決めた」
覚悟を決めた。
「だったら俺も困ってる人をいっぱい助ける。二人でいっぱい助けよう」
余所者として、旅をしながら人助けをして"世の中捨てたもんじゃないな"って思えるような世界にしてみよう。
「ありがとな、ミコ。やっぱりお前には助けられてばっかだ」
『ふふっ、そう言ってくれると嬉しいなぁ』
「ワンッ」
「それからニク、お前もな」
明日からきっとまた険しい旅路を歩む羽目になるんだろう。
だけどもう迷わない。行くべき場所も、歩き方も覚えたのだから。
「おいっす! ラストおにぎりお届けに来ましたわ!」
ばーん。
明日に備えて寝ようと思ってたら派手に扉が開いた。
今まで通りのじゃがいも大好きなちっこいリム様だ。おかえり。
「……んもーリムさまって急にやってくる……」
『こ、こんばんはりむサマ……前にもあったよね、こういうの……』
「私も旅立ちの準備をしてきましたの! レシピ残してきたり、食堂のスタッフ増やしてきたり! 立つ鳥跡を濁さずですわ!」
ふてぶてしいガチョウも「HONK!」と遅れてやってきた。
どうやらリム様もここを発つみたいだ。
『立つ魔女跡を濁さず』というのか、自分が去った後の食堂のために動いてたらしい。
実際は後を濁さないどころか滅茶苦茶豊かになっているが。
「その姿は?」
『いつものりむサマに戻ってる……』
「ふふん、旅向けの姿に戻りましたの。さ、召し上がってくださいまし」
これから寝ようと思ってたがまあいいか。
まだ熱々のおにぎりにかぶりついた、前に食べた塩にぎりだ。
「……うまい」
『あっわたしも……』
「最後のおにぎりですからよく味わってくださいね? それはそうと」
もう一つのおにぎりにミコをぶっ刺していると、真面目な顔になるのが見えた。
すぐに返事ができるようにおにぎりをおろすと。
「……リっちゃんの言葉は覚えてますわね?」
尋ねられた、もちろん分かってる。
「ああ、南東の……デイビッド・ダムとかいう場所だな」
「ええ、そうですわ。まずは実際に見に行かなければなりませんけれども……」
「けれども?」
「イっちゃんについていくつもりでしたが、そうもいかなくなりました」
てっきりリム様がついてきてくれると思ったが、そうでもないみたいだ。
ちょっと残念だ、まあちゃんとした理由があるんだろう。
「そうか、じゃあいったんお別れってことか?」
「ええ、そうなりますわ。あちらの世界のものがどれだけあるのだとか、いろいろ調べなくてはなりませんの」
『……りむサマとしばらくお別れになっちゃうんだね』
「ふふふ……大丈夫ですわ! その気になればいつでも会えますから!」
いろいろ騒がしい奴だったし、じゃがいも投げつけてくるし、逆レイプしてくるやつだったけどいい魔女だった。
そんな彼女と少しお別れになると思うと、まあ正直少し寂しい。
「あんた一人で大丈夫なのか?」
「もちろんですわ! 魔女は不死身ですから!」
「Honk!」
「それに不運のガチョウ、アイペスちゃんもいますから!」
リム様はたくましいしウェイストランドでもうまくやっていけるだろう。
ガチョウはいまだに謎だが。
「あっ、そうでしたわ! イっちゃんに一つお願いがありますの」
「なんだ? 下ネタ挟んだら今すぐ追い出すぞ」
「それもありますが同じぐらい大事なほうですわ!」
「おい」
そういうとリム様は肩掛けカバンから何かを取り出してきた。
本だ。もっといえば、この世界の料理本だ。
「もしできればの話ですけれども、この世界にあるお料理の本を集めていただけませんか? あっちの世界にはないものばかりですごく興味がありますの」
「料理本を集めとけばいいのか? まあいいけど」
『あ、わたしもちょっと興味あるかも……』
「ええ、ぜひ、ぜひですわ! もちろんただとはいいません、この身体で」
「無償でやらせてくれ」
決まりだ、本も集めることにした。
それにミコも興味があるみたいだしな。
「さすがイっちゃん! では……お先に失礼しますわ」
頼みを引き受けると、リム様は背負っていた杖を手に扉を開けた。
先にって……まさかもう行くつもりなのか。
「……え? もう行くの? この流れでそれは早すぎない?」
『え、ええー……みんなに挨拶とかはしなくていいの、かな?』
「いいんですの。私も余所者ですから、それにいつまでも同じところに留まるのは性に合いませんわ」
どうやら本当に行ってしまうらしい。
せめて見送ろうと思って立ち上がると、リム様は腕を広げてきた。
「どうかご無事で、お元気で。お体を大切にしてくださいね?」
「……いろいろありがとな、リム様。あんたのおかげで俺も、みんなも助けられたよ。でもあんなことしたのは二度と忘れないぞ」
「美食を伝えるのが我が宿命ですのっ! ……次は二人きりの時にシましょうね♡」
「はよいけ」
ストレンジャーは小さな魔女を抱きしめた。
親が子供に言うような言葉を受け止めて、俺は彼女の後ろ姿を見送った。
「では皆様、ご機嫌よう! 何かあったら私の名前を呼んでみてくださいましー!」
リム様は宙に浮かべた杖に腰かけて、その隣にガチョウを乗せて、ふわりと夜空へと飛んで行ってしまった。
そんな姿を見ていまさら「本当に魔女だったんだな」と思った。
『……行っちゃったね』
「今度は俺たちが行く番さ。またな、リム様」
二人で最後のおにぎりを味わって、それからちょっと雑談してから寝た。
◇
27
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる