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0P3N W0R1D
BoomBoomBoom,BangBangBang
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呆気にとられていたんだと思う。
そいつが倒れた瞬間、お互いがどうすればいいか分からず膠着していた。
くたばった教祖様に思考が追いついてないのか、向けられた銃は固まっている。
「……よ、よく、よくも、よくもハノートス様を……!」
取り残された付き添いの男が怒りの声を漏らし始めて、ようやく事が進む。
「ガゥッ!」
そんな意識の隙間にねじり込まれたのはあの犬の声だった。
見れば破れた金網越しに、ニクが短剣を咥えたまま俺を呼んでいて。
「――ミコ! ボスを引っ張れ!」
すぐに気づいた、誰よりも早くミコにそう伝える。
『ショート・コーリング!』
そこへマナの稼働音、ミコの声をトリガにびょん、と空間を震わせた。
すぐそばにいたボスが車の方へと引き寄せられるのが見えた。
「……ワオ、これがテレポーテーションってやつかい!」
ボスはまるでそう来ると分かっていたかのようにすぐに動き出す。
明確な敵意が残された俺に向けられるのは、それとほぼ同時だった。
「……貴様、よくも、よくも、教祖様にっ、俺たちはこれからっ、貴様ァァァァッ!」
視線が、銃口が、害意が、そして取り残された哀れな男の罵声が降りかかる。
白紙を真っ黒に染めるインクのような強大な悪意は間違いなく、一人立ちはだかるこの世紀末男へ向けられているだろう。
だがあいにく、それにひれ伏すほどの余白はない。
俺は両手をジャンプスーツに突っ込んで隠していたナイフを二本抜き、
「シッ!」
右腕で男の顔面目掛けてアンダースロー。
ナイフが回転もせずに空気を貫き、怨嗟のまなざしへと飛んでいき――
「殺し……ぃぎっ、やあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」
そいつの左目、怒りでパンパンに膨れ上がった眼球をぐっさり貫く。
手加減してやった、せいぜい苦しめ。
「あの時はいろいろ世話になったな、借りは返したぞ」
そう伝えてもう片方のナイフを地面に叩きつけた。
刃先が当たるとぱんっと炸裂、白い閃光と共に『ニンジャバニッシュ』が発動。
向こうの攻撃が始まったのは、それと同じタイミングだった。
「き……消えやがったぞあいつ!?」
「なんだ今のは!? まさか奇跡の業か!?」
「よっ……良くもハノートス様をやりやがったなァァァッ!」
「どっ、どうすんだよ……死んじまったんだぞ!?」
「もう引けねえよッ! あいつらを殺せ、殺すんだ!」
バスの陰に隠された車へと走る。必死になって走りまくる。
その後ろを喚き散らす信者たちの銃撃が掠めていく。
俺の消失をきっかけに、ついに手あたり次第の乱射が始まった。
「ツーショット、出せ!」
「おっ……イチ、いるのか!?」
「満席だ! いけいけ!」
「痛めつけといてくれたようだね、もうちょっと煽っておこうかね!」
姿を消したまま改造スポーツカーの4ドアを開けて飛び込んだ。
助手席にはすでにボスが載ってたようだ、小銃を手に天井の射撃用スペースから身を出している。
「ワンッ!」
『や、やったよ! 怪我はない!?』
後部座席に急いで座ると黒い犬が飛びついてきた。
「助かったぞミコ、ニク!」
俺はグッドボーイを撫でて、足元にねじり込まれた武器を拾う。
見慣れた単発式グレネードランチャーだ。弾薬バッグごと拾った。
「――引っ掛かってくれることを祈ろうぜ、地獄へ行くぞ野郎ども!」
三人と一匹と一本を乗せた改造車が甲高く唸った。
装甲に覆われた棺桶が急加速、中にいる人間など配慮しないスピードであいつらの前へ飛び出ていく。
「ツーショット、進路南へ! もう一発くらわしてやる!」
「了解だ、ボス!」
「イチ、追手が来たら歓迎してやれ! 今から撃ち放題になるよ!」
「了解、ボス!」
敵の眼前へと、もっといえば銃口の向かう先へと車が飛び込む。
すると急に横回転、道路のど真ん中めがけてぎゅるぎゅる音を立てて滑り入って。
「じゃあな、三流野郎! ド変態とよろしくやってな!」
頭上からそう聞こえたかと思えば一発発砲、308口径の鋭い銃声だ。
男がナイフを抜いて『ヒール』で治療しようとしていたところを狙ったみたいだ。
弾はそいつの身体――ではなく、大切にしていた悪趣味な杖をはじいた。
まるで『その気になればぶち殺してやったぞ』といわんばかりに。
「き、さ、ま、らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ! よくも、よくも、よくも、よくもくよくもよくもよくもォォォォォォォ!!」
そこでとうとう限界が来てしまったんだろう、男が杖をぶん投げてきた。
装飾が損なわれた棒きれを捨てると戦闘車両へと飛び乗って。
「私のハノートス様を、輝かしい未来を、すべて台無しにした報いだ! あの老いぼれを殺せばこっちの勝ちだ! ぶち殺せェェェ!」
怒り狂った声を上げて、それをきっかけに車列が一斉に動き始める。
戦闘車両の機関砲がこちらに向けられる――マジで来やがった。
「カーチェイスは好きかいお客様! シートベルトはしなくていいぜ!」
「あんまり離しすぎるんじゃないよ! 追跡を支援するぐらいでいけ!」
「無茶な注文ありがとうボス! こういうシチュエーションたまんねえ!」
再び急加速、ここから1㎞離れた場所へと車が飛び出していく。
そのあとを追うように機関砲弾が地面を何度もえぐる。
絶対に逃がさまいとこの世から集めたような悪趣味な車両たちがやってくる。
そんな光景が見えた直後、信者たちの反撃は始まった。
『人を轢けば転生できる』とペイントされたトラックが列をかき分け、猛スピードでこっちに突っ込んできた。
「ヒャッハァァァァッ! 一番槍だぜぇぇぇッ!」
車体後部にとげとげしいバンパーがぶつかる。質量に負けてがつっと車が揺らぐ。
速度と衝撃が釣り合わず軽くスリップ、しかしうまく立て直したようだ。
すぐ間近まで迫ってきた運転手と目が合う――グレネードランチャーじゃ近すぎる。
「ワンッ!」
そこへ実にいいタイミングでニクがすり寄ってくる。
口には散弾銃、アルゴ神父からもらったやつだ。
「グッドボーイ!」
銃身を折った、フルロードだ。
45-70を選択してフロントガラス越しの運転手に向けてトリガを引く。
きつい発射音と反動が響くが、胸を抜かれた信者が道を逸れて荒野へ突っ込む。
そこに頭上から数発分の射撃音、ボスの射撃で左右の『ヒャッハー』なバイク乗りが横転、仲間の車両にぐちゃっと潰された。
「いい気分だ、ほんといい気分だよイチ! ここまでやってくれるとは大した奴だ!」
「教わった通りにやっただけですよ!」
「ほんとはサンディに始末させるつもりだったんだがね、よくやった!」
ボスにこれでもかというぐらい褒められながらグレネードランチャーを構えた。
「ツーショット、お前のアドバイス通りにやってやったぞ!」
「ちゃんと見てたぜ! お前最高にカッコ良かったぞ、帰ったら武勇伝にして言いふらしてやるからな!」
「そりゃどうも!」
エンジンを高ぶらせて突撃しようとするピックアップトラックを発見、足回りめがけてぶっ放す。
どどど、と荷台の五十口径がぶっ放されるが相打ちになってしまった。
魔改造スポーツカーの後部がひしゃげて低い金属音をかき鳴らす。
爆発した40㎜グレネードで敵の車体が斜めに傾き、仲間の車両もろとも退場していく。
「おらオラァ! 逃げんじゃねぇ! クソババァを殺せェ!」
「逃がしゃしねえぜぇ! 大人しくぶち抜かれろやぁ!」
ランチャーから空薬莢を抜くと、露出狂二人を乗せたバギーが高速で接近してくる。
馬鹿みたいにデカいクロスボウを乗せている――狙いはボスだ。
「ミコ、防御! ボスを守れ!」
『は、はい! セイクリッドプロテクション!』
物いう短剣にお願いすると、使われた魔力がボスへと向かったようだ。
重なるような頃合いにクソデカい矢がバギーから発射、頭上でがきんっと音がした。
「ほんとにいっぱい来てやがるぞ! 早くしろまだつかないのか!?」
「あとどれくらいだい、ツーショット!?」
「落ち着けよ! 挑発は成功してんだ、このまま突っ切るぜ!」
そうしてるうちに例の道路が見えてくる。
ばばば、と後ろから射撃音。車体にぎりっと鉛がめり込む感触と、ボスにかけられた魔法が金属をはじく音がした。
後ろを見れば地を埋め尽くすほどの鉄の化け物たちが必死に追いかけてきている。
「爆破エリア脱出の100m手前で一気に加速しな! お待ちかねのフィナーレだよ!」
今度は列から二両、鉄板まみれで銃座を取り付た戦車もどきのSUVが飛び出てくる。
俺たちを挟むように二つの車が迫る――挟まれて、軽機関銃付きの銃座を向けられた。
「おっと! もう一仕事頼むぜお二人さん!」
ところが左右から掃射されるといった寸前でツーショットが加速した。
*BRTATATATATATATATA!*
挟撃から抜け出すと同時に、二つの車両がお互いに機銃をぶっ放すのが見えた。
「どかーん、だ。分かるかくそったれ」
すかさずグレネードランチャーに装填、発射、運転手ごとガラスを吹っ飛ばす。
「喧嘩を売る相手を間違えるなよ、くそったれ」
隣でボスが狂ったように小銃を撃ちまくる、もう一両の運転席が血だらけだ。
撃破した、仲良く連携しにきた敵車両が別々の道を歩んでいった。
「――よっしゃ! うまく誘い込めたみたいだぜ!」
斜面に挟まれた道が終わりに近づいてきた。
倒しても倒しても減らない車の群れはちゃんとついてきている――爆弾まみれの道のど真ん中に、しっかりと。
「来るよ! 総員、衝撃に備えろ!」
「……おい待て爆破のタイミングってどうなってんだ!?」
「知らないな! さあ、かっ飛ばすぞォォォォ!」
「知らない!? ノープランでここまで来たのか俺たち!?」
「ぶっつけ本番ってやつさ! 覚悟しなぁ!」
『えっ、えっ……合図とかないんですかぁぁぁ!?』
十分に役目を果たしたスポーツカーが本気を出し始める。
車体に組み込まれた部品たちが甲高い声を上げながらフルスロットルへ。
殺す気満々で迫ってきたやつらを追い抜き、IEDまみれの道路をかっ飛ばしていく。
『――逃がすか、絶対に生きては帰さんぞ! クソどもぉぉぉぉぉッ!』
目を潰されたあの男が、必死に追いつこうとする装甲車の上で恨み言を叫んでいた。
だがその姿すら置き去りにして、ついに車が危険地帯を抜けた。
置いてけぼりを食らったカルトどもの車両がどんどん離れていく。
そのタイミングに重なるように、押し込まれた車両たちの左右で爆炎が上がった。
重々しい爆発音のあと、大地が吹き飛び黒煙と砂埃の柱を立てたのが見えた。
すぐに爆風が俺たちの方へと向かってきた。
その爆心地にいたあいつらの姿なんて知ったことか。
光と音と衝撃はすべてを抉り上げ、熱風と破片を抱えて荒野に降り注いだ。
◇
そいつが倒れた瞬間、お互いがどうすればいいか分からず膠着していた。
くたばった教祖様に思考が追いついてないのか、向けられた銃は固まっている。
「……よ、よく、よくも、よくもハノートス様を……!」
取り残された付き添いの男が怒りの声を漏らし始めて、ようやく事が進む。
「ガゥッ!」
そんな意識の隙間にねじり込まれたのはあの犬の声だった。
見れば破れた金網越しに、ニクが短剣を咥えたまま俺を呼んでいて。
「――ミコ! ボスを引っ張れ!」
すぐに気づいた、誰よりも早くミコにそう伝える。
『ショート・コーリング!』
そこへマナの稼働音、ミコの声をトリガにびょん、と空間を震わせた。
すぐそばにいたボスが車の方へと引き寄せられるのが見えた。
「……ワオ、これがテレポーテーションってやつかい!」
ボスはまるでそう来ると分かっていたかのようにすぐに動き出す。
明確な敵意が残された俺に向けられるのは、それとほぼ同時だった。
「……貴様、よくも、よくも、教祖様にっ、俺たちはこれからっ、貴様ァァァァッ!」
視線が、銃口が、害意が、そして取り残された哀れな男の罵声が降りかかる。
白紙を真っ黒に染めるインクのような強大な悪意は間違いなく、一人立ちはだかるこの世紀末男へ向けられているだろう。
だがあいにく、それにひれ伏すほどの余白はない。
俺は両手をジャンプスーツに突っ込んで隠していたナイフを二本抜き、
「シッ!」
右腕で男の顔面目掛けてアンダースロー。
ナイフが回転もせずに空気を貫き、怨嗟のまなざしへと飛んでいき――
「殺し……ぃぎっ、やあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」
そいつの左目、怒りでパンパンに膨れ上がった眼球をぐっさり貫く。
手加減してやった、せいぜい苦しめ。
「あの時はいろいろ世話になったな、借りは返したぞ」
そう伝えてもう片方のナイフを地面に叩きつけた。
刃先が当たるとぱんっと炸裂、白い閃光と共に『ニンジャバニッシュ』が発動。
向こうの攻撃が始まったのは、それと同じタイミングだった。
「き……消えやがったぞあいつ!?」
「なんだ今のは!? まさか奇跡の業か!?」
「よっ……良くもハノートス様をやりやがったなァァァッ!」
「どっ、どうすんだよ……死んじまったんだぞ!?」
「もう引けねえよッ! あいつらを殺せ、殺すんだ!」
バスの陰に隠された車へと走る。必死になって走りまくる。
その後ろを喚き散らす信者たちの銃撃が掠めていく。
俺の消失をきっかけに、ついに手あたり次第の乱射が始まった。
「ツーショット、出せ!」
「おっ……イチ、いるのか!?」
「満席だ! いけいけ!」
「痛めつけといてくれたようだね、もうちょっと煽っておこうかね!」
姿を消したまま改造スポーツカーの4ドアを開けて飛び込んだ。
助手席にはすでにボスが載ってたようだ、小銃を手に天井の射撃用スペースから身を出している。
「ワンッ!」
『や、やったよ! 怪我はない!?』
後部座席に急いで座ると黒い犬が飛びついてきた。
「助かったぞミコ、ニク!」
俺はグッドボーイを撫でて、足元にねじり込まれた武器を拾う。
見慣れた単発式グレネードランチャーだ。弾薬バッグごと拾った。
「――引っ掛かってくれることを祈ろうぜ、地獄へ行くぞ野郎ども!」
三人と一匹と一本を乗せた改造車が甲高く唸った。
装甲に覆われた棺桶が急加速、中にいる人間など配慮しないスピードであいつらの前へ飛び出ていく。
「ツーショット、進路南へ! もう一発くらわしてやる!」
「了解だ、ボス!」
「イチ、追手が来たら歓迎してやれ! 今から撃ち放題になるよ!」
「了解、ボス!」
敵の眼前へと、もっといえば銃口の向かう先へと車が飛び込む。
すると急に横回転、道路のど真ん中めがけてぎゅるぎゅる音を立てて滑り入って。
「じゃあな、三流野郎! ド変態とよろしくやってな!」
頭上からそう聞こえたかと思えば一発発砲、308口径の鋭い銃声だ。
男がナイフを抜いて『ヒール』で治療しようとしていたところを狙ったみたいだ。
弾はそいつの身体――ではなく、大切にしていた悪趣味な杖をはじいた。
まるで『その気になればぶち殺してやったぞ』といわんばかりに。
「き、さ、ま、らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ! よくも、よくも、よくも、よくもくよくもよくもよくもォォォォォォォ!!」
そこでとうとう限界が来てしまったんだろう、男が杖をぶん投げてきた。
装飾が損なわれた棒きれを捨てると戦闘車両へと飛び乗って。
「私のハノートス様を、輝かしい未来を、すべて台無しにした報いだ! あの老いぼれを殺せばこっちの勝ちだ! ぶち殺せェェェ!」
怒り狂った声を上げて、それをきっかけに車列が一斉に動き始める。
戦闘車両の機関砲がこちらに向けられる――マジで来やがった。
「カーチェイスは好きかいお客様! シートベルトはしなくていいぜ!」
「あんまり離しすぎるんじゃないよ! 追跡を支援するぐらいでいけ!」
「無茶な注文ありがとうボス! こういうシチュエーションたまんねえ!」
再び急加速、ここから1㎞離れた場所へと車が飛び出していく。
そのあとを追うように機関砲弾が地面を何度もえぐる。
絶対に逃がさまいとこの世から集めたような悪趣味な車両たちがやってくる。
そんな光景が見えた直後、信者たちの反撃は始まった。
『人を轢けば転生できる』とペイントされたトラックが列をかき分け、猛スピードでこっちに突っ込んできた。
「ヒャッハァァァァッ! 一番槍だぜぇぇぇッ!」
車体後部にとげとげしいバンパーがぶつかる。質量に負けてがつっと車が揺らぐ。
速度と衝撃が釣り合わず軽くスリップ、しかしうまく立て直したようだ。
すぐ間近まで迫ってきた運転手と目が合う――グレネードランチャーじゃ近すぎる。
「ワンッ!」
そこへ実にいいタイミングでニクがすり寄ってくる。
口には散弾銃、アルゴ神父からもらったやつだ。
「グッドボーイ!」
銃身を折った、フルロードだ。
45-70を選択してフロントガラス越しの運転手に向けてトリガを引く。
きつい発射音と反動が響くが、胸を抜かれた信者が道を逸れて荒野へ突っ込む。
そこに頭上から数発分の射撃音、ボスの射撃で左右の『ヒャッハー』なバイク乗りが横転、仲間の車両にぐちゃっと潰された。
「いい気分だ、ほんといい気分だよイチ! ここまでやってくれるとは大した奴だ!」
「教わった通りにやっただけですよ!」
「ほんとはサンディに始末させるつもりだったんだがね、よくやった!」
ボスにこれでもかというぐらい褒められながらグレネードランチャーを構えた。
「ツーショット、お前のアドバイス通りにやってやったぞ!」
「ちゃんと見てたぜ! お前最高にカッコ良かったぞ、帰ったら武勇伝にして言いふらしてやるからな!」
「そりゃどうも!」
エンジンを高ぶらせて突撃しようとするピックアップトラックを発見、足回りめがけてぶっ放す。
どどど、と荷台の五十口径がぶっ放されるが相打ちになってしまった。
魔改造スポーツカーの後部がひしゃげて低い金属音をかき鳴らす。
爆発した40㎜グレネードで敵の車体が斜めに傾き、仲間の車両もろとも退場していく。
「おらオラァ! 逃げんじゃねぇ! クソババァを殺せェ!」
「逃がしゃしねえぜぇ! 大人しくぶち抜かれろやぁ!」
ランチャーから空薬莢を抜くと、露出狂二人を乗せたバギーが高速で接近してくる。
馬鹿みたいにデカいクロスボウを乗せている――狙いはボスだ。
「ミコ、防御! ボスを守れ!」
『は、はい! セイクリッドプロテクション!』
物いう短剣にお願いすると、使われた魔力がボスへと向かったようだ。
重なるような頃合いにクソデカい矢がバギーから発射、頭上でがきんっと音がした。
「ほんとにいっぱい来てやがるぞ! 早くしろまだつかないのか!?」
「あとどれくらいだい、ツーショット!?」
「落ち着けよ! 挑発は成功してんだ、このまま突っ切るぜ!」
そうしてるうちに例の道路が見えてくる。
ばばば、と後ろから射撃音。車体にぎりっと鉛がめり込む感触と、ボスにかけられた魔法が金属をはじく音がした。
後ろを見れば地を埋め尽くすほどの鉄の化け物たちが必死に追いかけてきている。
「爆破エリア脱出の100m手前で一気に加速しな! お待ちかねのフィナーレだよ!」
今度は列から二両、鉄板まみれで銃座を取り付た戦車もどきのSUVが飛び出てくる。
俺たちを挟むように二つの車が迫る――挟まれて、軽機関銃付きの銃座を向けられた。
「おっと! もう一仕事頼むぜお二人さん!」
ところが左右から掃射されるといった寸前でツーショットが加速した。
*BRTATATATATATATATA!*
挟撃から抜け出すと同時に、二つの車両がお互いに機銃をぶっ放すのが見えた。
「どかーん、だ。分かるかくそったれ」
すかさずグレネードランチャーに装填、発射、運転手ごとガラスを吹っ飛ばす。
「喧嘩を売る相手を間違えるなよ、くそったれ」
隣でボスが狂ったように小銃を撃ちまくる、もう一両の運転席が血だらけだ。
撃破した、仲良く連携しにきた敵車両が別々の道を歩んでいった。
「――よっしゃ! うまく誘い込めたみたいだぜ!」
斜面に挟まれた道が終わりに近づいてきた。
倒しても倒しても減らない車の群れはちゃんとついてきている――爆弾まみれの道のど真ん中に、しっかりと。
「来るよ! 総員、衝撃に備えろ!」
「……おい待て爆破のタイミングってどうなってんだ!?」
「知らないな! さあ、かっ飛ばすぞォォォォ!」
「知らない!? ノープランでここまで来たのか俺たち!?」
「ぶっつけ本番ってやつさ! 覚悟しなぁ!」
『えっ、えっ……合図とかないんですかぁぁぁ!?』
十分に役目を果たしたスポーツカーが本気を出し始める。
車体に組み込まれた部品たちが甲高い声を上げながらフルスロットルへ。
殺す気満々で迫ってきたやつらを追い抜き、IEDまみれの道路をかっ飛ばしていく。
『――逃がすか、絶対に生きては帰さんぞ! クソどもぉぉぉぉぉッ!』
目を潰されたあの男が、必死に追いつこうとする装甲車の上で恨み言を叫んでいた。
だがその姿すら置き去りにして、ついに車が危険地帯を抜けた。
置いてけぼりを食らったカルトどもの車両がどんどん離れていく。
そのタイミングに重なるように、押し込まれた車両たちの左右で爆炎が上がった。
重々しい爆発音のあと、大地が吹き飛び黒煙と砂埃の柱を立てたのが見えた。
すぐに爆風が俺たちの方へと向かってきた。
その爆心地にいたあいつらの姿なんて知ったことか。
光と音と衝撃はすべてを抉り上げ、熱風と破片を抱えて荒野に降り注いだ。
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