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G.U.E.S.T-Survival Simulator
ようこそ、ウェイストランドへ!
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階段を進んだ先は行き止まりで、天井に扉があった。
取っ手はない、押してみるとぎしぎしいいながら持ち上がった。
隙間から温かくて乾いた空気を感じる。
太陽の光も入ってきた――ここから先は地上の世界だ。
小さなシェルターから這い上がって、ようやく理解できた。
何があるか分からない、自分の知らない世界がどこまでも広がっている。
いったいどこなのかもわからない乾いた空気の味がする。
太陽は赤みを帯び始めていて、空は夕焼けに近づいていた。
見わたすと周囲にぼろぼろになった民家がいくつもあることに気づく。
どうやらここは住宅街だった場所らしい。
振り返ると自分がいたシェルターは家の裏に作られていたことが分かる。
もっともその家は跡形もなく破壊され、家だった何かに変わり果てているが。
さてどうしよう。
とりあえず開きっぱなしになっていた扉の取っ手を掴んで閉じた。
ここは見知らぬ土地だ。まわりに誰かがいそうな感じもしない。
そのとき遠くからぱーんという音が聞こえた。
花火でもやってるんだろうか程度の認識で先へ進もうとしたが、
「……銃声?」
ほんの少しためらった。
胸の傷がちくっと疼いて、この音が危険なものであると感じている。
どうであれ用心するにこしたことはないか。
注意深くシェルターを後にすると、すぐ近くに道路があった。
路上には持ち主がいなくなった車たちがひん剥かれた状態で放置されていた。
ここがかつて豊かな人たちが暮らす住宅街だったのは間違いない。
一昔前の洋画で見た世界が核戦争か何かで荒廃すれば、自然とこうなるはずだ。
ああ、つまり、どっからどう見たって文明崩壊後の世界かなんかだな。
ここには俺たち人類が大好きなファンタジーの「ファ」部分すらない。
我が家に帰してくれと泣きわめいてやりたいが、不満を捕まえて抑え込んだ。
フラストレーションをねじ伏せながら先へ進む。
まだ家としての姿を保っている場所はあるものの、ここは完璧な廃墟だった。
道路をたどればここよりはまだ少し原形を保っている別の街並みがあるようだ。
総じて、現在地はどこかの街だということが分かる。
こんなに荒廃した原因は分からないが住んでる人はいないのは確実か。
「……タカアキ、お前はもう少し贈り物のセンスを磨いたほうがいいぞ。バカ野郎」
そんなポストアポカリプスの世界で俺は嘆いた。
右も左も分からないのに完全に一人ぼっちってやつだ。
「それで? どうすればいいんだ? 主人公らしく振舞えってか?」
こんな世界に語り掛けたって答えは出てこない。
「……誰か教えてくれよ、おい」
帰る我が家もなければ話かける相手もいない。
そもそもこれから何をすればいいのかすら分からない。
いま少しでも気を抜いてしまえば俺は簡単に発狂してしまうだろう。
むかし「自分は孤独が似合う」とかイキってたくせにこのありさまだ。
今になってようやく理解した、自分は一人じゃ何もできないやつだったのだと。
人生をぼんやりと、特に目標もなく適当に生きていたツケなのか?
強い意志ももたず漠然と生きていたから、こうして立ち尽くしてるんだろう。
だから俺は「生きてればチャンスはある」なんて楽観的に構えていたのか。
……だめだ、今そんなことを反省してどうするんだ。
とにかく前へ。丸裸にされた車の間を縫って、遠くの街並みへ。
ここよりもまだ原形が残っているのだから誰かいるかもしれない。
「……あっ」
すると、少し離れた場所にある車の陰から人の姿が飛び出した。
まるで来るのを待っていたようにすっと出てきた感じだ。
その形がどうであれ自分以外に誰かがいる、とようやく分かったのだから、
「ひ、人!? マジかよ! 良かった! 誰もいなくて心配だったん――」
ため込んでた不安を垂れ流しながら人の姿をした誰かに近づいた。
なんだこいつ、と変な目で見られようがそれでもいい。
こんなところで一人でいるなんてもうごめんだ。
ところが嫌な予感を感じた。
まただ、背筋がうねるような感覚だ。
思わず立ち止まる、そして相手を見た。
しわだらけであちこちすり切れたコートを着た人間が一人。
表情は分からない、深く被ったフードと口元を覆うバンダナのせいだ。
腹ペコの肉食動物みたいな血走った目つきをしていたのだけは嫌でも分かった。
そしてその手には――しっかりと矢が装填された錆びだらけのクロスボウが。
「……なんだ、あのシェルターの生き残りか。まだいるなんて思わなかったぜ」
男の声がして、そいつの得物がこっちに向けられた。
顔は分からないがきっとニタリと笑ってることだろう。
「……あー、嘘だろ?」
まずい。
自分の中にある感覚が今となってようやく、こりゃ完全にヤバイと認識した。
太陽の光で矢じりが鈍く光る。そいつの指が、引き金を絞りはじめるのが見えて。
「……くっ……そ! ふざけんな――」
俺はとっさに横に向けて走り出した。
すぐには撃たれなかった、このまま車の陰に飛び込むつもりだったが。
かひゅん。
背後から硬いものが擦れるような音。
ほんの一瞬間を置いて、首に熱さと痒みまじりの激痛が走る。
何かがざくっとした感触と共に喉から飛び出ている。
太い矢だ。それから生暖かい液体が、自分の血があふれ出た。
「おがっ……ぐふっ……!」
息ができない。血と真っ赤な泡が一気にあふれてくる。
肺が押しつぶれる。海でおぼれたような感覚に近い何かを感じる。
首に、矢が。手で抑えようとして、けれども叶うこともなく、
「へへ……悪いなぁ、坊や。お前の血と肉は俺たちが無駄なく使ってやるよ。我らアルテリー・クランの血肉としてな」
そのうち自分の血でおぼれ死んだ。
取っ手はない、押してみるとぎしぎしいいながら持ち上がった。
隙間から温かくて乾いた空気を感じる。
太陽の光も入ってきた――ここから先は地上の世界だ。
小さなシェルターから這い上がって、ようやく理解できた。
何があるか分からない、自分の知らない世界がどこまでも広がっている。
いったいどこなのかもわからない乾いた空気の味がする。
太陽は赤みを帯び始めていて、空は夕焼けに近づいていた。
見わたすと周囲にぼろぼろになった民家がいくつもあることに気づく。
どうやらここは住宅街だった場所らしい。
振り返ると自分がいたシェルターは家の裏に作られていたことが分かる。
もっともその家は跡形もなく破壊され、家だった何かに変わり果てているが。
さてどうしよう。
とりあえず開きっぱなしになっていた扉の取っ手を掴んで閉じた。
ここは見知らぬ土地だ。まわりに誰かがいそうな感じもしない。
そのとき遠くからぱーんという音が聞こえた。
花火でもやってるんだろうか程度の認識で先へ進もうとしたが、
「……銃声?」
ほんの少しためらった。
胸の傷がちくっと疼いて、この音が危険なものであると感じている。
どうであれ用心するにこしたことはないか。
注意深くシェルターを後にすると、すぐ近くに道路があった。
路上には持ち主がいなくなった車たちがひん剥かれた状態で放置されていた。
ここがかつて豊かな人たちが暮らす住宅街だったのは間違いない。
一昔前の洋画で見た世界が核戦争か何かで荒廃すれば、自然とこうなるはずだ。
ああ、つまり、どっからどう見たって文明崩壊後の世界かなんかだな。
ここには俺たち人類が大好きなファンタジーの「ファ」部分すらない。
我が家に帰してくれと泣きわめいてやりたいが、不満を捕まえて抑え込んだ。
フラストレーションをねじ伏せながら先へ進む。
まだ家としての姿を保っている場所はあるものの、ここは完璧な廃墟だった。
道路をたどればここよりはまだ少し原形を保っている別の街並みがあるようだ。
総じて、現在地はどこかの街だということが分かる。
こんなに荒廃した原因は分からないが住んでる人はいないのは確実か。
「……タカアキ、お前はもう少し贈り物のセンスを磨いたほうがいいぞ。バカ野郎」
そんなポストアポカリプスの世界で俺は嘆いた。
右も左も分からないのに完全に一人ぼっちってやつだ。
「それで? どうすればいいんだ? 主人公らしく振舞えってか?」
こんな世界に語り掛けたって答えは出てこない。
「……誰か教えてくれよ、おい」
帰る我が家もなければ話かける相手もいない。
そもそもこれから何をすればいいのかすら分からない。
いま少しでも気を抜いてしまえば俺は簡単に発狂してしまうだろう。
むかし「自分は孤独が似合う」とかイキってたくせにこのありさまだ。
今になってようやく理解した、自分は一人じゃ何もできないやつだったのだと。
人生をぼんやりと、特に目標もなく適当に生きていたツケなのか?
強い意志ももたず漠然と生きていたから、こうして立ち尽くしてるんだろう。
だから俺は「生きてればチャンスはある」なんて楽観的に構えていたのか。
……だめだ、今そんなことを反省してどうするんだ。
とにかく前へ。丸裸にされた車の間を縫って、遠くの街並みへ。
ここよりもまだ原形が残っているのだから誰かいるかもしれない。
「……あっ」
すると、少し離れた場所にある車の陰から人の姿が飛び出した。
まるで来るのを待っていたようにすっと出てきた感じだ。
その形がどうであれ自分以外に誰かがいる、とようやく分かったのだから、
「ひ、人!? マジかよ! 良かった! 誰もいなくて心配だったん――」
ため込んでた不安を垂れ流しながら人の姿をした誰かに近づいた。
なんだこいつ、と変な目で見られようがそれでもいい。
こんなところで一人でいるなんてもうごめんだ。
ところが嫌な予感を感じた。
まただ、背筋がうねるような感覚だ。
思わず立ち止まる、そして相手を見た。
しわだらけであちこちすり切れたコートを着た人間が一人。
表情は分からない、深く被ったフードと口元を覆うバンダナのせいだ。
腹ペコの肉食動物みたいな血走った目つきをしていたのだけは嫌でも分かった。
そしてその手には――しっかりと矢が装填された錆びだらけのクロスボウが。
「……なんだ、あのシェルターの生き残りか。まだいるなんて思わなかったぜ」
男の声がして、そいつの得物がこっちに向けられた。
顔は分からないがきっとニタリと笑ってることだろう。
「……あー、嘘だろ?」
まずい。
自分の中にある感覚が今となってようやく、こりゃ完全にヤバイと認識した。
太陽の光で矢じりが鈍く光る。そいつの指が、引き金を絞りはじめるのが見えて。
「……くっ……そ! ふざけんな――」
俺はとっさに横に向けて走り出した。
すぐには撃たれなかった、このまま車の陰に飛び込むつもりだったが。
かひゅん。
背後から硬いものが擦れるような音。
ほんの一瞬間を置いて、首に熱さと痒みまじりの激痛が走る。
何かがざくっとした感触と共に喉から飛び出ている。
太い矢だ。それから生暖かい液体が、自分の血があふれ出た。
「おがっ……ぐふっ……!」
息ができない。血と真っ赤な泡が一気にあふれてくる。
肺が押しつぶれる。海でおぼれたような感覚に近い何かを感じる。
首に、矢が。手で抑えようとして、けれども叶うこともなく、
「へへ……悪いなぁ、坊や。お前の血と肉は俺たちが無駄なく使ってやるよ。我らアルテリー・クランの血肉としてな」
そのうち自分の血でおぼれ死んだ。
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